「悪酔い」とはどんな状態? おもな症状や二日酔いとの違い、悪酔いしないお酒の飲み方を知っておこう
お酒に酔って気分が悪くなったり、人にからんだりすることを「悪酔い」といいますが、ふつうの酔い方とはどう違うのでしょうか。ここでは、悪酔いのおもな症状や、ふつうの酔い方や二日酔いとの違い、悪酔いしやすい人の特徴、悪酔いしない飲み方について紹介します。
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悪酔いとはどのような状態を指すのでしょうか。まずは言葉の意味をおさらいしておきましょう。
悪酔いってどんな状態?
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悪酔いとふつうの酔った状態とはどう違うのでしょうか。二日酔いとの違いも気になるところです。
まずは、悪酔いとはどのような状態を指すのかを確認していきます。
悪酔いの特徴とおもな症状とは? 読み方も確認
「悪酔い」とは、お酒に酔って気分が悪くなることです。
お酒を飲み始めてそれほど時間が経過していないとき(2〜6時間)、アルコールの血中濃度が上がって不快感が生じた状態のことで、頭痛や動悸、吐き気など症状はさまざま。なかには、顔が赤くなったり、精神的に不安定になったりする人もいるようです。
お酒の影響で他人にからんだり、暴れたりするなど、あまり好ましくない酔い方を「悪酔い」と呼ぶ場合もあります。こちらは「悪い酔い方」というニュアンスで使われる場合が多いかもしれません。
ちなみに、「悪酔い」は「わるよい」と読みます。
お酒に酔って心身が正常な状態ではなくなること、つまり酔っ払うことを医学の世界では「酩酊」あるいは「アルコール酩酊」といいますが、「悪酔い」は医学用語ではありません。
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悪酔いとふつうの酔いとの違い
「酔い」とは、血液に溶けたアルコールが脳に運ばれ、脳が麻痺した状態のこと。「酔い」には段階があり、以下のように飲酒量に比例して生じるアルコール酩酊を「単純酩酊」と呼びます。
◇爽快期|血中アルコール濃度0.02~0.04%
陽気になったり、さわやかな気分になる。人によっては皮膚が赤くなる場合も。
◇ほろ酔い期|血中アルコール濃度0.05~0.10%
ほろ酔い気分になって、手の動きが活発になります。脈が速くなったり、理性が失われたりする場合もあります。
◇酩酊初期|血中アルコール濃度0.11~0.15%
気が大きくなり、ふらつき始める時期。声が大きくなったり、怒りっぽくなったりする人もいます。
◇酩酊期|血中アルコール濃度0.16~0.30%
千鳥足になり、同じことをしゃべり出すなど運動失調状態に。吐き気や嘔吐が生じる場合も。
◇泥酔期|血中アルコール濃度0.31~0.40%
意識がはっきりせず、まともに立てない状態。
◇昏睡期|血中アルコール濃度0.41~0.50%
揺り動かしても起きない状態。意識を失ったり失禁するようになり、最悪の場合は死に至ります。
(参考資料)
政府広報オンライン|急性アルコール中毒の怖さを知っていますか?イッキ飲みや無理強いは命にかかわることも!
