産地呼称焼酎や地域ブランド、素材ごとの産地など本場九州の焼酎事情を知ろう

産地呼称焼酎や地域ブランド、素材ごとの産地など本場九州の焼酎事情を知ろう
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九州は、芋、麦、米、黒糖焼酎や泡盛など、さまざまな本格焼酎を生み出してきた焼酎王国。自然の恵みに育まれた作物や水を使い、これまで多くの造り手がその技術を磨いてきました。今回は、本場九州が誇る焼酎ブランドを系統的に分類。その特徴や魅力を探っていきます。

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九州が誇る産地呼称焼酎

九州が誇る産地呼称焼酎

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WTOに認められた産地呼称焼酎は国内で4種類だけ

焼酎のなかには、世界貿易機関(WTO)の「トリプス協定」により、「地理的表示(GI)」が認められた焼酎ブランドが4つあります。

地理的表示とは、商品に原産地呼称を用いることで、正しい産地であることや一定の基準を満たして造られていることを示すもので、世界的に見ると、ウイスキーのスコッチやブランデーのコニャック、ワインのボルドーやシャブリ、シャンパーニュなどが挙げられます。

つまり、日本の4産地の焼酎ブランドは、これらと肩を並べる、保護すべき個性・品質であることが認められているのです。そして注目すべきは、そのうちの3つの産地が九州にあること。なお、残るひとつは沖縄の琉球泡盛です。

それでは次に、九州が誇る3つの産地呼称焼酎について見ていきましょう。

九州で造られている3つの産地呼称焼酎の特徴

ここでは、地理的表示が認められている、九州の3つの産地呼称焼酎の特徴をかんたんに紹介します。

【壱岐(いき)焼酎】

「麦焼酎発祥の地」と称される長崎県壱岐島(いきのしま)に伝わる、およそ500年の歴史を持つ麦焼酎。麦麹ではなく米麹を使って仕込むのが特徴で、麦の香りと米の旨味が豊かに感じられます。

【球磨(くま)焼酎】

「日本でもっとも豊かな隠れ里」として日本遺産に認定された九州有数の米処、熊本県人吉球磨地方に伝わる米焼酎。国内産の米のみを原料に醸されるその雫は、米由来のまろやかな甘味が特徴で、さまざまな料理の味わいを引き立てます。

【薩摩(さつま)焼酎】

壱岐・人吉球磨・琉球地方の焼酎が地理的表示指定されてから10年後の、平成17年(2005年)に産地呼称焼酎の仲間入りを果たしたのが、薩摩焼酎です。こちらは鹿児島県産のさつまいもで造られた本格芋焼酎で、その特徴は、芳醇な香りと甘く濃厚な味わいにあります。

産地呼称焼酎は、日本でも地理的表示が認められている

WTOで地理的表示が認められている「壱岐焼酎」「球磨焼酎」「薩摩焼酎」、そして「琉球泡盛」の4種類は、日本国内においても、国税庁長官によって地理的表示の指定を受けています。

日本国内の酒類の地理的表示については、「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」に規定されていて、名称だけでなく製法・品質についても言及されています。製法の基準を満たさないものは、たとえ4産地で製造された焼酎だとしても、産地を示す地理的表示を使用することはできません。

九州が誇る4つの焼酎ブランド

九州が誇る4つの焼酎ブランド

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特許庁に登録された焼酎ブランド

焼酎王国九州には、産地呼称焼酎のほかにも注目の焼酎ブランドが複数あります。その代表格が、特許庁の地域団体商標に登録された「地域ブランド」です。

「地域ブランド」として登録されている焼酎は、産地呼称焼酎でもある「球磨焼酎」と「琉球泡盛」、そして「奄美黒糖焼酎」「大分麦焼酎」「宮崎の本格焼酎」「博多焼酎」の6種類。どれも地域に根ざした個性豊かなブランドで、多くの焼酎ファンから愛されています。

焼酎の「地域ブランド」の種類と特徴

ここでは、産地呼称焼酎の章で紹介した「球磨焼酎」と沖縄県産の「琉球泡盛」を除く、九州の4つの「地域ブランド」を紹介します。

【奄美黒糖焼酎】

サトウキビから造られる黒糖と米麹を原料とした奄美黒糖焼酎は、鹿児島県奄美群島にだけ製造が認められた地域ブランドです。黒糖らしいトロピカルな甘味と香りを持ちながら、糖質はゼロ。やさしく飲みやすい味わいから、近年人気を集めています。

【大分麦焼酎/大分むぎ焼酎】

麦麹と麦を原料に造られる、麦100%の本格焼酎。第二次焼酎ブームを牽引した二階堂酒造の「大分むぎ焼酎 二階堂」や三和酒類の「いいちこ」が有名です。減圧蒸溜ですっきり仕上げたものが主流ですが、麦の香ばしさを引き出した個性派焼酎も根強い人気を誇っています。

