京都に行って飲んでみたい! おすすめの日本酒(地酒)【近畿編】
京都府は、全国有数の酒処として知られており、府内各地にいくつもの蔵元が点在しています。古都ならではの酒造りの歴史や、清冽な地下水をはじめとした京都の酒造りの特徴とあわせて、おすすめの銘柄を紹介します。
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京都は全国でも有数の酒処
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京都府は、自然豊かな山々に囲まれ、さらに清冽な地下水も豊富に湧き出ているなど、日本酒造りに適した風土です。また、平安京以来、1,300年もの歴史をもつ古都だけに、早くから独自の食文化が発達し、それが京都ならではの繊細な酒造りにも反映されてきました。
こうした背景のもと、京都府内では各地に多くの蔵元が点在しています。とくに酒造りが盛んなのが、府の最北端にある京丹後や、古来の京における交通の要衝であった府南部の山城、そして伏見稲荷を擁する伏見などです。
なかでも伏見の日本酒は、まろやかでやさしい口当たりをもつことから、「女酒」と呼ばれて親しまれています。伏見は平安時代から山紫水明の地として知られ、皇族の別荘地として利用されてきた由緒ある土地柄。こうした歴史に加え、桃山丘陵から湧き出る良質な地下水によって、独自の酒造り文化が発展していったのです。
京都の地酒は長い歴史をもつ「伏見七ツ井」がポイント
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京都府が全国に誇る酒処、伏見は、前述のように質のよい地下水が豊富に採れる地域であり、かつては「伏水(ふしみ)」と表記されたこともありました。とくに古くから名水として親しまれてきたのが「伏見七ツ井」です。
「伏見七ツ井」とは、御香宮(ごこうのみや)神社に湧き出る御香水をはじめ、白菊井(しらぎくい)、春日井(かすがい)、常磐井(ときわい)、苔清水(こけしみず)、竹中清水、田中清水の7つの湧水の総称です。それぞれに古い歴史がありますが、とくに御香水は奈良~平安時代ごろ、朝廷から香り高い清水ということでその名を賜ったと伝えられています。今も「日本名水百選」のひとつとして、京都の酒造りをさせています。
この「伏見七ツ井」を含む伏見の地下水は、中硬水でカルシウムやカリウムをバランスよく含んでいて、鉄分が少なく繊細な味わいです。この地下水を用いて、じっくりと酒米を発酵させることで、仕上がる酒はきめ細やかでやわらかな味わいとなります。
京都の人気銘柄
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京都府には素晴らしい日本酒がたくさんありますが、こちらではとくに人気の高い酒を5銘柄紹介します。
青空を見たときのやさしい気持ちに【蒼空(そうくう)】
まるで青空のようにさわやかな印象の「蒼空」は、京都伏見の蔵元、藤岡酒造が醸す日本酒です。藤岡酒造は明治35年(1902年)に創業し1995年にいったん休業しますが、2002年には営業を再開。このとき、新体制のもとで開発された銘柄が「蒼空」でした。
「蒼空」ブランドの商品は、すべてが手造りの純米酒。いずれも、ほんのりとした甘味のなかに、高い香りやキリッとした酸味、そしてスッキリとしたあと味が魅力です。
製造元:藤岡酒造株式会社
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時間と温度の2つの変化でたのしむ酒【玉川(たまがわ)】
「玉川」は、天保13年(1842年)に創業した丹後の老舗蔵、木下酒造の主力銘柄です。「玉川」の名前は、蔵元のほど近くを流れる川上谷川が玉のように澄んだ清流であったことに由来しています。
玉川の特徴は、時間や温度によって表情を変える味わいです。無ろ過の生原酒のほか、多くの酒はじっくりと熟成させたもので、開封後も熟成による変化をたのしめます。また冷や、常温、燗など、味わう温度によっても飲み口が異なるため、飽きの来ない日本酒となっています。
製造元:木下酒造株式会社
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芳醇な旨味は白ワインのような飲みやすさ【稼ぎ頭(かせぎがしら)】
「稼ぎ頭」は、延宝3年(1675年)創業という京都伏見の老舗蔵、増田德兵衛商店の銘柄です。その印象的な銘柄には、「ビジネスでの成功」や「立身出世」といった、ポジティブで力強い目標を応援したいという意味合いが込められています。
「稼ぎ頭」の特徴は、芳醇な甘味やフルーティな香り、酸味など、まるで白ワインのような独特の風味。それでいてさわやかさもあり、スッキリとしたのどごしがクセになります。
製造元:株式会社増田徳兵衛商店
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追求するのはご飯のような日本酒【白木久(しらきく)】
