ピンガとはどんなお酒?サトウキビから造られるブラジルの国民酒を紹介

ピンガとはどんなお酒?サトウキビから造られるブラジルの国民酒を紹介
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ピンガとは、「カシャッサ(カシャーサ)」の呼び名でも知られるブラジルの国民酒。サトウキビから造られる蒸溜酒ピンガの起源や歴史から、ラム酒との違い、代表的なカクテル「カイピリーニャ」の作り方、おすすめ銘柄まで一挙に紹介します。

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ピンガはブラジルの国民酒ともいうべき蒸溜酒。日本では近年、劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』で注目を集めています。

ピンガ(Pinga)とはどんなお酒?

ピンガの原料はサトウキビの搾り汁

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まずはピンガについての基本情報を押さえておきましょう。

ピンガはブラジルの国民酒! 別名「カシャッサ/カシャーサ」

「ピンガ」とは、発酵させたサトウキビの搾り汁を蒸溜して造る、ブラジルの代表的なスピリッツです。

ブラジルでは「Pinga(ピンガ)」をはじめ「Caninha(カニーニャ)」「Cachaça(カシャッサ/カシャーサ)」、スラングでは「água-que-passarinho-não-bebe(アグア・キ・パッサリーニョ・ナォ・ベビ/小鳥は飲まない水)」「danada(ダナーダ/いたずらっ子)」「sossega leão
(ソセッガ・レアォ/ライオンの休息)」などたくさんの愛称で親しまれていて、ビールに次ぐ人気を誇るアルコール飲料となっています。

ちなみに呼び名の違いは地域的なもので、ピンガはおもにサンパウロ周辺、カニーニャは南部地方、カシャッサ/カシャーサはおもにリオ周辺の呼び名で、全国的にもっとも一般的な名称とされています。ブラジルはとても大きな国なので、その分呼び名も多いのでしょう。

ピンガの起源にはさまざまな説がありますが、ピンガに関わるブラジルの代表機関「ブラジルカシャッサ研究所(Instituto Brasileiro da Cachaça)」によれば、ピンガの歴史は1500年代初頭、ポルトガル人がブラジルにサトウキビと製糖技術を持ち込んだことから始まります。

有力な説のひとつは、ワインに用いたブドウの搾りかすを原料とした蒸溜酒「bagaceira(バガセイラ)」を飲み慣れていたポルトガル人たちが、故郷ポルトガルのお酒と同じ心地よさをもたらす蒸溜酒を求め、即席でサトウキビの搾り汁を発酵・蒸溜して造ったのがピンガの始まりである、というものです。

もうひとつのよく知られた説は、「ピンガは偶然から生まれた」というもの。製糖工場でサトウキビを煮沸しているときに出る泡「cagaça(カガッサ)」を取り除いて別の桶に貯めておいたところ、それが発酵してお酒になり、工場労働者たちが試しに飲み始めたそう。やがてこの「カガッサの発酵モスト」を蒸溜するようになり、さらにサトウキビの搾り汁そのものを蒸溜するようになった、というのです。

ピンガが生産され始めた時期についても、「1516年〜1526年のItamaracá(イタマラカ)」「1520年のPorto Seguro(ポルト・セグロ)」「1532年のSão Vicente(セント・ヴィンセント)」と3通りの説があり決着はついていませんが、いずれにせよピンガが1516年〜1532年の間にブラジル沿岸のいくつかの工場で意図的に出現した、ということは間違いないようです。

(参考)
ブラジルカシャッサ研究所(ポルトガル語)

1500年代の初頭、ブラジルの海岸沿いで誕生したピンガ

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ピンガはラム酒の一種?

ピンガは砂糖作りの歴史とともに始まり、発展してブラジルの国民酒といわれるまでになり、世界への輸出量も年々増加しているお酒です。

ブラジルにはピンガ(カシャッサ/カシャーサ)の定義を記した法律があり、その規定を満たしたものだけが「ピンガ(カシャッサ/カシャーサ)」を名乗ることができます。
法令を確認していきましょう。

カシャーサはブラジルで生産されるサトウキビ蒸溜酒の典型的かつ独占的な名称で、アルコール度数は摂氏20度で38〜48%、サトウキビの搾り汁を発酵させたモストを蒸溜することによって得られ、独特の官能特性を持つ。リットルあたり砂糖を最大で6グラムまで添加することができる。

出典 Decreto No 6.871,de 4 de junho de 2009 Art.53

「サトウキビから造る蒸溜酒」というと、カリブ海などを原産とするラム酒を思い浮かべる人が多いかもしれません。同じサトウキビから造るお酒ならピンガはラム酒の一種かというと、「ピンガとラム酒はほぼ別のお酒」というのが正解のようです。

