ウイスキーの「樽」がもたらす味わいの変化!その秘密を探る

ウイスキーの「樽」がもたらす味わいの変化!その秘密を探る
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ウイスキーの樽熟成は、味わいを決めるとても大切な工程。樽の種類はさまざまで、ウイスキーの香味を左右します。今回は、ウイスキー樽の種類や樽材ごとの特徴、そして熟成樽がウイスキーに与える影響などを紹介します。

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ウイスキー樽の種類

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ウイスキーの味わいを決めるうえで非常に重要なのが、熟成に使われる「樽」の存在です。まずはおもな樽の種類を紹介します。

アメリカンホワイトオーク樽

ウイスキーの樽材として広く使われているのが、北米生まれのアメリカンホワイトオークです。ウイスキー原酒にバニラやハチミツ、カラメルなどを思わせる甘いフレーバーを与えるのが特徴です。

コモンオーク樽

ヨーロッパ産2大オークのひとつに数えられる樽です。スパニッシュオークとも呼ばれるコモンオークの特徴は、ポリフェノールやタンニンを豊富に含んでいること。ウイスキー原酒にドライフルーツのような甘くてフルーティーな香りをもたらします。

セシルオーク樽

フレンチオークとも呼ばれるセシルオークも、ヨーロッパ産2大オークのひとつです。セシルオークはフランスを中心に使用されています。タンニン量が多いため、ウイスキー原酒にスパイシーな香りを授けます。

ミズナラ樽

日本に多く自生することから「ジャパニーズオーク」とも呼ばれるオークです。その特徴は、香木の伽羅(きゃら)や白檀(びゃくだん)を思わせるオリエンタルな香り。強い芳香性のアロマをもたらすミズナラは、近年日本のみならず世界中から注目を集めています。

バーボン樽

その名のとおり、バーボンウイスキーを貯蔵するための樽です。樽材にはホワイトオークを使用。アメリカの法律上、バーナーなどで内側を焦がして使用することが義務づけられていて、これによって燻製のようなスモーキーフレーバーとバニラを想わせる甘い香りが生まれます。
バーボンウイスキーの製造には1度しか使えませんが、バーボン樽はほかのウイスキーの熟成に再利用されることがあります。

シェリー樽

ウイスキーの樽熟成には、シェリー酒の熟成に使用した樽を用いることもあります。シェリー樽を使って熟成させたウイスキーは、甘いフルーツのような風味が特徴です。
ちなみにスコッチウイスキーの蒸溜所や日本のウイスキーメーカーが、バーボン樽を再利用してウイスキー造りを始めたのは20世紀後半のこと。それまではおもにワイン樽やシェリー樽を用いていたといわれています。

ポート樽(カスク)

シェリーと並んで「世界3大酒精強化ワイン」と呼ばれるポートワイン。この熟成樽をウイスキーの熟成に用いることもあります。ポート樽で熟成したウイスキーにはイチゴやラズベリー、ダムソンのような風味がもたらされ、リッチで高揚感のあるフレーバーになります。

マデイラワイン樽(カスク)

同じく世界3大酒精強化ワインのひとつに数えられるマデイラを熟成した樽も、ウイスキーの熟成樽として使用されます。ジューシーなフルーツの風味を加えるマデイラワイン樽。バニラやクローブなどのスパイスが、柔らかくフレッシュな印象を与えます。

ウイスキー樽の種類~容量別~

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ウイスキーの熟成樽のサイズは、熟成速度や酒質に影響するといわれています。さまざまな容量の樽が使われていますが、代表的なのはホワイトオーク製の「バレル(バーレル)」です。容量は約180~200リットル。一般的に、1回目(新樽)はバーボンウイスキーやカナディアンウイスキーなどの熟成に使用され、2回目以降(古樽)はスコッチウイスキーやジャパニーズウイスキーなどの熟成に使われます。

バーボンバレルを一度解体して樽材を追加して組み直し、容量を増やしたもの「ホッグスヘッド(ホグスヘッド)」といいます。ホッグスヘッドとは「豚の頭」の意味。ウイスキーを詰めた樽の重さがおよそ豚一頭と同じであることから、その名がつけられたといわれています。容量は220~250リットルほどです。

ラテン語で「大きい樽」を意味するのが、容量500リットルほどの「バット」です。はじめにシェリー酒の貯蔵に使われたあとでウイスキーメーカーの手に渡ることから、「シェリーバット」とも呼ばれています。

容量は約500リットル、はじめにシェリー酒の貯蔵に使われるという点ではバットと同じですが、バットに比べると丈が短く、ずんぐりとした形をしているのが「パンチョン」です。一般的にアメリカンホワイトオークやコモンオークから造られます。

ウイスキー樽の一生

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たとえば、一度使った樽の利用が禁止されているバーボンウイスキーに対して、スコッチウイスキーは新樽をあまり使いません。ウイスキーの種類によって、異なる樽の使われ方。熟成に必要不可欠な樽は、いったいどのくらいの期間使われるのでしょうか。

一般に、ウイスキー樽の寿命は60~70年といわれています。たとえば内面を焼いて表面が消し炭状態になった新樽に、バーボンウイスキーを入れてまず5~6年貯蔵、これを空にした樽にほかのウイスキーを貯蔵して10~15年、さらにこれを空けた樽に3回新しいウイスキーを貯蔵して10~15年。

この繰り返しを40年以上経てオーク材の成分が出尽くしたころに、もう一度樽の内側を焼いて活性化させ、さらに2~3回使っていきます。

多くのウイスキーに樽の成分が出尽くしたときに、樽はようやくその一生を終えるのです。

樽貯蔵による味や色の違い

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貯蔵期間だけでなく、樽の違いもウイスキーの味わいを形成する大事な要因です。

たとえば、以前ほかの酒の貯蔵に使われていた樽でウイスキーを熟成した場合、その酒の味や香りが樽に浸み込みます。シェリー樽なら甘い香りに、バーボン樽ならハチミツやバニラのような風味になります。ラム酒やワインなどの樽が使われることもあります。

また、樽材の産地も大きく影響します。アメリカ産のオーク材を使った樽なら黄色がかった褐色に、ヨーロッパ産のオーク材を使った樽なら赤みが強い色合いのウイスキーになります。

樽の内側をバーナーで焼いた活性樽での貯蔵は、香りや風味に対する樽からの影響が少なく、熟成がゆっくり進みます。長期熟成させるとバニラやカシスを思わせる甘くフルーティーな香りが加わります。

逆にすべて新材で造られた新樽貯蔵の場合は、樽材からの抽出が豊富なので、比較的早く熟成します。また、樽に詰められた原酒の影響が出やすいのも特徴。ほかの樽に比べ熟成されたあとも、色は薄めでしっかりとした木の香りがありスッキリした飲み口となります。

香味をさらに引き立てるウッドフィニッシュ

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バーボン樽やシェリー樽などで熟成したウイスキーを、さらに性質の異なる樽で再度熟成させることを「ウッドフィニッシュ」といいます。この工程は通常数カ月から数年行われますが、このひと手間により、より複雑な香味を持つウイスキーを生み出すことができるのです。

ウッドフィニッシュには、ラムやマデイラ酒、ワインなど、さまざまな種類のお酒の熟成に使われた樽が再利用されており、ウイスキーの味わいに深みを与えています。

同じ条件で樽熟成をしても、必ずしも同じウイスキーが完成するとは限りません。しかしそれこそがウイスキーの魅力のひとつ。ウイスキーを味わう際は、造り手の思いが込められた熟成樽に注目してみるのもたのしいですよ。

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