ジュニパーベリーとは、ジンに独特な香りをもたらすハーブ! その特徴や効能、魅力、たのしみ方などを紹介

ジュニパーベリーとは、ジンに独特な香りをもたらすハーブ! その特徴や効能、魅力、たのしみ方などを紹介
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「ジュニパーベリー」は、ジンの特徴的な風味を作るために欠かせないボタニカル(植物原料)のひとつ。今回はジュニパーベリーの香りや効能といった基本情報からジンとの関係、ジュニパーベリーに多彩なボタニカルをプラスしたクラフトジンなどを紹介します。

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ジュニパーベリーは、ジンの香りづけに使われるボタニカルの代表格。ジンの起源とも密接に関わる植物です。まずはその特徴を詳しくみていきましょう。

ジュニパーベリーとは?

ジュニパーベリーは北半球に自生する針葉樹の実

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まずは「ジュニパーベリー」の基本を押さえておきましょう。

ジュニパーベリーはジンの風味づけに使われる針葉樹の実

「ジュニパーベリー」は、欧州や北米など北半球の広い範囲に分布するヒノキ科の針葉樹「ジュニパー」の果実(球果)です。

ジュニパーは雌雄異株の植物で成木になるまで3〜4年かかり、その実「ジュニパーベリー」が採れるようになるまでにはさらに2〜3年の月日がかかるとされています。成熟したジュニパーベリーの色合いはブルーベリーに似た深い紫色。ジンに独特の香りを与えるボタニカルとして知られています。

ジュニパーベリーの別名は杜松(ねず)の実

ジュニパーの学名は「Juniperus communis(ジュニペラス・コミュニス)」。日本に自生する近縁種は「杜松(ねず)」といい、ジュニパーは「西洋杜松(セイヨウネズ)」、その球果であるジュニパーベリーは「杜松(ねず)の実」とも呼ばれています。

和名の「ねず」は「鼠刺し(ねずみさし)」の略で、針葉樹ならではのとがった葉先をねずみ除けに利用していたことからつけられたとか。

一方、漢方ではジュニパーベリーを「杜松子(トショウシ)」「杜松実(トショウジツ)」といい、利尿などの効果が期待できる生薬としても用いられているそうです。

乾燥させたジュニパーベリーはまさにジンの香り

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ジュニパーベリーの香りと風味は?

乾燥させたジュニパーベリーは、風味豊かなスパイスとなります。シャープでスパイシー、苦味のなかにほのかな甘味が感じられる独特の芳香は、まさにジンの味わいそのもの。

「ベリー」という名前はついているものの、ジュニパーベリーの香りや風味は、形や色味が似ているブルーベリーやハックルベリー、ブラックカラント(カシス)などのベリー系とはまったくの別物です。

ジュニパーベリーは国内外の香辛料メーカーが手掛けるスパイス・ハーブシリーズのラインナップに入っていることも多く、店頭やネットショップでも比較的入手しやすいので、興味があれば一度味わってみてはいかがでしょうか。

数世紀前から薬用酒に使われてきたジュニパーベリー

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ジュニパーベリーの効能

ジュニパーベリーや、ジュニパーベリーから採れる精油(エッセンシャルオイル、アロマオイル)には次のような効能が期待できると考えられています。

◇鎮痛
◇抗炎症・抗菌
◇血行促進
◇利尿
◇うっ滞除去(血液やリンパなどの流れを促進)
◇強壮
◇リフレッシュ
◇血糖値を下げる
◇消化不良の改善


ジュニパーベリーには、「α-ピネン」や「リモネン」など、いわゆる「森の香り」として有名な成分が含まれ、それらがリラックス効果や鎮静効果をもたらしてくれるという報告もあります。

ジュニパーベリーの効能は、化学的な薬効成分が明らかになる前から知られていたようで、11〜12世紀ごろのイタリアでジュニパーベリーとぶどう酒を使った蒸溜酒が生まれていたという説も。さらに13〜14世紀ごろのネーデルラント(現在のオランダ、ベルギー、ルクセンブルク、フランス北部などを含む)では、ジュニパーベリーを使った薬酒を「イェネーフェル(Jenever・Genever|ジュニパーのオランダ語)」と呼んで、医師が利尿や健胃、強壮剤として常備していたともいわれています。

