日本酒の「盛りこぼし」とは? その意味や飲み方を知ろう!《SAKE DIPLOMA監修》
日本酒の注ぎ方には、グラスを升やお皿に乗せるなどして、あえてあふれるまで注ぐ「盛りこぼし」と呼ばれるものがあります。この不思議な習慣である「盛りこぼし」のルーツや、飲み方などについて紹介します。
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盛りこぼしは、そもそもはお店のサービス精神から
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日本酒を注ぐときの「盛りこぼし」とは、グラスのふちギリギリまで注いで升やお皿に少しこぼす注ぎ方のこと。“盛り切り”を意味する「もっきり」とも呼ばれます。
盛りこぼしは、もともとは日本酒を量り売りしていた時代の習慣といわれています。日本酒1合分の料金を支払った際に、グラスのギリギリまで日本酒を注いだものの、それでは1合に満たなかったことから、受け皿に升などを使ってあふれさせ、量を調整したのだとか。
それが転じて、日本酒を提供するお店が“どれくらいサービスしてくれるのか”、という気前のよさを示すものに変化していったといわれています。当然ながら、日本酒好きにとってはありがたい注ぎ方で、今では多くの居酒屋や日本料理店などで行われるようになっています。
盛りこぼしの正しい飲み方
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日本酒の盛りこぼしは、自然発生的に広まったものだけに、注ぎ方や飲み方に「これが正しい」という決まりはとくにありません。とはいえ、やはりお店からの粋な計らいですので、飲むときにも粋に振る舞いたいもの。そこで、一般的にスマートとされている盛りこぼしの飲み方を紹介しましょう。
まず、グラスを持ち上げて、日本酒がこぼれないようにグラスに口をつけます。このとき、日本酒をグラスから少しだけ升やお皿にこぼすとスムーズです。また、グラスを持ち上げたときに周りについている日本酒は、おしぼりで拭っても構いません。そしてグラス半分くらい飲んだところで、升やお皿にこぼれている日本酒をグラスに注いで飲みましょう。
しかし、これはあくまでこれは一般的なたのしみ方です。こぼすことがなければ、そのほかのたのしみ方でもOKです。
盛りこぼしは升酒でたのしむのが本格派?
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日本酒の盛りこぼしについて、一般的とされている飲み方を説明しましたが、最初にグラスを持ち上げて少し日本酒をこぼしたあとは、先に升のほうから飲み干してもよいとされています。
ちなみに、升をもつときは、底を親指以外の指で支え、親指で升のふちをもつとスマートです。また、口をつけるのは角ではなく辺の平らな部分が正解といわれています。しかし、それを気にしすぎてこぼしてしまっては台無しですから、角から飲んでも問題ありません。
「盛りこぼし」という習慣は日本酒好きにはうれしいものです。飲み方について最初は戸惑うかもしれませんが、厳しいマナーはないので、肩ひじをはらずに味わってみてくださいね。
監修者
工藤貴祥
(一社)日本ソムリエ協会認定ソムリエ・エクセレンス、同SAKE DIPLOMA、きき酒師、焼酎きき酒師、日本ビール検定2級。29年以上お酒業界にいて、特に日本酒愛、ワイン愛、ビール愛が止まらない。もちろんこれ以外のお酒も(笑)。料理やアウトドア、古典酒場巡りが趣味。