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日本で使われる酩酊分類「Binderの分類」によると、アルコール酩酊は上の「単純酩酊」と、以下で紹介する「異常酩酊」に分けられ、「異常酩酊」はさらに「複雑酩酊」と「病的酩酊」に分類されます。
◆異常酩酊|複雑酩酊
「酒癖が悪い」「酒乱」などにあたる状態。攻撃的かつ衝動的な行動をとり、周囲に迷惑をかける例も。
◆異常酩酊|病的酩酊
意識障害があり、ふつうでは考えられないような異常な行動をとるものの、翌日には忘れているのが特徴。幻覚や妄想が生じるケースもあるようです。
「悪酔い」と「アルコール酩酊」との関係は明確に定義されていませんが、「単純酩酊」の「酩酊期」あたりで現れる症状を「悪酔い」ということもあれば、複雑酩酊や病的酩酊などの症状を「悪酔い」と表現する場合もあります。
(参考資料)
厚生労働省 e-ヘルスネット|アルコール酩酊
厚生労働省 e-ヘルスネット|酔い方の異常
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悪酔いと二日酔いの違い
一方、「悪酔い」と「二日酔い」の違いは明確です。
どちらもお酒を飲んだことで現れるつらい症状をあらわす言葉ですが、「悪酔い」が飲酒後2〜6時間くらいで生じるのに対して、「二日酔い」は8時間以上開けてから発症するものです。飲んでいる最中や帰り道などで現れたり、ひどい場合はお酒が抜けてくるまで続く不快な症状が「悪酔い」、一晩寝て目覚めたあとに残っている不快感が「二日酔い」といえばわかりやすいかもしれません。
「悪酔い」と「二日酔い」では原因も異なります。
アルコールは肝臓で酢酸に分解されますが、その過程でアセトアルデヒドという有害な物質を生成してしまいます。「悪酔い」は、このアセトアルデヒドの濃度が血中で高まることにより生じるものです。
「二日酔い」の原因は、現在も完全には解明されているわけではありませんが、ホルモン異常や脱水、低血糖、電解質の異常、アセトアルデヒドの蓄積、お酒に含まれる不純物などさまざまな助長要因が考えられます。また、アルコール依存症にともなう軽度の離脱症状というとらえ方もあるようです。
(参考資料)
厚生労働省 e-ヘルスネット|二日酔いのメカニズム
悪酔いしやすい人の特徴
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ここから先は、「悪酔い」という言葉の意味のなかでも「お酒に酔って気分が悪くなること」という側面に特化し、悪酔いしやすい人とそうでない人の違いや、悪酔いしやすい人の特徴などについてみていきます。
じつは、悪酔いしやすい人には特徴があります。
アセトアルデヒドを分解する酵素のはたらきが弱い人
アセトアルデヒドとは、アルコールが肝臓で分解される過程で発生する毒性物質で、悪酔いの原因といわれています。
アルコールは肝臓のなかで、アルコール脱水素酵素(ADH)によってアセトアルデヒドに分解されます。その後、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって無害な酢酸へと分解され、最終的には筋肉や脂肪組織で炭酸ガスと水に分解されて、体外に排出されます。
アセトアルデヒドは毒性が強く、血中に長く留まることで頭痛や吐き気などを誘発します。また、動悸や眠気などを引き起こすこともあります。こうした不快感はお酒を飲んで顔が赤くなる現象とあわせて「フラッシング反応」といいますが、これらはすべてお酒に弱い人の特徴的な症状だと考えられています。
話をアセトアルデヒドの分解の話に戻しましょう。
アセトアルデヒドを無害な物質へと分解する酵素「ALDH」には、次の2種類が存在します。
出典 東京国税局|お酒に関する情報テーマ02 「あなたはお酒が強い人?弱い人?」◆ALDH1型:血中アセトアルデヒド濃度が高くなってから作用が始まり、ゆっくり分解する酵素(やや弱い酵素)
◆ALDH2型:血中アセトアルデヒド濃度が低い時点から作用する強力な酵素
この「ALDH2」という酵素をたくさん持っている人ほどアセトアルデヒドをすばやく分解することができるといいます。逆に「ALDH2」の活性が低くアセトアルデヒドをすみやかに分解できない人は、有害な物質がより長い間体内に留まるため、「悪酔い」しやすいと考えられています。
なお、「ALDH2」は遺伝するもので、お酒に強いか弱いか、悪酔いしやすいかどうかは生まれつきの体質ともいわれています。また、人種によっても傾向が異なり、日本人の44パーセントが「ALDH2」不活性型という報告もあります。
(参考資料)
東京国税局|お酒に関する情報「あなたはお酒が強い人?弱い人?」
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鍛えてお酒が強くなった人も要注意!
