そもそも「リキュール」って何? 蒸溜酒(蒸留酒)との違いや、原料別の特徴をわかりやすく紹介!

リキュールとは、ベースとなる蒸溜酒(蒸留酒)に香草や薬草、果実、ナッツなどで香味をつけ、甘味などを加えたお酒。日本の酒税法上は「混成酒」に分類されます。今回は、リキュールの定義や蒸溜酒との違い、原料別の分類とそれぞれの特徴、有名銘柄、おいしいたのしみ方まで紹介します。
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目次
リキュールとはどんなお酒なのか、酒税法上の分類や起源から確認していきましょう。
リキュール(Liqueur)とはどんなお酒?

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リキュールとは、ベースとなる蒸溜酒(スピリッツ)にハーブやスパイス、果実、ナッツ、乳製品などで香味をつけ、甘味や色彩などを加えたお酒です。細かい定義は国や地域によって異なりますが、日本の酒税法においては以下のように定義されています。
出典 e-GOV法令検索|酒税法|第三条二十一リキュール:
酒類と糖類その他の物品(酒類を含む。)を原料とした酒類でエキス分が二度以上のもの(第七号から第十九号までに掲げる酒類、前条第一項に規定する溶解してアルコール分一度以上の飲料とすることができる粉末状のもの及びその性状がみりんに類似する酒類として政令で定めるものを除く。)をいう。
少しわかりにくいので要約すると、以下のように言い換えることができます。
出典 国税庁|お酒に関する情報>その他のお酒に関するもの酒類と糖類その他の物品を原料とした酒類で、エキス分が2度以上のもの(清酒、合成清酒、焼酎、みりん、ビール、果実酒、甘味果実酒、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、発泡酒、その他の醸造酒及び粉末酒を除く。)
ちなみに「エキス分」とは、温度15℃において100ミリリットルのお酒のなかに含まれる不揮発性成分のグラム数のことで、おもに糖類や乳酸などを指します。
リキュールというと、カクテルに色や香味を添える芳醇な味わいのお酒を思い浮かべるかもしれませんが、定義の性質上、缶入りチューハイやサワーなどのRTD飲料も、糖分や果汁などのエキス分が2度(パーセント)以上入っていれば「リキュール(発泡性)」に分類されます。ちなみに、エキス分が2度未満のときは「スピリッツ(発泡性)」となります。
リキュールと蒸溜酒(蒸留酒)の違い

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日本の酒税法では、日本におけるリキュールと蒸溜酒の違いは、一言でいえば酒税法上のカテゴリの違い、ということになります。
日本の酒税法で、酒類は大きく「発泡性酒類」「醸造酒類」「蒸留酒類」「混成酒類」の4つに分けられています。
◆発泡性酒類
麦芽やホップ、水などを発酵させたものでおもにビールや発泡酒などのこと。
◆醸造酒類
米、米こうじ水、果実などを発酵させたのもので、おもに清酒(日本酒)やワインなどが分類されます。
◆蒸留酒類
発酵した液体を加熱し、気化したアルコールを冷却・凝縮する「蒸溜」という工程を経たお酒の総称。ウイスキーやブランデー、焼酎、原料用アルコールをはじめウォッカやジン、ラム、テキーラなどのスピリッツがこれにあたります。
◆混成酒類
醸造酒や蒸溜酒をベースに互いを混合したり、香味成分や糖などを加えたりして造られるお酒のこと。リキュールは、ベルモットなどのフレーヴァードワインや酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)、果実酒、合成清酒などとともにこの「混成酒類」に分類されます。

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かんたんにいうと、原料を発酵させたお酒が醸造酒、それを蒸溜したお酒が蒸溜酒、それらに香味成分や甘味などをプラスしたお酒がリキュールということになります。
日本の酒税法では、酒類を原料や製造方法(製法)によって課税上の分類として4つのカテゴリに分けていますが、製法だけに着目してもリキュールと蒸溜酒の違いは明白です。
ちなみにEUやアメリカ合衆国では、リキュールを「ベースとなる蒸溜酒に香味や甘味を加えた蒸溜留酒(スピリッツ)の一部」と定義しています。それに対して日本には日本酒などの醸造酒をベースとしたリキュールもあり、リキュールの範囲が幅広く設定されているといえるでしょう。
リキュールは紀元前から飲まれてきた歴史の深いお酒

