お酒に「強い」「弱い」の基準とは? 心がけたい適正飲酒

お酒に「強い」「弱い」の基準とは? 心がけたい適正飲酒
出典 : 渡辺ナベシ / PIXTA(ピクスタ)

どのくらい飲むと「お酒に強い人」になるのか、明確な基準といえるものはありません。一方、厚生労働省では適度な飲酒量や健康に悪影響をもたらす飲酒量の目安を公表しています。今回はそれらのほか、お酒に強い人と弱い人の違いや適正飲酒ついて紹介します。

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さっそく、お酒に強い人の飲酒量の基準についてみていきましょう。

お酒に強い人の飲酒量には基準はあるの? 缶チューハイなら何本?

お酒に強い人の飲酒量の基準

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「お酒に強い人」とは、どのくらいの量のお酒を飲む人のことなのか、現在のところ明確な基準や定義はありません。

一方、厚生労働省では、21世紀の道標となる健康施策「健康日本21」において、飲酒のガイドラインとなる「節度ある適度な飲酒」を以下のように定義しています。

通常のアルコール代謝能を有する日本人においては「節度ある適度な飲酒」として、1日平均純アルコールで約20g程度である

出典 厚生労働省|健康日本21(アルコール)

ここでいわれている純アルコール20グラムとは、実際どのくらいの酒量なのでしょう。手軽に飲めるビールや缶チューハイ(酎ハイ)でみてみると、アルコール度数5パーセントのビールなら中瓶およびロング缶(500ミリリットル)1本、アルコール度数7パーセントの缶チューハイならレギュラー缶(350ミリリットル)1本に相当します。

なお、同じく「健康日本21」では、1日当たり平均で日本酒3合(純アルコールで約60グラム)を越える量のお酒を飲んでいる人を「多量飲酒者」としています。

多量飲酒者は、酒量だけを取れば「お酒に強い人」といえなくもないのですが、「健康日本21」では「健康への悪影響のみならず、生産性の低下など職場への影響も無視できない」とされています。こうしたことから、多量飲酒者を減らすことが目標に掲げられています。

ちなみに純アルコール60グラムは、先述した条件のビールのロング缶や缶チューハイに換算するとそれぞれ3本となります。仮に1日平均でそれ以上飲めて「お酒に強い人」と目されたとしても、自身の体や周囲に悪影響があれば元も子もなくなります。「節度ある適度な飲酒」を心がけましょう。

(参考資料)
厚生労働省|健康日本21(アルコール)

お酒に強い人、弱い人は何で決まるの?

お酒に強い人と弱い人の違い

dorry / PIXTA(ピクスタ)

お酒に強い人と弱い人の違いはどこにあるのかみていきます。

お酒に強いのはアルコールの分解が速い人

お酒を飲むと、アルコールは胃でゆっくりと、小腸に入ると速やかに吸収され、体内の水分のあるところに拡散されます。

その後、一部が呼気や尿、汗などで体外に排出され、大部分がおもに肝臓で代謝(分解)されます。お酒が強い人は、このアルコール分解の速度が速い人といえます。

アルコールの分解速度は、成人の場合、体重1キログラム当たり1時間に0.1グラムとされ、体格が大きい人のほうが小さい人より分解の速度が速い傾向にあります。

しかし個人差が非常に大きく、後述する酵素の遺伝子型や性差のほか、年齢なども影響するといわれています。

ちなみに年齢については、中年の人より高齢者や若年者のほうがアルコールの分解速度が遅い、つまりお酒に弱い傾向があるとされています。

お酒に対する強弱を決めるアセトアルデヒド分解酵素の遺伝子型

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お酒に強い体質、弱い体質を決めるアセトアルデヒド分解酵素の遺伝子型

お酒に強いか弱いか、その体質の違いは、顔が赤くなるなどのフラッシング反応の原因物質といわれる「アセトアルデヒド」を分解する酵素の遺伝子型の違いによるといわれています。

まずは、おもに肝臓で行われるアルコール分解の大まかな流れをみていきましょう。

アルコールは「ADH」と呼ばれるアルコール脱水素酵素と「MEOS」と呼ばれるアルコール分解酵素群によってアセトアルデヒドとなり、アセトアルデヒドは「ALDH」と呼ばれるアルデヒド脱水素酵素によって酢酸に分解されます。

ADH、MEOS、ALDHにはそれぞれ複数の種類があります。このうちALDHには、「ALDH1型」というアセトアルデヒドをゆっくり分解するやや弱い酵素と、「ALDH2型」という強力な酵素があり、さらにALDH2型の活性遺伝子には以下の特性を持つ3つの型があります。

◆NN型:ALDH2型の正常活性遺伝子型(お酒に強い)
◆ND型:NN型の16分の1の活性しかない遺伝子型(ある程度は飲める)
◆DD型:ALDH2型の活性のない遺伝子型(ほとんど飲めない)

