北海道に行って飲んでみたい! おすすめのビール【北海道編】
「北海道といえばビール」という印象をもつ人も多いでしょう。麦とホップの生産が盛んな北海道は、大手ブランドだけでなくクラフトビールの宝庫。そこで、北の大地がもたらす本場のビールの味わいを紹介していきます。
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北海道は国産ビールの礎を築いた地のひとつ
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北海道は、なぜ「ビールの本場」と呼ばれているのでしょうか?
理由のひとつに、北海道が明治時代に国産ビール産業のルーツになったということが挙げられます。
明治といえば、文明開化を迎えた時代、外国の飲み物であるビールは新しい時代の象徴でした。
明治初期、政府が北海道に開拓使を置いた際、外国の知識や技術を取り入れようと外国人技師の力を借りてさまざまな調査を行いました。その結果、この地にホップが自生していること、大麦の栽培や低温発酵に向いていることから、ビール醸造に適した気候風土であることがわかったのです。
そこで明治9年(1876年)、札幌に官営工場である開拓使麦酒醸造所ができたことで、日本における本格的なビール産業の歴史が幕を開けたのです。
ちなみに「日本におけるビール発祥の地」としては、外国人技師が醸造を始めた横浜とする説や、明治5年(1872年)に日本人の手で初めて造られた大阪とする説など、諸説あります。
北海道のクラフトビールには、個性があふれている
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北海道には、サッポロビールをはじめ、アサヒビールやキリンビールも工場を構えるなど、ビール造りが盛んな地域として知られています。これら大手メーカーだけでなく、近年、脚光を浴びているクラフトビール(小規模な醸造所で生産されているビール)造りも活発です。
クラフトビール造りが活性化される大きなきっかけとなったのが、1994年の酒税法改正です。
ビール製造免許を取得する条件が、従来の年間最低醸造量2,000キロリットルから年間60キロリットルに大幅に引き下げられたのです。
これにより、大量生産の大手メーカーだけでなく地域密着型の小さな醸造所でもビール造りが可能になりました。そのため全国各地でブルワリーが誕生し、それぞれ独特の個性をもつクラフトビールが醸造されています。
なかでも北海道は、個性あふれるブルワリーの宝庫。ひとくちに北海道といっても、その土地は広大で、水質や気候風土などが地域によって異なります。さらに、北の大地は、農産物や海産物も有名な食の宝庫。各地の特色を活かしたビール醸造を行っています。
北海道を訪れたら、ぜひ各地のクラフトビールを飲みくらべてみてください。
北海道の人気銘柄
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北海道の代表的なクラフトビール、地ビールを紹介します。いずれも大手メーカーにはない個性的な味わいが魅力です。
伝統製法が光る本格ドイツスタイル【小樽ビール(おたるビール)】
「小樽ビール」はビールの本場、ドイツのブラウエンジニアが醸造する、本格的なドイツビール。200年以上にもわたって継承されてきた伝統的な醸造方法には、通常の倍の手間とコストがかかります。その分、高品質で深く芳醇な味わいに仕上がるため、道内はもちろん全国にもファンが多いのだとか。深い琥珀色が美しい、ビール好きなら一度は試してみたい逸品です。
小樽ビールの醸造所は、小樽市銭函と、小樽運河倉庫群の2カ所にあり、どちらも見学可能です(銭函醸造所は要予約・有料)。また、小樽倉庫の醸造所は本場ドイツのビアパブも併設しており、地元食材を使った料理とともにたのしめます。
農大生まれの独特なラインナップ【網走ビール(あばしりビール)】
網走ビールは、網走にある東京農業大学の研究室によって開発され、企業化されたというめずらしい経緯をもつ会社です。今では地域に根づいた企業として、地域の原料にこだわり三釜方式で醸造を行っています。
三釜方式とは、3つの釜を麦芽の煮沸とろ過、そして副原料にそれぞれ使用する方法のこと。ほたてや牛乳、じゃがいも、はなますなど、北海道ならではの副原料を使用して個性的な商品を生み出し続けています。とくに有名なのはオホーツクの流氷を仕込みに使った「流氷ドラフト」。オホーツク海を彷彿とさせる青色が、見る人に強烈な印象を与えます。
製造量の9割が地元で消費される【オホーツクビール】
北見市の人々は、酒税法の改正以前から「北見ならではの地ビールを造りたい」と考え、ドイツ・バイエルン州での視察で得た知識をもとに「北見ビール研究会」を発足。やがて酒税法改正にともなって、いち早くビール製造免許を取得し、ビール製造会社を設立しました。
こうした誕生したオホーツクビールは、16世紀のドイツ「ビール純粋令」に従って麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とした伝統的なビール。地域とともに成長してきた企業であることから「地元民の地元民による地元民のための」をモットーにしたこの地ビールを、ぜひ現地でたのしんでください。
