ピノ・ノワールは黒ブドウの女王! 魅惑の赤ワインを生む人気黒ブドウ品種の特徴や魅力に迫る

ピノ・ノワールは黒ブドウの女王! 魅惑の赤ワインを生む人気黒ブドウ品種の特徴や魅力に迫る
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ピノ・ノワールは、フランス・ブルゴーニュ地方原産の黒ブドウ品種。古くから存在し、シャルドネなどのブドウ品種の祖先ともいわれています。今回はピノ・ノワールの特徴やおもな産地、ピノ・ノワールで造ったワインの風味などについて紹介します。

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ピノ・ノワールは黒ブドウ品種の女王と称されます。高貴なブドウ品種として世界的に人気のピノ・ノワールについて、知っておきたい基礎知識を紹介していきます。

高評価の黒ブドウ品種ピノ・ノワールとは

ピノノワールは人気の黒ブドウ品種

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ピノ・ノワール(Pinot Noir)は、フランス・ブルゴーニュ地方原産の黒ブドウ品種で、国際品種のひとつです。「Pinot」はフランス語で「松ぼっくり(松かさ)」、「Noir」は「黒」を意味します。房が小さめで松ぼっくりに似ている黒ブドウのため、そう呼ばれるようになりました。

ピノ・ノワールは、4世紀ごろの栽培の記録が残っているほど古い品種で、シャルドネやシラーなどさまざまな品種の祖先であるといわれています。果皮が薄めで病気になりやすく、早熟で、突然変異しやすいなどの理由から、長らく「ブルゴーニュ以外で育てるのは困難」とされてきましたが、近年は技術の向上などによって世界で栽培されるようになっています。

なお、ピノ・グリ、ピノ・ブラン、ピノ・ムニエなど名前に「ピノ」がつく品種は、ピノ・ノワールが突然変異したもので、いずれもワインの原料として使われています。

ちなみに、ピノ・ノワールといえば赤ワインという印象がありますが、赤だけでなく、ロゼワインや、少数派ですが白ワインなども造られています。また、ピノ・ノワールのワインは基本的にピノ・ノワール単一で造られますが、ほかのブドウとブレンドされることもあります。たとえば、「A.O.Cブルゴーニュ・パス・トゥ・グラン」を造る場合は、黒ブドウ品種のガメイなどとブレンド。シャンパーニュ(シャンパン)を造る場合には、シャルドネやピノ・ムニエとブレンドされることもあります。

ピノ・ノワールで造った赤ワインの香りや味わい、選ぶときのポイント

ピノノワールの赤ワインはエレガント

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ピノ・ノワールの赤ワインの香りや味わい、選ぶときのポイントなどをかんたんに紹介します。

ピノ・ノワールの赤ワインはエレガント

ピノ・ノワールで造った赤ワインは全般的に、ルビーやガーネットのような淡い色合いと、華やかなアロマや赤系果実を想わせる複雑な香り、エレガントで繊細な味わいが魅力です。果皮が薄いのでタンニンは控えめないっぽう、酸はしっかりと感じられます。ブドウの糖度が低めなので、ミディアムボディのワインに仕上がりやすいのも特徴です。

長期熟成に向いていて、熟成したもののなかには「官能的」や「妖艶」などと評されるほどの魅力を放つものもあり、その虜になってピノ・ノワールの沼にはまる人もいます。

飲む人を魅了するピノ・ノワールを食事に合わせるなら、鶏肉の赤ワイン煮(コック・オ・ヴァン/coq au vin)や牛肉の赤ワイン煮(ブッフ・ブルギニョン/Bœuf bourguignon)、ブルゴーニュを代表する郷土料理や、焼きとりなどシンプルな味つけの鶏肉料理、ローストビーフ、生ハムなどのおつまみ、ジビエなどがおすすめです。魚料理や和食にも合わせやすいので、機会があれば、ワインの強さとお料理の強さを併せるようにしてペアリングもたのしんでみてください。