ジュニパーベリーの使い道

ジュニパーベリーのウッディな香りでリフレッシュ

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ジュニパーベリーはジンの風味づけのほか、さまざまな用途で幅広く活用されています。

◇スパイス
ジュニパーベリーのハーバルで強い香りは、ハムやパテ、肉料理、ジビエ料理の臭み消しにぴったり。ピクルスやドレッシング、ザワークラウトの風味づけ、燻製素材などにも使われます。

◇ハーブティー
実を軽く潰してハーブティーにすると、ウッディでほのかに甘く、スッキリとした風味をたのしめます。ローズやミント、レモングラスなど、他のハーブとのブレンドもおすすめです。

◇アロマオイル(エッセンシャルオイル、精油)
ジュニパーベリーから抽出した精油(エッセンシャルオイル)は、気持ちをリフレッシュさせてくれるアロマとして支持されています。ディフューザーで空間に香りを漂わせるほか、ボディトリートメントや半身浴にも重宝します。

◇入浴剤、その他
バスソルトのなかには、筋肉の疲れを癒やすタイプの商品にワコルダー(ドイツ語でジュニパーのこと)を使用しているものがあります。

ほかにも、ポプリやサシェ、アロマワックス、石けんなどの香りに独特なアクセントをプラスしてくれる素材としてジュニパーベリーが重宝されています。

ジュニパーベリーとジンの関係

ジン独特の風味を作り出すジュニパーベリー

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幅広い活用法のなかで、ジュニパーベリーともっとも関係の深いのがジンです。ここからはジュニパーベリーの香りや風味がジンにどのような個性を与えるのか、詳しく紹介していきます。

ジンの基本的な製造方法をおさらい

まずはジンの基本的な製法をおさらいしましょう。

ジンはトウモロコシや大麦、ライ麦、ジャガイモなどの原料を糖化・発酵させて蒸溜して造ったスピリッツに、ジュニパーベリーをはじめとしたボタニカル(ハーブ、スパイス、果実、樹皮、根、花など)の風味を加えて再蒸溜したお酒です。

風味のつけ方にはおもに2通りあり、ひとつはベースとなるスピリッツにボタニカルを浸漬し、それを蒸溜する方法。もうひとつは蒸溜機内部のバスケットにボタニカルを仕込み、立ちのぼるスピリッツの蒸気で香味成分を抽出・付加する方法です。

ジュニパーベリーそのものの使い方にもいろいろな方法があり、ホール(粒)のまま、または砕いて、さらに粉状にするなど、目指すテイストを得るため作り手によってさまざまな工夫がなされています。

ジンに風味づけする手法はおもに浸漬とスチーム

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ジュニパーベリーはジンに個性をもたらすボタニカルの代表格

ここまで「ジュニパーベリーはジンの風味づけに使われている」と紹介してきましたが、正確には「ジュニパーベリーで風味づけした蒸溜酒をジンと呼ぶ」といったほうが正しいかもしれません。

日本の酒税法では、ジンはウォッカやテキーラ、ラムなど同じ「スピリッツ」に分類されるお酒で、ジンそのものについての規定はとくにありません。

対して諸外国、とくにEUでは製法や添加物などによって「ジンの定義」が厳格に定められています。

2019年に改定されたEUのレギュレーションによれば、ジンは「ジン(Gin)」「蒸溜ジン(Distilled Gin)」「ロンドン ジン(London Gin)」の3つに大別されていますが、最優先されている定義は、以下の2点を満たしていることです。

◇農産物由来のエチルアルコールにジュニパーベリーのフレーバーをつけて製造される
◇ジュニパーベリー風味のスピリッツである


ジンという名称自体も、ジュニパーを表すオランダ語の「ジュネヴァ(ジュネバー)」またはフランス語の「ジュニエーブル」に由来しています。

ジンに使われるさまざまなボタニカル

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ジンに不可欠なボタニカルがジュニパーベリーだとすれば、一つひとつの銘柄の個性を生み出すのはジュニパーベリーと組み合わせるさまざまなボタニカルたち。よく使われるものに、コリアンダー、アンジェリカルート、アンジェリカシード、オリス、カッシア、シナモン、カルダモン、アーモンド、レモンやオレンジの果皮、ジンジャー、リコリス、ナツメグなどが挙げられます。使用する原料や配合、抽出法に関する詳細は、企業秘密になっているのがふつうです。

