ブランデーの種類と特徴をわかりやすく解説! 原料の種類や等級(クラス)も紹介
ブランデーの種類は、ブドウが原料のコニャックやアルマニャック、リンゴが原料のカルヴァドスなど多種多彩です。世界中で、いろいろな果実を原料にしたブランデーが造られています。今回はブランデーの種類やそれぞれの特徴、原料の種類、等級などについて紹介します。
- 更新日:
目次
そもそもブランデーとは?
Tetiana A / Shutterstock.com
ブランデーとは果実を原料とした蒸溜酒のことで、ブドウが原料の「グレープブランデー」と、ブドウ以外の果実を原料とした「フルーツブランデー」の2種類に大別されます。フルーツブランデーの原料は、リンゴやサクランボ、洋ナシ、木イチゴ、あんずなど。世界中で多彩なブランデーが造られていますが、一般的にはブドウから造られることが多いです。
グレープブランデーを代表するのは、高級ブランデーとして知られる「コニャック」と「アルマニャック」。一方のフルーツブランデーの代表格は、リンゴを原料とした「カルヴァドス(カルバドス)」です。いずれも産地はフランスで、世界3大ブランデーと称されています。
なお、フランスではコニャックとアルマニャック以外のグレープブランデーを「オー・ド・ヴィー・ド・ヴァン」、リンゴ以外の果実が原料のフルーツブランデーを「オー・ド・ヴィー・ド・フリュイ」と呼んでいます。
グレープブランデーは、フランス以外にも、スペインやドイツ、オーストラリア、南アフリカ、チリ、日本など、ブドウを原料としたワイン醸造を行っている国で造られています。
ブランデーは熟成された芳醇な香りが魅力
Alexander Raths / Shutterstock.com
ブランデーは「香りをたのしむお酒」といわれるように、芳醇な香りが魅力です。「ブランデーグラス」と呼ばれる、飲み口がすぼまったチューリップ型のグラスに注げば、原料の果実由来のフルーティーな香りや、熟成樽由来のウッディーな香りをたっぷり堪能できます。
ブランデーの飲み方の基本は、ブランデー本来の芳香をたのしめるストレート。できればブランデーグラスに注ぎ、まず原料や樽由来の香りをじっくりと満喫してから、熟成されたまろやかな香味をゆっくりと味わいます。アルコール度数は40%前後~50%程度と高いので、ミネラルウォーターなどのチェイサーと交互に飲むのがおすすめです。
ストレート以外では、ロックやソーダ割り、ブランデーベースのカクテルなどでもおいしくたのしめます。
ブランデーの種類は? 原料別種類一覧
OlegD / Shutterstock.com
ブランデーの種類は多種多彩。ここでは原料の種類別に、世界のおもなブランデーを一覧で紹介します。
<グレープブランデー>
◇コニャック(フランス)
◇アルマニャック(フランス)
◇オードヴィードヴァン(フランス)
◇ブランデー・デ・ヘレス(スペイン)
◇ブランデー・イタリアーノ(イタリア)
◇ヴァイン・ブラント(ドイツ)
◇ピスコ(ペルー、チリ)
<フルーツブランデー>
◇リンゴ:カルヴァドス(フランス)、オー・ド・ヴィー・ド・シードル(フランス)
◇サクランボ:キルシュワッサー/ヴァッサー(ドイツ)、キルシュ(フランス)
◇洋ナシ:オー・ド・ヴィー・ド・ポワレ(フランス)
◇プラム(スモモ):パリンカ/パーリンカ(ハンガリー)、スリヴォヴィッツ(赤色種など:東欧など)、ミラベル(黄色種:フランス)、クエッチェ(黒色種:ドイツ、スイス)
<粕取りブランデー(ポマースブランデー)>
◇グラッパ(イタリア)
◇マール(フランス)
◇ラキヤ(ブルガリア)
◇オルホ/オルーホ(スペイン)
◇ジヴァニア(キプロス)
◇チャチャ(ジョージア)
◇トレスター(ドイツ)
◇チプロ(ギリシャ)
◇バガセイラ(ポルトガル)
代表的グレープブランデーは「コニャック」「アルマニャック」の2種類
barmalini / Shutterstock.com
グレープブランデーの代表格は、フランスのコニャック地方で造られている「コニャック」と、同じくフランス・アルマニャック地方で造られている「アルマニャック」の2種類。いずれも芳醇で深い味わいが魅力の高級ブランデーです。
コニャック|コニャック地方の6産地だけが名乗れる
「コニャック」は、フランスのコニャック地方で造られている高級ブランデーの代名詞。フランスでは、「オー・ド・ヴィー・ド・コニャック」や「オー・ド・ヴィー・デ・シャラント」とも呼ばれています。白ブドウから造ったワインを単式蒸溜機で蒸溜し、オーク樽で熟成させて造られるコニャックは、芳醇な香りとまろやかで華やかな味わいが特長です。
コニャックはA.O.C.(原産地呼称統制制度=アペラシオン・コントローレ)により、原料のブドウ品種や蒸溜方法、ボトルラベルへの熟成表示などについて、厳しい規制が課せられています。また生産地区も、グランド・シャンパーニュ、プティット・シャンパーニュ、ボルドリー、ファン・ボワ、ボン・ボワ、ボワ・オルディネールの6地区のみと定められています。規定に沿わないものは、コニャックを名乗ることができません。
felix17 / Shutterstock.com
