蒸溜酒とは? 蒸溜酒の特徴や製法、アルコール度数、種類まで、わかりやすく解説!

蒸溜酒とは? 蒸溜酒の特徴や製法、アルコール度数、種類まで、わかりやすく解説!
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蒸溜酒とは、一言でいうと蒸溜機で抽出したアルコール度数の高いお酒のこと。英語では「スピリッツ」とも呼ばれ、世界各地で多種多様な蒸溜酒が造られています。今回は蒸溜酒の特徴や製法、アルコール度数、種類とそれぞれの特徴を解説します。

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日本をはじめ世界の蒸溜酒について、網羅的に紹介していきます。

蒸溜酒(蒸留酒)は蒸溜で抽出されたアルコール度数の高いお酒

蒸溜機で抽出した蒸溜酒

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蒸溜酒とはどんなお酒なのか、お酒の分類から日本での扱いまで、基本的な情報をおさらいします。

お酒には「蒸溜酒」「醸造酒」「混成酒」の製法がある

お酒は、製造方法によって「蒸溜酒」「醸造酒」「混成酒」の3つに大きく分類されます。

蒸溜酒

「スピリッツ(spirits)」とも呼ばれる蒸溜酒は、蒸溜機で醸造酒(発酵液)を加熱してアルコールを気化させ、気化したアルコールを冷却し、アルコール蒸溜液を抽出して造るアルコール度数の高いお酒。市販の蒸溜酒のアルコール度数は20~60%程度が一般的です。蒸溜酒は世界中で造られていて、産地によって多種多様な蒸溜酒が存在します。代表的な蒸溜酒は、焼酎やウイスキー、ブランデー、ジン、ラム、ウォッカ、テキーラなど。

醸造酒

醸造酒は、穀物や果実などの原料を酵母で発酵させて造るお酒です。アルコール度数は3~20%前後と、蒸溜酒よりも低めなのが特徴。代表的な醸造酒には、ビールやワイン、日本酒などがあります。

混成酒

混成酒は、醸造酒や蒸溜酒に、糖分や果実などを加えて造るお酒。代表的な混成酒としては、リキュールやベルモット、梅酒、みりんなどが挙げられます。

蒸溜酒はアルコール度数が高い

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日本の酒税法による分類は、製法による分類と違う

国によって、蒸溜酒などのお酒の定義や分類(区分)は異なります。

蒸溜酒は6種類

蒸溜酒全般をスピリッツと呼ぶことがありますが、日本の酒税法では、蒸溜酒を以下のように定義しています。

蒸留酒類 次に掲げる酒類(その他の発泡性酒類を除く。)をいう。
イ 連続式蒸留焼酎
ロ 単式蒸留焼酎
ハ ウイスキー
ニ ブランデー
ホ 原料用アルコール
ヘ スピリッツ

出典 https://elaws.e-gov.go.jp

酒税法|第三条5号より

世界では一般的に、焼酎やウイスキー、ブランデーも含めて蒸溜酒(=スピリッツ)と捉えられていますが、日本の酒税法上は、ウォッカやラム、ジン、テキーラなどを「スピリッツ」と呼び、焼酎やウイスキー、ブランデーは別々に分類されているのが特徴です。

また、世界では、アルコール度数の規定が厳格に定められていますが、日本では焼酎以外は規定がありません。

日本の酒税法におけるスピリッツは「そのほか」的な定義

ちなみに、スピリッツについては、以下のように定義されています。

第七号から前号までに掲げる酒類以外の酒類でエキス分が二度未満のものをいう。

出典 https://elaws.e-gov.go.jp

酒税法|第三条20号より

補足すると、以下に該当しない「エキス分が2%未満の酒類」ということになります。
◇清酒
◇合成清酒
◇連続式蒸留焼酎
◇単式蒸留焼酎
◇みりん
◇ビール
◇果実酒
◇甘味果実酒
◇ウイスキー
◇ブランデー
◇原料用アルコール
◇発泡酒
◇その他の醸造酒(穀類、糖類その他の物品を原料として発酵させた酒類で、アルコール分が20度未満のもの)

スピリッツについては、なかば消去法的に定義づけられていることも日本の分類の特徴です。

なお、酒税法におけるエキス分とは、酒類を加熱・蒸発させて、100ミリリットル中に残った成分のグラム数(含有量)のことを指し、その大部分は糖分となっています。

(参考資料)
e-gov 法令検索「昭和二十八年法律第六号 酒税法(施行日:令和四年六月十七日)」
国税庁|法令解釈通達|第3条 その他の用語の定義

「蒸溜酒」造りに欠かせない蒸溜とはどんな技術?

