【初心者必見】「醸造酒」と「蒸溜酒」の違いは? 原料や製法、味わい、飲み方などさまざまな角度から解説

「醸造酒」といえばワインや日本酒が、「蒸溜酒(蒸留酒)」といえばウイスキーや焼酎などが挙げられますが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。今回は「醸造酒」と「蒸溜酒」の違いを、定義や原料、製造方法、アルコール度数、味わい、飲み方などの観点から紹介します。
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目次
「醸造酒」と「蒸溜酒」の違いがわかると、お酒のたのしみが広がります。さまざまな角度から確認していきましょう。
「醸造酒」と「蒸溜酒(蒸留酒)」の違いとは?

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「醸造酒」と「蒸溜酒」の大きな違いは、製法(製造方法)にあります。
「醸造酒」とは、穀類や果物などの原料を発酵させて造られるお酒。一方の「蒸溜酒」は、端的にいうと「醸造酒」を蒸溜したもの。この「蒸溜」という工程を経ているかどうかで、アルコール度数や風味の特徴に違いが生まれ、結果的に飲み方や保存性も変わってきます。
この記事では、定義や製法、アルコール度数、飲み方などさまざまな観点から、「醸造酒」と「蒸溜酒」の違いをみていきます。
定義の違い|お酒は大きく分けて3種類

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お酒は製法の違いから、「醸造酒」「蒸溜酒」「混成酒」の3種類に分類することができます。
「醸造酒」とは?
原料、あるいは原料を糖化したものを発酵させて造られるお酒を「醸造酒」と呼びます。
「醸造酒」は発酵方法でさらに以下の3種に分類できます。
◆単発酵酒
果実など、糖分を含む原料に酵母を加えて発酵させたお酒。ワインなどの果実酒がこれにあたります。
◆単行複発酵酒
麦などのデンプンを含む原料を糖化したうえで、酵母を加えて発酵させたお酒。ビールや発泡酒などがこれにあたります。
◆並行複発酵酒
原料の糖化と発酵を同時に進行する「並行複発酵」で造られるお酒。清酒(日本酒)がこれにあたります。

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「蒸溜酒(蒸留酒)」とは?
「醸造酒」やその半製品(製造工程の途中にある未完成の製品)、酒粕など醸造酒の副産物、その他アルコール含有物を蒸溜して造るお酒。焼酎やウイスキー、ブランデー、ジンやウォッカ、ラムなどのスピリッツなどがここに分類されます。
蒸溜酒の種類や蒸留については、以下の記事で詳しく紹介しています。
「混成酒」とは?
醸造酒や蒸溜酒をベースに、互いに混合したり、薬草や果汁、香料、色素、糖類などを加えたもので、合成清酒やみりん、リキュール、ベルモットなどが該当します。梅酒も混成酒の一種です。
この記事では、「蒸溜酒」と「醸造酒」について詳しくみていきます。
(参考資料)
国税庁|酒類の商品知識等
製法の違い|同じ原料でも異なる製法で造るとまったく違うお酒に

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前述したように、「醸造酒」と「蒸溜酒」の大きな違いは、原料を発酵させたあとに「蒸溜」という工程を経ているかどうかにあります。発酵後に蒸溜を行わないのが「醸造酒」。蒸溜を行うものが「蒸溜酒」です。
同じ原料から造られるお酒でも、蒸溜を行うか否かでまったく違ったお酒になります。たとえば、米を原料とした「日本酒」と「米焼酎」、果実を原料とした「ワイン」と「ブランデー」、モルト(大麦麦芽)を原料に使った「ビール」と「ウイスキー(モルトウイスキー)」では、個性がまったく異なります。
アルコール度数の違い|「醸造酒」<「蒸溜酒」の理由も

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醸造酒に比べて、蒸溜酒のアルコール度数は総じて高くなります。
お酒のアルコール(エタノール)の沸点は約78.3度、水の沸点は100度。この沸点の違いを利用して、より純度の高いお酒を抽出するのが「蒸溜」という技術です。
「醸造酒」を加熱すると、沸点の低いアルコールがまず気化します。これを冷却すると、よりアルコール度数の高い液体が留出します。これが「蒸溜酒」(の原酒)です。
蒸溜して得られる留出液には多少の水が混ざっていますが、蒸溜を繰り返し行うことで、より純度の高いアルコールを得ることができます。

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ここで、おもな醸造酒と蒸溜酒の平均的なアルコール度数を確認しておきましょう。
<醸造酒>
◇ワイン:9〜15度程度
◇ビール:5度前後
◇日本酒:13〜15度程度(原酒は16〜20度程度)
<蒸溜酒>
◇ブランデー:40〜50度程度
◇ウイスキー:40〜43度程度
◇焼酎:20〜25度程度
◇ウォッカ:40〜60度(90度を超える銘柄も)
◇ジン:40〜50度程度
◇ラム:40〜50度(75度を超える銘柄も)
果実を原料にしたワインとブランデー、大麦を使ったビールとウイスキー、米を原料にした日本酒と米焼酎など、同じ原料から造られるお酒同士を比較するだけでも、蒸溜工程を経ることでアルコール度数が「醸造酒」<「蒸溜酒」となることがわかります。
ちなみに、元の醸造酒に含まれていた原料由来の成分の多くは、蒸溜によって取り除かれます。糖分や色素成分などもその一例。蒸溜したての蒸溜酒の原酒が無色透明(※)で、糖質を含まないのは、蒸溜という工程を経ているからです。
※ブランデーやウイスキー特有の琥珀色は、木樽で長期熟成させることで生まれます。
飲み方の違い|そのまま飲む? 割って飲む?

