焼酎選びのポイントからおいしい飲み方まで、水割り焼酎をたのしむテクを伝授
水割り焼酎は、適度なアルコール度数で焼酎の風味をたのしめる万人向けの飲み方。氷を用意して水で割るだけと作り方は簡単ですが、水の量や硬度、焼酎の銘柄などによって味わいは変化します。ここでは、水割りに合う焼酎選びのポイントや作り方のコツを紹介します。
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水割り焼酎の魅力と、水割りに合う焼酎選びのポイント
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焼酎の水割りの魅力を大解剖
焼酎は多彩な飲み方がたのしめるお酒。ストレートやロック、水割り、お湯割り、ハイボールといった定番の割り方のほかにも、お茶割りやソーダ割り、ジュース割り、ホッピー割りなど幅広い飲み方で親しまれています。
数ある飲み方のなかでも、初心者から上級者まで幅広い層に愛されているのが水割り焼酎。自宅でも簡単に作れるうえ、自由にアルコール度数を調整できるのが魅力です。
水割り焼酎は水で割って作るので、ストレートやロックに比べるとマイルドな飲み口になりますが、焼酎そのものの風味もしっかりたのしめます。
水割りに合う焼酎の種類とは?
もちろん、人それぞれ味覚や嗜好が異なりますから「飲み方は自由に!」が大前提として、焼酎は原料や製法によって大きく本格焼酎(乙類焼酎)・甲類焼酎・混和焼酎に分類されます。水割りに合う焼酎の種類を選ぶなら、原料の魅力が生きた本格焼酎(乙類焼酎)や、乙類と甲類をブレンドして造られる混和焼酎が向いているでしょう。これらの焼酎を水で割ることで、アルコール感がやわらぎ、原料由来のやさしい魅力を満喫できます。
なお、すっきりクリアな味わいが魅力の甲類焼酎は、好みにもよりますが、水よりもお茶やジュース、ホッピーやハイサワーなどの割り材が適しているかもしれません。
水割りにおすすめ! 本格焼酎の代表格「芋焼酎・麦焼酎・米焼酎」の特徴
焼酎は多彩な種類の原料で造られる焼酎ですが、ここでは本格焼酎を代表する芋焼酎・麦焼酎・米焼酎の特徴を見ていきましょう。
【芋焼酎】
芋焼酎は、サツマイモを主原料とした本格焼酎。その魅力の筆頭に挙げられるのが、原料由来の素朴な甘さと香りです。芋特有の臭いについては賛否両論があるようですが、原料芋の品種改良や製法の研究が進んだ近年では、芋由来のやさしい甘さを生かしつつ、芋臭さを抑えたクセの少ない銘柄や、さわやかでフルーティーな香りを引き出した芋焼酎が続々と登場しています。これにより、ワインや日本酒、カクテルなど、焼酎以外のお酒を好んできた層にもファンが広がっているようです。
銘柄選びの目安のひとつに黒麹や白麹、黄麹といった麹の種類がありますが、濃厚な香味と深いコク、キレのよさが特徴の黒麹は、どちらかというとロックやお湯割り向き。水割りならではの魅力を堪能するなら、白麹や黄麹がおすすめです。芋臭さを抑えたマイルドな味わいを好む人は白麹仕込みのものを、フルーティーな香りをたのしみたい人は黄麹を使用したものを選ぶとよいでしょう。
【麦焼酎】
麦焼酎は、麦を主原料とした本格焼酎。おもに麦焼酎発祥の地である長崎県壱岐市と第二次焼酎ブームを牽引した大分県で生産されています。
壱岐で造られているのは、麦と米麹で造られる「壱岐焼酎」。麦の香りと米由来の甘味が特徴の産地呼称ブランドです。一方、大分県ではおもに麦と麦麹で造る全量麦焼酎が造られています。麦100%の麦焼酎は雑味が少なく、すっきりした味わいが魅力です。
なかには麦チョコのような香ばしさを持つ個性派も存在しますが、比較的クセがなく飲みやすい銘柄が多い麦焼酎は、焼酎の初心者にもおすすめ。水割りにすれば、さらにやわらかでマイルドな飲み心地を堪能できるでしょう。
【米焼酎】
米焼酎は、米と米麹から造られる本格焼酎です。おもな産地は熊本県。なかでも人吉球磨地方で造られている「球磨焼酎」は、「壱岐焼酎」と同様に地理的表示が認められています。また米焼酎には、粕取り焼酎と呼ばれる酒粕から造られるタイプもあります。こちらは、個性が強く日本酒のような風味をたのしめるものが多いようです。
初心者でも飲みやすいといわれる米焼酎の魅力といえば、米の旨味や甘味、フルーティーな香りが挙げられますが、特筆すべきは料理との相性。肉や魚、野菜料理や豆腐料理など、どんな料理ともマッチします。もちろん米焼酎の水割りも食中酒におすすめです。やわらかい米の風味とほどよいアルコール感の水割り焼酎が、料理の味を引き立てるはず。
水割り焼酎におすすめの焼酎銘柄をチェック
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水割りにおすすめの芋焼酎
芋焼酎の多くは水割りが合いますが、ここでは比較的入手しやすい人気の銘柄を紹介します。
【㐂六(きろく)】
自家培養した純粋酵母と黒麹を使い、木桶で丹念に仕込んだ個性豊かな芋焼酎。しっかりとした骨格を持つ味わいと芳醇な香りが特徴で、水割りにすると穀物の甘さや香ばしさなど豊かな風味をたのしめます。
製造元:株式会社黒木本店
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【木挽BLUE(こびきぶるー)】
