「大吟醸」の日本酒とは? 味わいや香りの特徴、おいしい飲み方、おすすめの銘柄などを紹介
「大吟醸」の日本酒とは、精米歩合50パーセント以下の米を使って吟醸造りで造る「特定名称酒」の大吟醸酒のこと。今回は、大吟醸酒の味わいや香りの特徴、「大吟醸」の読み方、吟醸酒や純米大吟醸酒との違い、飲み方や賞味期限、おすすめの銘柄を紹介します。
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目次
「大吟醸」の日本酒の味わいや香りの特徴からみていきましょう。
「大吟醸」は至高の味わいと華やかな香りが堪能できる日本酒
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「大吟醸」の日本酒は、雑味が少ないすっきりとした味わいと、フルーティーで華やかな香りを特徴とするお酒です。
滑らかで軽やかな飲み口と、ほんのり甘く果実を想わせるような芳香は至高ともいえるもので、日本酒ファンはもちろん、日本酒が苦手と思っている人や日本酒を飲んだことのない人にこそおすすめのお酒です。
丹精込めた酒造りから生まれる「大吟醸」の香味をぜひ堪能してみてください。
「大吟醸」の読み方は? 「吟醸」の意味や由来も知ろう
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「大吟醸」は「だいぎんじょう」と読みます。
「大吟醸」の「吟醸」は、吟味した原料を使ってていねいに醸造するという意味を持つ言葉で、明治時代から使われていたようです。
「大吟醸」の日本酒の原形が生まれたのも明治時代のこと。全国の蔵元が鑑評会や品評会で酒造技術を競い合うなかで少しずつ形になり、いつしかよい米をよく削り、厳選した酵母を使って低温でじっくり発酵させるという、現在の「吟醸造り」のような製法で造られるようになりました。
「大吟醸」という言葉もそのころから定着していったと考えられています。
大吟醸酒は「特定名称酒」のひとつ
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大吟醸酒は「特定名称酒(特定名称の清酒)」のひとつです。
「特定名称酒」とは、吟醸酒・純米酒・本醸造酒および大吟醸酒・純米吟醸酒・純米大吟醸酒・特別純米酒・特別本醸造酒の総称。国税庁が告示した「清酒の製法品質表示基準(以下「表示基準」も同じ」)の要件を満たす場合にのみ表示することができます。
「表示基準」をもとに国税庁がまとめた大吟醸酒の要件をみてみましょう。
◇「清酒の製法品質表示基準」の大吟醸酒の要件
精米歩合50%以下の白米と米麹及び水、またはこれらと醸造アルコールを原料として吟味して造った清酒で、固有の香味及び色沢が特に良好なもの
(国税庁ホームページより抜粋して引用)
上記の「吟味して造った」は「吟醸造り」のことを意味しています。
また、「特定名称酒」に共通する要件もあります。
◇「白米」:3等以上に格づけされた玄米又はこれに相当する玄米を精米したもの
◇「米こうじ」のもととなる「こうじ米」の使用割合:「白米」の重量の15パーセント以上
◇「醸造アルコール」の使用重量:白米の重量の10パーセントを超えない
(以上、国税庁告示「清酒の製法品質表示基準」を要約)
これらをすべて満たしたものだけが、「大吟醸酒」を名乗れます。
大吟醸酒と吟醸酒の違いとは? ポイントは精米歩合
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大吟醸酒と吟醸酒は、ともに米と米こうじ、醸造アルコールを原料としたお酒で、「吟醸造り」で造られます。
両酒の大きな違いは精米歩合。大吟醸酒が50パーセント以下となっているのに対し、吟醸酒は60パーセント以下となっています。
「精米歩合」とは、玄米を外側から削って精米したあと、残った米の割合がどのくらいかをパーセンテージで表したものです。その数値が低いほど、雑味成分が含まれる米の表層部がよく削られていることを意味します。
より削った米が使われている大吟醸酒は、吟醸酒よりもさらにクリアな味わいのものが多い傾向にあるようです。
大吟醸酒と純米大吟醸酒の違いは原料? 醸造アルコールに注目しよう
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国税庁の「表示基準」上では、大吟醸酒と純米大吟醸酒の違いは、醸造アルコールの有無のみです。
大吟醸酒に含まれる「醸造アルコール」は一般的に、甲類焼酎(連続式蒸溜焼酎)と同様の製法で造られる高純度のアルコールです。
酒質を劣化させる「火落ち菌」の増殖を抑えるほか、香味を調整するために添加されるもので、「特定名称酒」では大吟醸酒のほか、吟醸酒・本醸造酒・特別本醸造酒に含まれています。
もろみに適量添加すると味わいがすっきりし、軽やかな辛口テイストのお酒に仕上がります。香りも引き出すため、大吟醸酒の香味がいっそう際立ちます。
一方、「醸造アルコール」が含まれていない純米大吟醸酒は、米と米こうじと水だけで造られるため、華やかな香りとともに原料米由来の旨味やコクが味わえるものが多いようです。
大吟醸酒の香りの特徴は?
