フランスの高級ブランデー「コニャック」を飲むなら、グラスにもこだわろう
高級ブランデー「コニャック」を飲んだことはありますか? 「コニャック」には、芳醇な香りや味わいを満喫するのに適したグラスがあります。今回は、「コニャック」の特徴や産地、代表的な銘柄とともに、コニャックをおいしくたのしめるグラスを紹介します。
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コニャックとはどんなお酒?
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コニャックの産地
「コニャック」とは、フランスのコニャック地方で造られている高級ブランデーのこと。コニャック地方の以下6つの産地のブドウで造られたブランデーだけが、「コニャック」と名乗ることができます。
◇グランド・シャンパーニュ
◇プティット・シャンパーニュ
◇ボルドリー
◇ファン・ボワ
◇ボン・ボワ
◇ボワ・オルディネール(ボワ・ア・テロワール)
このなかでも、とくに優れた土壌を持つグランド・シャンパーニュとプティット・シャンパーニュのブドウで造られたコニャックは、「フィーヌシャンパーニュ」と呼ばれ、最高級品と見なされています。
海洋性気候のコニャック地方は、一年をとおして穏やかな気候で、ブドウの栽培に好適な地域です。水はけのよい石灰質の土壌も、コニャック用のブドウ造りによい影響をもたらしています。
コニャックの造り方のポイント
多くのコニャックは、酸味の強い「ユニ・ブラン(トレッビアーノ)」という品種の白ブドウを原料に造られます。コニャックの製造工程のポイントをかんたんに説明しましょう。
【蒸溜回数は2回】
ブドウの収穫後、プレスして搾った果汁を発酵させてワインを造り、単式蒸溜機で2度蒸溜します。コニャックを造る際は、ブドウを収穫してから翌年の3月末日までに蒸溜を終える必要があります。
【樽熟成は最低2年】
蒸溜で得られた液体を熟成樽に詰め、最低2年間熟成させます。熟成には、おもにリムーザンオークやトロンセオーク製の樽が用いられます。
【複数の原酒をブレンドして完成】
複数の原酒(熟成年数の若い原酒と古い原酒)をブレンドして、風味を調整します。コニャックには、ひとつの樽の原酒のみを瓶詰めした「シングルカスク(カスクトストレングス)」はほとんどありません。
コニャックの品質等級
コニャックのラベルには、VSOPやXOなどの等級が表示されています。これは、「BNIC(フランスコニャック協会)」が定めた等級で、ブレンドに用いたコニャック原酒のうち、もっとも若い原酒の熟成年数を表しています。
おもな等級表示として、以下のようなものが挙げられます。
◇V.S(Very Special):コント2以上に表示
◇V.S.O.P(Very Superior Old Pale):コント4以上に表示
◇Napoléon(ナポレオン):コント6以上に表示
◇X.O(Extra Old)・Extra(エクストラ):コント10以上に表示
◇X.X.O(Extra Extra Old):コント14以上に表示
ちなみに、コント(Compte)とは最低熟成年数のこと。熟成1年目(4月1日~翌年3月31日)を「コント0」として、2年目は「コント1」、3年目は「コント2」と1年ごとに数が増えていきます。
このルールに従って見ると、たとえばコント2以上の「V.S」は、「最低熟成年数3年以上のコニャック」ということになります。
コニャックの5大銘柄とブランデーの種類
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コニャックの5大銘柄
BNICに登録されているコニャックのメーカーは300社以上、銘柄は800以上もあるといわれています。そのなかでも、世界的に有名な銘柄は以下の5つで、コニャックの「5大銘柄」と呼ばれています。
◇マーテル
1715年設立、最古級の歴史を持つ銘柄として知られています。
◇レミー・マルタン
1724年設立、フィーヌシャンパーニュに特化した銘柄です。
◇ヘネシー
1765年設立、5大銘柄のなかでも圧倒的なシェアを誇ります。
◇クルボアジェ
1809年設立、フランス皇帝ナポレオンが愛した銘柄です。
