日本酒の「古酒」ならではの魅力とは?
「古酒」とは、長期間熟成させたお酒のことです。黄金色や琥珀色の色合いが見た目にも美しい「古酒」の大きな魅力は、熟成による独特の香りや深味のある味わいにあります。今回は「古酒」の特徴や種類、選び方、人気銘柄、自宅での熟成方法などについて紹介します。
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日本酒の古酒とは?
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「古酒」とは、長期にわたり熟成させたお酒のことです。美しい色合いと独特の香り、深味のある複雑な味わいに特徴があります。
「古酒」には法律で定められた明確な定義はなく、表示規定もありません。日本酒の場合、一般に7月1日から翌年の6月30日までの酒造年度内に製造・出荷されたお酒を「新酒」、前酒造年度内に造られたお酒を「古酒」、それより前に造られたお酒を「大古酒」と呼んでいます。
なお、日本酒の熟成古酒の普及と製造技術の向上を目的とする団体である「長期熟成酒研究会」では、「満3年以上蔵元で熟成させた、糖類添加酒を除く清酒」を「熟成古酒」と定義しています。
古酒の魅力
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「古酒」の魅力のひとつは、製造方法や熟成年数によって淡い黄金色から琥珀色、ルビー色などに変化する美しい色合いにあります。
また、熟成が進むにつれて「熟成香」と呼ばれる独特の香りが強まり、キャラメルのような甘味とほどよい酸味、苦味のある味わいがいっそう深まっていきます。こうした「古酒」ならではの香りや味わいも、大きな魅力といえます。
「古酒」の香りや味わいは、飲むときの温度によっても変わります。吟醸酒や大吟醸酒を低温熟成させた「淡熟タイプ」の古酒は、吟醸酒・大吟醸酒と同じように適度に冷やして、それ以外の古酒は常温かぬるめのお燗で飲むと、魅力がより引き立つといわれています。なお、「熟成香」の強さが気になる場合は、少し冷やすことで香りを抑えられます。
日本酒の古酒のタイプ
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「古酒」にはどのようなタイプがあるのでしょうか。「長期熟成酒研究会」では、多彩な「熟成古酒」を大きく3種類に分類しています。それぞれの特徴を紹介します。
熟酒(じゅくしゅ)タイプ
本醸造酒や純米酒を常温熟成させた、風格のある個性豊かな「熟成古酒」です。熟成を重ねるにつれ、照りや色、香り、味が劇的に変化します。常温やぬる燗で飲むのがおすすめで、中華料理をはじめとする脂分の多い料理や、濃厚な旨味や甘味のあるビターチョコレート、焼肉、ブルーチーズなどによく合います。
中間タイプ
本醸造酒・純米酒・吟醸酒・大吟醸酒を、低温熟成と常温熟成を併用して熟成させたもので、その名のとおり熟酒タイプと、後述する淡熟タイプの中間の味わいを持っています。相性がよい料理は、ほどよい甘味や酸味、苦味のある酢豚、牛しゃぶしゃぶなど。干しブドウやチョコレートにも合います。
淡熟(たんじゅく)タイプ
吟醸酒・大吟醸酒を低温熟成させた「熟成古酒」で、ほどよい苦味と香りが調和した深い味わいが特徴です。吟醸酒のよさが残るこのタイプの古酒は、常温または適度に冷やすかロックで飲むのがおすすめです。フランス料理や、甘味・脂肪が少なく旨味成分が多い生ハム、イカの塩辛、ロールキャベツ、チーズなどによく合います。
古酒の選び方
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「古酒」は、もとになる日本酒の醸造方法や熟成の仕方、熟成年数によって風味が変わります。「古酒」を選ぶ際には、このような点に注目してみるのもよさそうです。
たとえば、吟醸酒由来の華やかな香りと繊細な味わいを軽くたのしみたいときには「熟成年数が短めの淡熟タイプ」、どっしりしていてコクがある味わいをじっくり堪能したいときには「熟成年数の長い熟酒タイプ」というように選んでみてはいかがでしょう。
また、「古酒」は熟成が進むほど色が濃くなる傾向があるので、色合いから味わいを予想してみるもおすすめです。淡い黄金色の「古酒」ならそれほど熟成が進んでいない軽やかな味わいを、濃い褐色の「古酒」なら熟成が進んでいる深味のある味わいをイメージすることができます。選ぶ際、手がかりのひとつにしてみてくださいね。
