思わず“ジャケ買い”したくなる、個性あふれる人気の日本酒 ~ネーミング編~

思わず“ジャケ買い”したくなる、個性あふれる人気の日本酒 ~ネーミング編~

日本酒にはそれぞれ酒銘がつけられ愛称として親しまれていますが、なかには、「これが日本酒の名前!?」と、思わず目を疑ってしまうような個性的なネーミングも。 「納豆」「刑事」「死神」・・・日本酒を連想しにくい個性的な名前の日本酒を、命名のエピソードとともにご紹介します。

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現在、日本酒を製造する酒蔵は全国に1,400軒以上あり(国税庁/清酒製造業 平成29年度調査より)、銘柄の数は1万以上といわれています。お酒のネーミングや、ボトルに貼るラベルのデザインは、その酒蔵の“顔”ともなるので、蔵元の思い入れもひとしお。

創業時から変わらず守り続けている銘柄や、その土地にちなんだ地名など、さまざまな思いを込めて命名されたものがありますが、なかには、日本酒の銘柄としては珍しい名前や、ユニークなラベルなど、一度目にすると忘れられないインパクトのある銘柄も存在します。

そこで、思わず“ジャケ買い”したくなるような個性的な日本酒を2回に渡ってご紹介。まずは今回、ネーミング編からお届けします。

警察関係の方々への感謝の気持ちから生まれたお酒とは

青森県弘前市の松緑酒造では、その名も「刑事(デカ)」という、日本酒には珍しいネーミングのお酒を製造しています。

「刑事」 純米酒
価格  720ml 1,728円  
    1.8L  3,132円 (税込)

青森県弘前市の松緑酒造では、その名も「刑事(デカ)」という、日本酒には珍しいネーミングのお酒を製造しています。今から10数年前、弘前市内で街中を震撼させたある事件が発生した際、その事件解決のために連日奔走する刑事さんたちの姿を目の当たりにし、毎日この街で安心して平和に暮らせていることに改めて気づかされ、警察関係の方々の日頃のお仕事への労いと感謝の気持ちを込めて発売したそう。

名前から想像すると、男性的な辛口のお酒をイメージしそうですが、実際の酒質は米本来の味わいを大切にした、クセのないまろやかさが特長で、飲み方は人肌のぬる燗がおすすめ。
青森県産の酒米を使用した濃醇な飲み口の純米酒です。

「刑事」という名前から、日本全国に愛飲者も多く、贈り物としても重宝されているとか。
ラベルに表示された、『この酒、美酒につき手配中!』が印象的です。


松緑酒造 オンラインショップ
http://matsumidorideka.shop-pro.jp/?pid=103547736
青森県弘前市大字駒越町58番地
TEL 0172-34-2233

食卓で親しまれている“あの食材”が酒名に

食卓で親しまれている“あの食材”が酒名に

「川口納豆」 特別純米酒 美山錦

ラベルに書かれた酒名を見た瞬間、誰もがそのインパクトの強さに驚いてしまうのが「川口納豆」。
「綿屋」の銘柄でお馴染み、宮城県栗原市の金の井酒造が造るお酒です。
ボトルに貼られたラベルは本物の納豆のパッケージデザインと同じなので、納豆が原材料のお酒かと混乱してしまうかもしれませんが、一切使用していません。
同じ栗原市で古くから納豆を生産販売している「川口納豆」が農業法人を設立し、金の井酒造からほど近い自社田の田んぼで酒米「美山錦」を栽培。そのお米のみで醸したお酒です。

「中山間地で育った酒米なので、毎年の天候によって品質が変わるため、タンクの中で発酵をすすめてから、その年のコンディションを判断して酒質を決めています」と話すのは、金の井酒造の三浦社長。
「発酵の様子を見極めて丁寧に味を整えているので、手をかけられたおいしいお酒に仕上がっています」。

毎年9月頃、ひと夏熟成させた“ひやおろし”として発売していますが、予約の段階で完売になるほどの人気商品とのこと。ぜひこの秋に出会いたいお酒です。


金の井酒造株式会社
宮城県栗原市一迫字川口町浦1-1
TEL 0228-54-2115

お客様との会話から生まれた、洒落の効いた山形の美酒

お客様との会話から生まれた、洒落の効いた山形の美酒

「ちょっとおまち」 特別純米酒 720ml
価格 1,447円(税込)

