北海道(余市、厚岸)でウイスキー造りが盛んな理由とは?
北海道は、国内でもウイスキー造りが盛んな地域のひとつ。その大きな理由は、北海道ならではの冷涼な気候と豊かな自然環境にあります。今回は、北海道にある2つの蒸溜所「余市蒸溜所」と「厚岸(あっけし)蒸溜所」を中心に、ウイスキー造りと北海道の関係について紹介します。
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ウイスキー造りに適した北海道の気候と自然
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ウイスキーの本場、スコットランドに近い気候と豊かな自然環境
北海道がウイスキー造りに適している最大の理由は、その気候や自然環境が、ウイスキー造りの本場・スコットランドのそれとよく似ているからです。
おいしいウイスキーを造るには、冷涼で湿潤な気候と、一定の寒暖差が不可欠ですが、北海道はその両者を備えています。さらに、豊富な雪解け水や、麦芽にスモーキーな香りをつけるピート(泥炭)、蒸溜のための火力となる石炭など、ウイスキー造りに必要な原材料や資源が豊富なことも挙げられます。
北海道におけるウイスキー造りの端緒を開いた竹鶴政孝氏
2014年に放映されたNHK連続テレビ小説「マッサン」のモデルにもなったニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝氏は、大正7年(1918年)にウイスキー造りの本場・スコットランドへと渡り、本格的なウイスキー造りを学んで帰国。これが日本のウイスキー造りの礎となりました。
その竹鶴氏が昭和9年(1934年)に日本におけるウイスキー造りの拠点として選んだのが北海道余市(よいち)町。これ以降、余市は日本を代表するウイスキー造りの聖地として知られるようになります。
北海道のウイスキー蒸溜所(1)「余市蒸溜所」
出典:ニッカウヰスキーサイト
ジャパニーズウイスキーの聖地として
“日本のウイスキーの父”とも称される竹鶴政孝が1934年に設立した「余市蒸溜所」は、日本でも有数の歴史を誇る蒸溜所です。今でも創業時と変わらない伝統の技を引き継ぎ、力強く重厚なモルト原酒を醸しており、“ニッカウヰスキーの聖地”としてウイスキーファンに愛されています。
余市蒸溜所の特徴は、独自の「石炭直火蒸溜」
余市蒸溜所の大きな特徴として、重厚でコクのある味わいや独特な香ばしさを生み出す「石炭直火蒸溜」によるウイスキー造りが挙げられます。
これは、竹鶴氏がスコットランドで学んだロングモーン蒸溜所の伝統的な方式にならったもの。石炭の直火で適切な火力を保つには熟練の技が必要なため、現在では世界でもこの方式を採用する蒸溜所は少なくなっているそうです。
世界的な評価を獲得した「余市」ブランド
余市蒸溜所が生み出すウイスキーは、日本国内だけでなく、世界的な評価を得ています。
たとえば、「シングルモルト余市1987」(現在は終売)は、イギリスのウイスキー専門誌が主催する世界的なコンテスト「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)」で2008年にシングルモルト部門世界最高賞を獲得。世界におけるジャパニーズウイスキーの存在感を高めるうえで、「余市」ブランドが果たした役割は非常に大きいと言えるでしょう。
製造元:ニッカウヰスキー
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北海道のウイスキー蒸溜所(2)「厚岸蒸溜所」
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今、注目の「厚岸(あっけし)蒸溜所」とは
厚岸蒸溜所は、2016年に食材の輸出入を手掛ける堅展実業が設立したウイスキー蒸溜所。ニッカウヰスキー余市蒸溜所に続く北海道を代表する蒸溜所として、大きな注目を集めています。
北海道厚岸は、豊かな湿地が広がる冷涼かつ湿潤な気候で知られ、アイラモルトで有名なスコットランドのアイラ島によく似た環境は、ウイスキー造りにとって絶好のロケーションとなっています。
厚岸蒸溜所のウイスキー造りのこだわり
「スコットランドの伝統的な製法で、アイラモルトのようなウイスキーを造りたい」という想いからスタートした厚岸蒸溜所では、設備にもこだわりを見せ、ポットスチル(単式蒸溜器)などの設備にはスコットランドのフォーサイス社製を導入しています。
この蒸溜器の設置時には、わざわざ現地の職人を呼んだのだとか。そんなエピソードからも、厚岸蒸溜所のウイスキー造りへの並々ならない情熱が伺えます。
厚岸ならでは味わいが続々と誕生
2016年に設立されたばかりの厚岸蒸溜所では、2018年2月に初めてモルト原酒の出荷を迎え、それ以降、半年ごとに全4種類のシリーズ商品として発売(現在は3種類を発売済)しています。
2020年にはいよいよ本格的なシングルモルトウイスキーが登場する予定で、ファンのあいだで俄然、注目を集めています。
製造元:堅展実業株式会社 厚岸蒸溜所
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北海道の厳しい気候と豊かな自然環境のもとで育まれるジャパニーズウイスキー。北海道を訪れた際には、ぜひその歴史とウイスキー造りにかける人々の熱き情熱に、思いを馳せてみてはいかがですか。