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リキュールの歴史はとても古く、はじまりは紀元前4世紀ごろの古代ギリシャにまでさかのぼります。「医学の父」「医聖」と称されるヒポクラテスがワインに薬草を漬け込み、薬酒を造ったのがリキュールの原型とされています。
その後、こうした薬効あるお酒を求めて活躍したのは中世ヨーロッパの錬金術師たちです。あらゆるものを金に変え、あらゆる病気を治す「賢者の石」を探し求める錬金術師たちが、蒸溜技術を用いた蒸溜酒にさまざまな薬草や香草を溶け込ませ、より強い霊力を求めて造り出した「エリクシル(エリクサー)」。それが、現在のリキュールの起源ともいわれています。
それ以降は修道院の修道士たちによるリキュール造りが盛んになり、薬草や香草を原料にした独自のリキュールを生み出すようになります。
リキュールが嗜好品としてたのしまれるようになったのは15〜16世紀ごろ。ヨーロッパが中世から近世へと転換しつつあった時代、イタリアやフランスの貴族社会で流行したリキュールが、次第に大衆にも広まっていきました。
大航海時代を迎え、アジアや新大陸からさまざまなハーブやスパイスがもたらされたことも、リキュールの発展に大きな影響を与えたと考えられています。
リキュールは風味づけに使われる原料で4種類に分けられる

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リキュールはおもに香味成分の原料によって「香草・薬草系」「果実系」「ナッツ・核・種子系」「特殊系」の4つに大別されます。
リキュールの種類①|香草・薬草系(ハーブ・スパイス系)

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いわゆる「草根木皮」、ハーブやスパイスなどで風味づけしたリキュールは、薬酒として誕生したとされるリキュールの、原点ともいえる存在です。紅茶や緑茶などの茶葉を原料にしたリキュール、またニオイスミレや桜など花の香りを閉じ込めたリキュールも、このジャンルに分類されます。
香草系(ハーブ・スパイス系)の代表的なリキュールには、フランスの修道院で生まれた「シャルトルーズ(シャルトリューズ)」や「ベネディクティン」、鮮やかな赤色と独特のビターテイストが印象的な「カンパリ」、56種ものハーブ・スパイスが使われている「イエーガーマイスター」などがあります。
ニガヨモギ風味で禁断のリキュールと呼ばれた「アブサン」、紅茶風味の「ティフィン」、スミレ色の「パルフェタムール」、アニス風味の「ペルノ」や「ウゾ(ウーゾ)」、スコッチウイスキーに各種ハーブや蜂蜜を加えた「ドランブイ」なども有名です。
リキュールの種類②|果実系(フルーツ系)

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リキュールのなかでとくに人気が高いのが、この果実を原料にしたタイプです。柑橘系をはじめさまざまなフルーツの色彩や香り、甘味や酸味を生かしたリキュールは強いアルコール感が苦手な人も親しみやすいお酒。ミックスドリンクやカクテルのほか、洋菓子の風味づけなどにも使われています。
果実系(フルーツ系)の代表的なリキュールには、オレンジ系の「コアントロー」や「グランマルニエ」、レモン系の「リモンチェッロ」、ベリー系の「クレーム・ド・カシス」や「スロージン」、桃を原料とした「ピーチツリー」や「クレーム・ド・ペシェ」、サクランボ風味の「マラスキーノ」などがあります。
アルコール初心者にとっては、日本生まれのメロンリキュール「ミドリ」や、ライチ風味の「ディタ」、ココナッツ風味の「マリブ」、鮮やかな青色が特徴の「ブルーキュラソー」なども飲みやすいでしょう。
日本の家庭でも作られる「梅酒」や「ゆず酒」、「杏酒」なども、このジャンルに分類されます。
なお、フルーツは同じものでも国や地域によって呼び名が異なります。
以下、日本語/英語/フランス語の順で、
◇木イチゴ/ラズベリー/フランボワーズ
◇黒スグリ/ブラックカラント/カシス
◇イチゴ/ストロベリー/フレーズ
◇桃/ピーチ/ペシェ
◇リンゴ/アップル/ポム
◇パイナップル/パイナップル/アナナス
など。
生産国によってリキュール名も変わってくるので参考にしてください。
リキュールの種類③|ナッツ・核・種子系(ナッツ・ビーンズ系)