ピンガと一般的なラム酒との大きな違いは、おもに原料のタイプ。ラム酒の多くが、サトウキビから砂糖を精製するときに除去される副産物「糖蜜/廃糖蜜/モラセス」や「サトウキビの搾り汁をシロップにしたもの」を原料として造られるのに対し、ピンガの原料は法律にあるように「サトウキビを搾ったフレッシュジュース」だけに限定されています。

ただラム酒のごく一部にはサトウキビの搾り汁を原料とする「アグリコールラム」というジャンルがあります。厳密には樽による熟成やアルコール度数など細かな違いはあるものの、ラム酒のなかでもアグリコールラムだけが唯一、ピンガと共通点の多いお酒ということになります。

原料のタイプに違いがあるピンガとラム酒

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ピンガはアルコール度数が高いお酒

ピンガのアルコール度数は、ブラジルの法律で38〜48%と定められていています。日本で手に入りやすい一般的なピンガのアルコール度数は38〜42パーセント程度です。

参考までに、ほかの酒類のアルコール度数はおおむね以下のような数値です。

◇ビール:5%前後
◇ワイン:9〜15%程度
◇日本酒:13〜15%程度(原酒は16〜20%程度)
◇焼酎:20〜25%程度(上限は45%)
◇ウイスキー:40〜43%程度
◇ブランデー:40〜50%程度
◇ウォッカ:40〜60%(90%を超える銘柄も)
◇ジン:40〜50%程度
◇ラム酒:40〜50%(75%を超える銘柄も)

比べてみるとピンガのアルコール度数は、ビールやワイン、日本酒などの醸造酒よりは高く、ウイスキーやブランデー、ウォッカ(ウオツカ)、テキーラ、ジン、ラム酒といった蒸溜酒と同程度の数値です。

劇場版『名探偵コナン』で注目度急上昇中のお酒

「ピンガ」と聞くと「ブラジルのお酒」より先に、『名探偵コナン』を思い浮かべる人も多いでしょう。

というのも2023年4月に公開された劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』に新しく登場した映画オリジナルキャラクターが、まさに「ピンガ」なのです。

「名探偵コナン」シリーズといえば、コナンの宿敵である「黒ずくめの組織(黒の組織)」を構成するメンバーのコードネームがお酒の名前になっていることでもおなじみ。幹部級のジンラムをはじめ、ウォッカ、ベルモット、バーボンキール、キャンティ、コルン、シェリー、ライ、テキーラスコッチピスコ、アイリッシュ、キュラソーなど、さまざまなキャラクターがストーリーに彩りを添えています。

劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』で初めて「ピンガ」というお酒があることを知った人が多いかもしれませんが、あらかじめピンガがサトウキビを原料とした蒸溜酒であることを知っていた人なら、ピンガがラムの側近であるという点にニヤリとしたかもしれません。

ピンガのおいしい飲み方

ピンガをベースにした代表的なカクテル「カイピリーニャ」

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ピンガの基本を押さえたところで、ここからはピンガの飲み方を紹介していきます。

ピンガには大量生産型の「Cachaça Industrial
(カシャッサ インドゥストリアウ)」と、小規模生産で「職人による手作り」という意味を持つ「Cachaça Artesanal(カシャッサ アルテザナウ)」の2タイプがあります。前者を「インダストリアル カサッシャ」、後者を「クラフト カサッシャ」と呼ぶこともあります。

最近は大衆的なものから嗜好性の高いものまでラインナップが豊富で、そのまま飲むストレートからカクテルのベースまで幅広くたのしまれています。

カクテル「カイピリーニャ」が有名

「カイピリーニャ」は、ピンガをベースとしたもっともメジャーなカクテルです。

グラスにざく切りにしたライムと砂糖を入れ、果肉をつぶしながら砂糖を溶かし、たっぷりの氷とピンガを注いで完成。グイッと喉に流し込めば、目が覚めるような清涼感とやさしい甘さがたのしめます。

<材料>
ピンガ…45ミリリットル
ライム…1/4〜1個
砂糖…テーブルスプーン1〜2杯
氷…適量

<作り方>
1. ライムは上下を切り落として縦4つに割り、中心の白い部分を切りとって横に2〜3等分にします。
2. 好みの量のライムと砂糖をグラスに入れ、ライムをつぶした果汁を砂糖になじませます。
3.氷を入れ、ピンガを注いで混ぜればできあがり。

