「酢酸イソアミル」を知っていますか? 【日本酒用語集】

「酢酸イソアミル」を知っていますか? 【日本酒用語集】
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「酢酸(さくさん)イソアミル」という香り成分を知っていますか? 日本酒を代表する香りのひとつで、よく「バナナのような香り」と表現されます。今回は「酢酸イソアミル」について、香りの特徴やほかの香りとの違い、たのしみ方などをわかりやすく解説していきます。

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「酢酸イソアミル」の基礎知識

「酢酸イソアミル」の基礎知識

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「酢酸イソアミル」とは?

「酢酸イソアミル」とは、「吟醸香」の香気成分のひとつ。吟醸酒系のお酒が放つ香りは「華やかでフルーティーな香り」と表現されますが、そのなかでもバナナやメロンのような香りにたとえられるのが、「酢酸イソアミル」由来の香りです。「酢酸イソアミル」は、日本酒に詳しい人たちの間では、「酢イソ(さくいそ)」と呼ばれることもあります。

「酢酸イソアミル」の香りは、「吟醸造り」と呼ばれる製法で日本酒を醸す際に生まれます。そのとき大きく関係してくるのが、米の精米歩合と酵母です。また「吟醸麹」という、吟醸香を生成する麹を使うことによってももたらされるといわれています。

「酢酸イソアミル」を生む「吟醸造り」とは

「吟醸造り」とは、国税庁のホームページによると、「吟味して醸造することをいい、伝統的に、よりよく精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、かすの割合を高くして、特有な芳香(吟香)を有するように醸造すること」と記載されています。

一般的には、精米歩合60%以下の米を使い、突破精(つきはぜ)型の麹・酒母・蒸米・水を仕込み、5~10度前後の低温下でもろみを1か月ほど発酵させて、かすの割合が高くなるように搾ると、「酢酸イソアミル」をはじめとした吟醸香が生まれやすくなるといわれています。

吟醸造りで香りを左右するのは「酢酸イソアミル」だけではない

「酢酸イソアミル」などの香気成分は、日本酒造りの発酵工程で、アルコールとともに生み出されます。

また米の精米歩合も香りに影響します。米の表面には脂質が多く含まれていて、香り成分の生成を抑えるため、脂質を適度に削り落とすことで香りが立ちやすくなるそう。米を磨くほど、つまり精米歩合が低いほど、香り高いお酒になりやすいといわれています。

「酢酸イソアミル」と人気を二分する「カプロン酸エチル」とは?

「酢酸イソアミル」と人気を二分する「カプロン酸エチル」とは?

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「酢酸イソアミル」と「カプロン酸エチル」の違いは?

「酢酸イソアミル」と同じ、吟醸香の主要成分である「カプロン酸エチル」は、りんごや梨、パイナップルなど甘酸っぱくみずみずしい香りにたとえられます。「カプエチ」「カプ」と略して呼ばれるフルーティーな香りは親しみやすく、日本酒ビギナーや、これまで日本酒を苦手としていた層にも人気があります。

「カプロン酸エチル」も「酢酸イソアミル」も、吟醸造りの工程で、酵母の作用によりアルコール発酵する際に生まれる香りですが、おもにその際に使用する酵母の種類によって、どちらの成分が多く生成されるかが決まります。

「酢酸イソアミル」と「カプロン酸エチル」を生成する酵母

日本醸造協会が頒布している「きょうかい酵母」のなかには、吟醸香のもとになる香気成分を高生成できる酵母が複数あります。なかでも「きょうかい14号」、別名「金沢酵母」は、酢酸イソアミル由来の吟醸香を強く持つ酵母として知られています。

一方、カプロン酸エチルを多く有するといわれているのは、「きょうかい9号」や「きょうかい1801号」。現在多く出回っているのは後者で、鑑評会に出すお酒などに多く用いられています。また、「高知酵母」のなかでも、とりわけ「CEL—24」は、カプロン酸エチルを多く作り出すことで知られています。

「酢酸イソアミル」系日本酒のたのしみ方

「酢酸イソアミル」系日本酒のたのしみ方

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「酢酸イソアミル」系と「カプロン酸エチル」系日本酒のたのしみ方を比較

「酢酸イソアミル」の芳香は、温度が低いとあまり発揮されず、燗をつけると香りを放つ特徴があります。一方、「カプロン酸エチル」系の日本酒は、冷やすととても飲みやすく感じる傾向にあります。

やさしい香りの「酢酸イソアミル」系の日本酒は、華やかで強い芳香を放つ「カプロン酸エチル」系に比べて、やや地味な印象を受けるかもしれません。しかし、穏やかな香りと旨味のある「酢酸イソアミル」系の日本酒は、燗や常温でゆっくりじっくり味わうのに適しているため、日本酒をよく知る上級者に好まれる傾向があります。

「酢酸イソアミル」系の香りを持つ日本酒のたのしみ方

ここでは「酢酸イソアミル」らしい香りをたのしむ飲み方を紹介しましょう。

【燗をつけてたのしむ】

奥深い香りやアミノ酸が生み出す旨味は、燗酒にすることでさらに引き立ちます。温度を上げすぎず40度くらいのぬる燗にすると、ポテンシャルを発揮します。

【ワイングラスで香りをたのしむ】

香りをたのしむなら、大きめのワイングラスもおすすめ。「酢酸イソアミル」系の日本酒は、温めることで香りが立ちやすくなりますが、常温の状態でもワイングラスに注げば、アロマが開いて豊かな香りを感じやすくなります。

【食前酒や食中酒としてたのしむ】

「酢酸イソアミル」系の華やかな香りと爽やかな味わいを持つ薫酒タイプの日本酒は、食前酒にぴったり。料理に合わせる場合は、魚介類などの素材を活かした料理や、柑橘系の風味のある料理のほか、甘く熟したフルーツなどを選ぶとよいでしょう。

「酢酸イソアミル」についていろいろと紹介してきましたが、まずはかんたんに「バナナやメロンのような香り」と覚えておくとよいでしょう。吟醸酒を飲むときに、「酢イソル」系か「カプエチ」系かと香りにも注目してみると、たのしみが広がりそうです。

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