「ボンドマティーニ」とは? 『007』が愛した「ウォッカマティーニ」の底知れぬ魅力
「ボンドマティーニ」は、映画『007』シリーズの主人公ジェームズ・ボンドが好む「ウォッカマティーニ」の愛称です。マティーニといえばジンとベルモットをステアして作るのが一般的ですが、ウォッカベースで、ステアではなくシェイクで作るのがボンド流。ここでは、その魅力や作り方を紹介します。
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007に登場する「ウォッカマティーニ」とはどんなカクテル?
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「ボンドマティーニ」は、映画『007』シリーズの主人公ジェームズ・ボンドが劇中で注文したカクテル「ウォッカマティーニ」の愛称です。まずは、ボンドが愛したウォッカマティーニというカクテルについてみていきましょう。
「ウォッカマティーニ」とカクテルの王様「マティーニ」の関係
映画やドラマに登場し、世界中で親しまれているカクテルに「マティーニ」があります。
「カクテルの王様」との異名を持つマティーニは、ジンとベルモットをステア(材料と氷をミキシンググラスに入れ、スプーンで手早くかき混ぜて作る方法)して、オリーブを飾って作るショートカクテルです。
ボンドが好む「ウォッカマティーニ」は、マティーニのベースのジンをウォッカに変えたもの。「ウォッカティーニ」「カンガルー」と呼ばれることもあります。
「ウォッカマティーニ」の基本レシピ
ウォッカマティーニは、マティーニと同じくショートグラスで飲むカクテル。作り方はいたってシンプルです。
<材料>
ウォッカ…3/4
ドライベルモット…1/4
オリーブ…適量
<作り方>
1. ウォッカとドライベルモットをミキシンググラスに注ぎ、ステアします。
2. ショートグラスに注ぎ、オリーブを飾って完成。お好みでレモンピールを搾ってもOK。
ウォッカとドライベルモットの割合は3:1が王道ですが、4:1とするレシピもあるので、適宜調整してください。
ジェームズ・ボンドが愛したカクテル「ボンドマティーニ」とは?
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「ボンドマティーニ」は、ジェームズ・ボンドが愛したウォッカマティーニの愛称と紹介しましたが、実際はファンの間で語り継がれているだけでカクテル名ではありません。
「ボンドマティーニ」はウォッカマティーニのバリエーションのひとつ
ジェームズ・ボンドの名ゼリフに、「Vodka Martini, Shaken, not stirred」があります。直訳すると、「ウォッカマティーニを、ステアではなくシェイクで」。つまり、一般的にステアして作られるウォッカマティーニをシェイカーで混ぜ合わせて飲むのがボンド流というわけです。
ボンドの愛したマティーニは、カクテルの王様・マティーニの王道レシピとは大きく離れていたため、映画を観ていたオーディエンスは衝撃を受けたといいます。このセリフが流行した結果、『007』シリーズではこのセリフが定番になったようです。
「ボンドマティーニ」は本来のウォッカマティーニより一手間かかりますが、シェイカーがあれば自宅でもかんたんに作れます。ここでは、王道の作り方を紹介します。
<材料>
ウォッカ…45ミリリットル
ドライベルモット…15ミリリットル
レモンピール…1枚
<作り方>
1. ウォッカとドライベルモットを氷を入れたシェイカーでシェイク。
2. カクテルグラスに注いだら、レモンピールを浮かべて完成。
ちなみに、『007』の影響からか、「ウォッカマティーニ」と注文すれば、シェイクして提供するバーもあるようです。
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シェイクとステアの違いを知れば「ボンドマティーニ」の真価がわかる
シェイクもステアも、材料を混ぜるという意味では同じですが、できあがりの味は大きく違います。なぜボンドがシェイクを好んで注文したのか、技法をもとに完成したカクテルの味を想像してみましょう。
<シェイクとステアの違い>
◆シェイク:混ぜる、冷やす、加水する、まろやかな味を作る
◆ステア:材料が持つ繊細な風味を活かす
シェイクしたマティーニは、ステアしたものよりマイルドな味になります。また、劇中でボンドが「舌がしびれるほど冷えているのがよい」と言っているように、シェイクすることによって材料がきちんと冷えるのもボンドマティーニの魅力といえるでしょう。
