コニャックとはどんなお酒? 香りや味の特徴から原料、製法、おすすめ銘柄まで紹介

コニャックとはどんなお酒? 香りや味の特徴から原料、製法、おすすめ銘柄まで紹介
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コニャックとは、フランスのコニャック地方で生産されているブランデーの一種。コニャック地方産のブドウを原料とし、厳しい規定をクリアしたものだけがコニャックと名乗れます。今回はコニャックの特徴や製法、等級、種類、飲み方などを紹介します。

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高級ブランデーとして名高いコニャックについて、基礎的な情報をまとめて紹介します。

コニャックとは? ブランデーとの違いも紹介

コニャックはブランデーの一種

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コニャックとはどんなお酒なのか、ブランデーとの違いや歴史なども含めて解説していきます。

コニャックは蒸溜酒であるブランデーのひとつ

コニャックは蒸溜酒(スピリッツ)に分類されるお酒で、ブランデーの一種です。アルマニャックやカルヴァドスとともに、世界三大ブランデーに数えられます。

ブランデーとの違いは、ブランデーはブドウやリンゴ、サクランボ、洋梨などの果実を発酵させ、蒸溜したものを樽などで熟成させて造る蒸溜酒の総称であり、コニャックはブランデーの一部であること。

ブランデーにはさまざまな種類があります。なかでもブドウを原料にしたものを「グレープブランデー」と呼び、そのなかでもフランス西部のコニャック地方で栽培されるブドウを使い、厳しい規定をクリアして造られたものだけが「コニャック」と名乗れます。

ちなみに、「アルマニャック」はフランスのアルマニャック地方でブドウを原料に造られるグレープブランデー、「カルヴァドス」はリンゴを原料に造られるフルーツブランデーです。

コニャックはブランデーの一種

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ウイスキーと似ているけれど同じもの?

コニャックなどのブランデーは、基本的に琥珀色をしていて、見た目やアルコール度数はウイスキーに似ていますが、同じ蒸溜酒ではあるものの両者は別ジャンルのお酒です。ブランデーの原料が果実なのに対して、ウイスキーの原料は大麦やトウモロコシなどの穀物。一般に、コニャックなどのブランデーは芳醇な香りをたのしむもの、ウイスキーは味をたのしむものといわれます。

なぜ似たような色合いをしているかというと、その理由は樽熟成にあり、蒸溜したての無色透明の液体を樽に詰めて熟成させると琥珀色に色づくからです。

なお、ブランデーに分類されるものでも、ブドウの搾りかすで造るイタリアのグラッパのように、木樽で熟成させず無色透明のままで親しまれているタイプもあります。もちろん、グラッパでも木樽で長期熟成されたものは琥珀色をしています。

コニャックはなぜ高級ブランデーと呼ばれるのか?

コニャックが高級ブランデーと呼ばれる理由

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コニャックが高級ブランデーと呼ばれる理由を、歴史とともにひも解きます。

コニャックなどのブランデーの地位が確立したのは近世

ブランデーが本格的に生産されるようになったのは16~17世紀ころ。寒波によりワインの品質が低下し、かつ宗教戦争で安定供給が危ぶまれるなかで、フランスでは輸送に耐えうる品質を保持するためにワインを蒸溜して各地に輸送するようになりました。

これが思いのほか好評で、さらに生産者にとってもワインよりも輸送コストや酒税を安く済ませられる点でメリットがあり、盛んに造られるようになったといわれています。蒸溜したワインのなかでも、とりわけ良質なブドウが採れるコニャック地方産の評価が高く、のちに高級ブランデー・コニャックとして有名になるきっかけになりました。

ヨーロッパでブランデーの支持が高まると、1713年にフランス国王ルイ14世がブランデーを保護する法律を制定。その結果、王侯貴族がブランデーをもてはやすようになり、ブランデーは「王侯の酒」としての地位を確立して、品格と高級感のあるイメージがついたと考えられます。

ちなみに、コニャックの名は地名に由来しますが、ブランデーの語源はノルウェー語の「ブランデヴァイン(焼いたワイン)」です。

コニャックの原料はブドウ

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コニャックを高級ブランデーたらしめるフランスの法的規制「A.O.C.」とは?