古酒の人気銘柄
全国には個性豊かなさまざまな「古酒」があります。ここでは、人気の高い「古酒」のなかから3銘柄を紹介します。
達磨正宗(だるままさむね) 十年古酒
出典:合資会社白木恒助商店サイト
岐阜県の蔵元・白木恒助(しらきつねすけ)商店の「達磨正宗 十年古酒」は、とくに人気の高い「古酒」のひとつ。10年以上熟成させた「古酒」をブレンドしていて、ふくよかな香りや温度帯によって変化する魅力的な味わいがたのしめます。香港で開催された日本酒コンクール「TTSA(Tasting Trendies Sake Awards) 2018」で優勝したほか、日本航空の国際線ファーストクラスで3年以上提供されていたという実績のある古酒です。
製造元:合資会社白木恒助商店
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出羽桜(でわざくら) 特別純米 枯山水 十年熟成
出典:出羽桜酒造株式会社サイト
山形県にある出羽桜酒造の「出羽桜 特別純米 枯山水 十年熟成」は、2013年に蔵元の創業120周年を記念して発売された「古酒」です。四季の温度変化で酒を育てるという「四季熟成」で仕上げられていて、重厚な味わいや豊かな熟成香を味わうことができます。2017年には、イギリスのロンドンで開催される世界有数のワイン品評会「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)」のSAKE部門でゴールドメダルを獲得しました。
製造元:出羽桜酒造株式会社
公式サイトはこちら
自分だけの古酒を育てる
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「古酒」は自宅でも造ることができます。たとえば、お子さんが生まれた年から保菅を開始して20年後の成人する年に家族で封を開ける、そんな未来に向けての古酒造りもよいかもしれません。もととなる日本酒の選び方や熟成させるときのポイントを見ていきましょう。
自宅で熟成させて「古酒」にする際の日本酒の選び方
まずは、どんな味わいの「古酒」に育てたいのかを決めて、もととする日本酒を選んでみましょう。
気品のある淡熟タイプをめざすなら、大吟醸酒や吟醸酒を低温で熟成。しっかりした味わいの濃熟タイプに育てたいなら、純米酒や本醸造酒を常温熟成させるのがおすすめです。
なお、熟成による効果が得られやすいといわれる「無ろ過」の日本酒のうち、保存性の高い「火入れ」したものが向いています。劣化しやすい「生酒」や「生詰め」は避けます。また、多少甘口で酸度のあるもののほうが、味の変化がたのしめるといわれています。
近年は「自家熟適正酒」という、自宅で熟成をたのしむための日本酒を販売している蔵元もあります。手始めにこれらを使用して熟成に挑戦してみるのも一案です。
「古酒」を自宅で熟成させる際の保管の仕方
「古酒」を自宅で熟成させるときの重要なポイントは、日本酒を劣化させる「紫外線」をとことん避けることです。遮光性、吸湿性に優れている新聞紙でしっかり包むか箱に入れたうえで、瓶は寝かせずに立てたまま、光が入らない棚などの暗所で保管しましょう。
大吟醸酒や吟醸酒を「淡熟タイプ」の「古酒」に育てる場合は、冷蔵庫などの冷暗所で保管します。一般の家庭では場所を取る一升瓶より、720ミリリットルの四合瓶のほうが扱いやすいかもしれません。
また、熟成を開始した日がわからなくならないよう、日付を記しておくこともポイントです。飲みごろを迎えるのは、「熟酒タイプ」で約7~8年、「淡熟タイプ」で12~13年といわれています。
自宅で日本酒を熟成させる工程はいたってシンプルですが、できあがりまでには10年前後の長い期間を要します。その間、保管に適した環境を保ちつつ、イメージどおりの「古酒」に仕上げるのは、なかなか難しいかもしれません。
仕上がりは熟成してからのおたのしみ。意図した味わいに育つか、思いもかけない風味と出会えるか、できあがりに想いを馳せながら熟成を待つのも、「自家熟成古酒」ファンのたのしみといえそうです。
「古酒」は、新酒とは異なる独特の色合いと熟成香、深い味わいがたのしめるお酒です。これまで馴染みがなかった人も、一度口にすれば「古酒」の魅力にはまるかもしれませんよ。