こだわりを発信し続ける新進気鋭のブルワリー【ノースアイランドビール】
「ノースアイランドビール」は、カナダで修行を積んできたブルーマスターによって、2003年に誕生したブルワリー。恩師の「ビールはアート」という言葉を胸に、斬新で多種多様な味わいを日々生み出しています。
レギュラースタイルは、もっとも一般的なピルスナーをはじめ、濃厚でコクのあるスタウト、コリアンダーのフレーバーが光るコリアンダーブラックなど6種類。そのほかに季節限定品などの醸造も行っています。札幌市内にある直営店をはじめ、さまざまなビアバーでたのしめる、一度飲んだら忘れられない人気の銘柄です。
レトロなレストランで料理とともに味わいたい【大雪地ビール(たいせつじビール)】
「大雪地ビール」は、北海道中央部の旭川生まれの地ビール。100年を超える歴史的なレンガ倉庫を改築して、1996年に誕生したブルワリーレストラン「大雪地ビール館」が提供しています。なお、レトロ漂うこの建物は、2001年に文化財登録されています。
大雪地ビールの魅力は、大雪山の清水で造られたクリアな味わい。2000年に「ジャパン・ビア・グランプリ」を受賞したほか、毎年さまざまなコンテストで入賞している本格派です。ジンギスカンやソーセージなど、地元旭川の食材を使った料理とともに味わいましょう。
北海道のそのほかの注目銘柄
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オリジナリティあふれる北海道のビールは、種類も豊富。ここでしか味わえない風味やのどごしに、根強いファンがついています。
水にこだわり続ける強い信念【はこだてビール】
ミネラル豊富な函館山の天然の地下水を100パーセント使用することが「はこだてビール」のこだわりです。山の麓の地下水は、醸造水として最適。1996年の創業以来、雨の日も冬の日も、毎朝函館山に地下水を汲みに行くことから、はこだてビールの一日が始まります。
数あるラインナップのなかでもとくに人気があるのは、アルコール度10パーセントという「社長のよく飲むビール」。通常の2倍の量のモルトで造り、通常は2週間のところ1カ月にわたって熟成させます。手間と時間をかけることで重厚かつ贅沢な味わいに仕上がる逸品です。
酵母を残した無ろ過のナチュラルな味わい【大沼ビール(おおぬまビール)】
「大沼ビール」は、雄大な自然を誇る大沼国定公園のほとりに位置する「ブロイハウス大沼」が造る地ビールです。横津山麓の天然アルカリイオン水を用いて、厳選された素材のもち味を活かして醸造。無ろ過ならではの生きたビール酵母のコクと深みのある味わいが特徴です。
ケルシュ、アルト、インディア・ペールエールなど、ラインナップは豊富。いずれもオリジナルな味わいを追求し、ていねいに造り込んであるため、数々の受賞歴がある実力派です。工場に併設されたビアパブでは、できたてを味わいながら製造工程を眺めることができます。
お菓子会社が造る女性に人気の個性派【鬼伝説(おにでんせつ)】
「鬼伝説」の醸造元は、北海道銘菓「わかさいも」で有名なわかさいも本舗。しかもブルワーは元パティシエという、変わった経歴をもつ逸品です。「おいしい地ビールを飲んでもらいたい」という想いから1998年に醸造がスタートしました。
看板商品の「鬼伝説」は、迫力ある名前とは裏腹に、女性にも人気のシリーズです。フルーティな香りの「赤鬼レッドエール」、ホップの利いた「青鬼ピルスナー」、柑橘類の香りと苦みが特徴的な「金鬼ペールエール」と個性的なラインナップ。いずれも「インターナショナル・ビア・コンペティション」など、数々の大会で受賞しています。
北海道の物産を活かした個性が光る【ニセコビール】
「ニセコビール」は、スキーリゾートで有名なニセコの地ビールを、2014年に地元の有志たちの手で復活させたもの。1階が醸造所、2階がレストランになっているブルーパブ「NISEKO TAP HOUSE」で、できたてのビールを地元料理とともにたのしめます。
自然の恵みであるニセコの湧水を使った定番のピルスナーやペールエールに加え、北海道産の鮭節や昆布、しいたけなどで風味づけしたポーターも人気。ほかにもかぼちゃを使ったパンプキンエールなど変わり種も。いずれも地元の名産品を活かした味わいで、地域とともに着実に歩みをすすめています。
併設レストランでしか味わえない幻の逸品【帯広ビール(おびひろビール)】
「帯広ビール」を造るのは、帯広市内のレストラン「ランチョ・エルパソ」の敷地内に構えた醸造所。「ワインのようにたのしむビール」をコンセプトに、ベルギーの醸造スタイルと地元十勝産の素材を活かして醸造した、この地でしか味わえない逸品です。
代表商品は、黄金色のウインナータイプ「麦日和」と、ビターホップのシュバルツタイプ「玄人」。併設のレストランで、自慢のハムやウインナーとともに味わえます。
地ビールの味わいは、のどごしや爽快感、香りや味わいなど、ブルワリーや商品によって大きく異なります。北海道を訪れた際は、ぜひ、各地のブルワリーに足を運んでみてください。