「左党(さとう)」はお酒好きな人を表す粋な言葉! 意味や語源、反対語、言い換え表現なども確認
「左党(さとう)」とは、お酒が好きな人や酒飲みの仲間を表す言葉。古い文献をひもとくとお酒にまつわる言葉がたくさん登場しますが、「左党」もまた世紀を超えて使われてきた粋な表現です。ここでは、「左党」の意味や語源、反対語、言い換え表現などを紹介します。
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「左党」の意味や読み方、語源からみていきましょう。
「左党」とは?
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日本語にはお酒を飲む人を表す言葉がたくさんありますが、「左党」もそのひとつです。意味や由来、反対語などを確認していきましょう。
「左党」はお酒飲みを表すおしゃれな言い方!
「左党」は、お酒好きやお酒飲みの仲間を表す言葉。読みは「さとう」ですが、「ひだりとう」と読む場合もあります。
「左党」は、江戸時代の人たちが好んだ洒落(しゃれ)言葉のひとつとして定着したといわれています。
古墳時代から使われている大工道具にノミ(鑿)があります。江戸時代の大工さんは、このノミを左手持ち、右手に持った槌(ツチ)で打ったことから、左手を「ノミ手」と呼んでいました。粋な語呂遊びを好む江戸時代の人は、「ノミ手」を「飲み手」とかけ、お酒飲みのことを「左利き(ひだりきき)」と呼ぶようになりました。
これが転じて「左党」という言葉が生まれ、庶民の間で使われるようになったといわれています。
「左党」の語源となった大工道具はこれ!
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DIYに縁がない人のために少しだけ補足しておくと、「左党」の語源となった「ノミ」とは、木材などに穴を開けたり、溝を作ったりするときに用いる工具で、多くの場合は柄(ツカ)の先を槌(ツチ)と呼ばれる木製のハンマーやトンカチ(金槌/カナヅチ)で叩いて使います。
ノミの柄を打つ際に手を叩いたり、木材を傷つけたりしないよう、利き手に槌を、反対の手にノミを持つのが一般的です。日本の武家社会では、左利きの人も右利きに矯正するのがならわしでした。この風習は、庶民の間にも浸透していたと考えられています。こうした時代背景を押さえておくと、ノミを持つ「ノミ手」が利き手と逆の左手を指していたことも合点がいきそうですね。
「左党」に対して、お酒を飲めない人を「右党」と呼ぶ
お酒飲みを表す「左党」に対して、お酒が飲めない人を「右党(うとう)」といいます。「ノミ手」から「左党」という言葉が派生し、その反対語として生まれた言葉だと考えられています。
「右党」には、お酒が飲めない人のほかに、甘いものが好きな人という意味もあるので、覚えておくとよいでしょう。
お酒好きな人を何と呼ぶ? 「左党」以外のツウな表現
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「左党」のほかにも、お酒好きな人を表す言葉はたくさんあります。「左党」の語源にもなった「左利き」や「上戸(じょうご)」はその一例です。
「蟒蛇(うわばみ)」「ザル」など、お酒が好きなうえにたくさん飲む人や、お酒が好きで酔っ払っている人を表す言葉も多数存在します。
「上戸(じょうご)」
「左党」と同じくお酒が好きな人を表す言葉ですが、「上戸」にはお酒がたくさん飲める人という意味もあります。また、「笑い上戸」や「泣き上戸」のように接尾語的に使用して、お酒に酔ったときに現れる酒癖の状態を表す場合もあります。
「上戸」は「左党」よりも古くから使われている言葉で、大宝元年(701年)制定の法典『大宝律令』にも登場しています。もとは行政上の基礎単位で、当時は使役や兵役の義務を果たせる成年男子の人数で、階級が「大戸(たいこ)」「上戸」「中戸」「下戸」の4つに分けられていました。江戸時代の文献によると、婚礼の際に供されるお酒の量もこの階級に応じて決められていたようです。
「上戸」は比較的豊かな家を指す言葉。お酒飲みを表すようになってからは、貴族社会で用いられていた時代もあったといいます。
なお、「上戸」の反対語は「下戸(げこ)」。お酒を飲めない人やお酒が嫌いな人を指しますが、「左党」の反対語の「右党」が持つ甘党の人という意味はありません。
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「左利き(ひだりきき)」
