「カスク」がウイスキー造りの決め手とされる理由は?

「カスク」がウイスキー造りの決め手とされる理由は?
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「カスク」とは、ウイスキーを貯蔵し、熟成させるために使う木樽のこと。おもにオーク材で作られた樽が使われます。今回は、ウイスキーとカスクの関係や、カスクのおもな種類、ウイスキーの銘柄名などで見かけるカスクにまつわる用語などについて紹介します。

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「カスク」とはウイスキーを熟成させる木樽のこと

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ウイスキーは、カスクがなければ完成しません。まずは、ウイスキー造りにおいて欠くことのできないカスクの概要や、カスクが熟成に使われるようになった経緯について紹介します。

カスクとは

カスクとは、ウイスキーの熟成に使う木製の樽のこと。日本語では熟成樽ともいいます。

熟成樽のことを「カスク」と呼ぶのは、スコッチウイスキーやアイリッシュウイスキーなどで、アメリカンウイスキーやカナディアンウイスキーなどでは樽のことを「バレル(バーレル)」と呼びます。

バレルは樽のサイズを表す呼び名としても用いられています。バレルは容量180~200リットルの樽を指し、スコッチウイスキーやジャパニーズウイスキーの熟成にはおもにこのサイズの樽(バーボンバレル)が使われます。

ちなみに、樽のサイズを表す呼び名はバレルのほかにも、容量約220~250リットルの「ホッグスヘッド(ホグスヘッド)」や、容量約500リットルの「パンチョン」「バット」などがあります。

カスクでの熟成は偶然から始まった

ウイスキーは、カスクに貯蔵・熟成されることで琥珀色に色づき、豊かな香味やコク、まろやかさが生まれますが、はじめから樽熟成が行われていたわけではありません。じつは、カスクでの熟成は、18世紀スコットランドの密造時代に、偶然から始まったものなのです。

当時、重税で苦しめられていたハイランド地方の生産者たちは、徴税を逃れるために山中でひそかにウイスキーを造り続けていました。あるとき、カスクに詰めて隠したまま何年も保管されていたものを開けて飲んでみたところ、それまでにはなかった芳醇な風味が生まれていたそう。それから、ウイスキーの樽熟成が広まり、現代的なウイスキーの風味が形成されていったといわれています。

「カスク」にはどんな種類がある?

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カスクにはさまざまな種類がありますが、ここではカスクの材料となる木(木材)や、過去に貯蔵していたお酒に注目して、おもなカスクの種類とその特徴を紹介します。

カスクは、材料となる木や、貯蔵していたお酒で分類される

カスクは、材料である木材の種類や、過去に貯蔵していたお酒の種類などによっていくつかに分類されます。

カスクの材料となる木の種類は、オークが主流です。オークとはブナ科コナラ属の植物の総称で、日本語では「ナラ(楢)」といいます。カスクには、おもに北米産アメリカンホワイトオークや欧州産ヨーロピアンオークが使われますが、日本では国産ミズナラで作ったカスクを使用することもあります。

オークは材質が堅く、耐久性や耐水性に優れているため家具や船舶などによく使われていますが、オークを使用したカスクでウイスキーを熟成させると、樽材に含まれるタンニンなどの成分が溶け出して、ウイスキーにオーク由来の香味が生まれるというメリットも得られます。そのため、カスクの材料としても重宝されてきました。

また、カスクの材質以外にも注目したいのが過去に詰められていたお酒の種類です。スコッチウイスキーなどの熟成には、通常、ほかのお酒の熟成に使用した古樽が用いられます。なかでもよく利用されているのが、バーボン樽やシェリー樽。蒸溜所によっては、一般的なワインを貯蔵したワイン樽や、シェリーと同じく酒精強化ワインに分類されるポートワイン樽やマデイラワイン樽などが用いられることもあります。

古樽をウイスキーの熟成に用いる理由は、樽材由来の香味に加えて、もともと貯蔵されていたお酒の風味がウイスキーに溶け込み、複雑な香りや味わいが生まれるからです。スコッチウイスキーの蒸溜所では、カスクを使い分けることで、独自の風味を作り出しています。

おもなカスクの種類

オーク樽

オークは世界中に数百種類あるといわれていますが、カスクに使われるのはおもに、前述のアメリカンホワイトオークやヨーロピアンオークです。

アメリカンホワイトオークは北米一帯に生育していますが、とくにアメリカ東部からカナダにかけて多く見られます。一方のヨーロピアンオークには種類があり、そのなかでもコモンオーク(スパニッシュオーク)とセシルオーク(フレンチオーク)は「ヨーロッパ産の2大オーク」と呼ばれています。

なお、アメリカンホワイトオークはバニラやココナッツのようなフレーバーを、ヨーロピアンオークのうち、コモンオークはドライフルーツのようなアロマを、セシルオークはスパイシーな香りをウイスキーにもたらすといわれています。

ミズナラ樽

おもに日本で生育しているミズナラ(ジャパニーズオーク)で作ったカスクのこと。とりわけ北海道産の良質なミズナラを使ったカスクは希少性が高く、高級なことで知られます。

