島根県・安来市「吉田酒造」/島根県が誇る銘酒「月山(がっさん)」の魅力を探る旅へ

島根県・安来市「吉田酒造」/島根県が誇る銘酒「月山(がっさん)」の魅力を探る旅へ

国内外で広く愛されている「月山」を醸しているのは、島根県安来(やすぎ)市で300年近い歴史を有する「吉田酒造」。超軟水を用いた酒は、フレッシュでキレのよい味わいを身上としています。現地を訪ね、その酒造りの哲学とともに地元の老舗料亭「停雲」で食とのペアリングもあわせてレポートします。

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煙突の丸囲みの“安”の文字は安屋坂店に由来。旧家の意思も受け継いでいる証しです。

「江戸時代に月山富田城を有する地を治めていた広瀬藩藩主に、最高の酒“一番樽”を造って献上していました。それが『月山』の名前を掲げるようになったきっかけです」。
この地のシンボルである月山を名乗ることで、お客様に安来で最高の酒を味わってもらいたいという強い想いを感じるエピソードです。

先ほど登ってきた月山が蔵からもしっかりと見えます。

超軟水の名水「お茶の水井戸」を復元して使用

非常に口当たりがよく、なめらかでやさしい水。

これから日本酒・月山のこだわりを伺っていきますが、まずは水。仕込みに使用しているのは広瀬藩の歴代藩主が愛飲し、「不昧流(ふまいりゅう)茶道」で最高の水と称された名水「お茶の水井戸」を復元して使用。なんと不昧流茶道の茶室を設けたとされる文献から井戸の位置を特定し、汲み上げているそうで、
「湧いている山から1.5キロメートルほど、酸化しないように導管を巡らせて運んでいるんですよ」と社長。

この水の特徴は何といっても超軟水であること。硬度は0.3で、超軟水の目安の硬度が0~50であることから、“日本一やわらかい水”と表現しても過言ではないでしょう。一般的に酒造りには硬水が向いているとされています、というのもミネラル分などが高いため酵母菌の繁殖が活発になるからです。

現場では酵母選びや量の調整、温度の細やかなコントロール、発酵がゆっくり進むので醪仕込みの日数も必然と長くなり、すべて大吟醸酒なみに手間がかかるのだとか。これほどの超軟水で仕込むのには、地元の水へのこだわりと困難な醸造へ立ち向かう覚悟がないとできないのです。

「でも、私たちの酒ができ上がった瞬間からやわらかくてすぐにたのしんでいただけるのは、この水のおかげ。香りが華やかかつクリアでフレッシュ。熟成はあまりさせずに早く飲んでもらいたいタイプですね」。

蔵の裏には水汲み所が設けてあり無料で開放。プラスチック容器持参のご近所さん曰く「毎日汲みにきます。お茶やコーヒーをこの水で淹れるととてもおいしいんです」。

伝統のなかにハイテクも取り入れた酒造り

デリケートな酒質の管理に適したサーマルタンク®も導入。

ここからは蔵に入り、杜氏の足立孝一朗(あだち・こういちろう)さんにご案内(※)をいただくことに。
「社長が継いで少し経った12年前から、社員杜氏として酒造りを行っています」。
まずは米の貯蔵庫へ。積み上げられた袋からは“島根米”の文字が読み取れます。

「酒米は地元島根県産米が中心です。契約農家から玄米の状態で仕入れ、酒蔵内にある精米機で自ら精米しているんですよ」。
銘柄としては、「五百万石」や島根県発祥の「佐香錦(さかにしき)」が多いそう。いずれも早生品種なので、クリアでフレッシュとお聞きした酒質にはぴったりですね。

※取材の一環としてお願いしました。取材時では一般向けの蔵の見学は行っていません。

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