火落ち菌ってなに? 酒蔵を廃業に追い込むとまでいわれる秘密に迫る

火落ち菌ってなに? 酒蔵を廃業に追い込むとまでいわれる秘密に迫る
出典 : Wako Megumi / Shutterstock.com

「火落ち菌」や「火落ち」という言葉を聞いたことがありますか? 火落ち菌は特殊な乳酸菌で、繁殖すると日本酒の味わいや香りが多く損なわれることから、日本酒造りの天敵ともいえる存在です。今回は火落ち菌による影響とその対策、火落ちを防ぐ正しい日本酒の保存方法について紹介します。

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目次

  • 火落ち菌とは
  • 火落ち菌の見つけ方と対策
  • 火落ち菌は家庭でも発生する?

火落ち菌とは

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火落ち菌は乳酸菌の一種

「火落ち菌」は特殊な乳酸菌の一種で、日本酒のなかで火落ち菌が繁殖する現象を「火落ち」といいます。火落ちした日本酒は大幅に品質が損なわれ、「腐造」してしまいます。

火落ち菌には、「ホモ型真性火落菌」「ヘテロ型真性火落菌」「火落性乳酸菌」といった種類があり、日本酒造りに使用されるコウジカビが生成するメバロン酸を主食として繁殖します。一般的に細菌はアルコールに弱いという特性がありますが、ホモ型真性火落菌の場合、アルコール度数が25%程度のお酒のなかでも生育できるなど、アルコールへの耐性が強いのが特徴です。

「火落ち菌」や「火落ち」という言葉が使われ始めたのは明治時代以降といわれていますが、この現象は古くから蔵元を悩ませてきました。ひとたび蔵のお酒が火落ちによって腐造すると、数年にわたって影響が続くなど被害は甚大となり、かつては火落ちが原因で廃業に追い込まれる蔵元もあったといいます。

そのため、蔵元では火落ちを防ぐために細心の注意が払われています。万が一にも火落ち菌の繁殖の原因とならないよう、蔵元で働く蔵人は日本酒造りの期間中はヨーグルトやチーズ、キムチなどの乳酸菌製品は避けるというしきたりがあります。

火落ち菌が繁殖するとどうなる?

火落ちした日本酒は白く濁り、酸化してしまいます。酢のように酸っぱい味になり、ツンとする特異臭が生じるのも火落ちの特徴です。

火落ち菌自体は人体への悪影響はなく、火落ちした日本酒を飲んでしまっても、とくに健康被害が心配されるわけではありません。しかしながら、火落ちによる味わいや香りの劣化は顕著なため、火落ちした日本酒をおいしく飲むのは難しいといえます。

なお、日本酒の品質が劣化して白濁している場合、火落ち以外に「タンパク混濁」が原因の可能性もあります。ただし、タンパク混濁は日本酒中に酵素タンパクが凝集したことによって生じるもので、お酒自体の味や香りには大きな変化は生じません。火落ちの場合は強いニオイがすることから、両者の違いは判断しやすいでしょう。

火落ち菌の見つけ方と対策

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「呑み切り(のみきり)」で品質をチェックする

昔は日本酒造りには木樽が使用されていましたが、近年はホーローやステンレスのタンクが使用されるなど、衛生面や貯蔵管理技術が大きな進歩を遂げています。そのため、蔵元での貯蔵の際に火落ち菌が繁殖することは稀ですが、昔から続いている品質チェックの工程として、現在も「呑み切り」が行われています。

「呑み切り」とは、貯蔵タンクの吞み口から少量の日本酒を採取し、きき酒をして日本酒の状態や味わい、香りの変化を調べる品質検査のことです。それぞれのタンク内の状態を確認する必要があるため、数多くあるタンクすべてから日本酒を採取し、ていねいにチェックしていきます。ただし、検査のために呑み口を開けたことで日本酒に菌が入るようなことのないよう、日本酒の採取作業は極めて慎重に行わなくてはなりません。

一般的に、気温が上がり、火落ち菌が繁殖しやすくなる6月から7月ごろに「初呑み切り」を行い、その後10月ごろまで月に一回ほどの頻度で呑み切りを行います。このほか「間呑み切り(あいのみきり)」として、酒質を確認する必要が生じたときなどに検査を実施する場合もあります。

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