ワインとは?定義や原料、代表的なブドウ品種についておさらい
ワインとは、一般的にはブドウを発酵させて造るお酒で、日本の酒税法では果実酒に分類されます。赤ワインはカベルネ・ソーヴィニヨンなどの黒ブドウから、白ワインはシャルドネなどの白ブドウからつくられることが多いですが、リンゴやイチゴのような、ブドウ以外の果実を原料にするフルーツワインなどもあります。
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「ワイン」の定義とは?
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ワインは、一般的にはブドウを発酵させて造るお酒のことを指し、日本の酒税法では「果実酒」に分類されます。ワインの原料となるブドウ品種について確認する前に、まずはワインとはどのようなお酒か確認しておきましょう。
ワインは果実を原料とする醸造酒
世界に流通しているお酒は、以下のように「醸造酒」「蒸溜酒」「混成酒」の3つに大別できます。
◇醸造酒
原料に含まれる糖を酵母によってアルコール発酵させたお酒。
日本酒、ビール、ワインなど。
◇蒸溜酒
醸造酒を蒸溜して造ったお酒。
焼酎、ウイスキー、ウォッカ、ジン、ラム、ブランデーなど。
◇混成酒
醸造酒や蒸溜酒に、植物の果実や皮、香料、糖などを加えたお酒。
リキュール、梅酒、ベルモットなど。
このように、ワインは日本酒やビールなどとともに醸造酒に分類されますが、日本酒やビールが「穀物」を原料とするのに対してワインは「果実(ブドウ)」を原料とします。
米や麦などの穀物を原料とする場合は「仕込み水」が必要となるため、水質が味わいに影響しますが、ワインの場合はブドウに多くの水分が含まれているので仕込み水は必要ありません。そのため、ブドウ自体の品質やおいしさがワインの味わいに直結します。
ワインの歴史は紀元前8000年ごろ
ワインの歴史はとても古く、紀元前8000年ごろには現在のジョージアにあたるコーカサス山脈でワインが飲まれていたといわれています。
ワインについて記載された最古の文献は紀元前5000年ごろに書かれた古代メソポタミアの文学作品「ギルガメッシュ叙事詩」といわれ、洪水に備えた船造りに携わった労働者にワインが振る舞われたことが記されています。
また、古代エジプトの壁画などにもワイン造りの道具が描かれ、エジプトでも紀元前4000年ごろにはワイン造りが行われていたことがうかがえます。ワインはメソポタミア、エジプトからギリシャを経てヨーロッパに伝わり、大航海時代に世界中に広まったとされています。
日本ワインの歴史
日本で本格的なワイン造りが開始されたのは、明治時代初期の1870年代のことです。明治7年(1874年)に山梨県甲府市の二人の日本人がワイン醸造を試みたのを皮切りに、明治政府の殖産興業政策の一環として各地でワイン造りが開始されました。とはいえ、醸造技術が未熟で良質なワイン造りが難しかったこともあり、戦前は甘味果実酒の原料となるワインの製造が主流でした。
戦後になり、昭和39年(1964年)の東京オリンピックや昭和45年(1970年)の大阪万国博覧会を経て、国内におけるワインの生産量と消費量が拡大。90年代には本格的なワインの普及が進み、フランスに留学してワイン造りを学ぶ造り手も増加しました。2000年以降は小規模なワイナリーも増え、日本ワインならではの個性を活かした高品質なワインが生み出されています。
ワイン用と生食用はブドウの種類が違う!
