北海道でウイスキー造りが盛んな理由は?人気銘柄や蒸溜所見学情報も紹介

北海道は国内でも有数のウイスキーの産地。夏でも冷涼で湿度が低く、水質のよい水が豊富、原料の大麦麦芽(モルト)を乾燥させるための泥炭(ピート)が採れるなど、ウイスキー造りに適した環境に恵まれています。今回は、北海道のウイスキー事情や蒸溜所について紹介します。
- 更新日:
北海道産ウイスキーといえば「余市(よいち)」や「厚岸(あっけし)」が有名ですが、日本のウイスキー人気の高まりが後押しして、近年、北海道のさまざまな地域にウイスキー蒸溜所が新設されています。それぞれの蒸溜所の概要や、見学ツアー情報などについて紹介します。
北海道でウイスキー造りが盛んな理由は?

Spyan / Shutterstock.com
北海道でウイスキー造りが盛んな理由は、冷涼で、オホーツク海高気圧が現れると冷たい空気が流れ込みやすく、寒暖差が大きいなど、ウイスキー造りに適した環境に恵まれているからです。また、降雨量は少なめですが雪解け水などのおかげで水資源が豊富、かつ水質がよく、原料の大麦麦芽を乾燥させるためのピート(泥炭)や石炭などにも恵まれています。
日本では北海道以外の地域でもさまざまなウイスキーが造られていますが、なかでも北海道の積丹(しゃこたん)エリアはウイスキーの世界的産地であるスコットランドの環境に似ているといわれます。その積丹半島の付け根にある余市(よいち)に蒸溜所を築いたのが、日本の本格ウイスキー造りの歴史を切り拓いたニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝氏でした。本物をめざす竹鶴氏にとって余市は、ウイスキー造りに理想的な場所だったのです。
「日本のウイスキーの父」と呼ばれる竹鶴氏が記録した「竹鶴ノート」をもとに、スコッチウイスキーの製法をお手本として発展してきた日本のウイスキー造りにおいて、余市を有する北海道は理想郷のひとつといえるかもしれません。
北海道で有名なウイスキー銘柄といえば「余市」「厚岸」

tkyszk / Shutterstock.com
北海道産ウイスキーの銘柄といえば、前述の「余市(よいち)」や「厚岸(あっけし)」が有名です。
「余市」は、北海道南西部の積丹半島の付け根に位置する、ニッカウヰスキー余市蒸溜所の銘柄。蒸溜所のある余市町は、NHK連続テレビ小説『マッサン』の舞台としても注目されました。
ウイスキー「厚岸」は、北海道南東部で堅展実業が運営する厚岸蒸留所の銘柄です。蒸溜所のある厚岸は、サンマや昆布、サケ、マスなどの海産物が豊富で、純厚岸産の牡蠣はブランド牡蠣として流通しています。
「余市」「厚岸」はいずれも質の高い味わいで、世界中のウイスキーラバーに支持されています。
北海道のウイスキー蒸溜所を紹介! 見学情報もチェック
北海道では、余市蒸溜所をはじめ、馬追蒸溜所やニセコ蒸溜所、札幌酒精、厚岸蒸溜所、利尻蒸留所、ディ・トリッパー蒸留所など、数多くのウイスキー蒸溜所が稼働しています。それぞれの特徴を紹介します。
余市(よいち)蒸溜所

出典:ニッカウヰスキー余市蒸溜所サイト
ニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝氏が1934年に設立したウイスキー蒸溜所。余市モルトは、石炭直火蒸溜という世界でも希少な蒸溜法で造られていて、力強く重厚な味わいが特長です。「余市」は世界的にも評価が高く、ウイスキーの国際的コンペティションでも世界最高峰に輝いています。
余市蒸溜所では蒸溜所見学を実施していて、無料ガイドツアーや有料セミナーを申し込めます。要事前予約。
ニッカウヰスキー余市蒸溜所
余市蒸溜所見学詳細はこちら
馬追(マオイ)蒸溜所

画像提供:MAOI株式会社/馬追蒸溜所
2021年に竣工し、2022年にグランドオープンした馬追蒸溜所は、北海道長沼町にあるウイスキー蒸溜所。2006年にワイナリーとして創業し、現在はワインのほかウイスキーやブランデー、ジンも製造しています。オンラインショップでは、プライベートカスク・ウイスキーのオーナー権を販売中です。
1日2回、ガイドつきの蒸溜所見学ツアーも実施しています。予約制。
馬追蒸溜所
公式サイトはこちら
見学ツアー詳細はこちら
ニセコ蒸溜所

出典:ニセコ蒸溜所サイト
2019年2月に北海道虻田郡ニセコ町に設立されたニセコ蒸溜所は、ジンの蒸溜所としてスタートしました。2021年にウイスキーの蒸溜を開始し、今後ニセコ蒸溜所初となるウイスキーがリリースされる予定です。
予約制で、蒸溜所の見学ツアーも実施しています。見学ツアーは有料です。
ニセコ蒸溜所
公式サイトはこちら
見学ツアー詳細はこちら
札幌酒精(しゅせい)工業