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「醸造酒」と「蒸溜酒」では、飲み方も異なります。
「醸造酒」は割らずにそのまま飲むのが一般的。一方「蒸溜酒」は、オン・ザ・ロックや水割り、ソーダ(炭酸)割りをはじめ、さまざまな飲み方でたのしまれています。醸造酒と同じくストレートで飲まれることもありますが、氷や割り材を加え、アルコール度数を下げて飲まれることが多く、カクテルのベースとしても親しまれています。
「醸造酒」もオン・ザ・ロックで飲まれたり、カクテルのベースとして使われたりすることがありますが、まずはストレートで、それぞれのお酒の個性をたのしみたいものですね。
「醸造酒」と「蒸溜酒」をちゃんぽんすると悪酔いしやすいって本当?

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一度のお酒の席で、日本酒と焼酎、ワインとビールとウイスキーのように、2種類以上のお酒をまぜこぜにして飲むことを「ちゃんぽんする」ということがあります。このような飲み方をすると悪酔いするというウワサを耳にすることがあるかもしれませんが、複数のお酒をちゃんぽんに飲むことが悪酔いの原因になるわけではありません。
お酒を飲んで人にからんだり暴れたりする酔い方を「悪酔い」と呼ぶこともありますが、ここでは、飲酒後2〜6時間ほどで現れる不快な状態を「悪酔い」ととらえ、「醸造酒」や「蒸溜酒」をまぜこぜに飲むこととの関連性をみていきます。
お酒のアルコールはおもに肝臓でアセトアルデヒドに分解され、最終的には酢酸となって体外に排出されます。このアセトアルデヒドこそが、悪酔いや二日酔いの原因物質といわれています。
アセトアルデヒドは人への発がん性も疑われている有害物質。肝臓内でアルコールの処理が追いつかなくなると、血中のアセトアルデヒドの濃度が高まり、頭痛や動悸、吐き気などさまざまな症状を引き起こします。これが悪酔いの正体です。
日本酒から焼酎へ、ワインからビール、ウイスキーへとお酒の種類を変えると、飲みやすく感じたり、どれだけ飲んだかわからなくなったりすることがありますが、悪酔いの原因は、お酒をちゃんぽんしたことではなく単なる飲み過ぎです。
以下の記事では、悪酔いのおもな症状や二日酔いとの違い、悪酔いしやすい人の特徴、悪酔いしない飲み方について詳しく紹介しています。お酒を飲んで気分が悪くなったことがある人は、ぜひ読んでみてください。
「醸造酒」または「蒸溜酒」が体質に合わない人がいる?

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食物アレルギーと同じように、お酒に対してアレルギー反応を起こす人がいます。このような人は、お酒そのものが体に合わない可能性があります。
お酒に弱い人のなかには、アセトアルデヒドを分解する主要な酵素「ALDH2(2型アルデヒド脱水素酵素)」の働きが弱い人がいます。このような人は、お酒を飲むことで、顔が赤くなる、頭痛や吐き気、動悸がする、じんましんが出る、喉に閉塞感が生じるなど、さまざまな症状が現れる可能性があります。下戸(げこ)の人などは、少量のお酒でも発症するおそれがあるので、とくに注意が必要です。
ALDH2には3つの型があり、これによって生まれつきお酒に強いタイプか、ある程度は飲めるが悪酔いしやすいタイプ、お酒がまったく飲めないタイプかがわかります。以下の記事で詳しく紹介しているので、自分の体質を知りたい人は、ぜひ読んでみてください。
お酒に強い人でも、特定のお酒に対してアレルギー反応を示すことはあります。なかでも、原料の風味をそのままたのしめる「醸造酒」に関しては、特定の原料に含まれる成分がアレルゲンとなる可能性があるため、注意が必要です。たとえば、小麦や大麦に対してアレルギー反応を起こす人は、ビールが合わない可能性があります。果物アレルギーがある場合は、ワインや果実酒は避けたほうが賢明かもしれません。
「蒸溜酒」は、蒸溜の段階で原料由来のアレルゲンの多くは取り除かれるため、アレルギーを起こす可能性は低いと考えられていますが、アルコール度数が高いので、適量を確認したうえでたしなむようにしてください。
「醸造酒」と「蒸溜酒」にはそれぞれ異なる魅力があります。ふだん「醸造酒」を好んで飲む人は「蒸溜酒」を、「蒸溜酒」派の人は「醸造酒」を味わって、お酒の奥深い世界を探求してみてはいかがでしょう。