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大吟醸酒の魅力のひとつである香りについてみていきましょう。
大吟醸酒の魅力はフルーティーで華やかな吟醸香(ぎんじょうか)にあり
大吟醸酒の魅力のひとつに、フルーティーで華やかな香りが挙げられます。
この香りは「吟醸香」、または「吟香(ぎんか/ぎんこう)」と呼ばれ、香り成分を生成する酵母と「吟醸造り」によって生み出されます。
「吟醸造り」とは、国税庁のホームページによれば「よりよく精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、かすの割合を高くして、特有な芳香(吟香)を有するように醸造すること」とあります。
「吟醸造り」の大きなポイントは低温発酵。酵母が生きていられるぎりぎりの温度といわれる10度前後の低温で、もろみをじっくり発酵させると、ストレスを受けた酵母が香気成分を生成するのです。
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リンゴ系? バナナ系? 吟醸香の2つの傾向
「吟醸香」の香り成分は大きく分けて2種類あり、香りの傾向も以下の2つに大別されます。
◇リンゴのような香り:カプロン酸エチル
みずみずしい甘酸っぱい香り。リンゴのほか洋ナシやナシ、パイナップルなどにたとえられます。
◇バナナのような香り:酢酸イソアミル
穏やかで奥深い香り。バナナほかメロンなど甘味の濃いフルーツにたとえられます。
カプロン酸エチルと酢酸イソアミルの両方をより多く生成するものなど、さまざまな種類の酵母が開発されています。香りの傾向が知りたいときには、使用されている酵母もチェックしてみましょう。
大吟醸酒のおいしい飲み方は?
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大吟醸酒は一般に、冷酒、常温、そして燗酒でもおいしく飲める日本酒ですが、吟醸香が感じにくくなる冷やしすぎや温めすぎには注意が必要です。
おすすめの温度帯は以下のとおりです。
◇冷酒
花冷え(はなびえ):10度前後
涼冷え(すずびえ・すずひえ):15度前後
◇常温(20~25度)
◇燗酒
人肌燗(ひとはだかん):35度前後
大吟醸酒は商品ごとにそれぞれ個性があります。蔵元が推奨している飲み方があれば、まずはそれを試してみましょう。
大吟醸酒に賞味期限はあるの? 正しい保管・保存方法は?
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日本酒には殺菌作用のあるアルコールが含まれています。未開封のものは基本的に腐敗することがないため、「食品表示基準」に定められている賞味期限や消費期限の表示は省略可能となっています。
賞味期限がないとはいえ、日本酒は時間の経過や環境によって変化します。大吟醸酒も例外ではありません。酒質を劣化させる紫外線・高温・空気接触・衝撃は可能なかぎり避けましょう。
開封後はいうまでもなく、開封前も冷蔵庫で保管すると安心です。とくに生酒系の大吟醸酒は冷蔵庫での保管・保存が基本となります。
大吟醸酒のおすすめ銘柄を紹介
大吟醸酒のおすすめ6銘柄を紹介します。
皇国晴(みくにはれ)酒造「大吟醸 幻の瀧(まぼろしのたき)」
出典:皇国晴酒造株式会社サイト
富山県の蔵元、皇国晴酒造が名水百選の湧き水で醸した、丸みを帯びたキレのある味わいと品のある吟醸香がたのしめる大吟醸酒。軽やかな酒質で、食材の風味を高める旨味も兼ね備えています。
製造元:皇国晴酒造株式会社
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高野酒造「越後極寒仕込 大吟醸」
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新潟県新潟市の高野酒造が手掛ける、飲み進めるごとに旨さが増す大吟醸酒。厳選された地元の新潟県産米を50パーセントまで磨き、低温でじっくりと醸し上げた良酒です。
製造元:高野酒造株式会社
公式サイトはこちら
遠藤酒造場「渓流(けいりゅう) 大吟醸」
出典:株式会社遠藤酒造場サイト
長野県須坂市の遠藤酒造場が手掛ける華やかな香りと成熟した旨味が見事に調和する大吟醸酒。IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2019で金賞を受賞するなど海外でも高く評価されています。
製造元:株式会社遠藤酒造場
公式サイトはこちら
下越(かえつ)酒造「大吟醸 感謝 限定醸造(桐箱入)」
K+K / PIXTA(ピクスタ)
新潟県の下越酒造が手掛ける大吟醸酒は、新潟県産の酒造好適米「五百万石」を100パーセント使用し、極寒期に伝統の寒仕込みで醸し上げた辛口の逸品。華やかな芳香に冴える吟味、優雅で心地よい余韻とキレのあるのどごしが印象的な1本です。
製造元:下越酒造株式会社
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北鹿(ほくしか)「大吟醸 北秋田」
出典:株式会社北鹿サイト
秋田県大館市の蔵元、北鹿の大吟醸酒は、良質な天然水を使い、厳寒期に丹精込めて仕込んだ確かな品質の本格派。スーパーで手軽に入手できるリーズナブルな「日常たのしめる食中酒の大吟醸」です。
製造元:株式会社北鹿
公式サイトはこちら
賀茂鶴(かもつる)酒造「大吟醸 特製ゴールド賀茂鶴」
出典:賀茂鶴酒造株式会社サイト
広島県の賀茂鶴酒造を代表する優雅な香りと芳醇な味わいの大吟醸酒。昭和33年(1958年)の高度経済成長期に金箔入り大吟醸酒の先駆けとして発売されて以来のロングセラー。桜の花びら型金箔入りです。
製造元:賀茂鶴酒造株式会社
公式サイトはこちら
「大吟醸 特製ゴールド賀茂鶴」についてはこちら
吟味してよく削った米で、手間を惜しまず時間をかけて造られる大吟醸酒。その華やかな吟醸香とクリアな味わいをたのしんでみてくださいね。