ジンとはどんなお酒?歴史からたのしみ方まで徹底解説!

ジンとはどんなお酒?歴史からたのしみ方まで徹底解説!
出典 : Igor Normann / Shutterstock.com

ジンとは、クリアな味わいのベーススピリッツに多種多様なボタニカルで風味をつけた、世界4大スピリッツのひとつに数えられるお酒です。今回は、ジンの歴史や製法などの基礎知識から、おすすめ銘柄、ジンベースの人気カクテルまで、一挙に紹介します。

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ジンはカクテルのベースとしてひっぱりだこのスピリッツ。まずは基本情報から確認していきましょう。

ジンとはどんなお酒?

ジンとはどんなお酒?

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ジンとは、おもに大麦や小麦、ライ麦、トウモロコシなどの原料を糖化・発酵させ、蒸溜してできた純度の高いスピリッツに、ジュニパーベリーをはじめとしたボタニカルの風味をプラスして再蒸溜したお酒です。

世界4大スピリッツのひとつに数えられる蒸溜酒

ジンは、ウォッカ、テキーラ、ラムと並ぶ「世界4大スピリッツ」のひとつです。

スピリッツとは、沸点の異なる成分を分離・精製する蒸溜という技術を使って造られる蒸溜酒全般を指し、広い意味ではジン、ウォッカ、テキーラ、ラムのほか、ウイスキーやブランデー、焼酎など、蒸溜して造るお酒をまとめて「スピリッツ(蒸溜酒)」と呼ぶこともあります。

ただし日本の酒税法では、「蒸留酒類」のなかに「ウイスキー」「ブランデー」「連続式蒸留焼酎(甲類)」「単式蒸留焼酎(乙類)」「原料用アルコール」というジャンル分けがあり、それらを除くエキス分が2度未満のお酒のみを「スピリッツ」と定義。ジンは、ウォッカ、テキーラ、ラムと同じくこの「スピリッツ」のジャンルに含まれています。

ちなみに諸外国、とくにEUではジンの主体となるフレーバーはジュニパーベリーであること、ベースとなるアルコールの原料、アルコール度数、添加物などに厳格な公式規格が定められていますが、日本の酒税法ではジンそのものの定義について特別な規定は設けられていません。

ジュニパーベリーは針葉樹の球果

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原料にジュニパーベリーなどのボタニカルを使用

ジンが、世界4大スピリッツに数えられるほかの3つのスピリッツ(ウォッカ、テキーラ、ラム)と大きく異なるところは、原料を糖化・発酵・蒸溜して造ったスピリッツに、ジュニパーベリーをはじめとしたさまざまなボタニカルで多彩なフレーバーやテイストを加える点。ジンというお酒の、ジンらしい味わいを生み出す原料はボタニカルといえます。

ジンの風味のつけ方にはおもに2つの手法があります。

ひとつは、ベースとなるスピリッツに香味の原料となるボタニカルを浸漬し、成分を移して再蒸溜する「スティーピング」と呼ばれる方法。もうひとつは再蒸溜する際、蒸溜機の内部にボタニカルを詰めたバスケットを設置し、立ちのぼるスピリッツの蒸気で香味成分を抽出・付加する「ヴェイパー・インフュージョン」と呼ばれる方法です。

ジンの風味の主体となるジュニパーベリーの使い方ひとつ取っても、ホール(粒)のまま、または砕いて、あるいは粉末にするなど、造り手によってさまざまな工夫がなされています。

ジュニパーベリーにプラスするその他のジン・ボタニカルには、コリアンダー、アンジェリカルート、アンジェリカシード、オリス、カッシア、シナモン、カルダモン、アーモンド、レモンやオレンジなどの柑橘類の果皮、ジンジャー、リコリス、ナツメグなどが挙げられます。

こうしたボタニカル原料の配合や使い方、スティーピングの時間やヴェイパー・インフュージョンの手法など、ひとつ一つの選択に造り手の深いこだわりがあり、そのこだわりがブランドごとに個性豊かなジンの味わいを生み出しています。