ピノ・ノワールの赤ワインを選ぶポイント

ピノ・ノワールは気まぐれさを持つ品種で、ワインのできはその年のブドウの生育状態や、造り手の力量などに左右されやすいといわれます。だからこそ魅せられる醸造家も少なくなく、たゆまぬ努力によって生み出された、多彩な個性を持つピノ・ノワールのワインが、ワイン通をたのしませています。

ただし、ピノ・ノワールは大量生産に向かず、醸造も難しいため、安価で好みの味のワインを見つけるのはなかなか困難です。バランスのよいピノ・ノワールの味わいを求めると、それなりの価格になりがちなのが悩ましいところです。

ピノ・ノワールのおもな産地

ピノノワールのおもな産地

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ピノ・ノワールは、前述のとおり長らく栽培が難しい品種とされてきましたが、近年は、古くからワイン造りが行われてきた旧世界だけでなく、ワイン造りの歴史が浅い新世界でも作られるようになっています。

ピノ・ノワールの銘醸地といえばフランスのブルゴーニュですが、旧世界では、ドイツ南部やイタリアなどでも作られています。なお、ピノ・ノワールは国や産地によって呼び方(シノニム)が異なる場合があり、ドイツでは「シュペートブルグンダー」、イタリアでは「ピノ・ネーロ(ピノ・ネロ)」と呼ばれています。

新世界では、アメリカのオレゴン州やカリフォルニア州をはじめ、ニュージーランドやオーストラリア、南アフリカ、チリ、アルゼンチン、ブラジルなどのなかで、比較的冷涼なエリアで作られています。

日本でも、長野県や北海道を中心に、山梨県や青森県などで栽培されています。ブドウ栽培の気候的北限といわれる北海道では、ピノ・ノワールの栽培は困難とされていましたが、近年は気候変動が影響してか、北海道でも作れるようになっています。

醸造地によって変わるピノ・ノワールの個性

ピノノワールの個性

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ピノ・ノワールは、産地によって個性が違います。おもな銘醸地をピックアップして、それぞれのピノ・ノワールの特徴を紹介します。

フランス・ブルゴーニュ

フランスのブルゴーニュ地方は、世界屈指のピノ・ノワールの産地。比較的冷涼で昼夜の気温差が大きく、乾燥しがちな半大陸性気候に分類され、ピノ・ノワールの生育に適した条件がそろっています。

ブルゴーニュでは基本的に単一品種によるワイン造りが行われていて、ピノ・ノワール100%の赤ワインやロゼワインが生産されています。かの有名な「ロマネ・コンティ」も、ピノ・ノワール100%のワインです。

ブルゴーニュ地方で栽培されているピノ・ノワールは、ブドウ全体の栽培比率の約4割を占めます。なかでもコート・ドール(黄金の丘)地区北部のコート・ド・ニュイは、世界最高峰のピノ・ノワールの産地で、ワインラバー憧れの地となっています。

ブルゴーニュ地方のワイン畑

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ブルゴーニュでは、ブドウ畑が細かく区画分けされていて、それぞれでブドウの味わいが大きく異なるのが特徴です。同じエリアにあっても、区画が変われば個性が変わり、多彩な味わいのピノ・ノワールが生み出されています。

世界に名だたる傑出したワインが目立つことから、「ワインの王」と讃えられているブルゴーニュワイン。ブドウ品種としてのピノ・ノワールにはエレガントで女性的な印象があり、「黒ブドウの女王」などと呼ばれていますが、熟成すると複雑かつ丸くて奥深い、神秘的とさえいえる風格に変化する1本もあるなど、多彩な顔を見せてくれるところもワイン通を魅了する所以かもしれません。

アメリカ・カリフォルニア

カリフォルニア州では、ノース・コーストのメンドシーノやソノマ、ナパ、セントラル・コーストのモントレーやサンベニート、サンタ・バーバラといった、おもに沿岸部で栽培されています。

