ギムレットでハードボイルドな夜!? マティーニやジンライムとの違いは? レシピも紹介

ギムレットでハードボイルドな夜!? マティーニやジンライムとの違いは? レシピも紹介
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「ギムレット」はジンとライムで作る定番カクテル。ハードボイルド小説の名作『長い別れ(長いお別れ)/原題:The Long Goodbye』に登場した「ギムレットには早すぎる」というセリフでも有名です。今回は「ギムレット」の基本から名前の由来、レシピ、ジンのおすすめ銘柄などを紹介します。

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「ギムレット」はジンベースのスタンダードなカクテル。まずは概要からみていきます。

「ギムレット」とはどんなカクテル?

「ギムレット」に必要なのはジンとライムとカクテルシェイカー

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「ギムレット」はジンをベースとした数多くのカクテルのなかでも、マティーニやジントニックと並ぶ代表的な存在です。

ジンとライムで作るショートカクテル

「ギムレット」はベースとなるジンにライムを加え、シェイクして仕上げるカクテル。タイプとしては、時間をかけずできるだけ冷たいうちに味わう「ショートカクテル(ショートドリンク)」に分類されます。

「ギムレット」のベースに使われるジンは、トウモロコシや大麦、ライ麦などの原料を糖化・発酵させ、蒸溜してできたグレーンスピリッツに、ジュニパーベリーをはじめとしたさまざまなボタニカルの風味をプラスして再蒸溜したお酒です。

ジンには、現在主流となっている辛口の「ドライジン」を筆頭に、甘口の「オールド・トム・ジン」、イギリス海軍御用達の香りが強くほのかに甘味のある「プリマス・ジン」、「ジュネヴァ」などと呼ばれるオランダ独自のジンやドイツの「シュタインヘーガー」などさまざまタイプがありますが、「ギムレット」のベースにはおもに「ドライジン」が使われます。

ギムレットのアルコール度数は高め

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「ギムレット」はどんな味? アルコール度数は?

「ギムレット」の味わいは、華やかでエッジの効いたジンと、ライム独特のさわやかな酸味、ほのかな甘味が絶妙に溶け合う芳醇さが特徴。氷と一緒にしっかりシェイクすることで強めのアルコール感の角が取れ、刺激がやわらいで飲みやすくなっているのもポイントです。

キレのよいさわやかな飲み口とはいえ、一般的なレシピで作った「ギムレット」のアルコール度数は25〜33度、レシピによっては35度以上になることもあります。国内で市販されているジンのアルコール度数はおおむね37〜47度、なかには50度を超える銘柄もあり、ベースに使うジンのアルコール度数によって「ギムレット」のアルコール度数も変わってきますが、いずれにしても度数が高めのカクテルであることは間違いありません。

「ギムレット」はジンの芳香を愛する人にはたまらないカクテルではあるものの、くれぐれも飲み過ぎには注意しましょう。

「ギムレット」の生みの親はイギリス海軍の軍医という説が有名

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「ギムレット」というカクテル名の由来は?

「ギムレット」の名前の由来は諸説あるものの、イギリス艦隊の軍医トーマス・D・ギムレット卿(Sir Thomas Desmond Gimlette)が関わっている、という説が有名です。

19世紀の終盤、艦船に乗務していた海軍将校たちは毎日夕食前のひとときにジンをストレートもしくはジンにビターズを数滴振るだけのジン&ビターズで飲んでいたそうです。

空きっ腹に強いお酒は身体によくない、と考えた軍医のギムレット卿は、当時壊血病予防に有効とされ艦船に積み込まれていたライムジュースでジンを薄めて飲むよう提唱。やがてこの飲み方が発案者である「ギムレット」の名で呼ばれるようになった、というのが国の内外を問わずよく紹介されている説です。

そのほかにも、酒樽に穴を開けたりライムジュースの栓を抜いたりするときに使う錐(キリ/英語でgimlet)がカクテル名の元になっている説や、ジンの鋭い味わいを先の尖った錐に例えた節などもあるようです。

『長い別れ(長いお別れ)』の名ゼリフ「ギムレットには早すぎる」で有名に

2022年に刊行された田口版の新訳『長い別れ』

『長い別れ』レイモンド・チャンドラー 著/田口俊樹 訳(創元推理文庫)
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「ギムレット」といえばレイモンド・チャンドラーの『長い別れ(長いお別れ)/原題:The Long Goodbye』に出てくるあまりにも有名なセリフ「ギムレットには早すぎる」がまっ先に浮かぶ人も多いのではないでしょうか。

