「飛露喜(ひろき)」は無ろ過生原酒という新潮流を生んだ日本酒! 味わいや特徴、おすすめ商品を紹介

「飛露喜(ひろき)」は無ろ過生原酒という新潮流を生んだ日本酒! 味わいや特徴、おすすめ商品を紹介
出典 : Table-K / PIXTA(ピクスタ)

「飛露喜」は、無ろ過(無濾過)生原酒の先駆けといわれる人気銘柄。2000年代の日本酒ブームで注目を集め、フルーティーで濃厚な味わいで愛好家を魅了し続けています。今回は「飛露喜」の香りや味わいから、造り手の廣木酒造本店の歴史やこだわり、おすすめ商品などを紹介します。

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「飛露喜」という名実ともに“幻の酒”を知っていますか? 「飛露喜」の基本情報に合わせて、入手困難な理由などをみていきます。

「飛露喜」とはどんな日本酒? 香りや味わいは?

「飛露喜」とはどんなお酒?

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まずは「飛露喜」という日本酒の基本情報をみていきます。

「飛露喜」は「無ろ過生原酒」の先駆けとして生まれた日本酒

「飛露喜」は無ろ過生原酒の先駆けとして知られる、米処福島の代表的な日本酒銘柄です。

無ろ過生原酒とは、もろみ(醪)を搾ったままの原酒を、ろ過や火入れ、加水を行わずに瓶詰めしたお酒のこと。

通常の日本酒造りの工程では、原酒から細かい固形物や酵母などを除去したり、色や香味を整えたりする目的で2度のろ過を行います。また、酵素の働きを止めたり火落ち菌を取り除くために、貯蔵前と瓶詰め前の2回にわたっての加熱処理を、さらに、アルコール度数や香味のバランスを整えるために加水処理を行います。

こうした数々の工程によって、「原酒」から一般的な「日本酒」製品になるわけですが、淡麗辛口が全盛の時代に、あえて

◇無ろ過:ろ過をしない
◇生:火入れをしない
◇原酒:加水(割り水)をしない


という製法を採用した「飛露喜」は、当時は珍しかった「無ろ過生原酒」を日本酒の新潮流として確立。現在もブームの牽引役として愛飲家の注目を集めています。

「飛露喜」はバランスのよい王道の酒

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「飛露喜」は味わいのバランスが絶妙な王道の酒

「飛露喜」の名を全国に知らしめた無ろ過生原酒は、荒々しくも鮮烈な香味と濃厚な旨味が愛飲家を魅了しましたが、「飛露喜」という銘柄に共通する魅力は味わいのバランスのよさにあります。香りや甘味、酸味、旨味など、日本酒のさまざまな要素が口のなかでバランスよく一体となって広がっていくのです。

きれいな飲み口とまろやかで深みのある味わいはどんな料理とも引き立て合い、いつまでも飽きずに飲み続けられる、まさに王道という言葉がふさわしいお酒といえるでしょう。

「飛露喜」の個性と安定した味わいの決め手は、原料の米とていねいな造りにあります。
試行錯誤の末、麹米に山田錦、掛米には近隣で契約栽培された五百万石などの酒米を使用。会津らしさを表現しながら、徹底した原料処理や温度管理でバランスのいいお酒を醸しています。

「飛露喜」が幻の酒と呼ばれる理由

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「飛露喜」が“幻の酒”と呼ばれる理由

「飛露喜」は「無ろ過生原酒」という新潮流を生んだお酒として、全国の日本酒愛好家から歓迎されましたが、その後も数々の品評会でその品質を評価されています。

「全国新酒鑑評会」での受賞実績も数多く、また国税庁や文化庁などの省庁が後援し、世界最多の出品数のなかからもっともおいしい日本酒を選出する「SAKE COMPETITION」においては、記念すべき第1回大会「SAKE COMPETITION 2012」で純米酒部門の第1位を獲得。直近(※)の「SAKE COMPETITION 2019」では純米吟醸部門で第1位に輝きました。
※2020〜2022年は開催中止になりました。

