地ウイスキーとは? 人気の地ウイスキーと蒸溜所に注目してみよう
近年、地ウイスキーの新規参入企業が増えています。造り手のこだわりや個性が表れやすい地ウイスキーは、世界的にも新しいトレンドとなりつつあります。ここでは大手メーカーが生産するウイスキーとは一線を画す、地ウイスキーの蒸溜所とその魅力を紹介します。
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地ウイスキーってなに? なぜ注目されているの?
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そもそも地ウイスキーってどういうウイスキー?
「地ウイスキー」とは、一言でいえば小規模生産のウイスキーのこと。多くの場合、一つひとつの工程に人の手をかける手工業で生産されていることから、「クラフトウイスキー」とも呼ばれます。大規模な生産ラインの整った大手メーカーで生産されたウイスキーとは趣の異なる、個性的な味わいをたのしめるのが魅力といえるでしょう。
近年は、ジャパニーズウイスキーの人気に伴い、日本の地ウイスキーにも注目が集まっていて、第二次地ウイスキーブームが起こっています。
ちなみに、第一次地ウイスキーブームが起こったのは1980年代のこと。国内各地で大小さまざまなメーカーがウイスキー造りに挑戦したことから、一大ムーブメントが巻き起こりました。その後、需要の低迷や酒税法改正などによって国内のウイスキー市場は一時伸び悩みますが、近年はさまざまな理由から人気が盛り返し、地ウイスキーにも再び注目が集まっています。
地ウイスキーが注目されるようになった理由
地ウイスキーが注目されるようなった理由のひとつに、ジャパニーズウイスキーの世界的な評価が大きく影響していることが挙げられます。
やさしく甘い口当たりと、ブレンダーの技術によるきめ細やかな造り込みが魅力のジャパニーズウイスキーは、「ワールド・ウイスキー・アワード」や「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ」といった世界的に権威のあるコンテストで次々と賞を受賞し、一躍世界で注目される存在になりました。
また国内でも、ハイボールブームやNHK連続テレビ小説「マッサン」の影響も重なり、あっという間にジャパニーズウイスキーは、需要に供給が追い付かない状況になっています。
こうした状況を受け、地ウイスキーにも熱い視線が注がれるようになったのです。
世界的にも人気! 地ウイスキーメーカーの蒸溜所を紹介
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国内のおもな地ウイスキーメーカー
全国各地で新たなウイスキー蒸溜所を立ち上げる動きが広まっています。その数は今や30社以上。今後もさらに増え続けると考えられています。
地ウイスキーの代表的なメーカーには以下のような企業があり、それぞれ独自の蒸溜所を所有しています。
◇札幌酒精工業株式会社(北海道札幌市)
◇笹の川酒造株式会社(福島県郡山市)
◇株式会社ベンチャーウイスキー(埼玉県秩父市)
◇堅展実業株式会社(東京都千代田区)
◇ガイアフロー株式会社(静岡県静岡市)
◇相生ユニビオ株式会社(愛知県西尾市)
◇サングレイン株式会社(愛知県知多市)
◇株式会社宮﨑本店(三重県四日市市)
◇玉泉堂酒造株式会社(岐阜県養老郡)
◇若鶴酒造株式会社(富山県砺波市)
◇江井ヶ嶋酒造株式会社(兵庫県明石市)
◇本坊酒造株式会社(鹿児島県鹿児島市)
多くのメーカーが焼酎や清酒を主力製品としつつ、ウイスキーの製造販売も手掛けているのが特徴です。このなかから、いくつかの蒸溜所について紹介していきます。
世界が認めるベンチャーウイスキー 秩父蒸溜所
数ある地ウイスキーメーカーのなかでも、大きな注目を集めているのが、日本で唯一のウイスキー専業メーカーであるベンチャーウイスキーです。埼玉県秩父市に蒸溜所を構える同社は、地ウイスキーブームをけん引する存在として知られています。
代表銘柄の「イチローズモルト」は、世界的なウイスキーコンテスト「ワールド・ウイスキー・アワード」において2年連続世界最高賞を受賞。ほかにも、「カードシリーズ」など、ウイスキーラバーを魅了するボトルを次々とリリースしています。
世界各国のウイスキー愛好家たちが、秩父蒸溜所が織りなす複雑で奥深い味わいに魅了され、秩父に熱い視線を注いでいます。
注目したい地ウイスキー蒸溜所
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本坊(ほんぼう)酒造 マルス津貫(つぬき)蒸溜所・マルス信州蒸溜所
鹿児島屈指の酒造メーカーである本坊酒造では、ウイスキー蒸溜所を国内2か所に所有しています。
そのうちのひとつであるマルス津貫蒸溜所は、温暖な気候と良質な水資源に恵まれた鹿児島県南さつま市の津貫にあります。もうひとつのマルス信州蒸溜所は、美しく深い緑に囲まれた山梨・駒ヶ岳山麓で、ウイスキーを製造しています。
本坊酒造の地ウイスキーといえば、第一次地ウイスキーブームの火つけ役であり、「地ウイスキーの西の雄」とも称された「マルスウイスキー」です。なかでも、「マルスエクストラ」はロングセラー商品で、どこか懐かしさを感じる一升瓶にボトリングされているのが特徴です。このほか、「岩井トラディション」「駒ヶ岳」などの銘柄も注目されています。
江井ヶ嶋(えいがしま)酒造・ウイスキー蒸溜所
江井ヶ嶋酒造は、創業から100余年にわたって、7つの木造蔵で清酒や地ウイスキーの製造を手掛ける、酒処・兵庫の総合酒類メーカーです。江井ヶ嶋酒造のウイスキー蒸溜所は、日本でもっとも海に近い蒸溜所として知られています。
江井ヶ嶋酒造の地ウイスキーを代表するのは、「ホワイトオーク地ウイスキーあかし」です。イギリスの大麦麦芽を使用した、スコッチタイプのブレンデッドウイスキーで、味わいは淡麗辛口。そして、海の近くにある蒸溜所ならではの塩味もほのかに感じられます。
長浜浪漫ビール株式会社 長濱蒸溜所
2016年に稼働を開始した長濱蒸溜所は、滋賀県長浜市に位置する日本最小クラスの蒸溜所です。長浜浪漫ビールは、もともとはクラフトビールの製造に注力していましたが、ウイスキーの魅力に強く惹きつけられてウイスキー事業を開始しました。
人気銘柄「アマハガン」は、ウイスキー造りにとって非常に重要な「ブレンド」に焦点を当てたブレンデッドモルトシリーズです。円みのある麦芽の香りが特徴で、コクのある味わいのあとに、華やかな余韻が爽やかに抜けていきます。
堅展(けんてん)実業株式会社 厚岸(あっけし)蒸溜所
堅展実業では、「伝統的な製法でアイラモルトのようなウイスキーを造りたい」という思いから、霧に覆われていることの多い北海道・厚岸町で独自のウイスキー造りを行っています。
代表銘柄の「厚岸ウイスキー SARORUNKAMUY(サロルンカムイ)」は、世界的な酒類コンペティション「サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・ コンペティション2020」で最優秀金賞を受賞。クリアでフレッシュな味わいのシングルモルトで、アイラモルトと同じく牡蠣とのペアリングもたのしめます。
一般的にウイスキーは、一朝一夕に完成するものではなく、年単位の貯蔵時間を要します。新規参入蒸溜所の地ウイスキーも、長い時をかけて円熟味が増していくことでしょう。蒸溜所ごとのこだわりが詰まった地ウイスキーの、将来の味わいもたのしみですね。