1953年にアメリカで刊行されハードボイルドの金字塔とされるこの物語のなかで、主人公の私立探偵フィリップ・マーロウが酔いつぶれたテリー・レノックスという男と出会い、意気投合し、行きつけのバー「ヴィクターズ」の隅でギムレットを飲み交わしながら男と男の友情を育んでいく過程はじつに味わい深く、さまざまな事件が収束したラストシーンに登場する「ギムレットには早すぎる」というセリフ、そして友情の終わりは、さらにエモーショナルに美しく心に残ります。

『The Long Goodbye』の日本語版は、長く親しまれる清水俊二訳の『長いお別れ』(早川書房)、村上春樹訳の『ロング・グッドバイ』(早川書房)、田口俊樹訳の『長い別れ』(東京創元社)、市川亮平訳の『ザ・ロング・グッドバイ』(小鳥遊書房)の4作。「ギムレット」は最後の名ゼリフだけでなく物語の序盤から登場します。原書も含めて好きな版を選び、古き良きハードボイルドの世界に身を委ねれば、読み返すたびに「ギムレット」が飲みたくなることうけあいです。

『長い別れ』レイモンド・チャンドラー 著/田口俊樹 訳(創元推理文庫)
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「ギムレット」と「ジンライム」や「マティーニ」との違いは?

氷を入れたグラスに直接ジンとライムを入れ、混ぜて仕上げる「ジンライム」

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ここでは同じジンベースの人気カクテル「ジンライム」や「マティーニ」と「ギムレット」の違いをくわしく紹介します。

「ジンライム」との違い

ジンとライムを使ったカクテルには、「ギムレット」のほかに材料名がそのままカクテル名になっている「ジンライム」があります。

「ギムレット」と「ジンライム」の違いは、「ギムレット」はシェイカーにジンとライムを入れてシェイクで仕上げ、「ジンライム」はグラスに直接ジンとライムを入れて混ぜる「ビルド」という手法で仕上げる点です。

グラスや氷の有無にも違いがあり、「ギムレット」は脚つきのカクテルグラスに注いで氷はなし、「ジンライム」は氷をたっぷり入れたロックグラスで飲むカクテルです。

ジンとベルモットをステアして作る「マティーニ」

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「マティーニ」との違い

「ギムレット」と並び、ジンをベースとしたカクテルの代表格といえるのが、数々の小説や映画に「大人の飲み物」として登場する「マティーニ」です。

「マティーニ」と「ギムレット」は同じショートカクテルですが、材料や作る手法が異なります。

「ギムレット」はジンとライムをシェイクして作りますが、「マティーニ」の材料はジンとドライ・ベルモット(熟成した白ワインに数十種類のハーブやスパイスを漬け込んだフレーバードワイン)。氷を入れたミキシンググラスに材料を入れて手早く静かに混ぜ、氷を除いてカクテルグラスに注ぐ「ステア」という手法で作ります。

また「マティーニ」はお酒+お酒のカクテルなので、お酒+果汁の「ギムレット」よりさらにアルコール度数が高くなります。低めに見積もっても30度程度、使う銘柄によっては40度以上になるため、お酒の初心者がトライするときは十分注意が必要です。

ほかにもたくさん! ジンベースのおいしいカクテル

世界4大スピリッツとされるウォッカ、テキーラ、ラム、ジン。なかでもカクテルのベースとして人気の高いジンは、「ギムレット」や「マティーニ」のほかにも、たくさんの名作カクテルを生んでいます。

「ギムレット」という飲み方が気に入り、そこからジンの魅力にハマったら、以下の記事なども参考に、ぜひさまざまなカクテルを試してみてください。

「ギムレット」のおいしい作り方

甘いコーディアルライムジュースとジンで作るスタンダードな「ギムレット」

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「ギムレット」の概要をおさえたところで、ここからは実際の作り方をみていきましょう。

「ギムレット」のスタンダードなレシピ

「ギムレット」には、ジンの刺激とライムの酸味を極めた辛口の1杯から、デザートドリンクのような甘さの1杯まで、じつにさまざまなレシピがあります。一般的に「ギムレット」の材料は「ジンとライムジュース」と紹介されていることが多いのですが、この「ライムジュース」に何を使うかによって味わいがまったく変わってくるのです。

