日本酒の特定名称酒の種類とは? 種類ごとの違いや味わいの違いを知ってたのしもう!

日本酒の特定名称酒の種類とは? 種類ごとの違いや味わいの違いを知ってたのしもう!
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日本酒の特定名称酒とは「本醸造酒」「吟醸酒」「純米酒」の総称で、お米の精米歩合や米、米こうじ、醸造アルコールといった原料などの違いにより8種類に分けられます。特定名称を名乗るには、国税庁が提示する要件を満たす必要があります。

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日本酒の種類のひとつ、特定名称酒とは?

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日本酒は種類がとても多いお酒です。法律などによって定義は多少異なりますが、一般的な意味合いでの「日本酒」は、清酒・合成酒・みりんなどに分けられます。このうち清酒については「特定名称酒」と、それ以外の「普通酒(一般酒)」に分類されます。

「特定名称酒」とは、高品質な清酒である「本醸造酒」「吟醸酒」「純米酒」の総称です。それぞれの「特定名称」は、国税庁が告示した「清酒の製法品質表示基準」の要件を満たす場合にのみ、ラベルなどに表示することができます。

特定名称酒に分類されるお酒にもさまざまな種類があり、同じ銘柄の同じ特定名称酒であっても「火入れ」や「搾り」といった製法上の違いや、発泡性の有無などによってさらに細かく分けられます。

日本酒を飲み始めたばかりの人やこれから飲もうとしている人は、まず分類のベースとなる特定名称酒を知るところから始めることをおすすめします。

次章から、特定名称酒を軸に、特定名称酒の種類やそれぞれの特徴、日本酒のおもな製法による違いまで解説していきます。

特定名称酒の種類|本醸造酒系、吟醸酒系、純米酒系の違い、精米歩合の違い

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日本酒の特定名称酒「本醸造酒」「吟醸酒」「純米酒」は、原料や精米歩合、製造方法などの違いによって8種類に分類されています。

◇本醸造酒系
本醸造酒、特別本醸造酒
◇吟醸酒系
吟醸酒、大吟醸酒
◇純米酒系
純米酒、特別純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒


特定名称酒には共通して以下の規定があります。

◇麹米(こうじまい)の使用割合が15%以上
◇原料米は、農産物検査法によって3等以上に格づけされた玄米、またはこれに相当する玄米を精米したものに限られる

この条件を満たしたうえで、原料に醸造アルコールが使われている「本醸造酒系」「吟醸酒系」と、醸造アルコールを使わず米と米麹(こめこうじ)だけで造る「純米酒系」に分けられています。

醸造アルコールとは、でんぷんや糖類を原料とするアルコールのことで、かつては防腐剤として用いられていましたが、現在はおもに香味の劣化を抑え、後味をすっきり整える目的で添加されています。

また、「精米歩合」も特定名称酒の分類には欠かせない要素です。精米歩合とは、米の外側を削って精米したあと、原料として使用する部分が何%残っているかを示す値で、削るほど香りがよく、雑味の少ないお酒になる傾向があります。

特定名称酒の特徴をすべて覚えるのはたいへんですが、「原料」や「精米歩合」というポイントを押さえておくだけでも理解しやすくなるはずです。

本醸造系の日本酒

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日本酒の特定名称酒のうち、本醸造酒系のお酒の特徴を見ていきましょう。

本醸造酒

精米歩合70%以下の米と米麹、原料米総重量の10%以下の醸造アルコールを原料とし、香味、色沢がよいものが「本醸造酒」です。辛口でキレのある味わいのものが多く、食中酒としても広く用いられています。

骨太な辛口酒「黒松剣菱(くろまつけんびし)」(兵庫/剣菱酒造)や、飲み飽きしないキレのある味わいの「麒麟山(きりんざん)伝統辛口」(新潟/麒麟山酒造)などがおすすめです。