◇カミュ
1863年設立、ロシア皇帝も愛飲していたといわれる銘柄です。
コニャックを飲むのが初めてで、どの銘柄を飲めばよいのか迷う場合は、まず5大銘柄から試してみることをおすすめします。
コニャックをはじめとしたフランス産ブランデーの種類
ここで、ブランデーについても確認しておきましょう。
そもそもブランデーとは、果実から造られる蒸溜酒のことです。フランスでは、ブドウから造られるコニャックのほかにも、以下のような果実でさまざまなブランデーが造られています。
◇ブドウ:コニャック、アルマニャック、フィーヌ、マール
◇リンゴ:カルヴァドス
◇サクランボ:キルシュワッサー
◇洋ナシ:ポワール
◇杏:アプリコット
◇黄スモモ:ミラベル
なお、フランス産のブランデーを総称して「フレンチブランデー」と呼びます。
ブランデーはフランス以外の国でも造られている
ブランデーはフランスだけでなく、世界中でさまざまな果実から造られています。ここでは、コニャックと同じようにブドウを原料に造られる、各国のブランデーの種類をいくつか紹介しましょう。
◇フランス:コニャック、アルマニャックなど
◇イタリア:グラッパ
◇ドイツ:アスバッハ
◇スペイン:ファンダドール
◇ギリシア:メタクサ
ブドウを原料としたブランデーのなかでも、コニャックとアルマニャックはとくに高品質なことで有名です。
なお、フランス産ブランデーを総称して「フレンチブランデー」と呼ぶと紹介しましたが、ブドウを原料に造られるフランス産ブランデーのうち、コニャックとアルマニャック以外をまとめて「フレンチブランデー」と呼ぶ場合もあります。
コニャックを引き立てるグラスの選び方
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コニャックに適したグラスはブランデーグラス?
コニャックは基本的にストレートで飲むお酒です。グラスは、ボウル部分が丸くて大きい「ブランデーグラス」がよく知られていますが、コニャックに適したグラスの条件は時代とともに変化しています。
じつは、ブランデーグラスのような大きいサイズのグラスは、アルコールが揮発しやすく、香りも飛びやすいため、コニャックを飲むのにあまり適していません。
かつては、大きいグラスに注いで手のぬくもりでコニャックを温め、香りを引き出しながら飲むのが定番だったようですが、技術が進んだ現代のコニャックは品質がよいので、温める必要はないのです。むしろ、温めるとアルコールが揮発して刺激的な香りが立ち、本来の香りを感じにくくなります。
コニャックを飲むときのグラスの条件
コニャックを飲むときは、なるべく小さめのグラスを用意しましょう。目安として、20~30分ほどで飲みきれる量(50ミリリットル程度)を注げるグラスがよいといわれています。
形状は、ボウル部分にくびれがあって飲み口(リム)が外に広がっているチューリップ型がおすすめです。このタイプは、コニャックが少しずつ口の中に流れ込むので、アルコールの刺激がやわらかく感じられるのが特徴。香りを逃しにくい形状のため、豊かなアロマを長くたのしめるといったメリットもあります。
また、手のぬくもりがコニャックに伝わりにくいように、持ち手(ステム)のついたものを選ぶのもポイントです。
コニャックにおすすめのグラス
最後に、コニャックにおすすめのグラスを3つ紹介します。
【コニャックグラス】
商品名に「コニャック」とついた専用グラスは、当然、コニャックを飲むのに適しています。たとえば、リーデルのヴィノムシリーズには、コニャック用のグラスがラインナップされています。
【ウイスキー用のテイスティンググラス】
ウイスキーのテイスティングに使われるグラスは、とくにコニャックの香りをたのしむのに向いています。飲み比べ用のグラスとしてもおすすめです。
【グラッパグラス】
イタリアのブランデー「グラッパ」専用のグラスは、コニャックを飲むときにも活躍します。グラスにくびれがあって香りを逃しにくく、口の中に少しずつ流れ込む形状のため、コニャックの風味を存分に味わえます。
フランスが誇る高級コニャックをじっくりと堪能するなら、やはりコニャックに適したグラスで飲むのがいちばん。ゆっくりと時間をかけて、贅沢な芳香と豊かな味わいをたのしんでみてください。