利尿や健胃のための薬用酒として生まれたジン

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ジンは薬用酒として生まれたお酒

アルコールにジュニパーベリーなどの香味をつけたジンというお酒は、もともとはたのしむためのお酒ではなく、薬用酒として生まれたといわれています。

というのも古くからジュニパーベーリーには強壮などの薬効成分があると信じられていて、11〜12世紀ごろのイタリアではすでにジュニパーベリーとぶどう酒を合わせて蒸溜するレシピがあった、という説も。また13〜14世紀ごろのネーデルラントでは、ジュニパーベリー入りのぶどう酒や蒸溜酒を「イェネーフェル」と呼び、利尿や健胃、解熱、強壮などに役立つ薬酒として医師や薬局が常備していたともいわれています。

さらに時代が進んで17世紀の半ば、オランダのライデン大学教授のフランシスカス・シルヴィウス博士が、植民地の熱病対策として、ジュニパーベリーをアルコールに浸漬し、蒸溜した薬用酒を開発。利尿・解熱に効果を発揮する「ジュニエーブル」や「ジュネヴァ」の名で広まっていきますが、味や香りの良さから薬効だけでなく嗜好品としての評判も高かったようです。

そして1689年、イギリスの名誉革命によってウィリアム三世がオランダから迎えられ、メアリー二世とともに英国国王になると、ジュネヴァもロンドンで爆発的に流行。名前もいつしかジュネヴァを短縮した「ジン」に変わっていきました。

ジンの原料に使われるボタニカル

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19世紀になって高性能な連続式蒸溜機が登場すると、それまで重厚なグレーンスピリッツに砂糖を加えた甘口のお酒だったジンに代わり、雑味のない辛口のジンが造られるようになります。新タイプのジンはおもな生産地の名を取って「ロンドンドライジン」と呼ばれ、国外への輸出も始まりました。

アメリカに渡った英国風のドライジンは、19世紀末ごろからカクテルのベースとして広く人気を集め、現在のような世界的なスピリッツへと成長していきました。

ジンというお酒はよく「オランダで生まれ、イギリスで洗練され、アメリカが栄光をあたえた」と評されますが、それにはこのような歴史的背景があったのです。

ジンのアルコール度数は高め

ジンのアルコール度数は40〜47度程度

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ジンのアルコール度数は低いもので37度くらい、高いものだと55度ほどあります。国内で手に入れやすい銘柄はおおむね40度〜47度がボリュームゾーンになっています。

ちなみにほかの酒類のアルコール度数は以下のような数値です。

◇ビール:5度前後
◇ワイン:9〜15度程度
◇日本酒:13〜15度程度(原酒は16〜20度程度)
◇焼酎:20〜25度程度
◇ウイスキー:40〜43度程度
◇ブランデー:40〜50度程度
◇ウォッカ:40〜60度(90度を超える銘柄もあり)
◇テキーラ:35〜55度
◇ラム:40〜50度(75度を超える銘柄もあり)

ビールやワイン、日本酒などの「醸造酒」と比べると、焼酎やウイスキー、ブランデー、などの「蒸溜酒」や、ジンをはじめウォッカ、テキーラ、ラムなどの「スピリッツ」はアルコール度数が高めです。くれぐれも飲み過ぎには注意しましょう。

ジンの種類はさまざま

現代のジンの主流はクリアで辛口のドライジン

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現在、単に「ジン」といった場合、ほとんどが「ドライジン」を指します。ジンというお酒のなかでもっともポピュラーなカテゴリーがドライジンで、国内で市販されているジンもドライジンが主流といっていいでしょう。

一般的に「ドライジン」とは「連続式蒸溜機で造られた純度が高く洗練された辛口のジン」のこと。この製法が生まれた当時の呼び名から「ロンドンドライジン」や「ロンドンジン」と呼ばれることもありますが、現在の生産地はイギリスに限らず、日本をはじめ世界中のさまざまな国や地域で造られています。

ドライジン以外のジンの種類には、以下のようなものがあります。

◇オールド・トム・ジン
ドライジンに2%程度の糖分を加えた甘口のジン。

◇プリマス・ジン
イギリス海軍の軍港のあるイングランド南西部プリマスで造られる、強い香りとほのかな甘味のあるジン。

◇ジュネヴァ
ジンのルーツとされるオランダ生まれのスピリッツで、穀物を蒸溜したモルトワインとジュニパーベリーの蒸溜液から造られる濃厚な香味が特徴。2008年にはEUから原産地呼称制度の認定を受けています。

◇シュタインヘーガー
ドイツのシュタインハーゲン村で造られるスピリッツで、ジュニパーベリーそのものを発酵させて蒸溜し、グレーンスピリッツを加えて再蒸溜するジン。

ジンはカクテルのベースに人気のお酒!

