「ブルワリー」とは?クラフトビールやマイクロブルワリーとの関係もチェック

ブルワリー(Brewery)とは「醸造所」のことで、一般的にはビール醸造所やビール工場を指します。ここでは、ブルワリーの本来の意味や、「大規模ブルワリー」「マイクロブルワリー」「ナノブルワリー」といったブルワリーの種類、国内の有名ブルワリーなどを紹介します。
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「ブルワリー」というと、クラフトビールの蒸溜所を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、大手ビールメーカーのビール工場もブルワリーと訳される場合があります。「ブルワリー」の意味や種類、クラフトビールとの関係についてみていきましょう。
ブルワリーとは?

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まずは「ブルワリー」という言葉の意味からみていきます。
ブルワリー=ビール醸造所の意味
ブルワリーとは、ビール醸造所のこと。クラフトビールを手がける醸造所をイメージする人が多いかもしれませんが、大手ビールメーカーのビール工場の名前に「ブルワリー」が使われることもあります。
ちなみに日本のおけるクラフトビールとは、大手ビールメーカーに対して小規模なメーカーが手がける個性あふれるビールのこと。かつての日本では、事実上、大手ビールメーカーしかビールの製造が認められていませんでした。1994年に酒税法が改正され、生産量が少なくてもビール製造が可能になると、日本各地に小規模事業者が続々と登場しました。
小規模事業者が手がけるビールは「地ビール」、のちに「クラフトビール」と呼ばれるようになり、ビールファンの間で人気を博します。
クラフトビールを製造する小規模醸造所は、大手のビール工場と区別して「クラフトブルワリー」と呼ぶこともあります。
なお、クラフトビールの定義や規模感については、日本と海外で異なります。以下の記事で詳しく紹介しているので、興味がある人は合わせて読んでみてください。

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ブルワリー(Brewery)は本来「醸造所」を指す単語
ブルワリー(Brewery)は本来、広義の「醸造所」を意味する言葉で、ビールだけでなく、醤油や味噌などの発酵食品や、ワインなどの醸造酒を醸造する場所の総称。海外では日本酒の酒蔵もブルワリーで、「Sake brewery」「Japanese sake brewery」のように表現します。
ちなみに、動詞の「Brew」は「醸造する」の意味。「Brewing」は「醸造業」を表し、クラフトビールを生産する事業者は社名や醸造所に「ブリューイング」とつけるケースも多いようです。ビールの醸造所だけでなく、販売所やパブを併設するブルワリーもあり、工場直営のパブのことを「ブルーパブ(ブリューパブ)」と呼ぶこともあります。
ブルワリーのおもな種類

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ブルワリーを深掘りしていくと、いくつか種類があることがわかります。規模に応じたブルワリーの特徴や魅力について紹介します。
大規模ブルワリー
大規模ブルワリーとは、アサヒやキリン、サントリー、サッポロなど、大量生産で市場に広く出回るビールを手がける大手ビールメーカーのビール工場のこと。
「一番搾り」で知られるキリンの前身は、ジャパン・ブルワリー。1885年(明治18)年に外資系企業として誕生しました。
また、大手ビールメーカーの英語サイトを開くと、ビール工場見学を「Brewery Tour」、ビール工場名を「メーカー名+Brewery」や「地名+Brewery」と表記していることに気づきます。ビール工場は「Beer Factory」と訳されることもありますが、「Brewery」を使用するケースも多いようです。

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マイクロブルワリー(小規模醸造所)
大量生産向きの大規模ブルワリーに対して、比較的小規模で、こだわりの原料や製造法により個性豊かなビールを少量生産する小規模醸造所を「マイクロブルワリー」と呼びます。
現在では日本各地に個性豊かなマイクロブルワリーが設立され、副原料に地域の特産品を使用したり、独自のレシピで造る多彩なビールが人気を集めています。
以上は日本におけるマイクロブルワリーの話。生産量の規模が桁違いなアメリカでは、年間生産量が約15,000バレル(約179万リットル)より小規模なブルワリー(米国Brewers Association基準)を「マイクロブルワリー」としています。
小規模事業者がこだわりのビールを造る醸造所を「クラフトブルワリー」と呼ぶことがあります。「マイクロブルワリー」も「クラフトブルワリー」も小規模醸造所を指しますが、前者は規模に着目した呼び方、後者は大量生産のビールに対してこだわりのビールを扱う醸造所を指します。

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ナノブルワリー(ピコブルワリー)
「マイクロブルワリー」よりもさらに小規模な醸造所のことで、「ピコブルワリー」と呼ばれることもあります。自宅のガレージや店舗の一部を改造して醸造設備にしていたり、1度に生産するビールの量も3樽以下など、かなり少なめ。
規模が小さいだけに、こだわりをさらに追求することができて自由度も高く、飲食店が独自にオリジナルのビールを開発するなど、個人運営、家族経営といったケースが多いのが特徴です。
ブルワリーとワイナリーの違い

