ウイスキーの「あかし」とは?芳醇な味わいの秘密とおいしい飲み方を解説!
兵庫の地ウイスキー「あかし」を飲んだことはありますか?日本国内でもっとも海に近く、約340年の歴史を誇る江井ヶ嶋酒造で造られる伝統的なウイスキーです。ここでは、製造方法やラインナップから「あかし」の魅力に迫ります。
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ウイスキー「あかし」とは
出典:江井ヶ嶋酒造株式会社サイト
兵庫県明石市に拠点を置く総合酒類メーカー、江井ヶ嶋酒造が製造する「あかし」は、人気の国産地ウイスキーブランドです。「あかし」の名は、生産地である明石市に由来します。
国内外のウイスキーファンを魅了するウイスキー「あかし」は、約340年の歴史を誇る江井ヶ嶋酒造の酒造りの経験と、確かな技術力から生まれます。「あかし」シングルモルトシリーズは、当然ながら糖化・発酵・蒸溜などの製造工程から、熟成庫での3年以上の貯蔵、瓶詰めまで、すべての工程が明石の自社工場内で行われています。「シングルモルトあかし」は、名実ともに日本を代表するジャパニーズウイスキーなのです。
「あかし」は播磨灘(はりまなだ)の温和な気候のもとで造られる
出典:江井ヶ嶋酒造株式会社サイト
もっとも海に近い蒸溜所
江井ヶ嶋酒造の蒸溜所は、日本国内でもっとも海に近い風光明媚な場所に佇みます。
瀬戸内海東部の播磨灘という海域に面する地域は温暖な気候で、明石市から姫路市にかけて広がる播磨平野は有数の穀倉地帯として知られています。なかでも明石北部で収穫される良質の米は「谷米(たにまい)」と呼ばれ、古くから大阪などで重宝されてきました。江戸時代にはこれらの米を運び出すために、明石市の江井島(えいがしま)一帯は港町として大いに賑わったといわれています。
良質な米と六甲山系の名水に恵まれたこの地では、江戸時代初期ころから酒造りも盛んに行われてきました。かつて神戸の「灘」に対して「西灘」と呼ばれた明石では、いまも複数の蔵元が、自然の恵みを活かしておいしい地酒を醸しています。
このように酒造りの文化が根づく海辺の街で、ウイスキー「あかし」は造られているのです。
江井ヶ嶋酒造の歴史
江井ヶ嶋酒造は延宝7年(1679年)に創業し、酒造りを開始した老舗蔵です。明治21年(1888年)には株式会社化し、製瓶工場を併設。清酒「日本魂」専用の一升瓶(容量1.8リットル)を開発するなど、容器も含めて高品質の商品を販売することで事業を拡大していきました。
江井ヶ嶋酒造がウイスキーの製造免許を取得したのは、大正8年(1919年)のこと。同年、蒸溜工場を設立し、地ウイスキー「ホワイトオーク」をリリースしました。日本最古のモルトウイスキー蒸溜所といわれるサントリーの山崎蒸溜所の建設が始まったのが大正12年(1923年)なので、まさに日本のウイスキー造りにおける黎明期から製造に取り組んできた企業といえるでしょう。
近年は、清酒やウイスキーのほか、焼酎、みりん、ブランデー、ワインなど幅広い酒造りを手掛ける総合酒類メーカーとして、さまざまな商品を世に送り出しています。
酒造りの技を活かした独自の蒸溜方法
江井ヶ嶋酒造では、日本酒を醸す蔵人たちが、基本的には醸造のオフシーズンにウイスキー造りに励んでいます。
現在稼働しているのは、昭和59年(1984年)に新設された蒸溜所で、ポットスチルやウォッシュバックなどスコットランド式の蒸溜設備を完備。原料の大麦麦芽は、スコッチの本場イギリスから取り寄せたものを使用し、質の高いウイスキー造りを続けています。
