世界一高級なワイン「ロマネコンティ」の華やかな歴史
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ブルゴーニュのグランクリュ(特級畑)で作られる最上級品
ワインは作り手の知名度やヴィンテージの良さ、人気や希少性など様々な要因で値段が付きます。中でも今では最低でも1本100万円以上という法外とも思える値段がつく世界一高級なワインがロマネ・コンティです。ワインの知識があまりなくても、ほとんどの人が聞いたことがある一番有名なワインかもしれません。
ロマネコンティとは「ロマネ村にあるコンティ公爵の畑」という意味で、ブルゴーニュの最高ランクであるグランクリュに格付けされている畑です。ただ、いくらグランクリュとはいえ、なぜそこまで高額で取引されているのでしょうか? その理由は高品質かつ流通量の圧倒的な少なさにあります。
ロマネコンティはブドウ栽培に最適とされるたった1.8ヘクタールの畑でのみ造られます。さらに2千年前から続く伝統的な栽培と醸造法を頑なに守り続けながらも進化させ、品質に徹底的にこだわるため、年間6000本ほどしか生産されません。少ない年は4000本に満たないことも。その希少性も値段が跳ね上がってしまう理由になっています。
伝統的な醸造法で、赤ワインの全ての魅力を備える稀有な存在
もちろんロマネコンティが最高級と言われる理由は、希少性だけではありません。その味わいには、力強さ、複雑さ、華やかさ、繊細さ、堂々とした風格があり、ワインに求められる全ての要素が備わっているといわれます。
化学肥料ではなく微生物の力を生かしたコンポスト(堆肥物)を用い、土を押しつぶさないよう農耕馬で耕し、出荷前には卵白を使って清澄するというクラッシックなワイン造りのスタイルを守り続けることで、しっかりと長寿な、ロマネコンティらしいワインを生み出すことができるのです。高級赤ワインといえば、渋みが強く濃厚であるものが多い印象ですが、ロマネコンティはエレガントで透明感溢れる淡いともいえる味わいです。バランスが非常によいため、ある要素が突出することがなく極端に表現すると「球体のよう」「完全なる球体」とまで表現されるワインです。そのため、本来の価値を感じとるためにはワインに慣れ親しんだ経験値が必要とされます。
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1本あたり約50万ドルで落札! その華やかな歴史
2007年5月22日、ニューヨークのクリスティーズで開催された競売では、1985年産ロマネコンティの1ダースが、何と237,000米ドル(1本あたり約2万米ドル)という驚くべき価格で落札されました。これは、ブルゴーニュワインとしては当時の競売史上の最高額に当たります。
2018年に行われたサザビーズのオークションで、1945年ヴィンテージのRomanée-Conti(ロマネコンティ)2本が、それぞれ$558,000(当時のレートで約6,300万円)と$496,000(同5600万円)で落札されたそうです。1945年のロマネコンティは600本しか造られず、第2次世界大戦の終結年で、かつフィロキセラ禍を免れた葡萄樹の最後のワイン。
ロマネ・コンティの葡萄樹は1946年に全面的に植え替えられ、その後に造られた最初のヴィンテージは1952年なので、ロマネ・コンティに1946年から1951年までのヴィンテージは存在しないことになっています。
このようにロマネコンティはあまりに高額で希少な存在であるため、時に偽物も出回り、世間を騒がせます。2013年にはロマネコンティを少なくとも400本(200万ユーロ=約2億6800万円相当)偽造していたヨーロッパの犯罪組織が摘発されました。またニューヨークでも2013年に「ロマネコンティ博士」と呼ばれるワイン収集家がロマネコンティなど超高級ワインの偽物を製造、販売したとして有罪になりました。自宅の地下で偽物の超高級ワインを作り、オークションに次々と出品、数百万ドルも荒稼ぎしたそうです。
こういった逸話に事欠かないロマネコンティ、「飲むより語られることの方が多いワイン」と呼ばれる所以です。
もし「購入してみよう」と思ったら、信頼できる販売店に相談しましょう。
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