コニャックが高級ブランデーとされる秘密は、フランスの法律で定められた基準にあります。

現在、コニャックは、フランスのA.O.C.(Appellation d’Origine Contrôlée/アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ)という認証制度で保護されています。A.O.C.は日本語で「原産地呼称(原産地統制呼称制度・原産地統制名称)」などと訳されます(A.O.C.を略してAOCと表記する場合もあります)。

A.O.C.はいわゆる現産地呼称で、産地や生産者、品質、消費者を保護し、産地偽装を防ぐための制度なので、コニャックのようにA.O.C.で保護されているお酒などの産品は、A.O.C.の規定をクリアする必要があります。規定から外れるものは、たとえ同じ製法で造っていたとしても「コニャック」と名乗ることはできません。

コニャックはA.O.C.で、ブドウ品種や生産地区の分類から、蒸溜法、貯蔵、販売、熟成表示に至るまで、厳しい規制が課せられています。それだけ丹念に手間暇かけて造られるため、高級になるのは当然といえます。

コニャック地方のブドウの生産地区のなかでも最高品質のブドウが育つとされるのが「グランド・シャンパーニュ」。ここで採れたブドウを使用したコニャックは、とくに高級品と見なされます。また最低熟成年数についても規定されていて、最高級品ともなると何十年も寝かせたものもあります。

コニャックと名乗るためには厳しい規定をクリアする必要がある

コニャック地方

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A.O.C.に定められた厳しい規定に従って造られるコニャック。フランスが世界に誇る高級ブランデー、コニャックについて、さらに深掘りします。

コニャックはWTOのTRIPS(トリップス / トリプス)協定で地理的表示が認められたフランスの高級ブランデー

A.O.C.で認められたコニャックは、フランスのボルドーワインやシャンパーニュ、イタリアのパルマハム、スイスのエメンタールチーズなどとともに、TRIPS協定で地理的表示(GI)という制度にも認められています。

TRIPS協定は、WTO(世界貿易機関)で採択された協定のひとつ、国際的な知的財産権を保護するためのもので、WTO加盟国130カ国以上に適用されている協定です。

このような制度で保護されなくてはならないほど価値のあるコニャックは、フランスが世界に誇るお酒なのです。

なお、コニャックは、フランスで、「オー・ド・ヴィー・ド・コニャック」や「オー・ド・ヴィー・デ・シャラント」とも呼ばれます。

コニャック地方

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コニャックのブドウ産地の区分

コニャックは、フランス西部のロワール地方とボルドー地方に挟まれたコニャック地方で造られます。コニャック地方は、土壌の質ごとに以下6つの生産地区に分けられています。

◇グランド・シャンパーニュ
◇プティット・シャンパーニュ
◇ボルドリー
◇ファン・ボワ
◇ボン・ボワ
◇ボワ・オルディネール(ボワ・ア・テロワール)


コニャックのボトルラベルには、これらの地区名(クリュ/畑)が表記されます。なお、グランド・シャンパーニュ50%以上で残りをプティット・シャンパーニュで造ったコニャックは、最上級の証である「フィーヌ・シャンパーニュ」コニャックを名乗ることができます。

コニャックの製法

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コニャックの原料と製法

コニャックの原料に認められているブドウ品種は、ユニ・ブラン、フォル・ブランシュ、コロンバール、モンティル、セミヨンの5つ。補助品種として、フォリニャンの使用(10%以下)も認められています。

コニャックの造り方の流れをかんたんに説明すると、まず原料のブドウを粉砕・圧搾して、果汁に酵母を加え、低温でゆっくりと発酵させます。ここまではワインの造り方と同じです。

次に、発酵後のワインを単式蒸溜機で2回蒸溜します。それから、蒸溜で得たヌーベルと呼ばれる無色透明の液体を樽に詰め、貯蔵・熟成させます。熟成には、フランスのリムーザン産かトロンセ産、アリエール産のオーク樽を使用。ブドウを収穫した翌年の4月1日から起算して最低2年間熟成させなければ販売できません。

熟成後、ブレンダーが厳選した複数の原酒をブレンド(アサンブラージュ)して味わいを調整したのち、瓶詰めされて市場に出回ります。
販売時のアルコール度数は40%以上と義務づけられています。

コニャックの「等級(ランク)」とは?