「ボンドマティーニ」の元祖にして特別なカクテル「ヴェスパー」とは
『007』シリーズに登場するマティーニに、「ヴェスパー(ヴェスパー・マティーニ)」の名で知られるオリジナルカクテルがあります。
「ヴェスパー」は、原作者のイアン・フレミングが小説『カジノ・ロワイヤル』(1953年)の中で描いたカクテルで、その名称はボンドが愛した女性ヴェスパー・リンドに由来します。さっそく作り方をみていきましょう。
<材料>
ドライジン…90ミリリットル
ウォッカ…30ミリリットル
リレ・ブラン…15ミリリットル
レモンの果皮…適量
<作り方>
1. ドライジンとウォッカ、リレ・ブランを、氷を入れたシェイカーでシェイク。
2. シャンパングラスに注いだら、薄く大きく切ったレモンの皮を飾って完成。
本来のレシピでは、キナ・リレというリキュールを使用していましたが、現在は製造が終了しているため、リレ・ブランが使われるようになりました。
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「ボンドマティーニ」のバリエーション「ダーティマティーニ」とは
『007 スペクター』に登場したのが「ダーティマティーニ(ダーティーマティーニ)」です。
「ダーティ」とは、「汚れた」という意味。オリーブの漬け汁を使うため、白く濁ることからこのような名で呼ばれるようになったそう。
本来「ダーティマティーニ」ベースに使われるのはドライジンですが、『007』ではもちろんウォッカを使用します。劇中で、本作のヒロインであるマドレーヌ・スワンが「ウォッカマティーニをダーティで」と注文するシーンはとても印象的でした。
『007』流の「ダーティマティーニ」の作り方を紹介します。
<材料>
ウォッカ…45ミリリットル
ドライベルモット…15ミリリットル
オリーブの漬け汁…1tsp
オリーブ…1〜3個
<作り方>
1. ウォッカとドライベルモット、オリーブの漬け汁を、氷を入れたシェイカーでシェイクする。
2. カクテルグラスに注いで、オリーブを飾って完成。
マティーニは飲み手の好みや哲学が現れるカクテル
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カクテルの王様「マティーニ」は、飲み手の好みや哲学が反映されるカクテルといわれています。
マティーニは成功者のカクテル
ジェームズ・ボンドはなぜ正統派ではないレシピをオーダーしたのか。これまでもさまざまな仮説が浮上しては、広く検証されてきました。
あくまで推測ですが、この疑問については、以下のように考えるのが自然ではないでしょうか。
『007』シリーズのジェームズ・ボンドは、小説の原作者であるイアン・フレミングのキャラクターがかなり色濃く反映されています。たとえば、ネクタイの結び方ひとつとっても原作者の好みです。彼が思う最高のマティーニのレシピが、シェイクしたウォッカマティーニだったのではないでしょうか。
マティーニはカクテルの王様にして成功者のステイタス。その人のこだわりが如実に出るため、ジンとベルモットの比率に関するレシピ論争も少なくありません。財界人や文豪たちが自分のマティーニのレシピを持っていて、フレミングはシェイクするウォッカマティーニを好んだと思われます。
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マティーニのレシピは多種多様
マティーニは好みや考えが現れるカクテルです。とくにステアの場合は腕が試されるため、自宅で最高の1杯を作るたのしみがあります。また、ジンやウォッカの代わりに焼酎や日本酒をベースに用いたり、ベースの比率を変えたりするだけで、味わいの幅も広がります。
ちなみに、マティーニというとジン3〜4、ベルモット1が黄金比といわれていますが、これよりジンの割合が大きくなると「ドライマティーニ」になります。
一方、マティーニに使うドライベルモットを甘口のスウィートベルモットに変えると、「スウィートマティーニ」というカクテルになります。
マティーニのレシピは多種多様。ボンドが愛したウォッカマティーニを参考に、理想のマティーニを追い求めてみてはいかがでしょうか。
ボンドマティーニは、シェイカーと材料があれば自宅でも手軽に作れるカクテル。氷が溶けて薄まる分、飲みやすくなるので、アルコール度数が高いカクテルを飲み慣れていない人もぜひ味わってみてください。