<J-CRAFT SAKE蔵元探訪その⑥>静岡県静岡市・三和酒造 吟醸造りの真髄を学ぶ

<J-CRAFT SAKE蔵元探訪その⑥>静岡県静岡市・三和酒造 吟醸造りの真髄を学ぶ

2018年春に誕生、飲食店で料理とともにたのしめる“生酒(なまざけ)”ブランド『J-CRAFT SAKE』。多彩な酒造好適米から純米吟醸酒を醸し出す「三和酒造」を、フードジャーナリストの里井真由美さんとともに訪ねました。

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静岡から全国、そして世界へ発信された『臥龍梅』

『臥龍梅』のバリエーションはとても豊かです。

では『臥龍梅』とはどのような日本酒なのでしょうか?
「簡潔に申し上げると、総米600kg程度の吟醸小仕込み。一切の妥協や手抜きを排して製造したお酒です」。手間のかけ方は、鑑評会出品酒と変わらないというから驚かされます。

また従来の静岡型吟醸酒は、地元の酵母や酒米を使用しているものが多く、穏やかで柔らかな果実の香りが持ち味ですが、『臥龍梅』は味も香りも豊か。インパクトのある酒質を目指し、辿り着いたそうです。

『臥龍梅』のラインナップを眺めながら、「愛山、山田錦、雄町……原料米のバリエーションが豊かなのですね」と感嘆している里井さん。そう、酵母も酒米も地元産に限ることなく、さまざまなものにチャレンジ。結果多彩さも備えた『臥龍梅』の販売は、発売後10数年で北海道から九州にいたる全国へと拡大。平成18年のシンガポール、アメリカを皮切りに、現在では世界各国へ輸出されるようになっています。

「特級や一級といった級別制度に代わり、純米酒や吟醸酒などの特定名称酒が採用されて約30年。その間に消費者の酒への造詣が深まっていきました。より美味しいお酒を求める声に応えるため、蔵をあげて『臥龍梅』に取り組み、その結果が出ていることを誇りに思いますね」と笑顔の社長。この後、里井さんとともに、銘酒『臥龍梅』の醸造作業を見学させていただくことになりました。

全国各地から酒造好適米を取り寄せています。

全国各地から酒造好適米を取り寄せています。

品質を損ねないように温度管理を徹底。すべてクール便で出荷しているそう。

品質を損ねないように温度管理を徹底。すべてクール便で出荷しているそう。

吟醸小仕込みの現場で、作業を拝見

案内していただいたのは、杜氏の菅原富男さん。

案内していただいたのは、杜氏の菅原富男さん。

本社を後にして、仕込み蔵へ。こちらで杜氏の菅原富男さんと合流します。菅原さんは昭和18年生まれで、60年あまり酒造に携わってきた大ベテラン。例年9月に岩手県から蔵へ来て酒造り。大役を果たして4月に戻るという南部杜氏(なんぶとうじ)です。

伺った時はちょうど洗米・浸漬・水切りの作業中。吟醸酒に用いる酒米はすべて手洗い。通常ならその後に相当時間、米を水に漬けておくのですが、「吟醸用の白米はかなり乾いているため水を吸い過ぎてしまうのです」(菅原さん)。したがって小単位に分けて、洗米から水切りまでを10分ほどで行う「限定吸水」を施さねばならないそう。秒単位の作業が要求されるため、現場の空気はピンと張りつめています。

10kgごとに分けて「限定吸水」を行います。

10kgごとに分けて「限定吸水」を行います。

仕込み水は、清流と鮎で知られる興津川(おきつがわ)水系の湧き水。

仕込み水は、清流と鮎で知られる興津川(おきつがわ)水系の湧き水。

「良質の酒には何も足すべきでない、良質の酒からは何も引くべきでない、というのが私たちの考え方です」と菅原さん、その理想を追求した結果、純米吟醸と純米大吟醸の原酒を製造の中心にすえ、味も香りも豊かで飲み応えのある酒を目指すことになったのだとか。

続いて見せていただいたのは“麹”。酒造りは“一麹二酛三造り”といわれ、そのもっとも大切だとされる工程で、酒米を糖化するという働きを担います。翌日に仕込みタンクに投下される“枯らし”状態の麹を「ちょっと食べてみませんか?」と杜氏。里井さんは滅多にない機会に目を輝かせながら、口に含み満面の笑み。「清々しい香り。そして嚙むと甘味が出てきますね。まるで酵母になった気分です(笑)」。

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