日本酒の醸造に適したお米として認定されている『酒造好適米』の一つ、“雄町”は、ふくよかな旨味や複雑な味わいを感じられる日本酒となることからファンも多く、注目度が高い酒米。その雄町を、原料だけでなく酒名にまでしたのが、山形県遊佐町の高橋酒造店が醸す「ちょっとおまち」です。

命名の由来は、先代の社長が東京のとある飲食店で、お店の常連のお客さんと飲み交わしていた席の会話から生まれたとか。「雄町」と「お待ち」を掛け合わせた、洒落たネーミングが印象的です(笑)。

鳥海山麓の伏流水である仕込み水には、やわらかさとやさしい味わいがあり、雄町米との相性のよさから、代表銘柄である「東北泉」を醸す高橋酒造店では、かなり以前から雄町米を使用したお酒を醸造していたそう。

コクと余韻のある味わいのなかに、程よい軽快さを合わせ持つ飲み飽きしないお酒とあって、思わず「ちょっとおまち、もう一杯!」と杯が進んでしまうかもしれません。


山形の地酒専門店 木川屋.com
https://item.rakuten.co.jp/kigawaya/373306/


合資会社 高橋酒造店
山形県飽海郡遊佐町吹浦字一本木57
TEL 0234-77-2005

会津藩の“武士道精神”がそのまま命名された銘酒

会津藩の“武士道精神”がそのまま命名された銘酒

「ならぬことはならぬものです」 純米原酒 720ml
価格 1,296円(税込)

創業から100年を迎えた、「會津ほまれ」でお馴染みの福島県喜多方市のほまれ酒造では、会津地方の歴史に残る格言の名のお酒が造られています。

かつて会津藩では、藩士の子弟は6歳から9歳までの間、「什(じゅう)」と呼ばれるグループに所属させられ、藩士として、また、人としての基本を学んでいたそうですが、そこには、自らを律するために定められた「什の掟」と呼ばれるルールがありました。

その最後を締めくくる一文、「ならぬことはならぬものです」は、「何があっても掟は堅く守らなくてはならない」という武士道の根幹をなす言葉として大切に守られてきましたが、会津の歴史を象徴する名言として酒銘に命名。会津産の酒米「華吹雪」を使用し、喜多方の名水で仕込まれたお酒は、「福島県のブランド認証」に認められ、特産品としても親しまれています。

淡麗辛口な仕上がりながらも、原酒の深みや丸みのある味わいは、簡潔ながら奥深い“格言の余韻”までも感じられるおいしさです。


ほまれ酒造 オンラインショップ
https://www.aizuhomare.jp/ec/products/detail/82


ほまれ酒造株式会社
福島県喜多方市松山町村松字常盤町2706
TEL 0241-22-5151

誕生のきっかけは日本一!? 男らしさあふれる迫力の酒

ラベルに逞しい虎が大きく描かれ、その横に太い文字で「俺の出番」と書かれた見た目にインパクトのあるお酒は、福島県南会津郡の国権酒造が醸す特別本醸造。

特別本醸造 「俺の出番」
価格 720ml 1,404円  
1.8L 2,808円 (税込)

ラベルに逞しい虎が大きく描かれ、その横に太い文字で「俺の出番」と書かれた見た目にインパクトのあるお酒は、福島県南会津郡の国権酒造が醸す特別本醸造。

阪神タイガースファンの先代の細井泠一前社長が、1985年にリーグ優勝と球団史上初の日本一を達成した際、嬉しさのあまり、特別に商品開発して発売したお酒で、悲願の日本一を達成したタイガースにちなんで「俺の出番」と名付けたそう。

お酒は、淡麗ながらも程よい飲み心地があり、辛口の仕上がりではありますが、自社の井戸から汲み上げられた軟水で仕込まれているため、やわらかな口あたりで、喉越しで辛さをじわりと感じる酒質。

「俺の出番」を愛飲しているファンの方が、阪神タイガースのキャンプ中、ある選手に毎年必ず差し入れていたというエピソードもあるとか。

日本酒好きのタイガースファンの皆さんは、ぜひ「俺の出番」を飲みながら試合を応援されてはいかがでしょうか?勝利の美酒となること間違いないかも・・・!?


