無濾過生原酒(むろかなまげんしゅ)の日本酒とは? 基本からたのしみ方、おすすめ銘柄まで紹介

「無濾過(無ろ過)生原酒」とは「ろ過」「火入れ」「加水」を行わない搾りたてそのままの日本酒です。今回は、無濾過生原酒の特徴からほかの日本酒との違い、特有の風味がたのしめる飲み方、保管・保存方法、おすすめの無濾過生原酒まで紹介します。
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無濾過生原酒の日本酒とはどんなお酒?

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無濾過生原酒とはどんなお酒なのか、その味わいの特徴も含めてみていきます。
無濾過生原酒の日本酒とは?
無濾過生原酒の日本酒とは、どんなお酒なのでしょう。
日本酒の多くは、アルコール発酵後の醪(もろみ)を搾ったあと、「ろ過」、加熱処理である「火入れ」、アルコール度数調整のための「加水」を行ってから出荷されます。
この「ろ過」「火入れ」「加水」を行わない、醪を搾ったそのままの状態の日本酒が、無濾過生原酒です。
無濾過生原酒の日本酒の特徴
無濾過生原酒の日本酒の特徴は、なんといっても味わいにあります。
酒質の調整に関わる「ろ過」「火入れ」「加水」の工程を行わない、搾りたてそのままのお酒であることから、若々しくフレッシュでパンチのある味わいになる傾向があります。また、原料米由来の香りと旨味がしっかり残っているものも多く、そうした無濾過生原酒では飲み応えのある深い味わいが堪能できます。
無濾過生原酒とそのほかの日本酒との違い

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無濾過生原酒の日本酒と、「ろ過」「火入れ」「加水」を行っているそのほか日本酒との違いについて、それぞれみていきます。
「無濾過」とろ過した日本酒との違い
ろ過を行わない「無濾過」の日本酒と、ろ過した日本酒の違いはなんでしょう。
一般的な日本酒造りでは、醪を搾ったあと、細かくなった米や酵母などの小さな固形物「おり(澱/滓)」を取り除き、そこからさらに専用の機械や活性炭 を使ってろ過を行います。
ろ過を行うことで、雑味が取り除かれ、クリアな味わいの日本酒に仕上がります。また、搾ったばかりの日本酒はにごりがあり、少し黄色味がかっていますが、ろ過後には無色透明な色調に近づきます。
ろ過できれいに整えられたお酒に対して、無濾過の日本酒はそのお酒本来の味や色味がたのしめる傾向にあります。
「生酒」と火入れした日本酒との違い
無濾過生原酒の「生」は、「生酒(なまざけ)」を意味しています。生酒とは、加熱処理である「火入れ」を1度も行わないお酒のことで、フレッシュな味わいが魅力です。
一般的な日本酒の製造工程では、貯蔵前と瓶詰前の2回、日本酒の温度が約60~65度になるように湯煎で温める火入れが行われます。搾りたての日本酒にはまだ酵母が残っていて発酵を続けようとするため、そのままにしておくと日本酒の味わいが変わってしまいます。そこで火入れを行って酵母の働きを止めて、酒質の維持を図ります。また、日本酒を腐敗させる雑菌の繁殖を防ぐ狙いもあります。
落ち着いた飲み口の火入れ酒にも多様な魅力がありますが、フレッシュさについては生酒に軍配が上がります。生酒の特徴である若々しい飲み口は、多くの無濾過生原酒でも味わうことができるはずです。
「原酒」と加水した日本酒との違い
無濾過生原酒の「原酒」とは、アルコール度数調整のために行う「加水」をしていないお酒のことです。
「加水」というと「かさ増し!?」と思う人もいるかもしれませんが、搾りたてのお酒は一般にアルコール度数が約18~20度と高めなため、原酒以外の日本酒では水を加えることで15~16度程度に調整して味を調えています。
加水を行わない原酒はアルコール度数が高いいっぽうで、お酒本来の濃厚な香味がたのしめるという魅力があります。もっとも近年は、飲みやすい低アルコール酒の人気が高まっていることから、アルコール度数を抑えた原酒も登場しているので、アルコール度数が高いお酒が苦手という人はぜひ試してみてください。
無濾過生原酒の日本酒のおすすめの飲み方

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無濾過生原酒はよく冷やして飲むのがおすすめです。持ち味のひとつであるフレッシュさが際立ちます。
また、アルコール度数が高く、濃厚な飲み口のお酒が多いことから、たっぷり氷を入れたグラスに注ぐオン・ザ・ロックもおすすめしたい飲み方です。ロックの魅力は、風味を活かしつつ飲みやすくできることにあります。氷がゆっくり溶けるにつれて口当たりがまろやかになり、味わいの変化もたのしめます。
無濾過生原酒の日本酒の保管方法