飲むときはマドラーを添え、ライムや砂糖を好みの酸味、好みの甘さになるよう混ぜながらたのしみましょう。

さまざまな飲み方をたのしめるピンガ

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ピンガで作るおすすめカクテル

ピンガが手に入ったら、カイピリーニャ以外の飲み方もたのしんでみたいもの。ピンガをベースにしたおすすめのカクテルをいくつか紹介します。

ハーボ・ジ・ガーロ

1950年代にサンパウロで誕生したといわれる「ハーボ・ジ・ガーロ」は、自然な甘味のなかに苦味の利いた香味豊かなカクテルです。

<材料>
ピンガ…35ミリリットル
ベルモット…15ミリリットル
(マルティーニ、チンザノなど)
氷…適量

<作り方>
1. 氷を入れたグラスにピンガとベルモットを注ぎ、よく混ぜます。
2. あればライムを飾ってできあがり。

カクテル名の「Rabo de Galo(ハーボ・ジ・ガーロ)」はポルトガル語で「雄鶏の尻尾」という意味。雄鶏・尻尾は「Cock・Tail」、つまりこれは「Cocktail(カクテル)」という名のカクテルです。

ジャングル

甘酸っぱいパイナップルジュースにさわやかなハーブ香をプラスしたカクテルです

<材料>
ピンガ…15ミリリットル
シャルトリューズ・ヴェール…15ミリリットル
パイナップルジュース…適量
氷…適量

<作り方>
1. 氷を入れたグラスにピンガとシャルトリューズを注ぎます。
2. 次にパイナップルジュースを好みの量入れ、よく混ぜてできあがり。

シャルトリューズはフランスのラ・グランド・シャルトリューズ修道院で1605年から受け継がれる秘伝のハーブリキュール。緑色の「verte(ヴェール)」と 黄色の 「jaune(ジョーヌ)」、どちらでもおいしく作れます。

カシャーサリッキー

「リッキー」は、ベースとなるお酒にライムを入れ、無糖のソーダで満たすスタイルの名称。甘味を加えないので、ドライなカクテルを好む人におすすめです。

<材料>
ピンガ…45ミリリットル
ライム…1/2個
炭酸水…適量
氷…適量

<作り方>
1. グラスにライムを搾り、そのままグラスに落とします。
2. 次に氷とピンガを入れ、好みの量の炭酸水を注ぎ、炭酸が抜けすぎないよう軽く混ぜてできあがり。

ライムはレモンに替えてもOK。炭酸水をトニックウォーターに替えると「カシャーサトニック」になり、こちらもおすすめです。

ピンガのおすすめ銘柄

国内で比較的入手しやすいおすすめ銘柄を紹介します。

カシャーサ51

「カシャーサ51」は世界中で愛飲されている有名銘柄

出典:サントリー株式会社ホームページ

世界50カ国以上に輸出されているもっともポピュラーなインドゥストリアウ銘柄のひとつが「カシャーサ51」です。土壌造りからサトウキビの選択、発酵、蒸溜、ボトリングまで生産プロセスと品質を厳格に管理。スッキリまろやかでクセのない味わいはカイピリーニャのベースにぴったりです。

国内販売元:サントリー株式会社
ブランドサイトはこちら

イピオカ

現在まで続いているブラジル最古の ブランド「イピオカ」

画像提供:リードオフジャパン株式会社

「イピオカ」は1846年創業、約180年の歴史を現代に引き継ぐ最古のカシャッサブランド。サトウキビ本来のピュアな風味や香りを味わえ、カイピリーニャのベースとして定番の無色透明な「CLASSIC PRATA(クラシック プラタ)」から、栗の木の樽で熟成した個性的で豊かなフレーバーが魅力の「RESERVA PRATA」(レゼルヴァ プラタ)など、4種のラインナップでカシャッサの持つさまざまな表情をたのしめる銘柄です。

国内販売元:リードオフジャパン株式会社
ブランドサイトはこちら

カシャーサ・ダ・キンタ

 伝統的な職人技によるアルテザナウブランド

出典:カシャーサ・ダ・キンタ日本公式サイト

「カシャーサ・ダ・キンタ」は、サトウキビの粉砕を水車の力で行うなど、1923年から受け継ぐ職人技で1本1本ていねいに作られる伝統的なアルテザナウ銘柄。ブラジル国立技術研究所にオーガニック製品認定を受けた3つのバージョンがあり、いずれも繊細な香りとフルーティーな後味が特長です。

国内販売元:シモンセン株式会社
ブランドサイトはこちら

ブラジル国外でもピンガが手に入りやすくなるとともに、ピンガの代表的なカクテル「カイピリーニャ」の認知度もアップし、英国の飲料専門誌「Drinks International」が世界のトップバー100店舗を調査して発表する「The World’s Best Selling Classic Cocktails」でも2021年の41位から2022年は24位まで人気が急上昇。ぜひ一度そのさわやかな味わいにトライしてみてください。

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