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かんたんにいうと、「ブルワリー」はビールなどを造る場所で、「ワイナリー」はワインを造る場所のこと。扱う原料や製造工程が大きく異なります。おもな原料や製造工程を比較してみましょう。
◆原料
ブルワリー:麦芽(モルト)、ホップ、水など
ワイナリー:おもにブドウ
◆製造工程
ブルワリー:麦芽を糖化(仕込み)→発酵→熟成(貯酒/〜1カ月)
ワイナリー:ブドウの搾汁→発酵→熟成(半年〜数十年/熟成期間は種類や出来栄えによって異なる)
ブドウ畑を併設しているケースも多いワイナリーに対し、ブルワリーは原料をよそから取り寄せるか、自社栽培している場合も畑とは独立している場合が多いようです。
日本の有名なブルワリー

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日本国内のおもなブルワリーを紹介します。
日本の有名ブルワリー①|大規模ブルワリー
日本の大規模ブルワリーといえば、キリンビール、アサヒビール、サッポロビール、サントリーといった大手ビールメーカーのビール工場が挙げられます。
キリンビールでは、北海道千歳、仙台、取手、横浜、名古屋、滋賀、神戸、岡山、福岡の全国9カ所にビール工場を展開。「キリン一番搾り」をはじめとする人気ビールを製造しています。
アサヒビールは、見学ができる大阪・吹田と茨城・守谷をはじめ、北海道や福島、名古屋、博多などの工場でビールを製造しています。
サッポロビールでは、仙台、群馬、千葉、静岡など日本各地で工場を展開していますが、工場見学を実施している北海道工場と九州日田工場が有名です。
サントリーのビール工場といえば、東京・武蔵野、京都にある「天然水のビール工場」と、九州熊本にあるビールと清涼飲料水のハイブリッド工場が有名。なかでも東京・武蔵野は、松任谷由実さん(ユーミン)のヒット曲「中央フリーウェイ」の歌詞に登場するビール工場として広く知られています。
沖縄県名護市のランドマークとして有名なオリオンビール名護工場(オリオンハッピーパーク)も大規模ブルワリーのひとつです。

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日本の有名ブルワリー②|マイクロブルワリー
国内のブルワリー数は増加傾向で、2024年末には全国各地に900を超える小規模醸造所数が記録されました。なかでも多くを占めるのが、このマイクロブルワリーです。
マイクロブルワリーといっても幅が広く、全国展開する醸造所から、地域の小売店土産物屋さんで販売している地域密着型の中小規模なブルワリーまでじつに多彩。
マイクロブルワリーは、北は北海道、南は沖縄県まで日本全国に点在しており、岩手県のベアレンビールや山梨県の富士桜高原麦酒など1990年代から日本のクラフトビール文化を牽引してきた老舗から、2020年以降に登場した新星まで、さまざまなブルワリーが、個性が光るこだわりのビールを造っています。
このほか、茨城県の常陸野ネストビールや、岩手県のいわて蔵ビールなど、日本酒を手がける老舗蔵元から生まれたマイクロブルワリーも注目されています。
意外なところでいうと、東京・恵比寿にあるヱビスビールの工場「YEBISU BREWERY TOKYO」も、生産規模ではマイクロブルワリーのひとつとされています。
なお、「よなよなエール」のヤッホーブルーイングや富士桜高原麦酒、常陸野ネストビールなど、クラフトビールメーカーのなかでも大規模に醸造を行うブルワリーは、アメリカにおける定義に当てはまるとしても、「マイクロブルワリー(小規模醸造所)」とは区別して、「クラフトブルワリー」などと呼ばれることが多いようです。
日本の有名ブルワリー③|ナノブルワリー

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クラフトビールの人気が高まるにつれて、マイクロブルワリーよりもさらに小規模なビール造りを行うナノブルワリーも登場しています。
有名なのは、福島県二本松の有機農園「ななくさ農園」が手がける「ななくさブルワリー」。自宅納屋を改造した小さなブルワリーで、地元の素材を使った完全手造りのビール(発泡酒)を製造しています。
近年は都市部を中心に、飲食店にナノブルワリーを併設したり、ナノブルワリーに飲食店を併設したりするケースが増えています。
大手ビールメーカーが手がけるビール工場から畳数枚分の小規模醸造所まで、ブルワリーの種類は多岐にわたります。なかでもクラフトビールを手がけるブルワリーが造るビールのバリエーションは幅広く、探求するたのしさは増すばかり。日本国内にも大小さまざまなブルワリーが存在するので、実際に訪れたり飲み比べたりしつつ、さらなるビールライフの充実を目指してみてください。

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