「左党」の同じ語源を持つ「左利き」も、お酒好きな人を表す言葉として使われています。お酒が強いことを表すこともあります。
ちなみに、「左利き」の反対語は「右利き」という印象がありますが、お酒を飲まない人を「右利き」ということはあまりないようです。
お酒飲みを表すユニークな表現も
お酒が好きな人を表す言葉のほかにも、お酒飲みを表す日本語はたくさんあります。
<酒飲みを表す表現>
◆酒仙(しゅせん)
俗世のことにとらわれずに、お酒をたのしむ人を「酒仙」といいます。お酒に強い人を表すこともあります。
◆大戸(たいこ)
『大宝律令』で定められた階級のうち、最上位にあたるのがこの「大戸」は、「上戸」と同じくお酒がたくさん飲める人を表します。
◆蟒蛇(うわばみ)
ニシキヘビやアナコンダ、伝説の生き物ヤマタノオロチのような大きなヘビを指す言葉ですが、ヘビは多くを飲み込むことから、大酒飲みを表すようになりました。
◆ザル/ワク
目の粗い器のザル(笊)のように、いくら流し込んでもお酒が体に溜まらないことから、飲んでも酔わない大酒飲みの意味で使われます。
網目すらなく、お酒が引っかかる余地がない、つまりザルをしのぐ大酒飲みのことを「ワク(枠)」と表現することがあります。
<酔っ払いを表す表現>
◆ずぶ六
ぐでんぐでんに酔っ払った人、酩酊状態の人を指す言葉。「六」はろくでなしのことです。
◆とら(虎)/おおとら(大虎)
泥酔した人を指す言葉。お酒にひどく酔って怖いもの知らずになることを「虎になる」と表現します。
「左党」を英語で表現すると?
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「左党」を自動翻訳にかけると、「left party」「left wing」と表示されることがあります、これは「左党」のもうひとつの意味である左派政党の英訳です。
お酒飲みとしての「左党」を英語で表現すると、以下のようになります。
◇drinker
◇sake lover(wine lover、whisky loverなど)
◇a person who likes alcohol
ちなみに「大酒飲み」を英語にすると、「heavy drinker」「drink like a fish」などと訳されます。
【左党の心得】適量を知ってお酒と上手につきあおう
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「左党」の心得として念頭に置きたいのが、健康に配慮したお酒のたしなみ方です。
厚生労働省は、2024年2月に発表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」のなかで、「アルコールのリスクを理解した上で」「純アルコール量に着目しながら、自分に合った飲酒量を決めて、健康に配慮した飲酒を心がけることが大切です」としています。
純アルコール量は以下の数式で算出できます。
純アルコール量(g)=摂取量(ml) × アルコール濃度(度数/100)× 0.8(アルコールの比重)
たとえば、アルコール度数5%のビール500ml中に含まれる純アルコール量は、以下のように求められます
500 × 5/100×0.8=20(g)
なお、厚生労働省は上のガイドラインにおいて、「生活習慣病のリスクを高める量」を「1日当たりの純アルコール摂取量が男性 40g以上、女性 20g以上」としています。
(参考資料)
厚生労働省|健康に配慮した飲酒に関するガイドライン
Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)
自分に合った飲酒量(適量)は、身体的な性別や年齢、体質、体の大きさなどによって異なります。飲酒による健康への影響も人それぞれですが、なかにはアルコールの影響を受けやすい人もいるので、注意は欠かせません。
お酒との上手なつきあい方も、「左党」の心得のひとつです。飲酒によるリスクを正しく知り、自分に合った飲酒量を把握したうえで、長く健康にお酒をたのしみたいものですね。
(参考資料)
厚生労働省|習慣を変える、未来に備える あなたが決める、お酒のたしなみ方(男性編)
厚生労働省|習慣を変える、未来に備える あなたが決める、お酒のたしなみ方(女性編)
「左党」は、お酒が好きな人を表す粋な言葉。「左党」を自認するなら、粋なお酒の飲み方にもこだわりたいですね。健康に配慮した飲酒について、いま一度確認して、長くたのしくお酒とつきあっていきましょう。