また、世界的に権威のある「インターナショナルワインチャレンジ(IWC)」においても、たびたびSAKE部門でゴールドメダルを獲得しています。

そんな華々しい受賞歴を持つ日本酒が“幻の酒”と呼ばれる理由に、需要に供給が追いつかないという背景が挙げられます。「飛露喜」の場合はそれに加えて、こだわりの製法を貫くために生産量を増やせないというやむを得ない事情がありました。

気泡で洗う洗米機で原料米の糖をしっかり除去したうえで、原料処理はストップウォッチを片手に分単位で行います。また、「1年をとおして安定した酒質で」というモットーから、出荷する月ごとに麹を造るなど、「飛露喜」はすべての工程にこだわり抜いています。生産量を大きく増やすことはできず、希少価値は高まる一方。いつしか「飛露喜」は“幻の酒”と呼ばれるようになりました。

「飛露喜」の造り手は福島県の老舗蔵元・廣木酒造本店

「飛露喜」を手掛けるのは福島県の廣木酒造本店

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「飛露喜」を手掛けるのは、国内有数の米処である福島県の廣木酒造本店。会津盆地の西部に位置する会津坂下町(あいづばんげまち)に蔵を構えた、江戸時代後期の文化・文政年間創業の老舗蔵元です。

代表銘柄は、なめらかな味わいで創業当初から地元で親しまれている「泉川(いずみかわ)」。絶え間なく流れる川のように、常に繁栄を続けようとの想いを込めて、命名されたといいます。

「飛露喜」の生みの親である現蔵元の廣木健司氏は9代目。大学卒業後、一度は大手洋酒メーカーに就職しましたが、父親で8代目の廣木三郎次氏が逝去し、当時の杜氏も高齢で引退したことから、26歳で家業を継ぐことを決め、母親と二人三脚で酒造りを始めたそう。

歴史ある日本酒蔵で、大手洋酒メーカー出身の蔵元が手掛けた「飛露喜」が日本酒の新潮流を生み出すのは必然と思われるかもしれませんが、実際は紆余曲折がありました。

「飛露喜」の誕生秘話と名前の由来

「飛露喜」の誕生秘話

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「飛露喜」の誕生秘話と名前に込められた造り手の想いをみていきましょう。

「飛露喜」は蔵元廃業の危機を救った救世主

廣木氏が継いだころの廣木酒造本店は、廃業すら考えるほどの経営難に陥っていたといいます。しかも、当時の廣木氏は日本酒造り未経験。それでも味で勝負できる特別な酒を造りたいと、試行錯誤を繰り返していたところ、チャンスが舞い込みます。

廣木酒造本店の運命を変えたのは、1本の電話。テレビの取材依頼を受けた廣木氏は、「長くは続けていけないだろうから、酒造りをしていたという記録に」といった気持ちで協力を申し出ます。その後、たまたま番組を視聴していた東京の地酒専門店から問い合わせが入り、当時主流だった淡麗なお酒を造って送りましたが、よい評価は得られませんでした。

廣木氏はこれをきっかけに、「自分が一番うまいと感じる酒を造ろう」と方向を転換。フランスの高級白ワインから得たヒントをもとに透明感のあるお酒を造って、手を加えず生原酒のまま同じ店へ送ったところ、高評価を得て商品化することに。こうして誕生した無ろ過生原酒は愛飲家の間で少しずつ広まり、1999年以降は「飛露喜」の名で日本酒業界へと羽ばたいていきました。

「飛露喜」の名前の由来

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「飛露喜」という名前に込められた蔵元の想いとは?