フレッシュライムが今より手に入りにくかった時代、カクテルに加える「ライム」は、「スウィーテンド(Sweetened)」や「コーディアル(Cordial)」と呼ばれる、加糖された「カクテル用ライムジュース」だったケースがまれではなく、単に「ライムジュース」と書いてあった場合は加糖タイプを指していることが多いとみていいでしょう。

かのギムレット卿がイギリス艦隊の将校たちに新しいジンの飲み方を勧めたときの「ライムジュース」も、長い航路に耐えうる加糖されたタイプだったと考えられています。

前置きが長くなりましたが、それらをふまえた「ギムレット」のレシピは以下のとおりです。

【ライムジュースを使う場合の「ギムレット」のレシピ】
<材料>
ジン(ドライジン)…45ミリリットル
ライムジュース…15ミリリットル
氷…適量

<作り方>
1. シェイカーにジンとライムジュースを入れ、シェイカーの8〜9分目まで氷を入れてシェイクします。
2. 氷を除いてカクテルグラスに注ぎます。

ジンとライムジュースの割合は3:1が基本。お好みで調整しましょう。
甘めのカクテルが好きな人は、ジンの鋭さがやわらぐこちらのレシピがおすすめです。
カクテル用のライムジュースには緑色に着色されているタイプもあり、そのタイプを使った「ギムレット」の仕上がりは淡い薄緑色になります。

フレッシュライム果汁とジンで作った「ギムレット」は白っぽい仕上がりに

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「ギムレット」のアレンジレシピ

近年は、「ギムレット」によりフレッシュな味や香りを求めて、加糖タイプのライムジュースではなくフレッシュライムや果汁100パーセントの「ライム果汁」を使うレシピも人気です。

その場合のレシピは、以下のとおりです。

【生搾りのフレッシュライム果汁や100パーセントライム果汁を使う場合の「ギムレット」のレシピ】
<材料>
ジン(ドライジン)…45ミリリットル
ライム果汁…15ミリリットル
シロップ(砂糖)…1tsp(5ミリリットル程度)
氷…適量

<作り方>
1. シェイカーにジンとライム果汁、シロップを入れ、シェイカーの8〜9分目まで氷を入れてシェイクします。
2. 氷を除いてカクテルグラスに注ぎます。

食前・食後にさっぱりとしたカクテルを飲みたいとき、甘いカクテルが苦手な人には、好きな甘さに調節できるこちらのレシピがおすすめです。
このレシピで作った「ギムレット」は霧を思わせる半透明の白色になります。

「ギムレット」のベースにおすすめのジンは?

世界中のバーで使われるジンの定番銘柄はゴードン、タンカレー、ビーフィーター、ボンベイサファイア

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「ギムレット」のベースとなるジンというスピリッツには、数百年続く老舗メーカーのメジャーブランドから、近年のジンブームの要因にもなった個性派のクラフトジンまで、たくさんの銘柄があります。

ジンベースのカクテルに初めてトライするなら、まずは定番から入門してみるのがいいかもしれません。
現在主流となっているドライジンが生まれたイギリスを発祥地とし、バーでもよく使われる定番のジンには次のようなブランドがあります。

◇「ゴードン(GORDON’S)」
◇「タンカレー(Tanqueray)」
◇「ビーフィーター(BEEFEATER)」
◇「ボンベイサファイア(BOMBAY SAPPHIRE)」


また近年世界的な評価が高まっている日本のジンから選ぶのもおすすめです。

◇「ジャパニーズクラフトジンROKU〈六〉」/サントリー
◇「季の美 京都ドライジン」/京都蒸溜所
◇「香の森」/養命酒製造

など

ジンの個性は、使用するボタニカルの配合や風味づけの手法によって驚くほど多種多様です。「ギムレット」の味わいもベースにするジンによってまったく違った表情を見せてくれるので、バーや自宅でいろいろ試し、お気に入りの1杯を追求してみてください。

「ギムレット」のカクテル言葉(酒言葉)は「遠い人を想う」「長いお別れ」「勇気を出して」なのだとか。今夜はぜひ、遠い人を想いながら「ギムレット」のグラスを傾けてみてはいかがでしょうか。

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