ミズナラはオークの一種ですが、アメリカンホワイトオークなどと比べると水分を吸収して漏れやすいため、樽材として使うのは難しいといわれます。しかし、ミズナラ樽で熟成させると、伽羅(きゃら)や白檀(びゃくだん)を想わせるオリエンタルな香りをまとったウイスキーに仕上がりやすくなるのが魅力で、日本を象徴するフレーバーとして世界中から注目が集まっています。

シェリー樽

過去にシェリー酒を貯蔵していた古樽のことをシェリー樽といいます。シェリー酒は酒精強化ワイン(アルコールを添加して造るワイン)の一種で、スペインのアンダルシア州ヘレス市周辺で造られています。シェリー樽は、ウイスキーの樽熟成のきっかけとなったカスクといわれていますが、近年は数量が不足していて、入手しづらくなっているようです。

バーボン樽

バーボンを詰めるための樽、または過去にバーボンウイスキーを貯蔵していた古樽のことをバーボン樽(バーボンバレル)といいます。バーボンは、アメリカンウイスキーの代表格で、おもにケンタッキー州などで造られています。

バーボンの熟成には、内側を焦がしたアメリカンホワイトオークの新樽を使うことが法律で義務づけられているため、樽は1回限りの使い捨て。そこにスコッチウイスキーの造り手が目をつけ、入手困難なシェリー樽の代わりに、バーボン樽を熟成樽として使うようになったといわれています。

今では、スコッチウイスキーだけでなく、ジャパニーズウイスキーなど世界中のウイスキーの熟成樽として幅広く活用されています。

「カスク」にまつわるさまざまなウイスキー用語

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シングルモルトウイスキーのボトルラベルなどに、「シングルカスク」や「カスクストレングス」などと表記されていることがあります。ここでは、「○○カスク」などの用語をいくつかピックアップして、その意味を紹介します。

シングルカスク

「シングルカスク」とは、単一(シングル)の樽(カスク)という意味。ひとつの樽のウイスキー原酒だけを瓶詰めしたものを、シングルカスクといいます。

一般的にシングルモルトウイスキーは、同じ蒸溜所で造られた複数のモルト原酒をブレンド(これをヴァッティングといいます)して味わいを調整してから瓶詰めされますが、シングルカスクではこのヴァッティングを行いません。また、あまり加水を行わずに瓶詰めされることが多く、通常よりアルコール度数が高めなのも特徴です。そのため、カスクで熟成されたそのままの味わいをたのしめることが魅力となっています。

シングルカスクがリリースされることは少なく、生産本数も限られるため、希少価値を求めて争奪戦が繰り広げられることもあります。

ダブルカスク

「ダブルカスク」とは、2種類のカスクで熟成させたモルト原酒をブレンドして瓶詰めしたものを指します。

たとえば、ダブルカスクを得意とするザ・マッカラン蒸溜所の「ザ・マッカラン ダブルカスク12年」は、ヨーロピアンオークのシェリー樽とアメリカンオークのシェリー樽で熟成させた原酒をブレンドしたシェリー樽100%のブレンデッドモルトとして人気を博しています。

同じくスコッチウイスキーの「アベラワー12年 ダブルカスクマチュアード」では、シェリー樽とバーボン樽で熟成させた原酒をブレンドすることで、複雑な風味を持つシングルモルトに仕上げられています。

トリプルカスク

「トリプルカスク」とは、3種類のカスクで熟成させたモルト原酒をブレンドして瓶詰めしたウイスキーのこと。ダブルカスクと同様に、トリプルカスクもザ・マッカラン蒸溜所が得意としています。

「ザ・マッカラン トリプルカスク」では、ヨーロピアンオークのシェリー樽とアメリカンオークのシェリー樽、バーボン樽で熟成させた3種類の原酒を絶妙にブレンド。バランスの取れた奥行きのある味わいをたのしめます。

カスクストレングス

「カスクストレングス」は、加水によるアルコール度数の調整が行われずに瓶詰めされたウイスキーのこと。「ストレングス」は「強さ(ここではアルコール度数のこと)」を意味します。

一般的なウイスキーでは、原酒に仕込み水を加えてアルコール度数40度程度に調整されていますが、カスクストレングスのウイスキーでは加水を行いません。そのため、原酒本来の味わいや、原酒ならではの高いアルコール度数を堪能できるのが魅力となっています。ただ、アルコール度数は50~60度前後とかなり高いので、通向きのウイスキーといえそうです。

なお、カスクストレングスは樽出しのままのアルコール度数を指すこともあり、こちらの意味の場合は、「カスクストレングスでボトリングされたウイスキー」のように使います。ここから転じて、カスクストレングス=加水調整していないウイスキーのことを指すようになったともいわれています。

ウイスキーのカスクに注目すると、たのしみがさらに広がります。ウイスキー通はもちろん、初心者でも、カスクの種類が異なるウイスキーを飲み比べてみれば、香りや味わいの違いを感じられるかもしれませんね。

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