特別本醸造酒

本醸造酒のうち、香味および色沢がとくに良好なもので、「精米歩合60%以下の米」または「特別な製造方法」で造られたお酒が「特別本醸造酒」です。

「特別な製造方法」については、説明表示が義務づけられているものの明確な規定はなく、何を「特別」とするかは各蔵元に任されています。「無農薬の有機米を使用」「昔ながらの木槽(きふね)搾りを行っている」なども「特別」とされています。

口当たりがやわらかく淡麗な味わいの「特別本醸造 八海山(はっかいさん)」(新潟/八海醸造)や、バランスのよい飲み口の「正雪(しょうせつ) 特別本醸造」(静岡/神沢川〈かんざわがわ〉酒造場)などがおすすめです。

吟醸酒系の日本酒

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次に、吟醸酒系のお酒の特徴を見ていきましょう。

吟醸酒

精米歩合60%以下の米と米麹、原料米総重量の10%以下の醸造アルコールを原料とし、吟醸造りで醸した、固有の香味、色沢がよいものが「吟醸酒」です。

「吟醸造り」とは、よく精米された米を低温でゆっくり発酵させる製法で、特定名称酒のうち「吟醸」とつくお酒などで行われています。「吟醸香(ぎんじょうか)」とも呼ばれるフルーティーで華やかな香りと、雑味のない繊細な味わいが特徴です。

澄んだ甘味とフレッシュな酸味のバランスが心地よい「磯自慢(いそじまん) 吟醸」(静岡/磯自慢酒造)、フルーティーな吟醸香と爽快な味わいの「出羽桜 桜花吟醸酒」(山形/出羽桜酒造)などがおすすめです。

大吟醸酒

精米歩合50%以下の米と米麹、原料米総重量の10%以下の醸造アルコールを原料とし、吟醸造りで醸した、固有の香味、色沢がとくに素晴らしいものが「大吟醸酒」です。

吟醸酒の原料米以上に磨かれ、雑味のもととなるタンパク質や脂分が削り取られている米を使っているため、よりクリアな味わいとなる傾向があります。

爽やかな吟醸香と上品な味わいの「来福 大吟醸 雫」(茨城/来福酒造)、フルーツのような香りとすっきりとした口当たりが特徴の「紀土-KID- 大吟醸」(和歌山/平和酒造)などがおすすめです。

純米酒系の日本酒

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純米酒系の特定名称酒の特徴も確認しましょう。

純米酒

米と米麹だけで造られるお酒で、香味、色沢がよいものが「純米酒」です。精米歩合の規定はありません。

純米酒は、米由来の旨味とコクが堪能できるどっしりとした力強い味わいのお酒が多い傾向にあります。

米の旨味と澄んだ青空のような透明感を併せ持つ「太平山 生もと純米 神月(しんげつ)」(秋田/小玉醸造)、原料米由来のやさしい甘味と透明感のある余韻が魅力の「開運 純米 山田錦」(静岡/土井酒造場)などがおすすめです。

特別純米酒

純米酒のうち、香味および色沢がとくに良好なもので、「精米歩合60%以下の米」または、特別本醸造酒と同様の「特別な製造方法」で造られたお酒が「特別純米酒」です。

より磨かれている米を使うことから雑味が少ないうえ、米の旨味とコクがしっかり味わえるお酒が多いようです。

酸味とキレのある味わいの「酔鯨(すいげい) 特別純米酒」(高知/酔鯨酒造)、米の旨味がたっぷり感じられる「特別純米酒 田酒(でんしゅ)」(青森/西田酒造店)などがおすすめです。

純米吟醸酒

精米歩合60%以下の米と米麹を原料とし、吟醸造りで醸した、固有の香味や色沢が優良なお酒が「純米吟醸酒」です。

フルーティーで華やかな吟醸香とともに、米由来の旨味とコクが味わえる、香味のバランスが取れたお酒が主流となっています。

香味のバランスが抜群の「飛露喜(ひろき) 純米吟醸」(福島/廣木酒造本店)、フルーティーな香りと酸味が特徴的な「伯楽星(はくらくせい) 純米吟醸」(宮城/新澤醸造店)などがおすすめです。