コニャックの等級

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A.O.C.には、コニャックの熟成表示についても規定されています。最低熟成年数のことを「コント」といい、ブドウを収穫した翌年の4月1日から起算してコント0、翌々年の4月1日から「コント1」と数えていきます。なお、4月1日~翌年3月31日までを1年とみなします。

◇コント00:蒸溜した年 (ブドウ収穫の翌年3月31日までに蒸溜)
◇コント0:樽熟成1年目(翌年4月1日~1年)
◇コント1:樽熟成2年目(翌々年4月1日~1年)
◇コント2:樽熟成3年目(翌々々年4月1日~1年)

※以降、1年ごとにコントの数が増えていきます。

コニャックのボトルラベルには、ブレンドしたもっとも若いコニャックの熟成年数が表記されます。コニャックはコント2以上にならないと販売できないので、ラベルにはコント2以上の等級(クラス)が表記されます。コント別の等級は以下のとおりです。

◇コント2:★★★、Sélection、VS、DeLuxe、Very Special、Millésime
◇コント3:Supérieur、Cuvée Supérieure、Qualité Supérieure
◇コント4:V.S.O.P.、Réserve、Vieux、Rare、Royal、Very Superior Old Pale
◇コント5:Vieille Réserve、Réserve Rare、Réserve Royale
◇コント6:Napoléon、Très Vieille Réserve、Très Vieux、Héritage、Très Rare、Excellence、Suprême
◇コント10:XO、Hors d’âge、Extra、Ancestral、Ancêtre、Or、Gold、Impérial、Extra Old、XXO、Extra Extra Old

※XXO、Extra Extra Oldは最低貯蔵14年以上のコニャックを使用した製品のみ。
※参考文献『日本ソムリエ協会教本2022』

コニャックの5大ブランドとおすすめ商品を紹介

コニャックの5大ブランドについて、おもな商品とともに紹介していきます。

ヘネシー

「ヘネシー」は1765年に誕生したコニャックのブランド。ヘネシー社は、ルイ15世の軍隊に属していたアイルランド将校、リチャード・ヘネシー氏によって設立されました。現在はLVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)グループの傘下にあります。

ヘネシー V.S.O.P. フィーヌ シャンパーニュ

ヘネシー V.S.O.P. フィーヌ シャンパーニュ

出典:MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社サイト

厳選された約60種類のオー・ド・ヴィー(原酒)がブレンドされた、繊細で洗練されたコニャック。「V.S.O.P.」の格付けは、プリンス・オブ・ウェールズ(のちの英国王ジョージ4世)がヘネシー社に注文した際の言葉に由来します。

ヘネシー X.O

ヘネシー XO

出典:MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社サイト

1870年に、世界で初めて「extra Old」の名が与えられたコニャック。上位4地区のブドウで造った約100種類のオー・ド・ヴィー(原酒)がブレンドされています。

ヘネシー リシャール

ヘネシー リシャール

出典:MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社サイト

創業者であるリシャール・ヘネシー氏の名を冠した崇高な逸品。ヘネシー家の価値観を象徴するようなコニャックです。

MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社
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レミーマルタン

コニャックのおすすめブランド

Vania Zhukevych / Shutterstock.com

「レミーマルタン」は、約300年続く家族経営のコニャックメゾン、レミーマルタン社が手がけるブランド。大手コニャックメゾンのなかで唯一、ワイングローワー(ブドウ栽培農家兼ワイン醸造家)をルーツとする企業で、伝統製法を守り、「フィーヌ・シャンパーニュ」コニャックのみに特化した高品質のコニャック造りを続けています。

レミーマルタン1738

ルイ15世に「アコー・ロワイヤル」と呼ばれる勅許を授けられたことに敬意を表して生み出されたコニャック。2014年にサンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティションで金賞をダブル受賞しています。

レミーマルタンXO

「フィーヌ・シャンパーニュ」コニャックの最上級品。400種類以上のオー・ド・ヴィー(原酒)がブレンドされていて、複雑な香りに魅了されます。

ルイ13世

創業当時の国王の名を冠した、レミーマルタン社が手がける最高級品ブランド。100年を超えて受け継がれてきた特別なコニャックで、バカラのクリスタルグラスが圧巻の存在感を放ちます。

レミー コアントロー ジャパン株式会社
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クルボアジェ

19世紀初頭、創業者のエマニュエル・クルボアジェは、時の皇帝ナポレオン1世に、自社のコニャックを献上しました。「クルボアジェ」は、ナポレオン3世の時代に王室御用達の栄誉を授けられています。

クルボアジェ V.S.O.P.

