「ピート」がウイスキーの香りを作る?【ウイスキー用語集】

「ピート」は「泥炭」とも呼ばれ、植物が地中に体積したもの。可燃性があるためスコットランドなどでは古くから燃料として用いられてきましたが、じつはウイスキー造りでも重要な役割を果たしています。ピートとスコッチウイスキーの深い関係を紹介します。
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ピートとはモルト(大麦麦芽)の乾燥に使われる「泥炭」

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ピート(泥炭)は植物が地中で炭化したもの
「ピート」とは、コケやシダなどの植物が枯れたあと、地中で炭となって堆積したもので、言わば「石炭」になる途中の物質です。
日本語では「泥炭(でいたん)」と訳されるように、泥のような見た目をしていますが、石炭と同様に可燃性があり、ピートが豊富なスコットランドでは、木材が少ないこともあって、古くから貴重な燃料として利用されてきました。
ピートはウイスキーの原料となるモルトの乾燥にも使用
ピートは、暖炉など家庭用の燃料としてだけでなく、ウイスキー造りでも、原材料となる「モルト(大麦麦芽)」を乾燥させる燃料として使われてきました。
ウイスキー造りでは、まず大麦を水に浸して発芽させて麦芽を作ります。ほどよく発芽したら、加熱により乾燥させて成長を止め、保存性のあるモルトにします。
ピートの煙がウイスキーの独自の香りをもたらす

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ピートを使う理由は、ただモルトを乾燥させるだけじゃない
ピートを燃やしてモルトを乾燥させるという手法は、技術が進歩した現代では不要に思われるかもしれません。もっと効率的な熱源が得られる現在でも、ピートを用いる蒸溜所が少なくないのは、ピートにはモルトを乾燥させる以外にも重要な役割があるからです。
その役割とは、ピートを焚いた時に発生する煙によって、モルトに特有の香りをもたらすこと。これがウイスキーの「スモーキーフレーバー」のもとになります。
ピートがもたらすスモーキーフレーバーは一様ではない
ピートの成分は、植生や風土によってさまざま。このため、ピートはウイスキーにもたらす香りを表現する言葉も多様です。
たとえば、ピートの香りがより強く感じられる場合には「ピーティー」、海水や潮風による薬品のような香りを表現する場合は「メディシナル」と呼ばれます。
こうした違いに加え、ピートの使用量や燃やし方、乾燥時間などを蒸溜所それぞれが工夫を凝らすことで、異なる個性を持ったモルトウイスキーが生まれます。ピートはモルトウイスキーの魅力である、豊かな個性を生み出すための、重要なピースのひとつと言えるでしょう。
ピートの香りが特徴的なウイスキーと言えば?

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ピートを用いるのはスコッチウイスキーの伝統
ピートの香りが特徴的なウイスキーとして、まず挙げられるのがスコッチランド産のスコッチウイスキーです。
スコットランドはピートの一大産地であり、日常生活に深く根づいていたピートをウイスキー造りにも用いたのは、スコットランドの人々にとっては自然のことだったのでしょう。
もちろん、すべてのスコッチウイスキーがピートを用いているわけではありませんが、スコッチ6大生産地のなかでも「アイラ」や「アイランズ」などで造られるモルトウイスキーには、ピートによるスモーキーフレーバーを特徴とした銘柄が揃っています。
ピートは日本のウイスキーでも
ピートはスコッチウイスキーだけの特徴ではありません。スコッチをお手本とした日本のウイスキーでも使われる場合があります。
たとえば、NHKドラマ「マッサン」で知られるニッカウヰスキーの「余市蒸溜所」は、スコットランドに似た気候風土を探し求めてたどり着いた場所。ここではスコッチさながらのピートを用いたスモーキーなウイスキーが造られています。
ピートが生み出すスモーキーなフレーバーは、まさにスコットランドの風土と歴史が生み出した香り。スコッチウイスキーをたのしむ際は、スコットランドの大地に思いを馳せて飲んでみてはいかがでしょう。