出典 東京国税局|お酒に関する情報「あなたはお酒が強い人?弱い人?」

お酒に強い人と弱い人の違いは、上3つの活性遺伝子の型にあると考えられています。
ヨーロッパ系の人々はほとんどがお酒に強いNN型なのに対して、日本人の大部分が含まれるモンゴロイド系の人々には、ND型やほとんどお酒が飲めないDD型の人も一定数いるといわれています。

自分がどの型なのかは血液検査でわかりますが、かんたんに知りたいときは以下で紹介する「エタノールパッチテスト」が目安になります。

アルコール濃度70パーセントのエタノールをガーゼにしみ込ませ、上腕に7分間貼り、はがして10分後にその部分の皮膚の色を判定するというもので、皮膚が赤くなっていればDD型、ピンク色になっていればND型、反応がない場合はNN型と考えられています。

なお、このやり方にはさまざまなバリエーションがあり、年齢や温度などの影響を受けることも知られているので、個人で行う場合はとくに、あくまでも目安として活用しましょう。

(参考記事)
東京国税局|お酒に関する情報「あなたはお酒が強い人?弱い人?」
厚生労働省 e-ヘルスネット|エタノールパッチテスト

なお、まったくお酒が飲めない人を表す「下戸(げこ)」という言葉については、こちらの記事をチェックしてみてくださいね。

男女で異なる適正飲酒の基準

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お酒に強い女性は少ない!? 女性にとっての安全な飲酒量の基準とは?

女性は男性より酔いやすい体質を持っている傾向があります。それはなぜなのか、厚生労働省では次のような理由を挙げています。

(1)一般的に女性は男性より小柄であることが多く、結果的に体内の水分量も少ない
(2)アルコールの代謝能力が、平均すると男性の3/4程度しかない
(3)飲酒量や体重が同じ場合でも血中アルコール濃度が男性より高くなる

出典 eヘルスネット|女性の飲酒と健康

(1)について補足すると、体内の水分量が少ないことを挙げているのは、アルコールを分解するときに水分が消費されるからです。

このようなことから、一般に女性は急性アルコール中毒などのリスクが高くお酒に強い体質の人の飲酒量の基準についても男性の半分から3分の2くらいを目安にするのが安全とされています。

また、赤ちゃんに悪影響が出る可能性のある妊娠中、授乳中の飲酒だけでなく、女性ホルモンを介して乳がんのリスクを高めたり、大量の飲酒については骨密度を減少させて骨粗しょう症の原因となったりするなど、アルコールは女性の体にさまざまな影響を与えるものでもあります。

お酒に弱い人は、お酒に強い体質の人よりさらに少量の飲酒量に抑えるのがよいといえます。自ら飲まない選択をしている人や体質的に飲めない人についてはいうまでもなく、無理に飲む必要はないでしょう。

(参考資料)
厚生労働省 e-ヘルスネット|女性の飲酒と健康

適正飲酒のすすめ|お酒は適量を、食べながらたのしんで飲もう

適正飲酒のすすめ

Sunrising / PIXTA(ピクスタ)

「酒は百薬の長」ともいわれています。実際に、虚血性心疾患や脳梗塞、2型糖尿病では、まったく飲まない人より少量飲酒者のリスクのほうが低いといったデータもあるほどです。

とはいえ過度な飲酒は禁物。おいしいお酒を味わいつつ健康であるためにも、「正しいお酒の飲み方」=「適正飲酒」を心がけましょう。

公益社団法人アルコール健康医学協会では、20歳未満の人の飲酒や飲酒運転といった法令違反につながる飲酒に警鐘を鳴らす一方、「適正飲酒の10か条」として、以下の10ポイントを挙げています。

1.談笑し 楽しく飲むのが基本です
2.食べながら 適量範囲でゆっくりと
3.強い酒 薄めて飲むのがオススメです
4.つくろうよ 週に二日は休肝日
5.やめようよ きりなく長い飲み続け
6.許さない 他人(ひと)への無理強い・イッキ飲み
7.アルコール 薬と一緒は危険です
8.飲まないで 妊娠中と授乳期は
9.飲酒後の運動・入浴 要注意
10.肝臓など 定期検査を忘れずに

出典 (公社)アルコール健康医学協会

「正しいお酒の飲み方」について、さらにくわしく知っておきたい人は、以下のサイトも参考にしてください。
公益社団法人 アルコール健康医学協会|適正飲酒の10か条

以上に加え、1日平均純アルコール約20グラムの「節度ある適度な飲酒」を守ることも大切です。お酒は適量を、たのしみながら食べながら飲む適正飲酒でたのしみましょう。

ビール酒造組合でも「適正飲酒の取り組み」などを精力的に行っています。くわしくはホームページを確認してみてくださいね。

特別認可法人ビール酒造組合

また、飲みすぎて二日酔いになったときの対処方法や、体に与える影響が大きい「迎え酒(むかえざけ)」の危険性については、こちらの記事にくわしい情報が掲載されています。

お酒に強いところをアピールするような無茶な飲み方は、絶対に避けましょう。健康であれば、末長くおいしいお酒をたのしめます。「節度ある適度な飲酒」や「適正飲酒10か条」は、そのための指針ともなるものです。

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