【単独取材】「YEBISU BREWERY TOKYO」 ヱビスビールの進化とあくなきチャレンジとは

【単独取材】「YEBISU BREWERY TOKYO」 ヱビスビールの進化とあくなきチャレンジとは

2024年4月3日「YEBISU BREWERY TOKYO(ヱビス ブルワリー トウキョウ)」が、ヱビスビール発祥の地である渋谷区恵比寿にオープン。醸造施設を伴ったブランド体験拠点の紹介とともに、醸造責任者の有友亮太さん、ブランドマネージャー沖井尊子さんに進化を続けるヱビスビールの魅力と挑戦について伺いました。

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35年ぶりに恵比寿の地でビール醸造を再開

サッポロビールの前身の日本麦酒醸造会社が、恵比寿の地で、ヱビスビールのルーツである「恵比寿ビール」の製造・販売を開始したのが1890年。
その後、約100年後までビールの製造が続きましたが、1988年に工場の移転に伴い、一旦ビール製造の幕を下ろしました。

工場の跡地は再開発事業が計画され、1994年に複合都市のパイオニアと言われる「恵比寿ガーデンプレイス」が誕生。
敷地内に「ヱビスビール記念館」が建てられ、多くのビールファンに愛され続けましたが、2022年秋に休館。
改装工事を経て、2024年の春、「YEBISU BREWERY TOKYO(ヱビス ブルワリー トウキョウ)」として 生まれ変わりました。

YEBISU BREWERY TOKYO(ヱビス ブルワリー トウキョウ)の醸造窯

施設内の中央で一際目を引くドイツ製の醸造釜。35年ぶりに恵比寿の地でビール醸造を再開。

広々とした施設内は、「恵比寿」の街の由来となった「ヱビスビール」のルーツについて写真や映像で知ることができる「ミュージアムエリア」や、ドイツ製の大きな醸造釜が並び、実際のビール醸造の様子を眺められる「ブルワリーエリア」、最大で6種類のビールを味わえる「タップルームエリア」の3つに分けられ、ヱビスビールをさまざまな角度から堪能できます。

YEBISU BREWERY TOKYO(ヱビス ブルワリー トウキョウ)のミュージアムエリア

これまでの歩みをパネルで紹介する「ミュージアムエリア」。

YEBISU BREWERY TOKYO(ヱビス ブルワリー トウキョウ)のタップルームエリア

「タップルームエリア」では、通年で提供するビールのほか、期間限定や数量限定の貴重なビールまで最大で6アイテムを用意。

YEBISU BREWERY TOKYO(ヱビス ブルワリー トウキョウ)のタップルームエリアの客席

約100名の収容が可能。落ち着いてビールを味わえます。

初代醸造責任者に就任した有友亮太氏

新たに誕生した「YEBISU BREWERY TOKYO」の醸造責任者に就任したのは、Chief Experience Brewer(チーフ エクスペリエンス ブリュワー)有友亮太さん。
2012年にサッポロビールに入社後、北海道工場で製造を担当し、その後、酒類技術研究所を経てドイツへ留学。
サッポロビール内でも限られた人しか持たない「ブリューマスター」の資格を取得。帰国後、商品開発や研究をされるなど、ヱビスビールには欠かせない一人です。

(有友さん)入社して最初の4年間、北海道の恵庭工場でビール製造を担当しました。
1年目の研修の時、小さなタンクで最後まで一人でビールの仕込みをしたのですが、その時に、ビール造りの面白さや達成感、そして、飲んでもらった時の「おいしい」という言葉がとてもうれしかったことから、ビール造りの魅力に引き込まれました。
次第に、「ビールの本場のドイツで、改めて基礎からビール造りを学びたい」という思いが強く芽生え、その後、酒類技術研究所(現価値フロンティア研究所)への異動を経て、ドイツへ留学しました。

「YEBISU BREWERY TOKYO」の醸造責任者 有友亮太さん

北海道工場、研究所を経てドイツへ。ドイツ語は独学で習得。

ドイツ留学で身につけた感性を活かして

留学中は、さまざまな国の仲間たちとの交流や食や文化に触れ、すべてのことが刺激的で学びになったと語る有友さん。現在の仕事に役立つ大きな影響を受けたと語ります。

(有友さん)留学先では約20カ国の仲間と一緒に学んでいたので、それまで知らなかったいろいろな国の文化を知りました。それぞれの国のスタンダードビールの話もとても興味深くて、「ビールって本当にたくさんの種類があるんだな」とあらためて考えさせられました。