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ヘーゼルナッツやマカダミアナッツ、くるみなどのナッツ類、果物の種子や種の核(カーネル)、コーヒー豆やカカオ豆などの香味成分を抽出したリキュールです。濃厚な風味と芳醇な甘味が特徴で、飲むスイーツのようにたのしめるのも魅力です。
ナッツ・核・種子系(ナッツ・ビーンズ系)の代表的なリキュールには、コーヒーリキュールの代名詞的存在「カルーア」や、杏(アプリコット)の核を使ったアーモンド風味の「アマレット」などがあります。
カカオ豆を原料としたカカオリキュールやチョコレートリキュール、ヘーゼルナッツを原料としたリキュールなどは、エスプレッソに少量加えてフレーバーコーヒーにしたり、アイスクリームにかけたりするたのしみ方も人気です。
リキュールの種類④|特殊系

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①②③のどのカテゴリにもあてはまらないタイプ、たとえば濃厚なクリームや、卵、ヨーグルトを使ったリキュールなどは、このカテゴリに分類されます。
特殊系の代表的なリキュールには、アイリッシュウイスキーにフレッシュクリームやカカオ、バニラなどを加えた「ベイリーズ」、ブランデーに卵黄や卵白、砂糖や蜂蜜などを加えた「アドヴォカート」などがあります。ヨーグルトのやさしいコクと甘味、ほのかな酸味を生かしたヨーグルトリキュールも人気です。
リキュールとカクテルの関係

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リキュールのおいしい飲み方
リキュールはカクテルに欠かせない存在です。多くの場合リキュールは、ウォッカやラム(ラム酒)、ジン、テキーラ、ウイスキー、ブランデーなどベースとなるお酒に色や風味、適度な甘さを加えるために使われます。
カクテルに鮮やかな彩りや深みのある味わい、心地よい香りやテイストを与えてくれるリキュール。カクテルの副材料として大活躍するリキュールですが、なかには「カンパリソーダ」や「カルーアミルク」、ベイリーズを使った「B-52」など、リキュールそのものが主役となるカクテルもあります。

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1本あれば多彩なたのしみ方ができること。それもリキュールの大きな魅力です。
ストレートやロック、炭酸割りなど
たとえばリキュールを初めて試してみるとき、また新しい銘柄にチャレンジしてみるときなどは、最初のひと口をぜひストレートで味わってみてください。
香草系ならどんなハーブのエレメントが感じられるのか、フルーツ系なら香りや味わいがどれくらいリアルでフレッシュなのか、ナッツ系ならそのコクやまろやかさがどんなふうに広がっていくのか。まずはほんの少し口に含んでみるだけでも、それぞれのリキュールがもつ個性を鮮烈に感じられるはずです。
リキュールにはアルコール度数の高いものもあるので、ストレートで味わうときは小ぶりなグラスで。水などのチェイサーをはさみつつ、少量ずつゆっくり堪能してください。
ストレートではリキュールのアルコールが強すぎると感じられるときは、たっぷりの氷でオン・ザ・ロックに。水や炭酸、トニックウォーターで割ったり、紅茶やコーヒーに少量垂らしたりするのもおすすめです。

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イチオシはカクテル!
リキュールはさまざまなたのしみ方ができるお酒ですが、人気の飲み方はやはりカクテル。ジャンルごと、銘柄ごとに個性豊かなフレーバーが表現されたリキュールは、好きなフルーツジュースや炭酸飲料を合わせるだけで、かんたんにおいしいカクテルができあがります。
たとえばオレンジジュースというシンプルな割り材ひとつとっても、ピーチリキュールを合わせれば「ファジーネーブル」、カシスリキュールで「カシスオレンジ」、カンパリなら「カンパリオレンジ」など、セレクトするリキュールによって表情の異なるカクテルに。
紅茶リキュールにレモンスカッシュ、メロン風味やチョコレート風味のリキュールにミルク、ハーブ系のリキュールにコーラなど、リキュールのフレーバーそのものと相性の良さそうな割り材を考えてマッチングさせるのもたのしそうです。
もちろん、ほかのお酒と合わせて本格的なカクテルに仕上げるのもおすすめ。ベースとなるスピリッツにリキュールや果汁などを加えて仕上げるスタンダードなカクテルには「マルガリータ」「XYZ」「グラスホッパー」「ゴッドファーザー」「サイドカー」「ブルームーン」「アレキサンダー」「雪国」などがあります。
リキュールは、アイスクリームやかき氷にかけるシロップとして使ったり、ケーキやゼリー、ムースなどスイーツの風味づけに使ったりすることもできます。個性豊かなリキュールをいろいろなシーンでたのしんでみてくださいね。