「飛露喜」という銘柄名は、蔵元の家名に「喜びの露(酒)がほとばしる(飛ぶ)」という意味を込めて命名したといいます。勢いよく書かれたラベルの文字は今でこそ印刷ですが、当初は蔵元の母上が1枚ずつ手書きしていたそう。

「飛露喜」の種類は? 一度は飲んでみたいおすすめ商品を紹介

「飛露喜」のおすすめ商品

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「飛露喜」には多彩な商品がありますが、なかでも一押しの商品を紹介します。

飛露喜 特別純米 無ろ過生原酒

「飛露喜」の原点にしてその名を全国に知らしめ、日本酒の新潮流として確立したのが、「飛露喜 特別純米 無ろ過生原酒」。原酒らしい荒々しさと濃厚な旨味のなかにも、「飛露喜」全体に通じるバランスのよさが際立っています。

販売時期は12〜翌3月ごろですが、即完売してしまうほどの人気商品です。

飛露喜 純米大吟醸

2019年10月22日、天皇陛下が即位を公に宣明する「即位礼正殿の儀」が行われましたが、参列のために来日した外国の要人を招いて翌日に開催された首相夫妻主催の夕食会で、乾杯酒として振る舞われたのがこのお酒。華やかかつ上品な香りとなめらかな旨味、心地よい酸味が見事に溶け合った逸品です。

こちらは通年出荷ですが、完売必至の人気商品です。

「飛露喜」のおすすめ商品

masa / PIXTA(ピクスタ)

飛露喜 純米吟醸(黒ラベル)

「SAKE COMPETITION 2019」純米吟醸部門で第1位に輝いた純米吟醸酒。同コンペでは過去に何度もGOLD(10位以内)を獲得しています。

「飛露喜」のなかでも最高峰と称される「黒ラベル」は、貯蔵前に一度だけ火入れを行った生詰め酒。穏やかな香りと軽やかな口当たり、深みのある味わいがたのしめます。

8月ごろから販売される商品ですが、こちらも完売必至です。

飛露喜 特別純米

「SAKE COMPETITION 2019」純米酒部門の第9位に入賞し、「飛露喜」の2冠達成に貢献した特別純米酒。こちらも生詰めタイプで、すっきりとした飲み口のなかにも「飛露喜」特有の旨味とバランスのよさが感じられる一押しの1本です。

「飛露喜」の定番酒にして通年商品ですが、“幻の酒”であることに変わりはありません。

「飛露喜」の入手方法は? 定価で購入できる?

「飛露喜」の入手方法

通りすがり / PIXTA(ピクスタ)

「飛露喜」は、東京都多摩市「小山商店」をはじめとする特約店で定価またはそれに近い価格で購入が可能です。といっても、入荷後すぐに完売してしまうケースが多く、入手困難であることに変わりはありません。

インターネットを介して流通しているものもありますが、こちらはおもに転売品。かなり割高なうえ、生酒や生詰め酒のようにフレッシュな味わいをたのしむお酒は保管がむずかしく、ベストな状態で入手できる保証もありません。

「少々高額でもいいから飲んでみたい」という場合は、完璧なコンディションではない商品が届く可能性があることを納得のうえで購入する手もあります。しかし、造り手が日本酒に込めた心意気やこだわりをすべて味わい尽くしたい人は、正規のルートで手に入れたいものです。

なお、「飛露喜」を正規のルートで入手するには、以下のような方法があります。

◇入荷日を調べて実店舗に並ぶ
◇特約店の常連になって、入荷状況を聞く
◇ほかのお酒を買う際に在庫を確認する
◇特約店の会員またはメルマガ登録をする


どのような方法が得策かはお店によって異なるので、いろいろ試してみてください。

なかには転売対策としてお得意さま優先またはセット売りなどの条件つきで販売する特約店もあるようですが、同様の販売方法を採用している転売サイトも見受けられます。まずは特約店の目星をつけてから、「飛露喜」を探すようにしたいですね。

「飛露喜」は、そのおいしさと希少価値から“幻の酒”と呼ばれる日本酒銘柄。運よく特約店で出会えたら迷わず購入して、その魅力を余すところなく堪能してください。

製造元:廣木酒造本店
公式サイトはありません

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