数多くのクラフトビールを味わう機会にも恵まれて、味や製法だけでなく、歴史や背景も含めたビールという商品の存在そのものを多面的に解釈するようになりました。
人や文化やビールを通して多くの刺激を受けましたが、「多様性を受け入れる」「アイデアを懐深く受け取る」という感覚が培われ、ビールの味の方向性や配合を決めるレシピ開発のほか、ヱビスブランドのマーケティングや商品開発など、幅広い分野の仕事をさせてもらっている今に活かされているなと感じています。

「YEBISU BREWERY TOKYO」の醸造責任者 有友亮太さんの持つ「ブリューマスター」の資格

ドイツ留学中に「ブリューマスター」の資格を取得。

「ブリュワーズルーム」でお客様との交流を

オープンした施設内には、ブルワリーエリアに「マスターブリュワーズルーム」が配置され、来場のタイミングによっては有友さんがブース内にてお客様を迎えてくれることもあるそう。
Chief Experience Brewer(醸造責任者)と会話ができるたのしみも、新施設の魅力の一つです。

(有友さん)ビールを製造している現場のチェックもあるので、ブルワリーエリアにはよく立ち寄りますが、お客様と直接会話ができるブリュワーズルームで、来場されたみなさんと交流できるようにブースを配置しました。
あまりビールに馴染みのない方でも気軽に質問をしてもらいたいですし、飲んだビールの感想をいただいたり、飲んでみたいビールをヒアリングして商品開発につなげるなど、ラボ的な位置付けにしていきたいと考えています。

YEBISU BREWERY TOKYO(ヱビス ブルワリー トウキョウ)のブリュワーズルーム

「できるかぎり顔を出したいと思っています。お客様とのビールを通した会話がたのしみです」(有友さん)

ヱビスビールの物語を皆さまへ ブランドマネージャー沖井尊子さん

プレミアムビールの先駆けとして知られ、安定した味わいと唯一無二の存在感が幅広く支持されているヱビスビール。
長い歴史のなか、歩みを止めることなく数々の挑戦を続ける姿が魅力の一つと話すのはブランドマネージャーの沖井尊子さん。
2011年の入社後、長野支社を経てビール全般の商品企画・開発の部署へ。2019年からヱビスビールの商品ブランディングや広告戦略を担当。2020年にブランドマネージャーに就任しました。

(沖井さん)プレミアムなビールとして親しまれているヱビスビールですが、ブランド担当になり、改めて歴史を振り返ると、100年以上前から、より魅力を高めるために先人の方々がさまざまな挑戦を続けてきた思いに触れ、また、いくつもの物語があるのを知りました。
今年で誕生から134年になります。より多くのお客様に、これまでのヱビスビールの歩みや深い魅力をお伝えしたいと思っていましたが、「YEBISU BREWERY TOKYO」の開業で、その思いが一つの形になりました。

 ブランドマネージャー沖井尊子さん

「人を笑顔にできるお酒って素敵だな」との思いからサッポロビールに入社されたと話す沖井さん。
「数々のブランドストーリーを皆さんに知っていただきたいです」。

新たなビールの魅力に挑んだ新ライン「CREATIVE BREW」

歴史あるブランドでありながらも、従来のビールの概念にとらわれない挑戦を続けるヱビスビールは、新たなおいしさやたのしさを追求し、さらなる魅力を発信し続けています。

(沖井さん)100年培ってきた技術と知見を活かしながら、もっと独創的なアイデアで新しいビールを提案していこうという試みで2023年から「CREATIVE BREW」をリリースしています。有友さんに商品開発を担当してもらっていますが、今春発売の「ヱビス ジューシーエール」で第4弾になるシリーズです。

(有友さん)第1弾「ヱビス ニューオリジン」第2弾「ヱビス オランジェ」第3弾「ヱビス シトラスブラン」と、それぞれテーマをもとに開発してきました。今回の「ヱビス ジューシーエール」のお題は高級菓子の「ジュレ」。なかなか難しいテーマを与えられてしまいました(笑)。