【宮崎の本格焼酎】

「宮崎の本格焼酎」は、宮崎の酒造メーカーが造る本格焼酎の総称です。「霧島」などの人気銘柄や「百年の孤独」などの銘酒を育んだ宮崎県は、古くから芋や麦、米、そばなど多彩な原料を用いた焼酎造りで、独自の酒文化を形成してきました。長年受け継がれてきた味わいは、多くのファンに愛されています。

【博多焼酎】

福岡県で造られた本格焼酎の総称。福岡県は稲作文化がいち早く根づいた豊穣の地で、日本酒造りが盛んな地域ですが、一方で、自然の恵みに育まれた農作物を原料に、さまざまな焼酎が造られてきました。その種類は米焼酎や麦焼酎をはじめ、そば焼酎や胡麻焼酎、にんじん焼酎、玉露焼酎、ひまわり焼酎などバラエティに富んでいます。

九州のエリア別焼酎の特徴

九州のエリア別焼酎の特徴

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九州7県+沖縄と焼酎(泡盛)の関係

九州でも、地域によって原料や蒸溜・貯蔵・熟成方法などが異なります。ここでは県別の傾向を見ていきましょう。

【福岡県】

福岡県は清酒文化が色濃く残る地域ですが、近年は麦や芋、米、そば、胡麻、人参など、さまざまな農作物を原料にした本格焼酎も造られています。

【佐賀県】

佐賀県では現在も日本酒が広く飲まれていますが、二毛作で安定的に収穫できる米と大麦を原料に、米焼酎や麦焼酎を手がける蔵元もあります。

【長崎県】

九州本島側は清酒が主流なのに対し、福岡と対馬の中間に位置する壱岐島は、麦焼酎の名産地です。世界が認める「壱岐焼酎」はこの地で造られています。

【大分県】

大分といえば、麦焼酎のメッカ。もともとは清酒エリアでしたが、麦麹による製法が確立して以来、麦焼酎が定着しました。昭和の焼酎ブームで、「大分麦焼酎」は一気に全国に浸透していきました。

【熊本県】

熊本県といえば、産地呼称焼酎のひとつである「球磨焼酎」が有名。九州有数の米処でもあるこの地では、良質な米と清冽な水を生かし、個性豊かな銘柄が造られ続けています。

【宮崎県】

南北に伸びる宮崎県では、地域によって焼酎文化が異なります。大分県に近い北部では麦焼酎や米焼酎、九州山地が連なる北西部ではそばやとうもろこしなどの焼酎、南西部の熊本県寄りの地域では米焼酎、鹿児島県に近い中南部では芋焼酎がよく造られています。

【鹿児島県】

さつまいもの生産量が日本一の鹿児島県は、古くから芋焼酎造りが盛んなエリアです。現在も100を超える蔵元が存在し、個性豊かな「薩摩焼酎」を世に送り出しています。なお、奄美諸島産の「黒糖焼酎」も人気です。

【沖縄県】

沖縄土産といえば泡盛というほど、本土でも広く知られる「琉球泡盛」。3年以上貯蔵・熟成させた「クース(古酒)」のほか、泡盛と同じ製法で造られ、与那国島だけに製造が認められているスピリッツの「花酒」も人気です。

生産量、消費量1位は何県? 九州焼酎トリビア

「芋焼酎の生まれたのは薩摩地方」「米焼酎のルーツは熊本県人吉地方」「麦焼酎発祥地は長崎県壱岐島」と、焼酎にまつわる起源の多くは、九州に集中しています。九州の焼酎事情を紐解いたこの機会に、生産量・消費量についても確認してみましょう。

◇本格焼酎生産量日本一は宮崎県
国税庁が発表した平成30年(2018年)の統計情報によると、本格焼酎(単式蒸溜焼酎)の都道府県別製成数量は154,540キロリットルの宮崎県が全国1位。2位は125,794キロリットルの鹿児島県、3位には77,444キロリットルの大分県が続いています。

◇本格焼酎1人あたりの消費量日本一は鹿児島県
国税庁発表の平成29年度の統計情報と、総務省発表の平成29年度の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」から、成人1人あたりの本格焼酎(単式蒸溜焼酎)の消費量(販売数量)を見ると、1位鹿児島県、2位宮崎県、3位大分県、4位熊本県、5位福岡県、6位宮崎県、7位佐賀県と、九州全県が上位を占めていることがわかります。

九州は、日本が世界に誇る焼酎を数多く製造している焼酎王国です。機会があれば、九州各県の焼酎を飲みながら、それぞれの起源や歴史などにも思いを馳せてみてはいかがでしょう。

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