ジントニックはジンベースのシンプルなカクテルの代表格

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ジンはカクテルのベースとしてひっぱりだこのお酒。カクテルベースにおすすめのジンの種類や、一度は飲みたいカクテルを紹介します。

カクテルのベースならドライジンがおすすめ

さわやかな芳香とキレのある風味を持つジンは、カクテルのベースにぴったり。柑橘系の酸味やトロピカルフルーツの甘味、ビターなリキュール、弾ける炭酸で香味が引き立つソーダやトニック、ジンジャーエールなど、さまざまな割り材と抜群の相性を見せてくれます。

カクテルのベースには、無色透明でクリアな飲み口のドライジンがおすすめ。世界的に有名な銘柄には「ゴードン」「タンカレー」「ビーフィーター」「ボンベイ・サファイア」などがあります。

有名なカクテルも多数

カクテルのレシピ本で真っ先に紹介されていることも多いジンベースのカクテル。「ジントニック」や「ジンバック」のように、頭に「ジン」の名を冠したシンプルなレシピのカクテルだけでも次のようなものがあります。

◇ジントニック
ジン+トニックウォーター

◇ジンソーダ
ジン+ソーダ(無糖の炭酸水)

◇ジンバック
ジン+レモン果汁orライム果汁+ジンジャーエール

◇ジンリッキー
ジン+ライム果汁+ソーダ

◇ジンフィズ
ジン+レモン果汁+砂糖+ソーダ
など

「マティーニ」や「ギムレット」のように、カクテル名に「ジン」がつかない有名カクテルもたくさんあります。映画や小説の名脇役として名前は知っていても「じつはジンベースとは知らなかった」というカクテルもあるのではないでしょうか。

◇マティーニ
ジン+ドライベルモット

◇ギムレット
ジン+ライム果汁+砂糖

◇ネグローニ
ジン+カンパリⓇ+スイートベルモット

◇ホワイトレディ
ジン+ホワイトキュラソー+レモン果汁

◇キッスインザダーク
ジン+チェリーブランデー+ドライベルモット

◇シンガポールスリング
ジン+レモン果汁+チェリーブランデー+シュガーシロップ +ソーダ

カクテルの王様マティーニもジンベース

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ジンはカクテル以外の飲み方もたのしめる

ジンは飲み方によって多彩な表情を見せてくれるお酒です。カクテルベースとして人気のジンですが、それ以外のたのしみ方も紹介しておきましょう。

◇ストレート
ジンに使われているボタニカルの魅力をダイレクトにたのしめるのがストレート。華やかな刺激を堪能するなら常温で、少しマイルドにしたいときはキンキンに冷やすのがおすすめです。

◇ロック
ジンはオン・ザ・ロックにすると口あたりがなめらかに。氷が溶けるにつれ味わいの変化もたのしめます。

◇水割り
ジンのアルコール度数を下げつつボタニカルの芳香を感じたいときはジンと水を1:1くらいにした水割りがおすすめです。

◇お湯割り
寒い季節やリラックスタイムにはジンをお湯割りにして心まで温まりましょう。砂糖や蜂蜜を加えると「ホットジントディ」というカクテルに。

ジンの奥深い魅力に触れるクラフトジンという選択肢

地元の特産品を使ったクラフトジンが人気

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ジンが近年、大きな注目を集めているに背景には、「クラフトジン」と呼ばれるオリジナリティに満ちたジンの世界的な流行があります。

ジンはもともとレシピの自由度が高いお酒で、ジンのルーツであるジュニパーベリーを大切にすること以外は、プラスするボタニカルに制限はありません。そのため世界各地の意欲あふれる造り手たちがそれぞれのアイデアを活かし、こだわりの逸品を次々と世に送り出すことで発展を続けています。

なかでも人気の的となっているのが、ベースとなるスピリッツやボタニカルで、その地域ならではのテロワールを表現する地域色豊かなクラフトジンです。

日本でも、柚子や山椒、桜、香木、橙(だいだい)、シソ、玉露といった和のボタニカルを使った多彩なクラフトジンが生まれ、国内はもちろん欧米など海外の国々でも大いに人気を集めています。

ジンは薬用酒として生まれたルーツをたどれば数百年の歴史を持つスピリッツ。ソーダやジュースで割るだけでボタニカルの風味あふれるおいしいカクテルになるので、家飲みやBBQなどさまざまなシーンでたのしんでみてください。

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