コニャックのおもな銘柄には、「ヘネシー V.S.O.P. フィーヌ シャンパーニュ」「レミーマルタンXO」「クルボアジェ V.S.O.P.」「マーテルXO」などがあります。一般に、15~40年熟成のものが風味がよいといわれています。
なお、コニャックのA.O.C.などは、フランスの国立コニャック協会(BNIC)が管理しています。
5PH / Shutterstock.com
アルマニャック|もっとも古いフレンチブランデー
「アルマニャック」は、フランスのアルマニャック地方で造られている高級ブランデー。アルマニャックもA.O.C.でブドウ品種や製造方法などが厳しく規定されていて、産地もバ・ザルマニャック(バ・アルマニャック)、アルマニャック・テナレーズ、オー・タルマニャック(オー・アルマニャック)の3地区に限られます。なお、アルマニャックのA.O.C.などを管理しているのは、フランスの国立アルマニャック事務局(BNIA)です。
白ブドウで造ったワインを連続式蒸溜機でゆっくりと蒸溜し、オーク樽で熟成して仕上げるアルマニャックは、一般的に強い芳香が特徴で、コニャックと比べると辛口、かつ重く複雑な風味をもつ傾向があり、男性的な味わいと表現されることもあります。
アルマニャックのおもな銘柄には、「サンヴィヴァンVSOP」や「シャボーVSOP」、「ジェラス 10年」などがあります。
フルーツブランデーの代表的種類はアップルブランデー「カルヴァドス」
AndreyCherkasov / Shutterstock.com
「カルヴァドス」は、フランスのカルヴァドス地方で造られている高級アップルブランデー。コニャックやアルマニャックと同じくA.O.C.で製法などが厳しく規定されていて、産地はカルヴァドスとカルヴァドス・ドンフロンテ、カルヴァドス・ペイ・ドージュの3地区に限定されています。
カルヴァドスは、リンゴの醸造酒「シードル」と梨の醸造酒「ポワレ」を単式蒸溜機または連続式蒸溜機で蒸溜し、オーク樽で熟成させて造られます。
カルヴァドスのおもな銘柄には、「クリスチャン・ドルーアン」「カルヴァドス ブラーX.O.」「シャトードブルイユ フィーヌ・カルバドス」などがあります。
粕取りブランデー(ポマースブランデー)の代表的種類はイタリアの「グラッパ」
NatalyaBond / Shutterstock.com
「グラッパ」は、イタリアで生産されているブランデーの一種で、イタリアでは食後酒の定番として親しまれています。粕取りブランデーに分類されるグラッパは、ワイン醸造後に出るブドウの搾りかす(ポマース)で造るのが特徴。白ブドウだけでなく黒ブドウも原料として認められていて、果汁に加え皮や種も使用します。
グラッパの多くは、ほとんど熟成していない無色透明なまま瓶詰めされますが、近年は数年熟成のグラッパも注目されています。なお、無色透明の若いグラッパを「ビアンカ」、琥珀色に色づいたものを「リゼルヴァ」「ストラヴェッキア」といいます。
なお、グラッパは地理的表示(GI)保護制度で保護されていて、GIマークのあるものは品質が保証されています。
V.O.とV.S.O.P.はなにが違う? ブランデーの等級を確認
barmalini / Shutterstock.com
ブランデーの商品名にある「V.O.」や「V.S.O.P.」などのアルファベットは、等級を示す熟成表示です。コニャックとアルマニャック、カルヴァドスは、ブレンドする原酒のうち、もっとも若い原酒の熟成年数=最低熟成年数(コント)によってクラス分けされていて、熟成表示はそれぞれに規定されています。
<コニャックのおもな熟成表示>
◇最低熟成年数2年(コント2)
「VS」「★★★(スリースター)」
◇最低熟成年数4年(コント4)
「V.S.O.P.」
◇最低熟成年数6年(コント6)
「Napoleon(ナポレオン)」
◇最低熟成年数10年(コント10)
「XO」
なお、コニャックは熟成年数が2年以上のものでなければ出荷できません。
<アルマニャックのおもな熟成表示>
◇最低熟成年数1年(コント1)
「VS」「★★★(スリースター)」
◇最低熟成年数4年(コント4)
「V.S.O.P.」
◇最低熟成年数10年(コント10)
「XO」
なお、アルマニャックは、熟成年数1年でも出荷できます。
<カルヴァドスのおもな熟成表示>
◇最低熟成年数2年(コント2)
「VS」「★★★(スリースター)」
◇最低熟成年数4年(コント4)
「V.S.O.P.」「V.O.」
◇最低熟成年数6年(コント6)
「XO」「Napoleon(ナポレオン)」
ちなみに、「V.S.O.P.」は、「Very:非常に」「Superior:優良な」「Old:古い」「Pale:透きとおった」の頭文字を取った略語。「VS」は「Very Special」、「V.O.」は「Very old」、「XO」は「Extra Old」を意味します。
ブランデーの種類は、ブドウが原料の「グレープブランデー」と、ブドウ以外の果実が原料の「フルーツブランデー」の2つに大別されます。前者を代表する「コニャック」と「アルマニャック」、後者を代表するリンゴが原料の「カルヴァドス」は、世界3大ブランデーと呼ばれています。機会があれば、芳醇な香りとまろやかな味わいを試してみてくださいね。