国権酒造ホームページ
http://www.kokken.co.jp/products/pro12.html


国権酒造株式会社
福島県南会津郡南会津町田島字上町甲4037
TEL 0241-62-0036

ホストからのリクエストで生まれた“日本酒界のロマネコンティ”

「蓬莱」でお馴染みの岐阜県飛騨市の渡辺酒造店では、ボトルからセクシーな雰囲気が漂うお酒、その名も「色おとこ」を発売しています。

「色おとこ」 純米大吟醸 
価格 720ml 1,933円 
1.8L 3,785円(税込)

「蓬莱」でお馴染みの岐阜県飛騨市の渡辺酒造店では、ボトルからセクシーな雰囲気が漂うお酒、その名も「色おとこ」を発売しています。

あるホストクラブのナンバーワンホストから、「うちの店には、最高のシャンパン、カクテルがある。でも、最高の日本酒がない。女性を酔わす最高にキレイな日本酒を造ってください」との依頼を受けたのがきっかけとなって開発された、ホストクラブ御用達の限定酒。

果実のような爽やかな香りに包まれた、甘くてやさしい飲み口で、もぎたてのフルーツのような味わいの純米大吟醸は、それまであまり日本酒に馴染みがなかった女性たちの間で火がつき、あっという間にお店で人気のメニューとなったそう。

蔵元からは、「ホストクラブでオーダーすると、目玉が飛び出るようなびっくりするお値段なので(笑)、女性の方はぜひご自宅で、パートナーの男性をホスト役にグラスを傾けながら、ラグジュアリーなひとときをたのしんでください」とのメッセージが。

ちょっと華やかな雰囲気に浸ってお酒をたのしみたい女性、または、女性を大切におもてなししたい男性におすすめのお酒です。


渡辺酒造店 オンラインショップ
http://www.watanabeshuzouten.com/fs/watanabeshuzou/c/irootoko


有限会社 渡辺酒造店
岐阜県飛騨市古川町壱之町7-7
TEL 0120-359-352

日本一縁起の悪い名前のお酒!?

島根県邑南町にある加茂福酒造では、ボトルに大きく表記された二文字が独特の雰囲気を醸した、その名も「死神」という名のお酒を製造・販売しています。

 「死神」

最後はちょっと奇妙なネーミングのお酒。日本酒は「鶴」や「亀」など、縁起がよいとされる文字を銘柄に使用されることが多いですが、敢えて“縁起が悪い”名前を命名したお酒をご紹介しましょう。

島根県邑南町にある加茂福酒造では、ボトルに大きく表記された二文字が独特の雰囲気を醸した、その名も「死神」という名のお酒を製造・販売しています。

最初に発売されたのは今から20年ほど前。当時、淡麗辛口のお酒が一世を風靡していましたが、蔵元と、取引先の東京の酒販店が「真逆の味わいで、しかも、めでたくない名前の酒を販売したらおもしろいのでは」と発想し、共同開発のもと生まれました。
「死神」は江戸の古典落語の演目にあり、そこからヒントを得たそう。

使用している酒米や精米歩合等のスペックは非公開のため謎に包まれていますが、濃醇でしっかりとしたコクを感じる味わい。ぬる燗にすると、お酒のふくよかさがより広がるのでおすすめです。

ちょっと手に取るのを怖く感じてしまうかもしれませんが、一度口にすると“取り憑かれて”しまうという声も。ぜひ、死神の世界をのぞいてみてはいかがでしょうか・・・?詳しくは酒蔵までお問合せください。


賀茂福酒造株式会社
島根県邑智郡邑南町中野2405
TEL 0855-95-0318


以上、個性的なネーミングの日本酒をご紹介しましたが、どれも各蔵元の思いがこもった銘酒ばかり。
名前のインパクトに負けることなく、味わいも素晴らしいので、ぜひ一度手に取って味わってみてください。

次回はボトルのラベルが個性的なお酒をご紹介します。

思わず“ジャケ買い”したくなる、個性あふれる人気の日本酒をご紹介
~ビジュアル編~ はこちら
https://tanoshiiosake.jp/5171

※紹介した商品情報は記事執筆時点のものです。購入・サービス利用時に変更になっている場合がありますのでご注意ください。

ライタープロフィール

阿部ちあき

日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会認定 きき酒師 日本酒・焼酎ナビゲーター公認講師
全日本ソムリエ連盟認定 ワインコーディネーター

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