蒸溜酒作りに欠かせない蒸溜機

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蒸溜酒を造るのに必要な蒸溜技術について、かんたんに紹介します。

蒸溜の歴史は香油やスパイスの精製から始まった

蒸溜技術自体は、紀元前3500年ごろのメソポタミアで生まれたといわれています。その目的は、香油やスパイスを精製するためでした。蒸溜酒の起源については定かではありませんが、紀元前800~750年ごろのインドやエチオピア付近で、蒸溜したお酒が造られていたといわれています。その後、蒸溜技術は錬金術とともに広がり、世界各地で蒸溜酒が製造されるようになりました。

蒸溜技術は古くから存在

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蒸溜方法は「単式蒸溜」「連続式蒸溜」の2種類に大別できる

蒸溜とは、アルコールと水の沸点差を利用して、より純度の高いアルコールを得る技術。前述したとおり、蒸溜機で発酵液を加熱してアルコールを気化させ、気化したアルコールを冷却することで、アルコール度数の高い蒸溜液を抽出できます。

蒸溜方法には、「単式蒸溜」と「連続式蒸溜」の2種類があり、それぞれで蒸溜の仕組みが異なります。

伝統的な蒸溜方法の単式蒸溜では、1回ずつ蒸溜するタイプの単式蒸溜機を使います。単式蒸溜で得た液体には、原料由来の風味が残りやすいのが特徴です。

比較的新しい技術の連続式蒸溜では、連続的に蒸溜するタイプの連続式蒸溜機を使います。蒸溜が繰り返されることで、単式蒸溜で得た液体よりもアルコール度数が高くなり、雑味のないピュアな酒質に仕上がるのが特徴です。

なお、連続式蒸溜は醸造アルコールや工業用アルコールの製造にも使われています。

蒸溜酒の特徴は、アルコール度数と保存性の高さにあり

蒸溜酒は保存性が高い

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蒸溜酒はアルコール度数が高く、菌が繁殖しにくいので、保存性も高いのが特徴です。蒸溜酒は全般的に、直射日光の当たらない涼しい暗所で保管していれば、開封後も比較的長くたのしめます。
アルコール度数の高さから、水や炭酸などで薄めて飲むケースも多く、飲み方のバリエーションも豊富です。ストレートや水割り、ソーダ割りなど幅広い飲み方でたのしめるのも魅力といえます。もちろん、カクテルベースとしても重宝します。

また蒸溜する際に糖分などが取り除かれるため、糖質やプリン体はゼロで、醸造酒と比べるとカロリーが低めなものが多いのも特徴です。

おもな蒸溜酒の種類や原料、特徴を紹介

世界には多種多様な蒸溜酒があります。おもな蒸溜酒の種類と、それぞれの原料や特徴などを紹介します。

焼酎

焼酎

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焼酎は日本の代表的な蒸溜酒。蒸溜方法の違いにより、「単式蒸溜焼酎」と「連続式蒸溜焼酎」に分類されます。

米や麦、芋、そば、黒糖などを原料に、昔ながらの単式蒸溜機で造る焼酎は「乙類焼酎(本格焼酎)」とも呼ばれます。本格焼酎は原料の種類や製法によって米焼酎、麦焼酎、芋焼酎、泡盛などに分類され、原料由来の豊かな風味をたのしめるのが特徴です。

一方、糖蜜などをおもな原料とした連続式蒸溜機で造る焼酎は「甲類焼酎」とも呼ばれます。雑味のないピュアな味わいが特徴で、柑橘の果汁などで割ったチューハイなどの飲み方で親しまれています。

なお、両者を混ぜたものを「混和焼酎」と呼びます。

焼酎のアルコール度数は酒税法により、単式蒸溜焼酎は45%以下、連続式蒸溜焼酎は36%未満と定められています。混和焼酎も36%未満で造られます。

ウイスキー

ウイスキー

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ウイスキーは大麦などの穀物を原料とした蒸溜酒。特有の琥珀色や香味は、木樽に詰めて長期熟成させることで育まれます。ウイスキーの原酒は、大麦麦芽を原料としたモルトウイスキーと、トウモロコシやライ麦、小麦などを原料としたグレーンウイスキーの2種類に大別され、ブレンダーが原酒をブレンドすることで多彩なウイスキーが造られています。アルコール度数は40~43%前後が一般的。

ウイスキーは世界各地で造られていますが、スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、日本のウイスキーは、「世界5大ウイスキー」と呼ばれます。

ブランデー

ブランデーはフランス産が有名

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ブランデーはブドウなどの果実を原料とした蒸溜酒。ウイスキーと同じように木樽で貯蔵・熟成することで、琥珀色が生まれます。

一般にブランデーといえばブドウで造られたものを指し、リンゴやサクランボなどブドウ以外で造られたものはフルーツブランデーとも呼ばれます。

ブランデーは世界各地で造られていますが、産地としてはフランスが有名。アルコール度数は40度程度のものが多く、芳醇な香りに特徴があります。ブランデーのなかでも、「コニャック」「アルマニャック」「カルヴァドス」は、「世界3大ブランデー」と称されています。

なお、ブドウで造られるブランデーはコニャックやアルマニャック以外にも世界各地で造られています。

ワインを造る際にできるブドウの搾りかすを原料にして造るフランスの「マール」やイタリアの「グラッパ」、スペインの「オルホ(オルーホ)」、A.O.Cワイン残留物や規格外のワインやブドウで造るフランスの「フィーヌ」、ブドウの発酵液を単式蒸溜器で一度だけ蒸溜するペルーの「ピスコ」などがあります。