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搾りたてのお酒をタンクに移さず、その場で瓶に詰める「直汲み(じかくみ)」の商品まで存在する無濾過生原酒は、酒質が変わりやすいため、必ず冷蔵庫で保管してください。温度は酵母の働きが抑えられるという5度以下が目安です。家庭用冷蔵庫に保管する場合、開閉で温度が変化しやすいドアポケットはできるだけ避けましょう。
冷蔵庫のなかでは、瓶を立てておくのが基本です。瓶を横にすると空気に触れる面積が多くなり、酒質の劣化を招く酸化が進みやすくなるためです。
また、お酒の大敵である紫外線に当たらないよう注意しましょう。紫外線は日光だけでなく蛍光灯からも出ています。 照明 が気になる場合は、瓶ごと新聞紙などで包むのがおすすめです。
開栓(開封)後はより酸化が進むので、できるだけ早く飲み切るのもポイントです。意図的に変化をたのしみたい場合をのぞき、開栓後2~3日のうちに飲み切りましょう。
少しでも長持ちさせたい場合は、瓶のなかの空気を抜いて密閉状態にする器具もあるので、利用してみてくださいね。
無濾過生原酒の日本酒のおすすめ銘柄
無濾過生原酒のおすすめ銘柄を5種紹介します。
雁木(がんぎ) 純米吟醸無濾過生原酒 ノ弐(のに)

八百新酒造株式会社サイト
山口県の八百新酒造が手掛ける「雁木」ブランドの定番酒のひとつで、ブランド立ち上げ後、2番目に発表されたお酒です。
酒造好適米の「山田錦」を精米歩合50%で使用。アルコール度数は17度とやや高めですが口当たりは滑らかで、純米吟醸らしい含み香が口中に広がります。搾りたてのお酒の持ち味がそのままたのしめる、艶やかさが魅力の1本。
製造元:八百新酒造株式会社
公式サイトはこちら
梵(ぼん・BORN)・無ろ過生原酒

合資会社加藤吉平商店サイト
福井県の加藤吉平商店が醸す無濾過生原酒(山田錦)は、香味のバランスがよいとされる中取りのお酒を、マイナス10度で氷温熟成。力強さのある生原酒に、香り高くフレッシュな旬の旨味を封じ込めた「豊潤旨口」の純米大吟醸酒です。
原料米は兵庫県特A地区産契約栽培の「山田錦」。1,800ミリリットル入りと720ミリリットル入りがラインナップされています。
製造元:合資会社加藤吉平商店
公式サイトはこちら
風の森

油長酒造株式会社サイト
奈良県の油長(ゆちょう)酒造の人気銘柄「風の森」は、「地元の米を使った、搾ってそのままの生のお酒を、地元の人々に飲んでいただきたい」という蔵元の想いから生まれた純米無濾過生原酒ブランドです。
地元で契約栽培されている「秋津穂(あきつほ)」という米を使った純米酒「風の森〈秋津穂657〉」をはじめ、「秋津穂」や奈良県でのみ生産される酒造好適米「露葉風(つゆはかぜ)」を50%まで磨いて醸した「風の森〈507シリーズ〉」、「露葉風」「山田錦」「雄町」「愛山」といった名だたる酒造好適米を80%の精米歩合で醸した「風の森〈807シリーズ〉」がラインナップされています。さらに近年、独創的な技術で日本酒の可能性を追求する「風の森ALPHA」ブランドも立ち上げられました。
「風の森」ブランドの日本酒には、醪(もろみ)発酵に由来する自然の炭酸ガスが残っているため、開栓直後は発泡感とフレッシュ感がたのしめます。炭酸ガスがなくなってからも、原料米の旨味や甘味、またフルーティーな香りや酸味など、お酒本来の味わいが堪能できます。このように1本のボトルで2つの異なる味わいをたのしめるのも「風の森」ブランドの大きな特徴です。
製造元:油長酒造株式会社
公式サイトはこちら
飛露喜(ひろき) 特別純米 無濾過生原酒

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1999年に「無濾過生原酒」の先駆けとして誕生した「飛露喜」は、福島・廣木酒造本店9代目の廣木健司氏が、試行錯誤を繰り返して造り上げた銘柄。福島県会津地方の酒造りの伝統を受け継ぎながら、日本酒の新しい潮流を築いたこのお酒は、無濾過ならではのフレッシュさとバランスのよい味わいが魅力です。
全国新酒鑑評会などでも高い評価を得ていて、プレミアがつくほどの人気となっていますが、生産量が少なく手に入りにくいことから、ファンの間では「幻の酒」ともいわれています。
製造元:合資会社廣木酒造本店
公式サイトはありません
龍力(たつりき) 無濾過生原酒 神力(しんりき)

株式会社本田商店サイト
日本酒造りに適した特性を持ちながら、いつしか消えてしまった幻の米「神力」を、「神力」が生まれた兵庫県たつの市御津町中島の地で復活させ、精米歩合65%で醸した無濾過生原酒。
「神力」の魅力を存分に引き出した濃厚な味わいと、メロンを想わせる香りが特徴。冷やして飲むのがおすすめです。
蔵元は、米にこだわりを持ち、水田の土壌研究にも携わってきた兵庫県の本田商店。「神力」のほか、兵庫県特A地区産の「山田錦」や岡山県岡山市東区瀬戸町産「雄町」など、選りすぐりの米を使った酒造りを行っています。
製造元:株式会社本田商店
公式サイトはこちら
フレッシュで力強さがある飲み口のものが多い無濾過生原酒。ほかの日本酒にはないその味わいを、ぜひたのしんでみてくださいね。
