「シェリー樽」とは?ウイスキー熟成の始まりとされるシェリー樽の歴史をひも解く
シェリー樽は、ウイスキーの原酒を貯蔵・熟成させる木樽の一種。木樽にもさまざまな種類があるなか、シェリー樽は現代のような味わいのウイスキーが誕生した当初から使われ続けているのだとか。ウイスキー造りにおけるシェリー樽の歴史や、シェリー樽で熟成したウイスキーの特徴などを紹介します。
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「シェリー樽」の「シェリー」とは?
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シェリー樽の「シェリー」は「シェリー酒」のこと
シェリー酒の貯蔵に使われた樽は「シェリー樽」と呼ばれます。
シェリー酒とは、スペイン南部、アンダルシア州のヘレス地方で造られる伝統的なお酒。醸造過程でアルコールを添加した「酒精強化ワイン」の一種です。「シェリー酒」という独立したジャンルのお酒と思う人もいるようですが、ワインの一種なんですね。
シェリー樽がウイスキーにもたらすもの
「シェリー樽」は、一度シェリー酒の貯蔵に使われた空き樽を、ウイスキーの蒸溜所が買い取って、ウイスキー原酒の貯蔵に再利用しています。
なぜ新しい樽ではなく、使用済みの樽を用いるのでしょう? それはコストや環境のためというわけではありません。樽に浸透したシェリー酒のエキスが、樽内で熟成するウイスキーに豊かな香味や深いコク、そして余韻を与えるからです。
ウイスキーを熟成させる樽には、他にもバーボン樽やラム樽、ワイン樽など、さまざまなお酒を貯蔵したものが用いられます。なかでもシェリー樽は香味が強く、入手が難しくなった現在もシェリー樽にこだわる蒸溜所も少なくありません。
シェリー樽がウイスキーを進化させた?
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シェリー樽での熟成は偶然から始まったもの
「シェリー樽」をはじめとした木樽での熟成は、ウイスキーに豊かな香味やコク、そして特徴的な琥珀色をもたらす重要な工程です。
じつは、この工程はもともとのウイスキー造りにはなかったもので、18世紀のスコットランドで偶然に始まったと言われています。
この頃、重税に苦しめられたウイスキー生産者たちは、ハイランド地方の山中に蒸溜所を移して密造を行っていました。人目を忍んで保管しているうちに、樽のまま数年間も放置されるウイスキーも出てきましたが、試しに飲んでみると、それまでのウイスキーになかった芳醇な香りと味わいが生まれていました。これがウイスキー熟成の始まりで、その樽こそシェリー樽だったのです。
シェリー樽の歴史と今
シェリー樽がウイスキーの密造に使われたのは、当時のスコットランドに、スペインから大量のシェリー酒が輸送されていたためです。
18世紀と言えば、海上交易が活発化していた時代。長い船旅には船員の癒しとしてワインが必須で、腐敗しにくい酒精強化ワインであるシェリー酒の需要が増加していました。その結果として生まれた大量の空き樽が、ウイスキー密造者の手に渡り、芳醇なウイスキーを生み出すきっかけとなったのです
現在では、瓶詰めでの輸送が一般的になったこともあり、シェリー樽の入手は困難になっています。それでもシェリー樽にこだわる蒸溜所では、自前で樽を製造し、シェリー酒メーカーで使ってもらってから、ウイスキーの熟成に使用しているケースもあるようです。
シェリー樽で熟成したウイスキーの風味
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シェリー樽によって変わる風味
「シェリー樽」と一口に言っても、じつは非常に多種多様です。そもそもシェリー酒自体に多くの種類があり、どのタイプのシェリー酒を保存していた樽かによって、熟成されるウイスキーの味わいも変化します。
たとえば、香り高い辛口シェリーの古酒「オロロソ」の樽は、ウイスキーに深いコクと熟成感を与えます。一方、口当たりの軽いシェリー酒「フィノ」の樽はシャープで繊細な香りを、地中海原産のブドウを用いた「モスカテル」の樽はドライフルーツのような甘い香りをもたらします。
シェリー酒の材質や使用回数でも風味が変わる
「シェリー樽」の原料は、日本では「楢(ナラ)の木」と呼ばれる「オーク材」ですが、その種類によっても、樽熟成による風味が異なります。
シェリー酒の故郷・スペイン原産の「スパニッシュオーク」の場合、タンニン成分の影響で、豊かで複雑な香味をもたらします。一方、「アメリカンホワイトオーク」の場合は、バニラのような香ばしさが特徴です。
また、ウイスキーを初めて詰める「ファーストフィル」か、繰り返し使用する「セカンドフィル」「サードフィル」(総称して「リフィル」とも)かによって、樽からの影響を受ける度合いも異なります。
ウイスキーの造り手たちは、これら多様な樽を緻密に使い分けることで、理想のウイスキーの味わいを生み出しているのです。
シェリー樽は、ウイスキーの香りや味わいに大きな影響を与える存在です。ウイスキーを飲むとき、どんな樽で熟成したのかを確かめて味わってみれば、ウイスキーのたのしみがより深まるかもしれませんね。