「突き出し」とは?意味や「お通し」「先付け」との違いをわかりやすく紹介

「突き出し」とは?意味や「お通し」「先付け」との違いをわかりやすく紹介
出典 : IZUMI / PIXTA(ピクスタ)

「突き出し」とは、居酒屋さんや料理店などで酒の肴(さかな)として最初に出てくる料理のこと。おもに関西圏をはじめとする西日本で親しまれ、「お通し」と同義で使われる場合もあります。ここでは、「突き出し」の意味や役割、「お通し」「先付け」との違いなどについて紹介します。

  • 更新日:

「突き出し(突出し)」はさまざまな意味を持つ言葉ですが、居酒屋などで供される「突き出し」についてみていきます。

「突き出し」の意味と語源

突き出しは料理が出てくる前に提供される副菜

runin / PIXTA(ピクスタ)

「突き出し(突出し)」とは、居酒屋さんや料理屋さんで最初に出てくるちょっとした料理のこと。「付き出し」と表記されることもありますが、「突き出し/突出し」が正解のようです。
似た言葉に「お通し」があり、「突き出し」はおもに関西圏など西日本で、「お通し」はおもに関東圏で使われます。

注文に関係なくお客さんに突き出していたことから「突き出し」と呼ばれるようになったという説もありますが、語源は定かではありません。

「突き出し」には、でっぱりや相撲の技など、複数の意味があります。江戸時代の遊郭では、遊女が初めての客をとることや、その遊女そのものを「突き出し」と呼んでいたことも。
古くからさまざまなシーンで使われてきた言葉ですが、ここでは酒の肴として出てくる料理としての「突き出し」に着目し、詳しくみていきます。

「突き出し」と「お通し」の違いは?

突き出しとお通しの違い

freeangle / PIXTA(ピクスタ)

「突き出し」と似た言葉に「お通し」がありますが、ふたつの言葉にはどのような違いがあるのでしょうか。

「突き出し」は関西をはじめとする西日本で、「お通し」はおもに関東で使われる

「突き出し」と「お通し」を同じ意味とする辞書もありますが、あえて両者の違いを挙げるとすれば、使われている地域の違いでしょう。NHK放送文化研究所の調査によると、「お通し」がおもに関東圏で使われ、全国でも広く認識されているのに対して、「突き出し」は関西圏をはじめとする西日本で使われることが多いといいます。

ほかにも両者の違いを、「突き出し」は関西弁、「お通し」は関東の方言とする説や、居酒屋チェーンやお店ごとの呼び方とする説などがあり、飲食業界やメディアでもはっきりとした使い分けの基準は設けられていないのが現状のようです。

突き出しまたはお通し

mits / PIXTA(ピクスタ)

「お通し」は提供側の認識やニュアンスに微妙な違い

同じ意味で使われることのある「突き出し」と「お通し」。どちらも料理が提供される前に酒の肴として出てくる小皿や小鉢を指す言葉ですが、提供側の認識やニュアンスに微妙な違いがあります。

「突き出し」は、注文に関係なく最初に提供されるちょっとした料理を指すのに対して、「お通し」は注文後に出される一品で、注文を通したという意味合いを持つとされます。

といっても、近年は注文前に「お通し」が出てくるお店も増え、「突き出し」と「お通し」の違いは薄まってきました。

「突き出し」と「先付け」の違いは?

懐石料理の先付け

ペイレスイメージズ 2 / PIXTA(ピクスタ)

「突き出し」と似たものにもうひとつ、「先付け(さきづけ)」という料理があります。「突き出し」や「お通し」と同じく、メインの料理の前に提供されるかんたんな料理を指す言葉ですが、「先付け」は日本料理のコースの最初に出てくる料理にも使われる点が「突き出し」や「お通し」とは異なります。

もともとは懐石料理の最初の料理として生まれた「先付け」。懐石料理の基本は一汁三菜ですが、刺
身やなますなど、ご飯と汁物の向こう側(奥)に置く「向付け(むこうづけ)」よりも先に出されることから、「先付け」と呼ばれるようになったそう。

