日本酒の「火入れ」を知っていますか? 押さえておきたい基礎知識【日本酒用語集】

日本酒の「火入れ」を知っていますか? 押さえておきたい基礎知識【日本酒用語集】
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日本酒造りには「火入れ」と呼ばれる工程があります。この火入れについて知っているか否かで、日本酒のたのしみ方がひと味違ってくるかもしれません。火入れとは何か、日本酒の味わいや品質にどう影響するのか、火入れをしない場合も含めて、わかりやすく解説していきます。

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そもそも日本酒の「火入れ」とは?

そもそも日本酒の「火入れ」とは?

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「火入れ」とは酵母のはたらきを止めるために行う加熱処理

「火入れ」とは、文字通り日本酒に「火を入れる」、すなわち加熱処理すること。では、何のために火入れするのかと言うと、それは日本酒の品質や味わいを一定に保つためです。
搾りたての日本酒には、まだ酵母が残っていて、発酵を続けようとします。そのままにしておくと、せっかく最適なタイミングで搾った日本酒の味わいが変わってしまいます。そこで、火入れによって酵母のはたらきを止め、最適な品質を維持します。
加えて、日本酒を腐敗させる雑菌の繁殖を防ぐ狙いもあります。

「火入れ」のタイミングは通常、貯蔵前と瓶詰め時の2回

日本酒造りにおける「火入れ」は、2度にわたって行われるのが一般的です。
1度目の火入れは、仕込みを終えた醪(もろみ)を搾り、ろ濾した直後に行います。数カ月にわたって貯蔵する間に品質が変化しないよう、火入れによって酵母や雑菌を抑えておくわけです。
2度目の火入れは、貯蔵・熟成されて味わいが落ち着いた日本酒を、瓶詰めする際に行います。出荷前に再度、加熱処理を行うことで、流通・保存される間の品質を維持します。

火入れの温度は60~65度、熱しすぎは禁物!

「火入れ」という言葉の印象から、日本酒をぐらぐら沸騰させるイメージを持つかもしれません。実際には、日本酒の温度が約60~65度になるよう、湯煎で温めます。
一般的には、お湯を沸かした容器内に「蛇管(じゃがん)」と呼ばれるホースを設け、そこに日本酒を通して温める「蛇管式」が採用されています。
温めたあとは、すぐ冷却が鉄則。温度が上がりすぎたり、加熱時間が長いと、日本酒の香味が飛んでしまうためです。

火入れの日本酒と、火入れしない日本酒、何が違う?

火入れの日本酒と、火入れしない日本酒、何が違う?

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火入れの日本酒のメリット、デメリット

日本酒は、味わいが変化しやすいデリケートな飲み物ですが、火入れを行うことで、一定期間は品質を維持できます。これにより、流通・配送、店舗での陳列、家庭での保管などを経ても、蔵元がベストだと思った味に近い状態で味わうことができます。
ただし、火入れを行うことで、搾ったままのフレッシュさが失われてしまう側面もあります。そこで「生の日本酒そのままの味わいをたのしみたい」というニーズに応えるため、火入れの回数を減らしたり、火入れをまったく行わずに出荷する商品も造られています。

火入れが1度のみの日本酒には2種類ある

火入れは通常、2度にわたって行われますが、これを1度のみに減らしたお酒が「生貯蔵酒」や「生詰め酒」です
「生貯蔵酒」は、貯蔵前の火入れを省き、出荷の直前にのみ火入れするもの。生のまま貯蔵されたから「生貯蔵酒」と覚えておきましょう。
「生詰め酒」は、火入れをしてから貯蔵し、出荷する際の火入れを省いたもの。貯蔵する前に酵母による発酵が止まっているので、比較的、酒質が安定しやすいと言えるでしょう。

火入れをしない生の日本酒

火入れを1度もせず出荷する日本酒が「生酒(なまざけ)」。「生生(なまなま)」や「本生(ほんなま)」とも呼ばれています。
生酒には、搾りたてのフレッシュさや、生きたままの酵母によるシュワシュワとした活性感など、火入れの日本酒にはない独特の魅力があります。
火入れしていないので変質しやすいため、温度管理には注意が必要ですが、できたてのフルーツのようなみずみずしさがたのしめます。

知っておきたい「瓶燗火入れ」とは

知っておきたい「瓶燗火入れ」とは

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火入れのメリットを残し、デメリットを無くす手法

火入れには、日本酒の劣化を防ぐというメリットとともに、搾りたてのフレッシュさが損なわれるというデメリットがあります。
このメリットを活かしつつ、デメリットを無くそうと工夫されたのが「瓶燗(びんかん)火入れ」。出荷前に行われる2度目の火入れに導入された手法で、瓶詰め前ではなく、瓶詰めしたあとで火入れを行います。

瓶燗火入れは手間がかかるわけ

瓶燗火入れは、一升瓶に詰めた日本酒を、大きな容器に入れて、ゆっくりお燗をするように60度~65度まで加熱します。
瓶詰めされた一升瓶を1本ずつ容器に入れるだけでなく、温められた日本酒が膨張して一升瓶のフタが飛ばないよう「仮栓」と言ってゆるめに栓をする必要があるなど、まとめて火入れするよりも、はるかに手間暇がかかります。
それでも、より高品質な日本酒造りを追求しようと、近年、瓶火入れを行う蔵元が増加中だとか。

火入れ酒にも、生貯蔵酒や生詰め酒、生酒にも、それぞれ造り手の想いが込められていて、それぞれの魅力があります。同じ蔵元の火入れ酒と生酒などを飲み比べてみると、日本酒の奥深さが実感できるかもしれません。

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