2024年4月23日に数量限定で発売CREATIVE BREW ヱビス ジューシーエール

「CREATIVE BREW ヱビス ジューシーエール」
CREATIVE BREW ヱビス ジューシーエールは2024年4月23日に数量限定で発売されます。

(有友さん)商品を開発する時、いつも最初に「お客様にどういうシーンでおいしいと言ってもらいたいか」を考えています。味わってもらって初めてビールとして完成すると思うんです。そして、「おいしい」と思ってもらうポイントをどう味で表現するか。
今回は、テーマの「ジュレ」のジューシーさや果汁感をビールで表現するのに、酸味や苦味の出し方を工夫しました。
初夏に飲んでいただく商品なので、果実味で爽やかさを感じてもらいたいと思い、ヱビスブランドでは初めて「グレープフルーツ果汁」を使用しましたが、果汁とホップの苦味のバランスを考えて、ホップもかなり厳選しました。

(沖井さん)開発中は果汁の選別や配合のバランスなど試行錯誤がありましたが、ヱビスらしい豊かなおいしさに仕上げてくれました。
有友さんには毎回、プレミアムビールらしい上質なおいしいさを、テーマに沿って上手に表現してもらっています。

醸造責任者の有友亮太さんとブランドマネージャーの沖井尊子さん

「コンセプトやパッケージデザイン、レシピ開発や製造まで、ヱビスが商品化するまでのすべてに携わる有友さんはとても頼りになる存在です。」(沖井さん)

恵比寿の街とともに歩み続けるヱビスビール

都内でも屈指の人気エリアの恵比寿。街の名称は、1899年(明治32年)にヱビスビールの工場からビールを輸送するための貨物駅「恵比寿停車場」が開設され、その後1906年(明治39年)に旅客用の恵比寿駅が設置されたことが由来。街の歴史と発展に大きく関わってきたヱビスビールは、恵比寿の地で再びビールの醸造を開始します。

(有友さん)ヱビスビールが生まれたから「恵比寿」という街ができたのは世界的にみてとても珍しいケースだと思います。地名がビール名になっていることはあっても、逆はないですよね。それくらい、街との関わりが深く、この街だから生まれた味わいがあります。
ヱビスビールを飲むことで、さまざまな背景や奥行きのある商品を感じられるなど、みなさんにたくさんの気づきを得てもらえるような場所でありたいですし、また、ここを出発点にして恵比寿の他のお店を訪問してたのしんでほしいですし、恵比寿の街をより知ってもらうきっかけになるとうれしいです。

恵比寿停車場と恵比寿ビール工場

恵比寿停車場と恵比寿ビール工場

(沖井さん)ヱビスビールのルーツを知ってもらい、誕生の地に構えた醸造設備で造られたビールを味わってもらうことで、もっとヱビスビールを好きになり、期待してもらいたいですね。
お客様にとって、上質感のあるワクワクできるブルワリーであり続けたいですし、私たちにとっても、もっとビールの魅力をお客様に届けられることはないかと、常に考え続けられる場所にしていきたいです。


「YEBISU BREWERY TOKYO」で新たに始まるヱビスビールの物語は、恵比寿の街でどんな展開を広げるのか、ここからの100年がたのしみです。

YEBISU BREWERY TOKYO(ヱビス ブルワリー トウキョウ)の醸造窯

YEBISU BREWERY TOKYO(ヱビス ブルワリー トウキョウ)概要

■場所
東京都渋谷区恵比寿4-20-1 恵比寿ガーデンプレイス内
■営業時間
平日:12時〜20時
土日祝:11時〜19時
■定休日
火曜日(祝日の場合は翌日)・年末年始
■入場料
無料 入場時予約不要。混雑状況によっては入場制限がかかる可能性あり
■提供商品
ビール1杯1,100円(税込)~(タップ9本)
フード1品400~800円程度(フィンガーフードなど軽食)
■決済方法
オールキャッシュレス(現金でのお支払いはできません)
■公式HP
https://www.sapporobeer.jp/brewery/y_museum/
■ガイド付きツアー
YEBISU the JOURNEY(ヱビス ザ ジャーニー)
料金 1,800円(税込)
2024年4月24日よりヱビスブランドサイト内にて予約開始予定
https://www.sapporobeer.jp/news_release/0000016555/

ヱビスのことがもっと知りたい方は

ヱビス公式ホームページを見る

※今回お届けした情報は記事執筆時点のものです。ご利用の際は状況が異なる場合がありますのでご注意ください。

ライタープロフィール

阿部ちあき

日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会認定 きき酒師 日本酒・焼酎ナビゲーター公認講師
全日本ソムリエ連盟認定 ワインコーディネーター

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