「風の森(かぜのもり)」生酒ブームを牽引する革新的な酒【奈良の日本酒】
「風の森」は、奈良県で300年にわたり酒造りを行う老舗の蔵元、油長(ゆうちょう)酒造の人気銘柄です。革新的な生酒である「風の森」は、約20年前に発売開始され、今に続く生酒ブームの牽引役となりました。ここでは、「風の森」の魅力と、「風の森」をはじめとした油長酒造の新たな挑戦について紹介します。
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「風の森」の造り手、油長酒造の300年の歴史
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「風の森」の蔵元は江戸時代中期創業の老舗
「風の森」の造り手である油長酒造は、奈良県御所(ごせ)市にある老舗蔵元。「油長(ゆうちょう)」という屋号は、もともとは製油業を営んでいたことに由来し、その歴史は関ヶ原の合戦で知られる慶長年間までさかのぼるのだとか。
その後、江戸時代中期の享保4年(1719年)に酒造業を開始。以来、300年にわたり、葛城山系の良質な深層地下水を活かした酒造りを続けてきました。
「風の森」は約20年前に発売された生酒ブームの先駆け
油長酒造では、長きにわたり「鷹長(たかちょう)」の銘柄で知られていましたが、その人気を全国区にしたのが、今から約20年前の1998年に誕生した新銘柄「風の森」です。
「風の森」というさわやかさを感じさせる酒名は、蔵近くにある「風の森峠」から名づけられたもの。この峠は“稲作発祥の地”と言われ、かつてはこの地で育った「秋津穂(あきつほ)」という品種の米を使った新酒が地元の人々に親しまれていました。
「風の森」は、その味を再現することをめざして、先代社長が造り上げた無ろ過無加水の生酒(なまざけ)。その革新的な味わいが多くのファンを生み、その後の全国的な生酒ブームを牽引しました。
「風の森」は酒造りの原点を追求した新銘柄
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「風の森」は米の魅力を引き出しフレッシュさにこだわった生酒
「風の森」は、通常、醪(もろみ)を搾ったあとや、瓶詰めする前に行う「火入れ(加熱処理)」を一切、行わない生酒です。
生酒はお酒そのままのフレッシュな味わいが魅力ですが、「風の森」は「笊籬(いかき)採り」という伝統技法を使用し、ほぼ無加圧で醪を搾ることで、酒本来の風味や香りを保っています。
一方で、生酒は、酵母のはたらきを止めたり、雑菌を駆除するための火入れを行わないため、品質が変わりやすいリスクがあります。油長酒造では、精密な微生物管理や密封性を高めたタンクを独自開発することで、デリケートな生酒を、年間を通じて安定提供しています。
「風の森」は2通りに変化する味わいを五感で味わう
「風の森」は、酵母が生きたままの生酒のため、瓶内でも発酵が進んで炭酸ガスを生じます。このため、開栓直後にはフレッシュな発泡感がたのしめます。
開栓後、時間をかけて飲み進めるうちに、米本来のフルーティーな香りと旨味がたのしめるようになります。
このように、「風の森」は1瓶で2通りの味わいをたのしめる酒。慌てて飲み切るのでなく、じっくりとたのしみましょう。
「風の森」の新たな挑戦「風の森ALPHA(アルファ)」
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「風の森ALPHA」でさらなる日本酒の可能性を追求
従来の「風の森」の枠を超え、独創的な技術で日本酒の可能性を追求しているのが「ALPHA」シリーズです。現在、それぞれ異なるコンセプトをもつ5種類が発売されています。
アルコール度数を低く設定したTYPE 1「次章への扉」、地元産の「秋津穂」を22%まで精米したTYPE 2「この上なき華」、世界展開に向けて火入れを行ったTYPE 3「世界への架け橋」、革新的な日本酒分離技術「氷結採りⓇ」でより上質な味わいを実現したTYPE 4「新たなる希望」、そして燗酒専用に開発されたTYPE 5「燗SAKEの探求」という、個性豊かなラインナップになっています。
300年の歴史を持つ油長酒造が、酒造りの原点を追求した「風の森」には、地元・奈良の自然の恵みを大切にする蔵元のこだわりが詰まっています。入手困難な人気銘柄ですが、機会があればぜひ、試したいですね。
製造元:油長酒造株式会社
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