【2024年最新版】発泡酒とビールの違いは?2026年の酒税法改正でどう変わる?

【2024年最新版】発泡酒とビールの違いは?2026年の酒税法改正でどう変わる?
出典 : NOV / PIXTA(ピクスタ)

「発泡酒」と「ビール」の違いは、おもに使用できる原料と麦芽比率にあります。2024年6月現在は酒税率も違いますが、2026年10月の酒税法改正で統一されます。今回は、「発泡酒」と「ビール」の違いをさまざまな角度から確認しながら、2026年の酒税法改正でどう変わるかをみていきます。

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「発泡酒」と「ビール」の違いがわからない人にも、それぞれの定義や特徴をわかりやすく紹介します。

「発泡酒」と「ビール」の違いは?

発泡酒とビールの違い

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「発泡酒」と「ビール」のおもな違いは、麦芽の使用割合(麦芽比率)と使用できる原料にあります。日本の酒税法では、いずれも「発泡性酒類」の1品目ですが、上の違いによって明確に区分し、それぞれに異なる酒税を設けています。

「発泡酒」と「ビール」の違いを知るにあたり、まずは酒税法上の定義を確認しておきましょう。

酒税法上の「発泡酒」の定義

「発泡酒」は酒税法第3条18において、以下のように定義されています。

発泡酒:
次に掲げる酒類(第七号から前号までに掲げる酒類を除く。)で発泡性を有するもの(アルコール分が二十度未満のものに限る。)をいう。
(イ) 麦芽又は麦を原料の一部とした酒類(麦芽又は麦を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留したものを原料の一部としたものを除く。)
(ロ) (イ)に掲げる酒類以外の酒類で、ホップ又は財務省令で定める苦味料を原料の一部としたもの
(ハ) (イ)又は(ロ)に掲げる酒類以外の酒類で、香味、色沢その他の性状がビールに類似するものとして政令で定めるもの

出典 e-Gov法令検索|酒税法

もう少しわかりやすくいうと、

◇麦芽比率が50パーセント未満のもの
◇ビールの製造に認められない原料を使ったもの
◇麦芽や麦を原料の一部に使用したもの


を「発泡酒」と呼んでいます。
「ビールの製造には認められない原料を使ったもの」には、麦芽比率が50パーセントを超えるものも存在します。

発泡酒の定義

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酒税法第23条では酒税の税率を酒類の種類に応じて定めていますが、「発泡酒」の税率は麦芽比率によって以下の3分類に区分し、異なる税額を割り当てています。
(2024年7月現在)

(1)麦芽比率が25パーセント以上50パーセント未満(アルコール分10度未満)
(2)麦芽比率25パーセント未満(アルコール分10度未満)
(3)麦芽およびホップを原料の一部として発酵させた発泡酒(麦芽比率50%未満の もの)に、大麦または小麦を原料の一部として発酵させたアルコール含有物を蒸溜したスピリッツを加えたもので、エキス分が2度以上のもの、または、糖類、ホップ、水および一定の物品を原料として発酵させたものでエキス分が2度以上のもの(★)

ビールの定義

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酒税法上の「ビール」の定義

「ビール」は酒税法第3条12において、以下のように定義されています。

ビール:
次に掲げる酒類でアルコール分が二十度未満のものをいう。
(イ) 麦芽、ホップ及び水を原料として発酵させたもの
(ロ) 麦芽、ホップ、水及び麦その他の政令で定める物品を原料として発酵させたもの(その原料中麦芽の重量がホップ及び水以外の原料の重量の合計の百分の五十以上のものであり、かつ、その原料中政令で定める物品の重量の合計が麦芽の重量の百分の五を超えないものに限る。)
(ハ) (イ)又は(ロ)に掲げる酒類にホップ又は政令で定める物品を加えて発酵させたもの(その原料中麦芽の重量がホップ及び水以外の原料の重量の合計の百分の五十以上のものであり、かつ、その原料中政令で定める物品の重量の合計が麦芽の重量の百分の五を超えないものに限る。)

出典 e-Gov法令検索|酒税法

もう少しわかりやすく、簡潔にいうと、

◇麦芽とホップ、水を原料に使って発酵させたもの(麦芽比率100パーセント)
◇麦芽、ホップ、水に加えて、米や果実、コリアンダーなどの香味料といった特定の副原料を使用し、発酵させたもので、麦芽比率50パーセント以上のもの


以上を「ビール」としています。
「ビール」に区分される酒類については、1キロリットルあたり一律で181,000円の税額が定められています。

ビールに使える副原料は法令で定められている

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なお、法令で定める物品には、以下の副原料が挙げられます。

<ビール造りに使用が認められたおもな副原料>
◇麦、米、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、でん粉、糖類または財務省令で定める苦味料もしくは着色料
◇果実(果実を乾燥させたもの・煮詰めたもの・濃縮させた果汁を含む)、またはコリアンダー、コリアンダーの種、その他の財務省令で定める香味料
◇ビールに香りや味を付けるために使用するもの
 ◆香辛料(こしょう、シナモン、クローブ、山椒など)
 ◆ハーブ(カモミール、セージ、バジル、レモングラスなど)
 ◆野菜(さつまいも、かぼちゃなど)
 ◆そば、ごま
 ◆はちみつその他の含糖質物、食塩、味噌
 ◆花、茶、コーヒー、ココアもしくはこれらの調整品
 ◆牡蠣、昆布、わかめ、かつおぶし

これらの物品は酒税法施行令(第6条)や酒税法施行規則(第4条第2項)で確認することができます。

(参考資料)
国税庁|お酒に関する情報 ビール・発泡酒に関するもの

新ジャンルはどうなった?

metamorworks / PIXTA(ピクスタ)

「新ジャンル」「第三のビール」はどうなった?