特筆すべきは、ウイスキー造りに清酒造りの技術を活かしている点。江井ヶ嶋酒造では、仕込み水に清酒にも用いている良質な地下水を使用し、酒母造りなど伝統手法を応用することで、独自の味わいを追求しているのです。
清酒造りの技術を融合させて生まれた原酒は、明石の潮風が感じられる7つの木造蔵のうちの二番蔵に、最低でも3年以上かけて貯蔵されます。そうして熟成のときを刻み、地ウイスキー「あかし」が完成するわけです。
「あかし」シングルモルトは2種類の樽で貯蔵しブレンド
「あかし」ブランドを代表するシングルモルトウイスキー「ホワイトオークシングルモルトあかし」の特徴は、2種類の樽で熟成された原酒をブレンド(ヴァッティング)していること。
いわゆる「ヴァッテッドモルト」と呼ばれるウイスキーで、アメリカンオークシェリー樽で貯蔵したモルト原酒と、バーボン樽で貯蔵したモルト原酒を絶妙にブレンドしてボトリングされています。個性の異なる原酒を合わせることで、香りや味わいに豊かな奥行きがもたらされるのです。
「ホワイトオークシングルモルトあかし」を口に含めば、深みのある木香や軽やかでスパイシーな味わい、スモーキーさがたのしめるでしょう。このような「あかし」特有の風味は、舌の肥えたウイスキーラバーたちをうならせています。
「あかし」のスコッチタイプはロックやハイボールで
出典:江井ヶ嶋酒造株式会社サイト
「あかし」シリーズのなかでも定番商品の「ホワイトオーク地ウイスキーあかし」は、江井ヶ嶋酒造の伝統的な地ウイスキー「ホワイトオークウイスキー」の歴史を受け継いで造られています。
こちらは「シングルモルトあかし」とは違い、市場に求められる生産量を供給するため、スコットランドから調達した原酒も利用したお手ごろ価格のブレンデッドウイスキーなので、デイリーウイスキーとして気軽にたのしめるのが魅力。とはいえ、イギリス産麦芽を100%使用して造られる味わいは本格派です。
華やかな香りを放ち、淡麗で軽やかな飲み口のスコッチタイプのブレンデッドは、とくにロックやハイボールでたのしむのがおすすめ。ロックで飲めば、フルーツのような香りとコクのあるまろやかな甘味がいっそう際立ちます。ハイボールにしてもその印象は弱まらず、さわやかな飲み心地のなかに「あかし」ならではの個性が存分に感じられるでしょう。
また「あかし」は、モルトの風味をよりたのしめるように、ノンチルフィルター(冷却ろ過せず)・ノンカラー(着色せず)で瓶詰めされているのも特徴です。モルト本来の味わいをじっくり堪能してみてはいかがでしょう。
「あかし」のシングルモルト ラインナップ
出典:江井ヶ嶋酒造株式会社サイト
ホワイトオークシングルモルトあかし
アメリカンオークシェリー樽とバーボン樽で貯蔵したモルト原酒をヴァッティング(ブレンディング)して仕上げたシングルモルトウイスキー。香りはスイートでウッディー。ミディアムライトのボディーで、上品でスパイシーな味わいのなかに、わずかにピーティーさも感じられます。
2つの樽の個性が奏でる複雑で豊かな香味を存分にたのしめます。
あかしシングルモルト8年 シェリーバット
2007年に発売され、世界的に注目されるきっかけとなったシングルモルト。シェリー樽で8年熟成させた贅沢なウイスキーです。
アルコール度数は55度。青りんご様のみずみずしくエレガントな香りが特徴で、上品で厚みのある複雑な味わいのなかに、トーストのような香ばしさやスパイシーさ、ほのかなヨード感もたのしめます。
生産量が少なく、残念ながらすでに売り切れている販売店が多いようですが、オーセンティックバーなどでは出会えることがあるかもしれません。
ホワイトオークシングルモルトあかしバーボンバレル5年 1st fill