純米大吟醸酒

精米歩合50%以下の米と米麹のみを原料とし、吟醸造りで醸した、固有の香味や色沢がとくに優れたお酒が「純米大吟醸酒」です。

純米吟醸酒以上に磨いた米を使うことから、よりきれいな飲み口になりやすい傾向にあります。

華やかな吟醸香と透き通るようなきれいな旨みとキレの「渓流 純米大吟醸 別誂」(長野/遠藤酒造場)、やわらかな米味とシャープな酸味が調和する「楯野川(たてのかわ) 純米大吟醸 美山錦 中取り」(山形/楯の川酒造)などがおすすめです。

火入れの違い

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日本酒は、ここまでのように特定名称酒と普通酒に分けられるほか、発酵後の製法の違いによっても細かく分類されます。ここからは、日本酒が発酵を終えた後のおもな製法について紹介していきます。

まずは、「火入れ」の違いについて確認しましょう。

「火入れ」とは、日本酒の品質を一定に保つために行われる加熱処理のことで、通常は2度行われます。

火入れを1度だけ行うのは、出荷直前に行う「生貯蔵酒(なまちょぞうしゅ)」と、貯蔵前にのみ行う「生詰め酒(なまづめしゅ)」、火入れを1度も行わないのは「生酒(なまざけ・きざけ・なましゅ)」です。

貯蔵期間の違い

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日本酒は「貯蔵期間」の違いによって色合いや味わいが変化し、呼び名が変わります。

一般に7月1日から翌年の6月30日までの酒造年度内に製造・出荷されたお酒を「新酒」、前酒造年度内に造られたお酒を「古酒」、それより前に造られたお酒を「大古酒」と呼んでいます。

搾りの違い

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醪(もろみ)を搾って日本酒と酒粕とに分ける(上槽(じょうそう)方法にもいくつか種類があり、大きく以下の3つに分類されます。

◇藪田(ヤブタ)式
自動圧搾ろ過機を使用する方法。

◇槽(ふね・ふな)搾り
木などで造られた酒槽(さかぶね・さかふね・しゅそう)に醪を入れた酒袋を重ね入れ、圧力をかけて搾り出す方法。

◇袋吊り(袋取り・雫〈しずく〉取り・雫搾り)
醪を入れた酒袋を吊るし、自然の重力で落ちる雫を集める方法。

また、お酒の呼び名は、醪を搾る際、どのタイミングで出てきたかによっても変わります。搾り始めはワイルドな味わいの「あらばしり(荒走り)」、次に出てくるのが香味のバランスがよい「中取り(中汲み・中垂れ)」、最後に搾り出されるのが複雑な味わいの「責め(押し切り)」です。

ろ過の有無

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日本酒造りでは、醪(もろみ)を搾って日本酒と酒粕とに分ける上槽(じょうそう)の工程が必須で、上槽後、さらに雑味やにごりを取り除くため、「ろ過」が行われるのが一般的ですが、ろ過を行わない「無ろ過」のお酒もあります。

近年ではろ過に加え、「火入れ」も行わず(=生酒)、アルコール度数を調整するための「加水」も行わない(=原酒)、「無ろ過生原酒」のお酒も増えています。フレッシュでキレのある、力強い味わいのものが多いようです。

発泡性の有無

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日本酒には発泡性のあるお酒もあり、「スパークリング日本酒」として人気となっています。

完成したお酒に炭酸ガスを加える「炭酸ガス注入タイプ」のほか、粗く搾った醪を、火入れをせず瓶詰めし、瓶内で発酵させることで炭酸ガスを発生させる「瓶内二次発酵タイプ」や「活性にごりタイプ」があります。

お気に入りの日本酒に出会ったら、銘柄名だけでなく、特定名称をはじめ、火入れ、搾りなどにも注目してみることをおすすめします。「おいしい!」と感じるお酒の傾向が見えてくると、より日本酒がたのしめるはずですよ。

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