宮崎県・雲海酒造の蔵のひとつ、「綾蔵」で造られる白麹仕込みの芋焼酎。南九州産の黄金千貫を原料に、独自の日向灘黒潮酵母と清冽な湧水で仕込んだ「木挽BLUE」は、すっきりキレのある甘味とさわやかな口当たりをたのしめる1本です。水割り焼酎にする場合、前もって水で割って味をなじませておくと、よりおいしくたのしめます。
製造元:雲海酒造株式会社
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【海(うみ)】
焼き芋に適しているといわれるベニオトメ(赤芋)と日本酒にも使われる黄麹を使い、低温発酵と減圧蒸溜で仕上げた初心者にもおすすめの芋焼酎。華やかなフルーティーさとすっきりとした味わいが特徴です。水割りにするなら、アルコール度数10度前後に調整するのがおすすめ。
製造元:大海酒造株式会社
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水割りにおすすめの麦焼酎
水割りは麦焼酎の定番の飲み方。ここでは風味の傾向別におすすめを紹介します。
【天の川】
食通で知られる芥川賞作家・開高健氏が愛した壱岐焼酎。麦の風味と米の甘味に加え、コクや旨味も堪能できる1本です。壱岐産の米で造ったやわらかな甘味の「天の川 壱岐づくし」のほか、2年貯蔵の「天の川」をさらに樫樽で熟成させた「天の川 金印」もおすすめです。原料由来の風味をしっかり感じられる焼酎なので、水割りにしても豊かな香味を満喫できます。氷を入れず、水だけで割って飲むのもおすすめです。
製造元:天の川酒造株式会社
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【いいちこ】
厳選した麦と麦麹、良質な天然水だけで造られた「いいちこ」は、「下町のナポレオン」のキャッチフレーズでお馴染みの麦焼酎。まろやかな味わいとフルーティーで上品な香り、コストパフォーマンスの高さで多くのファンを魅了し続けています。アルコール度数25度と20度の「いいちこ」がありますが、それぞれ造りが違うので、2つの水割りを飲み比べてみてはいかがでしょう。
製造元:三和酒類株式会社
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いいちこ25度
いいちこ20度
【完全焙煎麦焼酎 こふくろう】
原料にも麹にも焙煎した麦を使い、じっくり発酵。さらに常圧蒸溜で麦チョコのような香ばしさを引き出した、通好みの逸品。焙煎の奥深い魅力を堪能したい人にはロックがおすすめですが、水割りやお湯割りにするとロックとは違った麦の焙煎の香りをたのしめます。
製造元:製造元:研醸株式会社
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水割りにおすすめの米焼酎
料理のお供に水割りでたのしみたいおすすめの米焼酎を紹介します。
【白岳(はくたけ) しろ』
気軽に飲める球磨焼酎として注目を集めているのが「白岳 しろ」。人気の秘密は、上品な香りと軽やかな口当たり、すっきりとした飲みやすさにあります。もちろん、米の旨味も健在です。モンドセレクション2020金賞(7年連続)、インターナショナル・ハイクオリティー・トロフィーなど、受賞歴も多数。
白岳を水割りにすれば、口の中に広がる米のやさしい風味とやわらかな口当たりをたのしめます。
製造元:高橋酒造株式会社
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【吟香鳥飼(ぎんかとりかい)】
熊本県人吉市の老舗蔵が手掛ける華やかで上品な香りの米焼酎。
58%に磨かれた米で造った吟醸麹がもたらす香りは、トロピカルフルーツと表現されることもあります。米の甘味が生きた透明感ある味わいで、和食はもちろん、フレンチやイタリアンとも抜群のハーモニーを奏でます。水割り焼酎にすると、ストレートやロックとはひと味違う米の香りをたのしめるでしょう。
製造元:鳥飼酒造株式会社
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水割りでたのしみたい芋・麦・米以外の焼酎
芋・麦・米焼酎以外にも、水割りに合う焼酎は多数あります。
◇黒糖焼酎
サトウキビから造られる黒糖焼酎は、鹿児島県奄美群島の特産物。サトウキビ由来のすっきりとした甘味が特徴で、水割りにすると黒糖焼酎独特のコクやまろやかさが引き立ちます。
◇泡盛
琉球諸島で伝統的に造られてきた泡盛も、酒税法上は焼酎の一種。黒麹菌で造った米麹のみを原料に醸した個性豊かな蒸溜酒で、独特な香りと濃厚な味わいが特徴です。水割りは定番の飲み方で、泡盛そのものの味わいをたのしむことができます。
◇しそ焼酎
しそ特有のさわやかな香りがたのしめるしそ焼酎も、水割りにぴったり。その代表に挙げられるのが、北海道の合同酒精株式会社が手掛ける「鍛高譚」。香り高い赤しそを原料に造られるこのお酒は、水割りにすることで、やわらかな味わいが際立ちます。
「鍛高譚」の製造元:オエノングループ
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水割り焼酎をもっとおいしく!