発泡性酒類のうち、上の(★)に当てはまるものを2023年9月30日までは「新ジャンル」と呼んでいました。2023年10月の酒税法改正以降は品目が「発泡酒」に変わり、事実上「新ジャンル」はなくなりました。

2023年10月以降は、かつて「新ジャンル」とされていた発泡酒のうち、以下の条件に該当するものがそれぞれ発泡酒②、③とされ、ラベル等に表示するルールが設けられています。

<発泡酒②>
発泡酒に、大麦または小麦を原料の一部に使ったスピリッツを加えたもので、エキス分が2度以上のもの

<発泡酒③>
糖類、ホップ、水および一定の物品を原料として発酵させたものでエキス分が2度以上のもの

なお、「第三のビール」とは、発泡酒やビールと異なる原料や製法で造られたビアテイストのアルコール飲料の総称。「新ジャンル」を表す呼び名で、「新ジャンル(第三のビール)」のように使われていましたが、こちらも2023年10月の酒税法改正以降は使われなくなりました。

「新ジャンル」や「第三のビール」について解説している記事をネット上で見かける機会がありますが、多くは2023年酒税法改正以前の古い記事です。酒税法は定期的に改正されているので、最新の情報源を探すようにしたいですね。

(参考資料)
発泡性酒類の段階的な税率変更に係る品目及び税率適用区分の表示方法の手引き

「発泡酒」と「ビール」の味の違いは?

発泡酒とビールを飲み比べ

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「発泡酒」と「ビール」は味の特長も異なります。

「発泡酒」の魅力は軽やかな味わいとバリエーションの豊富さ

「発泡酒」には、「ビール」には使用できない副原料や、「ビール」では使えない量の副原料を使用できるため、味わいのバリエーションが豊富です。

2023年10月以降は、かつて「新ジャンル」と呼ばれていた発泡酒も仲間入り。なかには麦芽比率が50パーセント以上の商品もありますが、軽やかな味わいを特長とするものが多く、近年では「糖質〇〇%オフ」や「プリン体ゼロ」「人工甘味料ゼロ」など、健康に視点を置いた商品にも注目が集まっています。

発泡酒の魅力は軽やかな味わいとバリエーションの豊富さ

Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

「ビール」の魅力は原料由来の味わい

「ビール」の魅力は、なんといっても、法律で原材料の50パーセント以上の使用が決められている麦芽の量にあります。麦芽由来の旨味とコクや、ホップ由来の香りや苦味こそがビールの味わいの決め手。口のなかで広がる香りや苦味、旨味、コクのバランスは、ビールならではの醍醐味です。

近年、人気が高いプレミアムビールは、製造各社がこだわり抜いて厳選した原材料と、卓越した醸造方法で造るビールです。価格は、通常ラインよりは高くなりますが、その秀逸な味わいは、特別な日や自分へのご褒美、贈り物として人気を集めています。

「発泡酒」と「ビール」どちらを選ぶ?

発泡酒とビールどっちがおトク?

metamorworks / PIXTA(ピクスタ)

2024年7月現在は、「ビール」と比べて、「発泡酒」のほうが同じ量にかかる税額が安い分、割安感があるかもしれません。

ただし、例外もあります。麦芽比率が50パーセント以上でも、ビールに使用を認められていない副原料を使っているものは「発泡酒」扱いですが、税額(税率)は麦芽比率によって決まるため、必ずしも「発泡酒」のほうが「ビール」よりおトクとはいい切れません。
「発泡酒」と「ビール」どちらを選ぶかは、香りや味わい、アルコール度数などの好み次第といえそうですね。

また、ビールの税額は2020年9月から段階的に引き下げられているので、以前に比べると購入しやすくなったと感じている人もいるかもしれません。

ビールの酒税率

ELUTAS / PIXTA(ピクスタ)

なお、2024年現在、発泡酒とビール1キロリットルあたりの税額(税率)は、酒税法で以下のように定められています。

◇発泡酒:
(1)麦芽比率25パーセント以上50パーセント未満(アルコール分10 度未満)のもの:155,000円
(2)麦芽比率25パーセント未満(アルコール分10度未満)のもの:134,250円
(3)かつての「新ジャンル」に含まれていたもの(アルコール度数10度未満):134,250円
(4)1〜3に該当するものを除く:181,000円

◇ビール:181,000円

以上は、2023年10月1日以降、2026年9月30日までの税率(税額)です。
ビールの税額は、2023年10月の酒税法改正で350ミリリットルあたり70円から63.35円に引き下げになっていますが、発泡酒(2)(3)の350ミリリットルあたりの税額は46.99円で据え置きです。

(参考資料)
国税庁|酒税率一覧表(令和5年10月1日〜令和8年9月30日)

2026年の酒税法改正で「発泡酒」と「ビール」の税率(税額)は同じに!?

2026年までにビール系飲料の酒税が一本化

たのしいお酒.jp編集部作成

2020年から段階的に変化してきた「発泡酒」と「ビール」の税率(税額)ですが、2026年10月以降は1キロリットルあたり155,000円(350ミリリットル換算で54.25円)に一本化されます。

これまで割安感から「発泡酒」をチョイスしていた人も、「ビール」ならではの原料由来の味わいにこだわってきた人も、品質や原料、製法違い、健康系の機能性、味わいなどさまざまな観点から飲みたい銘柄を選べるようになりそうですね。

(参考資料)
財務省|酒税に関する資料

2024年現在の「発泡酒」と「ビール」の違いは、おもに使用できる原料や麦芽比率にありますが、2026年の酒税法改正で税率が一本化されると、ビール系飲料の市場に変化の波が押し寄せるかもしれません。今後登場する新商品からも目が離せないですね。

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