「突き出し」や「お通し」の役割

突き出しやお通しの役割

midori_chan / PIXTA(ピクスタ)

「突き出し」や「お通し」はなぜ提供されるのでしょうか。その役割に、次の点が挙げられます。

◆おもてなしの心を示す接客アイテム
◆飲み物や注文した料理が提供されるまでのつなぎ
◆お店のコンセプトや魅力を伝えるプレゼンツール
◆テーブルチャージ/席料の一環


お客さん目線でみると、「小腹を満たせる」「空腹のまま飲まずに済む」というメリットもあるでしょう。地域の素材や郷土料理が魅力のお店なら、「突き出し」や「お通し」でお店の個性に触れることで、次のオーダーがしやすくなるかもしれません。

「突き出し」や「お通し」にはさまざまな小料理が採用され、提供される料理の種類はお店によっても日によっても変わってきます。

「突き出し」や「お通し」としてよく提供されるメニューに、以下のようなものがあります。

◇ポテトサラダ
◇枝豆
◇もつ煮
◇生キャベツ
◇きんぴらごぼう
◇刺身
◇冷奴
◇和え物
など

人によっては、お気に入りの「突き出し」「お通し」もあるでしょう。しかし「突き出し」や「お通し」は選べない場合がほとんどです。出される料理をたのしむ心構えで臨むのがよいかもしれません。

外国にも「突き出し」や「お通し」に似た習慣はある?

アミューズと呼ばれるフランス料理の前菜

Nana / PIXTA(ピクスタ)

「突き出し」や「お通し」は日本独自の文化です。部分的に似た文化は海外にもありますが、外国から訪れた人に一言で説明するのは難しいかもしれません。

たとえば、最初に提供される小皿料理で、おもてなしの心やお店の特長を伝える役割を担っている点においては、「おたのしみ」の意味を持つフランス料理の「アミューズ(アミューズブーシュ)」が似ているかもしれません。その他の国には「突き出し」や「お通し」に通じる言葉がないので、「アペタイザー(前菜)」と紹介しておくのがわかりやすいでしょう。

外国人観光客にとっての一番の難題は、「突き出し」や「お通し」が持つ席料としての側面です。「注文していない料理にお金がかかる」ということが受け入れられず、トラブルに発展するケースもあるといいます。混乱を回避するためには、席料(テーブルチャージ)が含まれることを事前に伝えておくのもひとつの手ですね。

イタリア文化に精通している人なら「コペルト(=席料)」を例に挙げ、チップ文化になじんでいる人ならチップの代わりと説明してもよいかもしれません。

「突き出し」や「お通し」は断れる?

突き出しやお通しは断れる?

プラナ / PIXTA(ピクスタ)

「突き出し」や「お通し」は断ることもできますが、席代が含まれている場合は、会計に料金が加算される可能性もあります。突き出し・お通し代を含む料金システムはお店によって異なりますが、どうしても断りたい場合は席代を支払う覚悟でスタッフに相談してみましょう。

アレルギーなどの理由で「突き出し」や「お通し」が食べられないときも、スタッフに相談してみてください。場合によっては、ほかのメニューに変えてもらえるかもしれません。

お店によっても異なりますが、「突き出し」や「お通し」の料金の相場は居酒屋なら300〜500円程度。相場より安いお店ももちろんありますが、1,000円を超えるケースもあります。法律的には、料金システムについて問い合わせてもトラブルが生じることはないはずなので、料金が気になる場合はオーダー前に確認しておきましょう。

「突き出し」や「お通し」はおもてなしの心が込められた日本独自の文化。飲食店の個性が発揮されやすい一品でもあるので、味覚が研ぎ澄まされているうちにしっかり味わって、とっておきを探してみてください。

おすすめ情報

関連情報

広告掲載について

ビア検(日本ビール検定)情報

イベント情報

おすすめ情報

Ranking ランキング

おすすめの記事