クルボアジェ V.S.O.P.

出典:サントリー株式会社サイト

グラン・シャンパーニュ地区をはじめ、良質な畑からとれるブドウを厳選して造られたコニャック。

クルボアジェ V.S.O.P. ルージュ

クルボアジェ V.S.O.P. ルージュ

出典:サントリー株式会社サイト

薔薇の愛好家として知られる、ナポレオン1世の皇妃ジョセフィーヌ。そんな「薔薇の貴婦人」をイメージして造られた繊細なコニャックです。

サントリー株式会社
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カミュ

「カミュ」は、150年を超える歴史を持つコニャックのブランド。造り手のカミュ社は大家族経営のコニャックメゾンで、1863年の創業から5世代にわたって、ボルドリー地区のブドウを使い質の高いコニャックを造り続けています。

カミュ VSOP

カミュVSOP

出典:アサヒグループホールディングス株式会社

オー・ド・ヴィー(原酒)本来の、フローラルなアロマが織りなす絶妙のハーモニーが魅力。モダンなデザインのスクリューキャップが特徴です。

イル・ド・レ ファインアイランド

イル・ド・レ ファインアイランド

出典:アサヒグループホールディングス株式会社

塩味の濃さが特長の新しいテイストのコニャック。スコッチウイスキー好きにも好まれる風味に仕上げられています。

カミュ ボルドリーXO

カミュ ボルドリーXO

出典:アサヒグループホールディングス株式会社

アサヒグループホールディングス株式会社 アサヒビール株式会社
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マーテル

「マーテル」は、創業1715年のマーテル社が造るコニャックのブランド。マーテル社は大手コニャックハウスのなかでも最古の歴史を誇ります。そのラインナップは、優美さと複雑さ、バランスを備えています。

マーテル VSシングル ディスティラリー

マーテル VSシングル ディスティラリー

出典:ペルノ・リカール・ジャパン株式会社サイト

「マーテル」の定番コニャック。なめらかでフルーティーな味わいが強調されています。

マーテル コルドンブルー

マーテル コルドンブルー

出典:ペルノ・リカール・ジャパン株式会社サイト

1912年に誕生した「マーテル コルドンブルー」は、「伝説のコニャック」として通に愛されています。「飲む香水」と称されるほど華やかな香りが印象的で、日本でもバブル期などは憧れの商品とされていました。2017年 ISC インターナショナル・スピリッツ・チャレンジで金賞を受賞しています。

マーテル シャンテルー

マーテル シャンテルー

出典:ペルノ・リカール・ジャパン株式会社サイト

「マーテル」の最高級コニャック。熟成期間が長いXOクラスで、上品さが漂います。

ペルノ・リカール・ジャパン株式会社
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芳醇な香りと味わいをたのしむ! コニャックのおいしい飲み方

コニャックの飲み方

weyo / PIXTA(ピクスタ)

コニャックなどのブランデーは香りをたのしむお酒なので、とくにV.S.O.P.以上のコニャックは、まずはストレートで飲むのがイチオシです。コニャックグラスやウイスキー用のテイスティンググラスなどに注いで、立ち上る芳醇な香りを堪能してから、少しずつ口に含んで味わいます。ストレートだと強すぎるという場合は氷を入れてロックで飲むのもおすすめ。

アルコール度数は約40%と高いため、ストレートやロックで飲む場合はチェイサーとしてミネラルウォーターなどを用意して、交互に飲むのが上手なたのしみ方です。

なお、熟成年数が若いタイプのコニャックは、カクテルベースにもぴったり。ブランデーをトニックウォーターで割る「ブランデートニック」や、ブランデーにホワイトキュラソーとレモンジュースを加える「サイドカー」など、ブランデーベースのカクテルをぜひ試してみてくださいね。

コニャックは、フランスが世界に誇る高級ブランデー。5大ブランデーをはじめ、高品質のコニャックが世界中で愛されています。機会があれば、芳醇な香りをまとう極上の味わいを、心ゆくまでたのしみたいですね。

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