カリフォルニアのピノ・ノワールのワインは、ピノ・ノワールらしい繊細で複雑なアロマや酸を持つものから、濃厚な果実味があり、味わいに力強さがあるものまでさまざまなタイプが造られています。人気も高く、日本のファンには「カリピノ」と呼ばれることも。

なお、カリフォルニアのピノ・ノワールは、2004年製作の映画『サイドウェイ』に登場し、主人公が称賛したことがきっかけで、世界的にも大きく注目されるようになりました。

ピノノワールの個性は多彩

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アメリカ・オレゴン

高品質なピノ・ノワールで世界の注目を集めている産地がオレゴン州。州のブドウ栽培面積の約6割をピノ・ノワールが占めます。おもな栽培地は、州内のもっとも北に位置するウィラメット・ヴァレーや、サザン・オレゴンの冷涼な地域などです。

オレゴン州はフランス・ブルゴーニュとほぼ同緯度にあり、昼夜の寒暖差が大きいなどの気候条件が似ていて、ピノ・ノワールの生育環境にとても恵まれています。この地のピノ・ノワールで造ったワインは、ブルゴーニュを想い起こさせるような味わいで、果実味のバランスがよく、酸味も感じられるのが魅力です。

ブルゴーニュの名醸造家たちも、すばらしいピノ・ノワールを生むオレゴンに熱い視線を注ぎ、老舗のメゾン・ジョゼフ・ドルーアンや、名門ルイ・ジャドなどが進出してワイン造りに取り組んでいます。

ニュージーランド

ニュージーランドといえばソーヴィニヨン・ブランですが、ピノ・ノワールはそれに次ぐ栽培面積を誇ります。栽培地域は、ブルゴーニュと環境が似ているといわれる北島のマーティンボローや、南島のセントラル・オタゴ地区など。冷涼な気候で昼夜の寒暖差が大きく、ピノ・ノワールの生育に適しているといわれています。

ニュージーランドのピノ・ノワールは、果実味が豊かでいきいきとした酸があり、繊細さや複雑さも備えていて、ブルゴーニュに次ぐ味わいと評されます。とくに、世界最南端のワイン産地といわれるセントラル・オタゴ地区のピノ・ノワールの評価は高く、フランスのブルゴーニュ、アメリカのオレゴンとともに、「世界三大ピノ・ノワールの産地」のひとつに数えられています。

ニュージーランドのピノ・ノワール畑

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オーストラリア

オーストラリアのピノ・ノワールも、ビクトリア州や西オーストラリア州のマーガレットリバー、タスマニア州など比較的冷涼な地域で栽培されています。なかでもビクトリア州のヤラ・ヴァレーやタスマニア州で造られるピノ・ノワールは、とくに高品質なことで有名です。

オーストラリア産ピノ・ノワールのワインは、高価でカルト的な人気を誇るプレミアムワインから、手ごろなテーブルワインまで並び、全体的にハイレベルなのも魅力。豊かな果実味と、フレッシュで繊細な味わいをたのしめます。

チリ

近年注目されているのがチリ産のピノ・ノワール。力強さと繊細さを備えた味わいが特長です。チリでは、冷涼な沿岸部のカサブランカ・ヴァレーやサン・アントニオ・ヴァレーなどで造られています。

チリ産ワイン全体にいえることですが、ピノ・ノワールのワインも比較的安価で味わいもよく、コスパの高さが魅力です。クオリティーの高さが評価され、エアラインのビジネスクラスやファーストクラスで提供されているものもあります。

黒ブドウ品種の女王と称されるピノ・ノワールは、繊細でエレガントな味わいが魅力で、ブルゴーニュを筆頭に世界各地で多彩なピノ・ノワールのワインが造られています。日本国内でもピノ・ノワールの栽培にチャレンジして高評価を得るワイン生産者が出てきています。日本ワインも含め、ぜひいろいろと試してお好みの味を見つけてみてくださいね。

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