ファーストフィルのバーボン樽(バレル)に5年間貯蔵・熟成させたシングルモルト。ファーストフィルとは再利用1回目の樽のことです。
ファーストフィルにウイスキーを貯蔵すると、もともと詰められていたお酒の影響を受けやすくなるという特徴があります。そのため、バーボンの風味をより強く感じられるウイスキーに仕上がっています。
シングルモルトあかし14年
イギリス産の麦芽100%で造った原酒を、スパニッシュオークシェリー樽で約12年半貯蔵・熟成させたのち、アメリカンオークシェリー樽で約1年半、さらに江井ヶ嶋酒造の山梨ワイナリーで使用したフレンチオーク白ワイン樽で半年ほど熟成させて仕上げられた贅沢な1本。
割り水をせずに瓶詰めされているカスクストレングスタイプのため、アルコール度数は56度と高めです。色合いは濃い赤褐色。シェリー樽特有の甘味やタンニンの渋味のほか、長期熟成ならではのオイリーな舌触りや味わいをたのしめます。
限定650本の少量生産品のため、完売しているところが多いようです。
シングルモルトあかし15年
イギリス産の麦芽100%で造った原酒を、スパニッシュオークシェリー樽で約12年半貯蔵・熟成させたのち、ジャパニーズオーク樽(コナラカスク)で約2年半後熟させたシングルモルト。
色合いは濃い赤褐色。14年と比べてスパイシーさが強く、やや酸味も感じられる味わいで、甘く華やかな香りや香ばしい香り、長く続く余韻をたのしめます。
こちらも割り水をしていないカスクストレングスタイプで、アルコール度数は58度。限定795本と生産量が少ないため、こちらもすでに完売しているところが多いようです。
シングルモルトあかし3年 日本酒カスク
日本酒を貯蔵したホワイトオーク樽に、蒸溜したての液体(ニューポット)を約3年間貯蔵・熟成させた珍しいシングルモルト。日本酒樽ならではの乳酸系の香りやウッディーな香り、ビタースイートな味わいをたのしめるのが特徴で、舌触りはなめらかでマイルド、モルトのピーティーな香りも感じられます。
「日本酒カスク」は東海地区の酒の総合専門チェーン「酒ゃビック」で限定発売された商品で、一部オンラインショップなどでも販売されています。ただしボトリング数は2,400本とそれほど多くはないため、入手しづらくなっています。
シングルモルトあかし3年 テキーラカスク
1年以上熟成させたテキーラ「アネホ」規格の古樽で、約3年貯蔵・熟成させたシングルモルト。テキーラとはメキシコを代表するお酒で、メキシコ原産の多肉植物「アガベ(別名:リュウゼツラン)」を原料に造られます。このテキーラ樽で熟成させているため、「テキーラカスク」はモルトの風味や樽香に加え、野菜のような青々しさや苦味を感じられるのが特徴です。
「テキーラカスク」は、江井ヶ嶋酒造と酒類の販売などを手掛ける信濃屋のコラボにより、お酒のプロ向けのイベント「モダンモルトウイスキーマーケット」のために特別に生産された限定商品です。のちに5年熟成の商品もリリースされました。
一般ではなかなか手に入りませんが、テキーラ樽で熟成させたウイスキーにお目にかかることはなかなかないので、一度は味わってみたいものですね。
酒造りの伝統と卓越した技術、本格的な蒸溜設備を有する江井ヶ嶋酒造の地ウイスキーブランド「あかし」は、経験と歴史に裏打ちされた品質の高さが魅力です。日本のウイスキー造りの黎明期から育まれてきた「あかし」は、近年のジャパニーズウイスキーブームにあやかって生まれた商品とは一線を画します。本物の日本の地ウイスキーの味を、じっくりと堪能してみてはいかがでしょう。
江井ヶ嶋酒造株式会社
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