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おいしい水割り焼酎の作り方
水割り焼酎は、焼酎を水で割るだけで作れますが、ちょっとした工夫でおいしさがぐんとアップします。まずは基本的な作り方から見ていきましょう。
(1)氷をいっぱいに入れてグラスを冷やします。グラスを冷蔵庫などで前もって冷やしておくと、さらにおいしくいただけます。
(2)氷の上から焼酎を注ぎ、よくかき混ぜます。分量はお好みで。
(3)必要があれば氷を足し、ゆっくりと好みの量の冷水を注ぎます。
(4)マドラーで軽くかき混ぜたら完成です。
水割りを作る際は、焼酎が先、水はあとから注ぐのが基本。なお、氷を入れずに常温の水で割るたのしみ方もあります。お好みで試してみてはいかがでしょう。
水割り焼酎をおいしくする焼酎と水の割合
焼酎の銘柄にもよりますが、一般に焼酎と水の黄金比といわれているのは、6:4の「ロクヨン」です。アルコール度数25%の焼酎でロクヨンの比率で割ると、できあがった水割り焼酎のアルコール度数は約15%。ストレートで飲むことの多い日本酒やワインの平均的な度数になり、飲みやすくなります。
アルコールに強くない人は、5:5の「ゴーゴー」や4:6の「ヨンロク」から慣らしていくとよいでしょう。
ここで紹介した比率はあくまで目安。飲むときの気分や体調、料理に合わせて好みの濃度に調整して、水割り焼酎の魅力を追求してみてください。
水割り焼酎をおいしくする要素をチェック
焼酎の銘柄はもちろん、水や氷にこだわることで、水割り焼酎のたのしみは広がります。
◇ミネラルウォーターにこだわる
焼酎の水割りをおいしく作るなら、水道水よりミネラルウォーターの使用がおすすめ。ミネラルウォーターには硬水と軟水がありますが、焼酎と相性がよいのはミネラルの含有量が少ない軟水といわれています。なお、日本の水は基本的に軟水ですが、取水地によって個性が異なるので、さまざまな種類で相性を試してみるのもよいかもしれません。
また、焼酎本来の味わいを堪能するなら、その銘柄の造り手が仕込み水や割り水に使用している水を使うのがよいといわれています。多くの焼酎蔵で公式サイトに明記しているので、可能ならば同じ水源、又は近くで採水されたミネラルウォーターを探してみるとよいでしょう。
◇市販の氷で水割り焼酎をもっとおいしく
氷は市販のものがベター。家庭の冷凍庫で作った氷よりも溶けにくいので、水割り焼酎のおいしさをゆったりとたのしむことができます。市販の氷には大小ありますが、なるべく大きめの塊を入れるのがおいしさアップのコツです。
「前割り」は水割り焼酎をもっとおいしくする魔法
水割り焼酎を劇的においしくするのが、あらかじめ焼酎を水で割って半日以上寝かせる「前割り」という手法。寝かせている間に焼酎と水が分子レベルでよく馴染み、飲む直前に加水する通常の水割りに比べて格段にまろやかに仕上がります。
前割りに使う容器は、ペットボトルや空き瓶で十分ですが、信楽焼など陶器のイオンボトルを使えば、遠赤外線効果で熟成が進み、さらにマイルドな味わいになるといわれています。なお、氷を入れて水割り焼酎をたのしみたい人は、少し濃いめに前割りしておくのがポイントです。
前割りすると、おいしさがアップするだけでなく、鼻にツンとくるアルコールの刺激もほどよく和らぐので、機会があったらぜひ試してみてくださいね。
水割り焼酎は、一年中焼酎の魅力を味わえるスタンダードな飲み方。夏はたっぷりの氷でキンキンに冷やして、冬は氷を入れずにたのしむなど、季節や気候に合わせて一工夫加えてみてはいかがでしょう。