ワインの原料はブドウですが、生食用とワイン用ではブドウの種類が異なります。両者には以下のような傾向があります。
◇生食用のブドウ
粒が大きい。果皮が薄く種子が少ない。酸味が控えめ。
◇ワイン用のブドウ
粒が小さい。果皮が厚く種子が多い。酸味が強く、糖度も高い。
ワイン用のブドウは、果皮や種の部分が多いためやや食べにくいものの、しっかりとした甘味もあり、そのまま食べておいしくないというわけではありません。また、ワインによっては、生食用のブドウを原料とするものもあります。
赤ワインの原料と製法
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赤ワインと白ワインでは、使用するブドウ品種や製法が異なります。ここでは、赤ワインの原料と製法を紹介します。
赤ワイン用のブドウは黒ブドウが基本
赤ワインの原料には、基本的に黒ブドウが使用されます。代表的な黒ブドウ品種と味わいの違いを見てみましょう。
【カベルネ・ソーヴィニヨン】
フランスのボルドー地方をはじめ世界中で栽培されている人気の品種。若いうちはしっかりとしたタンニンによる酸味や渋味が感じられ、熟成することで旨味や複雑な風味が増します。
【ピノ・ノワール】
フランスのブルゴーニュ地方を代表する品種で、高級ワイン「ロマネ・コンティ」の原料としても知られます。明るいルビー色となめらかな味わいが特徴です。
【メルロー】
ボルドー地方原産で、世界的に人気の高い品種。渋味や酸味が穏やかで、まろやかな口当たりのワインに仕上がります。
【シラー】
フランスのコート・デュ・ローヌ地方原産の品種で、オーストラリアなどでは「シラーズ」と呼ばれます。タンニンや酸味は強めで、力強い味わいです。
赤ワインの製法
赤ワイン造りでは、まず収穫した黒ブドウを破砕して果梗を取り除き(果梗を取り除かない全房発酵の場合も)、果汁を果皮や種子とともにタンクに入れてアルコール発酵させます。果汁と一緒に果皮や種子を漬け込むことで、果皮や種子由来の色素や渋味、香りを抽出することを「マセラシオン」といいます。これによって、赤ワインは赤い色調となるのです。
アルコール発酵後は乳酸菌の働きでリンゴ酸を乳酸に変える「マロラクティック発酵」を行い、必要に応じて沈殿物を取り除く「澱引き」を行いながら樽やタンクで熟成させます。
白ワインの原料と製法
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赤ワインに続き、白ワインについても原料と製法を見ていきましょう。
白ワインの原料は白ブドウが基本
白ワインの原料には、基本的に白ブドウが使用されます。代表的な品種と味わいの違いを知っておくと、ワイン選びの際などに役立ちます。
【シャルドネ】
ブルゴーニュ地方原産の、白ワイン用ブドウの代表的な品種。世界中で栽培されていて、産地や気候、作り手によってさまざまな表情を見せるのが魅力です。
【ソーヴィニヨン・ブラン】
フランスのボルドー地方やロワール地方のほか、ニュージーランドやカリフォルニアなどでも栽培されています。さわやかでフレッシュな香りが特徴です。
【リースリング】
ドイツを代表する白ワイン用ブドウ品種で、しっかりした酸味とミネラル感のある味わいが特徴。辛口から甘口まで幅広いワインが造られます。
【甲州】
山梨県を中心に栽培される日本固有の品種。1000年以上の歴史を持つといわれ、香りは控えめですっきりとした味わいのワインに仕上がります。
なお、白ワインの原料としては、まれにピノ・ノワールなど黒ブドウの果汁のみが使用されることもあります。
白ワインの製法
白ワイン造りでは、ブドウを圧搾して得た果汁を低温で数時間静置して不純物を沈殿させる「デブルバージュ」を行ってから、上澄みの果汁に酵母を加えてアルコール発酵させます。
白ワインの製法では、アルコール発酵前に果皮や種子を取り除きます。赤ワインのような「マセラシオン」の工程がないため、果皮の色がワインにつくことはありません。
ブドウだけじゃないワインの原料
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一般的に、ブドウの果汁を発酵させた醸造酒をワインと呼びますが、ブドウ以外のフルーツ果汁を発酵させたワインもあり、これらは「フルーツワイン」と呼ばれます。日本の酒税法ではワインもフルーツワインも「果実酒」に分類されます。
「フルーツワイン」はリンゴやイチゴ、モモ、サクランボ、洋ナシなどさまざまな果実から造られます。リンゴを原料とするワインは「シードル」と呼ばれますが、それ以外のフルーツの場合、フルーツの名前で「○○ワイン」などと呼ばれるのが一般的です。
「フルーツワイン」という言葉は、ブドウ以外のフルーツ果汁を発酵させたワインのほか、ブドウのワインにフルーツ果汁を加えたものを指すこともあります。フルーツワインはアルコール度数が低いものが多く、フルーツの甘さや香りが感じられるため、ワイン初心者にとっても比較的飲みやすいかもしれません。
ワインの味は原料のほか産地や造り手など複数の要素で決まる
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ここまで見てきたように、ワインの味は原料によって違いが出ますが、ワインの味を左右する要素は原料だけではありません。
ブドウの品種に加え、ブドウ産地の気候や土壌、地勢などの自然環境(テロワール)や、造り手ごとのブドウの栽培方法や醸造方法、ブドウの収穫年(ヴィンテージ)なども、ワインの味わいに大きく影響します。ワインの味わいは、さまざまな要素が複雑に絡み合って生み出されるのです。
ワインは、原料のブドウ品種によって多様な味わいがたのしめます。ワインの味はさまざまな要素によって影響を受けるため、ブドウの品種だけで決まるものではありませんが、品種ごとの特徴を知っておけばワイン選びの参考になりますね。