出典:札幌酒精工業サイト
札幌酒精工業は、昭和8年に焼酎甲類メーカーとして創業した酒造メーカー。甲類焼酎「サッポロソフト」や北海道産素材にこだわった本格焼酎ブランド「喜多里(きたさと)」でも知られていますが、ウイスキーやワインも生産しています。
札幌酒精工業が造るウイスキーのブランド名は「サッポロウイスキー」。「SS43%」「40%」「サッポロウイスキー蝦夷(EZO)43%」などのブレンデッドウイスキーをリリースしています。
現在工場見学は実施されていません。
札幌酒精工業株式会社
公式サイトはこちら
「サッポロウイスキー」ブランドサイトはこちら
厚岸(あっけし)蒸溜所

Jag_cz / Shutterstock.com
堅展実業が運営する厚岸蒸溜所は、北海道厚岸町で2016年に蒸溜を開始しました。スコットランドの伝統的手法で製造したシングルモルトウイスキーやブレンデッドウイスキーはスモーキーな香りが魅力で、世界的なコンペティションで数々の賞に輝いています。
厚岸蒸溜所見学ツアーは、道の駅厚岸グルメパーク厚岸味覚ターミナル・コンキリエが主催。参加料金がかかりますが、地元でしか飲めない「牡蠣の子守唄」の試飲が可能です。
道の駅 厚岸グルメパーク 厚岸味覚ターミナル・コンキリエ
公式サイトはこちら
また公式サイトでは、オンライン上で粉砕室のバーチャルツアーを体験できます。パソコンなどで覗いてみてはいかがでしょう。
堅展実業株式会社 厚岸蒸溜所
公式サイトはこちら
厚岸蒸溜所バーチャルツアーはこちら
Kamui Whisky K.K 利尻蒸留所

出典:Kamui Whisky K.K 利尻蒸留所サイト
利尻蒸留所は、北海道の利尻島で2022年にオープンした日本最北の蒸溜所。アメリカ出身のケイシー(ケーシー)・ウォール氏が創業し、利尻島のテロワールを生かしたシングルモルトを造っています。原酒は島内の販売店で入手でき、ウイスキーの初出荷は2026年以降を予定しているそう。
利尻蒸留所では、予約をすれば有料で見学ツアーに参加できます。
Kamui Whisky K.K(カムイウイスキー株式会社)
公式サイトはこちら
見学ツアー詳細はこちら
ディ・トリッパー蒸留所

WAN CHEUK NANG / Shutterstock.com
2023年12月に、北海道函館で新たに稼働を始めたディ・トリッパー蒸留所。運営するビハインド・ザ・カスク社は、これまでインディペンデントボトラーズ(独立瓶詰め業)ウイスキー「BEHIND THE CASK(ビハインド ザ カスク)」を手がけてきました。
近々、北海道産モルトを原料とした1年熟成のフラッグシップ商品が発売される予定です。
現在、一般の人の蒸溜所見学は、受けつけていません。
ビハインド・ザ・カスク合同会社 ディ・トリッパー蒸溜所
公式サイトはこちら
北海道限定発売のウイスキーもある

barmalini / Shutterstock.com
北海道産ウイスキーのなかには、北海道限定で発売されているウイスキーもあります。代表的なのは、余市蒸溜所内で発売されている蒸溜所限定ウイスキーです。
「余市蒸溜所限定ブレンデッド」は、余市蒸溜所を訪れた人だけが購入できる特別な1本。余市モルトを思わせるスモーキーフレーバーと、バランスのよい味わいが魅力となっています。このほか、余市および宮城峡も含めたニッカウヰスキー蒸溜所限定商品として、「鶴」や「ピュアモルトブラック」「シングルカフェグレーン ウッディ&メロウ」なども発売されています。
同じくニッカウヰスキーでは北海道限定で、甘くやわらかな香りと豊かな余韻が特長の缶入りハイボール、「ブラックニッカ ハイボール香る夜」を発売しています。鮮やかなキレのある「ブラックニッカ クリアハイボール」と飲み比べるのも一興。ちなみに、限定品を含め、大手ECモールでも入手可能です。
限定ウイスキーのなかには、厚岸蒸溜所が手がける「牡蠣の子守唄」のように、町内の飲食店や見学ツアーでしか飲めないレアな商品も。厚岸町を訪れるチャンスがあれば、ぜひ味わってみたいものです。

WAN CHEUK NANG / Shutterstock.com
限定品以外に、生産地である北海道を尊重する取り組みにも注目です。2022年11月、2015年以来7年ぶりに発売された「シングルモルト余市10年」は、北海道内では数カ月前の7月に先行発売されました。また、ひげのおじさんがトレードマークの「ブラックニッカスペシャル」は、北海道限定カートン(外箱)つきで発売されたことがあります。
北海道へ旅行で訪れた際に、限定発売や先行発売のウイスキーを見かけたら入手したいですね。
ウイスキー造りに適した環境に恵まれた北海道。日本のウイスキー人気の高まりが後押しして、道内には新たなウイスキー蒸溜所が続々と誕生しています。「余市」や「厚岸」に次ぐ世界的ブランドが生まれる日は、近いかもしれませんね。
※この記事は、2024年12月現在の情報をもとに作成しました。