ウォッカ(ウオツカ)

ロシアやポーランド原産のウォッカ

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ウォッカは、ロシアやポーランドなどを原産とする蒸溜酒で、世界4大スピリッツのひとつに数えられます。原料は、トウモロコシや大麦、小麦、ライ麦などの穀類や、ジャガイモなどの芋類で、無味無臭のクリアな味わいが特徴です。アルコール度数は40%前後のものが一般的ですが、なかには「スピリタス」のように90%を超えるものもあります。

おもに「モスコミュール」や「スクリュードライバー」などのカクテルのベースとして親しまれています。

ラム(ラム酒)

ラム酒

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世界4大スピリッツに数えられるラムは、キューバやプエルトリコ、ジャマイカなどカリブ海周辺の代表的な蒸溜酒のひとつ。風味の違いで「ホワイトラム」「ゴールドラム」「ダークラム」の3つに分けられるほか、色の違いで「ライトラム」「ミディアムラム」「ヘビーラム」に分類されます。

原料はサトウキビで、甘い香りが特徴。アルコール度数は44〜45%程度のものがスタンダードです。「ピニャコラーダ」や「モヒート」などのカクテルで飲まれるほか、内側を焦がした木樽で3年以上熟成させたダークラムなどは、スイーツの風味づけにも使われます。

ジン

伝統的なジンもクラフトジンも人気

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ジンは、トウモロコシやライ麦などの穀物で造った蒸溜酒に、「ボタニカル」と呼ばれる杜松(ねず)の実(ジュニパーベリー)をはじめとした香草・薬草などで風味づけしたお酒。ボタニカル由来のさわやかな香りと、すっきりとした味わいが特徴で、アルコール度数は40~50%程度です。

ジンも世界4大スピリッツのひとつに数えられ、オランダやイギリスのほか、ドイツや日本など世界中で造られています。近年は各地で「クラフトジン」と呼ばれる製法や原料などにこだわったジンも造られていて、ブームとなっています。日本では、山椒や柚子など和素材を用いたクラフトジンも人気です。

テキーラ

メキシコ原産のテキーラ

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テキーラはメキシコ原産の蒸溜酒で、世界4大スピリッツのひとつ。シャンパンなどのように原産地呼称が認められていて、メキシコの指定5州(ハリスコ州、グアナファト州、タマウリパス州、ナヤリ州、ミチョアカン州)で造られたものだけがテキーラと名乗れます。

原料は、パイナップルの形に似た「アガヴェ・アスール・テキラーナ・ウェーバー(ブルーアガヴェ)」と呼ばれる竜舌蘭(りゅうぜつらん)の一種。100%アガヴェで造られるものと、廃糖蜜などを加えたミックスの2種類のテキーラに分けられます。

アルコール度数は規定により35~55%と決められていて、味わいは熟成度によりアガヴェ本来の風味を感じられるものから円熟したものまでさまざまです。

白酒(パイチュウ/バイジュウ)

中国の伝統酒白酒

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白酒は中国の伝統的な蒸溜酒のひとつで、宴席などに欠かせないポピュラーなお酒です。原料は高粱(コーリャン)をはじめ、トウモロコシや黍(キビ)、小麦、豆類、ジャガイモ、サツマイモなどの穀物で、色は無色透明。一般的にアルコール度数は50%以上ですが、近年は低度酒と呼ばれる38%程度の商品も販売されています。

中国各地で造られている白酒は、産地によって原料や製法が異なり、その土地特有の多種多様なタイプがあるのが特徴。香りや味わいもそれぞれ違うので、飲み比べて好みのタイプを見つけるたのしみもあります。

その他の蒸溜酒

蒸溜酒にはまだまだ種類があります。

カシャッサ(ビンガ)

ブラジルの蒸溜酒「カシャッサ」は、ラムと同じようにサトウキビを原料に造られます。日本ではまだあまり知られていませんが、ブラジルでは国民的なお酒として愛されています。

ソジュ

韓国(朝鮮半島)の蒸溜酒「ソジュ」は、韓国焼酎とも呼ばれるもので、日本の焼酎にあたります。韓国の伝統的なお酒として韓国料理とともに幅広い人に親しまれていて、日本でも「チャミスル」などの製品が流通しています。

このほかにも、北欧を代表するジャガイモを主原料とした「アクアビット(アクアヴィット)」や、中東などで飲まれているココナッツなどが原料の「アラック」、穀物で造られるドイツの「コルン」など世界各地でさまざまな蒸溜酒が造られています。

蒸溜酒は単式蒸溜や連続式蒸溜で造るアルコール度数の高いお酒。世界にはバラエティーに富んだ蒸溜酒があり、それぞれの国や地域を超えて愛飲されているものもたくさんあります。それぞれ試してみて、お気に入りを見つけてみてくださいね。

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