黒糖焼酎の魅力とおすすめの銘柄6選
黒糖焼酎とは、その名のとおり、黒砂糖を原料とした焼酎のこと。鹿児島県の南海に浮かぶ奄美群島で造られる、甘い香りを特徴とした焼酎です。喜界島で最古の焼酎蔵元の「朝日」、徳之島の5つの黒糖焼酎の蔵元が独特の常圧蒸留で醸す「奄美」、樫樽熟成の「高倉」が代表的ですが、他にも個性あふれる銘柄を紹介します。
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黒糖焼酎の魅力は、サトウキビ由来のほんのりとした甘味
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黒糖焼酎の原料といえば、もちろん「黒糖」、すなわち「黒砂糖」です。では、黒砂糖は何から作られるか知っていますか? そう、サトウキビですね。
サトウキビは、成長すると草丈が3メートルにもなりますが、日本ではおもに沖縄や奄美群島で栽培されています。
このサトウキビの搾り汁を煮詰め、不純物を取り除いて固めたものが黒糖です。100キログラムのサトウキビから、約10キログラムの黒糖が作られるそうです。
黒糖は、コクのある甘味に加え、独特な旨味も感じられますが、おいしいだけでなく栄養素も豊富。ショ糖やブドウ糖、果糖といった糖分に加え、カリウムやカルシウムなどのミネラルやビタミンが豊富に含まれています。
また、黒糖はアルカリ性食品であり、黒糖を原料とした黒糖焼酎も弱アルカリ性のお酒です。健康維持にはアルカリ性食品が大切といわれていますが、黒糖や黒糖焼酎を口にする機会の多い沖縄や奄美群島が長寿の地として知られているのも、黒糖の効果かもしれませんね。
同じ黒糖を原料とする酒で有名なのが、カリブ海諸国で作られるスピリッツ「ラム」です。原料が同じなことから、黒糖焼酎が「和製ラム」と呼ばれることもありますが、じつはお酒の製造法で見れば、まったくの別物です。ラムは糖分を自然発酵させたものですが、黒糖焼酎は米麹を加えて発酵させることで、独特の風味を出しています。
焼酎は、その原料によって異なる香りや味わいをもつお酒です。個性的でフルーティな味と香りの「芋焼酎」、クセが少なく万人に愛される「麦焼酎」、米やそばという原材料の特色を生かした「米焼酎」や「そば焼酎」・・・こうした幅広い個性のなかでも、黒糖焼酎の位置づけは独特です。
焼酎独特の臭みがなく、サトウキビ由来のすっきりした甘味が感じられることから、数ある焼酎のなかでも比較的飲みやすいといわれています。
「焼酎は香りや味が独特でちょっと苦手」と思っている人にこそ、黒糖焼酎を試してほしいものです。
奄美諸島限定の焼酎とは?甘い香りの黒糖焼酎
黒糖焼酎を造っているのは奄美群島にある約30の蔵元だけ
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黒糖焼酎の産地は、サトウキビの産地でもある奄美群島。鹿児島県の南方、約380キロの海域には、喜界島、奄美大島、徳之島、沖永良部島、与論島の5島を中心に、美しい島々が点在しています。
青い海に囲まれた風光明媚なこの地では、諸説あるものの、16世紀の半ばには、すでに焼酎の製造技術が伝わっていたとされています。照りつける太陽のもとで大きく育ったサトウキビを原料に、島ごとにそれぞれ異なる個性をもった黒糖焼酎が造られています。
芋焼酎や米焼酎は、有名な産地以外にも、日本各地で造られています。しかし、黒糖焼酎に限っては、この奄美群島以外では製造が許されていません。その背景には、奄美群島の受難の歴史があります。
第二次世界大戦後、アメリカの占領下となった奄美群島では、米などの主要な食糧が不足したことから、主要な作物であるサトウキビを使った黒糖焼酎造りが盛んになりました。
ところが、1953年に日本に復帰することになると、その製造を続けることが危うくなります。
日本の酒税法では「糖類」を焼酎の原料として認めてないため、黒糖焼酎は「スピリッツ」に分類され、焼酎よりも高い酒税が課せられることになったからです。
これでは経済的負担が大き過ぎると訴えた結果、特例として「米麹を併用して仕込む」「奄美群島区の管轄区域内で製造する」ことを条件に、黒糖焼酎は焼酎として認められたのです。
こうした経緯から、現在でも、黒糖焼酎を造っているのは奄美群島にある約30の蔵元だけに限定されており、南国発の焼酎として、全国の焼酎ファンをたのしませているのです。
黒糖焼酎のおいしい飲み方
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黒糖焼酎はサトウキビを原料とするだけに、とても甘いお酒と勘違いされがちですが、決してそうではありません。黒糖焼酎に限らず、原料に含まれている糖分は、蒸留工程でエチルアルコールに変化します。このため、黒糖焼酎の糖度は0%になります。
では、黒糖焼酎のまろやかな甘さは、どこから来るのでしょうか? それは香りと味でそれぞれ由来が異なります。ほんのりとした甘やかな香りは、黒糖に含まれるさまざまな香味成分がアルコールと混ざり合って生み出されたもの。一方、コクのある甘味は、おもに発酵に使用する米麹に由来します。
黒糖焼酎の独特なコクとまろやかさをたのしみたいなら、まずはお湯割りで飲むのがおすすめです。人肌より少し熱いくらいの温度で口に含むと、よりふくよかになった味と香りを堪能できます。
強いお酒は苦手という人や、甘系が好きだという人には、黒糖牛乳を牛乳で割って、少し砂糖を加える飲み方をおすすめします。焼酎臭さが抜けてよりマイルドな味わいになり、とても飲みやすくなります。