近年はさまざまな国や地域で、多彩なボタニカルを使った個性派ジンが誕生。ボタニカルの種類や産地、製法、すべてにこだわってていねいに造られるジンは「クラフトジン」とも呼ばれ、大いに注目を集めています。

なお、「クラフトジン」に法律的な定義はありません。大量生産される商品ではなく、少量生産のジンを指すケースが多いようです。

ジュニパーベリーの個性を感じられる国産クラフトジン

日本でも、日本という国や造られる地域のテロワール、造り手の想いを表現するクラフトジンが続々登場しています。ジュニパーベリーをはじめとした伝統的なジン・ボタニカルに和のエレメントをプラスした「ジャパニーズクラフトジン」は海外での評価も高く、財務省の貿易統計によれば、2011年におよそ0.99キロリットルだった日本のジン輸出量は2017年から急拡大。2021年にはおよそ4,249キロリットルに達しています。

ここではジャパニーズクラフトジンからおすすめの銘柄を紹介します。

ジャパニーズクラフトジンROKU(サントリー)

2017年に発売されたサントリーのジャパニーズクラフトジンROKU

出典:サントリー株式会社ホームページ

「日本を代表するプレミアムジン」を目指して選ばれたのは、桜花、桜葉、煎茶、玉露、山椒、柚子という6種の和素材。ジュニパーベリーをはじめとした8種のトラディショナルボタニカルによる本格的なジンの味わいに、繊細な職人技でブレンドされた和のボタニカルが加わり、華やかで豊かな香味を生み出しています。6角形のそれぞれの面に6種の和素材文様がほどこされたボトルデザインにも日本の美意識が宿ります。

アルコール度数:47度

製造元:サントリー株式会社
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Japanese GIN 和美人

地元鹿児島産のボタニカルを使用した「Japanese GIN 和美人」

画像提供:本坊酒造株式会社

1872年の創業から約150年の歴史を持つ鹿児島屈指の老舗酒造メーカー、本坊酒造が手掛ける「Japanese GIN 和美人」は、地元産のボタニカルにとことんこだわったクラフトジンです。柚子(ゆず)、辺塚橙(へつかだいだい)、檸檬(レモン)、金柑(きんかん)、けせん、月桃、緑茶、生姜、紫蘇(しそ)という9種の鹿児島産ボタニカルとジュニパーベリー、コリアンダーシードの計11種類を独自製法で仕込み、蒸溜。素材の特性を最大限に引き出した爽快感のある香りと味をたのしめます。

アルコール度数:47度

製造元:本坊酒造株式会社
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ジュニパーベリーの個性をたのしむならジントニックがおすすめ! 作り方を紹介

ジンベースの定番カクテル、ジントニック

Brent Hofacker / Shutterstock.com

ジンのなかで豊かに息づく、ジュニパーベリーをはじめとしたボタニカル。銘柄ごとに工夫が凝らされたボタニカルをしっかり感じるには、ストレートやロックで味わうのがおすすめです。

とはいえジンのアルコール度数はおおむね37〜55度。そのままで飲むには少し度数が高く、カクテルのベースとしてたのしまれることが多いでしょう。

マティーニやギムレット、シンガポール・スリングやキッス・イン・ザ・ダーク、トムコリンズなど、ジンを使った有名なカクテルは数々あれど、やはり代表格はジントニックです。

ジントニックの作り方はとてもシンプル。氷を入れたグラスに好みのジンを入れ、トニックウォーターを注いでカットライムを搾り、軽くステアすればできあがりです。ジンとトニックウォーターの割合は1:2〜1:5くらいまで自由に調節を。

ちなみに、食事のメニューやつまみとの兼ね合いでトニックウォーターの甘味が気になる場合は、トニックウォーターをソーダに替える「ジンソーダ」もおすすめです。

ジュニパーベリー(杜松の実)は、数世紀前からその独特な風味や効能が愛されてきた針葉樹の球果。スパイスやハーブとして、またジンがジンであるために必要なボタニカルとしても知られています。これからジンをたのしむときは、ジュニパーベリーの存在をぜひ意識してみてくださいね。

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