福岡の日本酒【若波(わかなみ):若波酒造】姉弟中心の5人チームで醸す旨い酒
「若波」は、福岡県大川市の蔵元、若波酒造の主要銘柄です。製造統括の姉と4代目当主の弟の姉弟を中心とする「チーム若波」が、力を合わせて醸しています。軽快でやわらかくキレのよい日本酒「若波」。名前の由来なども含め、その魅力を紹介します。
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「若波」を醸す「チーム若波」とは
出典:若波酒造サイト
「若波」の蔵元の歴史と名前の由来
「若波」は、福岡県の南部に位置する大川市の蔵元、若波酒造の主要日本酒ブランドです。
若波酒造は、明治26年(1893年)に創業した造り酒屋、今村本家酒造の分家として、大正11年(1922年)に誕生しました。
100年近く酒を醸してきた蔵のそばには、「筑紫次郎(つくしじろう)」の異名を持つ九州一の大河川、筑後川(ちくごがわ)が流れています。「若波」という銘柄名は、この筑後川の川面に立つ若々しい波から名づけられたものです。そこには、歴史にとらわれず若い波を起こしていこうという想いが込められています。
「若波」は精鋭5人の「チーム若波」が醸す
若波酒造は、8代目杜氏で現在は製造統括をしている今村友香氏と、その弟で4代目当主となった今村嘉一郎氏を中心とする蔵元です。現在は、今村姉弟に9代目杜氏の庄司隆宏氏と、蔵人の池口茂雄氏、筬島広美氏を加えた精鋭5人が、「チーム若波」として酒造りに励んでいます。
日本酒「若波」は、チーム若波が始動した平成22(2010)酒造年度を機に、酒質を全面刷新し、限定流通商品として生まれ変わりました。
チームが酒造りの信条としているのは、「人の輪と絆があってこそよい仕事、よい酒が生まれる」という意味の言葉、「和醸良酒(わじょうりょうしゅ)」です。この言葉を胸に、チーム若波が力を合わせて醸す現在の「若波」は、旨い酒として日本酒ファンのみならず若い世代にも支持を広げています。
「若波」はどんな日本酒?
出典:若波酒造公式フェイスブック
「若波」のコンセプトとは
「若波」は、滑らかさと軽やかさ、そしてやわらかな味わいとキレのよさを併せ持つ日本酒です。
そのコンセプトは、「味の押し波・余韻の引波」。ぐっと押し寄せる味わいと、すっと引く余韻が、穏やかな波に身を任せて漂っているような心地よさへと誘います。
「若浪」は、冷や(常温)やぬる燗など、酒だけでも十分たのしめますが、香りや味が主張し過ぎないので、食中酒としても力を発揮します。
「若波」に使われている米「壽限無(じゅげむ)」
「若波」の原料米には、福岡県糸島産の酒造好適米「山田錦」や、同じく酒造好適米の「壽限無」「雄町(おまち)」のほか、一般米ながら日本酒造りに適した、福岡生まれ福岡育ちの酒米「夢一献(ゆめいっこん)」などが使用されています。
このうち「壽限無」は、福岡の蔵元と農家が共同で開発した比較的新しい品種です。「山田錦」と「夢一献」を親に持ち、心白(米の中心)が大きめでやわらかいといった特徴があります。生産量がまだ少ない「壽限無」を用いる蔵元は、生産地であり酒造りが盛んな福岡県内でも、若波酒造のほか数軒にとどまります。
「若波」の蔵元が取り組んでいる酒造りの工夫
若波酒造では、温暖な福岡にあっても、めざす酒質の日本酒を醸すために、低温を保ちながら「若波」を仕込むための工夫を随所にこらしています。
製造工程で仕込み水を使う際は、凍らせてクラッシュアイスにしてからタンクに投入することで、低温を維持しています。また、酒造りのシーズン前に麹造りを開始し、麹を冷凍保存。味の変化がほとんどないというこの冷凍麹は、仕込みの際、発酵温度を下げる役割も担っています。
こうした細やかな工夫は、洗米や搾り、火入れなどの各工程でも行われています。おいしい酒を飲んでほしいという「チーム若波」の想いが、こうしたていねいな酒造りにつながっているのです。
「若波」とともに蔵元が醸す旨い酒
出典:若波酒造公式フェイスブック
若波酒造のもうひとつのブランド「蜻蛉(とんぼ)」
「若波」と並ぶ、若波酒造のもうひとつの日本酒ブランドが、「夢一献」を60%まで磨いて使用した特別純米酒「蜻蛉」です。
神に仕える生き物として、古くから縁起がよいとされるトンボにあやかり、この名がつけられました。
スッキリとした米の旨味とキレのよさが特徴で、「蜻蛉のように酔酔(すいすい)と」というコンセプトのとおり、スイスイと杯が進みます。穏やかなその味わいは、食中酒としてもおすすめです。
「蜻蛉」のラインナップには、この酒を通年取り扱う酒販店だけに案内される、季節限定酒もあります。春には無ろ過生原酒の「黒蜻蛉」、夏にはにごり酒の「青蜻蛉」、そして秋にはひやおろしの「赤蜻蛉」が登場。希少価値が高い「蜻蛉」たちを見つけたら、ぜひつかまえて飲んでみてくださいね。
「若波」の8代目杜氏が造った「あまおう」の酒
若波酒造の製造統括、今村友香氏は、平成14(2002)年、現会長で3代目当主の父、今村壽男氏が体調を崩したことをきっかけに蔵に入りました。
はじめは事務をしていましたが、醪(もろみ)が少しずつ変化する発酵の様子を見るうちに興味が芽生え、酒造りを本格的に学び始めました。そして、平成18(2006)酒造年度から8代目杜氏に就任。以来、蔵の酒造りを担っています。
友香氏が最初に手掛けた酒が、福岡県産の高級イチゴを使ったリキュール「あまおう -苺のお酒-」です。イチゴは酸化が早く、酒の原料に向かないとされる果物。しかし、友香氏は1年にもおよぶ試行錯誤の末、余計なものを添加しない、あまおうのリキュールを完成させたのです。
この、果物を使ったリキュールが好評だったことから、博多あまおうや、福岡の梅、大分のユズなどを使った、九州特産がテーマの「Qdamon(くだもん)」シリーズに受け継がれています。
若波酒造のチーム若波が醸す「若波」は、寄せては引く波のような、心地よい調べをたのしめる酒です。代表銘柄「若波」はもちろん、食中酒としても人気の「蜻蛉」やリキュールシリーズも、ぜひたのしんでみてくださいね。
製造元:若波酒造合名会社
公式サイトはこちら
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