もともとお酒に弱かったものの、飲み続けるうちに飲めるようになったという人もいるのではないでしょうか。このような人も、悪酔いしやすいタイプである可能性があるので注意が必要です。
アルコールが分解される過程で生成されたアセトアルデヒドは、「ALDH(アセトアルデヒド脱水素酵素)」に加えて「MEOS(ミクロゾームエタノール酸化酵素)」と呼ばれる酵素でも分解されます。「MEOS」は本来、アルコールをアセトアルデヒドに代謝する物質のひとつですが、アセトアルデヒドをすばやく分解できない体質の人でも、お酒を飲み続けるうちに「MEOS」が使われるようになるといいます。
この「MEOS」は、お酒を飲み続けることではたらきが強くなるため、本来はお酒に強くない人もある程度は飲めるようになることがあります。
ただし、飲酒習慣で強化された「MEOS」も、お酒を数週間やめているうちに元の状態に戻ります。飲酒習慣を続けている間はある程度飲めるけれど、飲まない日が続くと飲めなくなっている、という人は、MEOSが鍛えられてお酒が強くなったということを自覚しておくことが大切です。
なお、MEOSは肝障害を引き起こす原因のひとつともいわれています。お酒を飲めない人が、飲酒習慣を続けることで飲めるようになるのは、体にとっていいこととはいえないので、自分の適量を知ったうえで、2〜3日に1日は休肝日を設けるようにしたいですね。
(参考資料)
東京国税局|お酒に関する情報「あなたはお酒が強い人?弱い人?」
悪酔いしない飲み方とは?
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ここからは、悪酔いしない飲み方についてみていきましょう。
悪酔いの原因はお酒の飲みすぎ! 自分の適量を知っておこう
悪酔いの原因はアセトアルデヒドをすみやかに分解できないこと。分解酵素の活性が高い人と低い人では、分解が追いつかないとされる量も異なりますが、いずれも単なる飲みすぎです。
悪酔いしないためには、自分の体がお酒をすみやかに分解できる量にとどめることが大切。そのためにも自分の適量を知っておきましょう。
厚生労働省が令和6年2月に公表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、以下のように飲酒時の留意点を示し、飲酒にともなうリスクを理解したうえで、自分に合った飲酒量を決めて、健康に配慮した飲酒を心がけることが大切としています。
出典 厚生労働省|健康に配慮した飲酒に関するガイドライン飲酒をする場合には、お酒に含まれる純アルコール量(g)を認識し、自身のアルコール摂取量を把握することで、例えば疾病発症等のリスクを避けるための具体的な目標設定を行うなど、自身の健康管理 にも活用することができます。単にお酒の量(ml)だけでなく、お酒に含まれる純アルコール量(g)について着目することは重要です。
なお、純アルコール量は以下の式で求められます。
純アルコール量(g)=摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(アルコールの比重)
厚生労働省が策定した国の健康政策「健康日本21」では、「節度ある適度な飲酒」として、1日平均純アルコール20g程度としています。ただし、体質的にお酒に弱い人や女性、高齢者などは、それより少量に設定するのが基本です。
自分がお酒に強くないと思ったら、低めの純アルコール量を設定のうえ、あらかじめ飲む量を決めてから飲酒にのぞみたいものです。
(参考資料)
厚生労働省|健康に配慮した飲酒に関するガイドライン
厚生労働省|健康日本21(アルコール)
ウイスキーや日本酒、焼酎など、お酒の種類別に適量の目安をまとめた記事があります。こちらも参考にしてください。
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お酒はチェイサーや和らぎ水といっしょにゆっくり飲む
焼酎やウイスキーのようにアルコール度数の高いお酒は、胃への刺激が強いだけでなく、血中アルコール濃度を急激に上昇させる可能性があります。蒸溜酒は水や炭酸などで割って飲むか、アルコールを含まないチェイサーや和らぎ水と交互にゆっくりたのしみましょう。日本酒などの醸造酒を飲む際も、和らぎ水とセットで味わえば、口のなかをリセットできるほか、満腹感が増して飲酒量を調整しやすくなるというメリットがあります。
空腹の状態で飲まず、食事といっしょにたのしむ
お酒は食事といっしょに飲むことで、アルコールの吸収を緩やかにすることができます。飲酒前にチーズなどの脂肪分を摂っておくと、アルコールの刺激から胃の粘膜を守れるのでおすすめです。
「悪酔い」というと、人にからんだり暴れたりすることや、異常行動をともなう飲み方を想像する人もいるかもしれませんが、お酒に酔って気分が悪くなることを指す言葉でもあります。お酒に弱い人は、強い人に比べて悪酔いしやすい傾向があるので、自分の適量を知り、チェイサーや食事といっしょにゆっくりたのしむ習慣を身につけたいものですね。