「白木久」は、丹後の地で小規模ながらていねいな酒造りを続ける白杉酒造の代表銘柄です。白杉酒造の創業は、今から約250年前の安永6年(1777年)。「白木久」創業当初からの銘柄で、地元では知らぬものがないほどの人気です。
「白木久」のコンセプトは、炊き立てのご飯のような米のおいしさを再現すること。酒造好適米ではなく、あえて食米である丹後産コシヒカリを100%使用した「白木久」は、ホクホクした米の旨味を存分に味わうことができます。
製造元:白杉酒造株式会社
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ほのかな甘味とさわやかな泡【澪(みお)】
スッキリとして気軽に飲める「澪」は、京都市伏見区に本拠を置く総合酒類メーカー、宝酒造の松竹梅白壁蔵で製造しているスパークリング清酒です。日本酒でありながら、さわやかに泡がはじける感覚は、新しい酒のたのしみ方といえるでしょう。スッキリしたのどごしの「澪」は、普段は日本酒を飲まないという女性にも人気。とはいえ、日本酒としても味わい本格的で、フルーティでほのかな甘味や酸味、キレのあるあと味がたのしめます。
製造元:宝酒造株式会社
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京都のそのほかの注目銘柄
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京都府の酒には、まだまだ銘酒と呼べるものがたくさんあります。そのなかでもとくに注目したいのが、以下にあげる5銘柄です。
伏見七ツ井のひとつ「白菊井」の水で醸す酒【神聖(しんせい)】
延宝5年(1677年)創業という歴史をもつ京都伏見の老舗蔵、山本本家は「伏見七ツ井」のひとつ「白菊井」の湧水に恵まれた地に蔵を構えています。この良質な水の恩恵を受けて、伝統の技で造られる酒が「神聖」です。
「神聖」は、唐の時代の詩人・白楽天の詞を引用したもので、聖人・賢人にふさわしい上質な味わいをめざす気持ちが込められています。その特徴は、深いコクとさわやかなキレを備えた、バランスのよい味わい。厚みのある旨味も相まって、飲みごたえのある酒に仕上がっています。
製造元:株式会社山本本家
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秀吉も認めた名水が生むキレのあるのどごし【聚楽第(じゅらくだい)】
俳優・佐々木蔵之介氏の生家としても知られる佐々木酒造は、明治26年(1893年)に創業した蔵元です。京都市内上京区において、代々、小規模な酒造りを続けてきたこの蔵の代表銘柄が「聚楽第」です。
「聚楽第」とは、かつて豊臣秀吉がこの地に建て、わずか8年で取り壊された幻の城の名前。秀吉は、この地の水質に惚れ込み、その水で茶会をたのしんだといわれています。この伝承にちなんで名づけられた「聚楽第」は、まろやかな口当たりとキレのあるのどごしが魅力の日本酒として、多くの人に愛されています。
製造元:佐々木酒造株式会社
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先代から愛されている伝統の味【武勇(ぶゆう)】
現代、福知山で唯一残の蔵元として、「福知山の地酒」を守り続ける東和酒造は、享保2年(1717年)創業という老舗蔵。昭和52年(1977年)に休蔵しましたが、女性杜氏の手で2011年に復活を果たしました。
先代以来のロングセラーを誇る「武勇」は、「福知三萬二千石」や「六歓」と並ぶ、東和酒造の代表銘柄。豊かな水や盆地ならではの気候の恵みなど、福知山の魅力をつめ込んでていねいに醸される、まさに“福知山の地酒”です。
製造元:東和酒造有限会社
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“甘酸辛苦渋”の味わい【神蔵(かぐら)】
松井酒造は享保11年(1726年)創業という、洛中ではもっとも古い歴史をもつ老舗蔵。その代表銘柄である「神蔵」は、「神様から授けられた至高の一滴」を意味しており、無ろ過の原酒であることにこだわった日本酒です。
甘味や酸味、辛味や苦味、そして渋味がバランスよく絡み合ったその味わいは“甘酸辛苦渋(かんさんしんくじゅう)”と表現されることも。純米が醸す豊かな味わいをたのしめる1本です。
製造元:松井酒造株式会社
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田植えから精米までこだわり抜いた逸品【玉乃光(たまのひかり)】
玉乃光酒造は延宝元年(1673年)創業という歴史をもつ老舗蔵。蔵元の名を冠した代表銘柄「玉乃光」には、約350年もの長きにわたって受け継がれてきた伝統が反映されています。
飽きのこない、食事を引き立てる良質な酒造りをめざして、当主自らが田植えに参加し、苗の間隔までチェックするというこだわりよう。手塩にかけて育てた米を、「扁平(へんぺい)精米」によってむだなく精米することで、米の旨味を十分に引き出しています。
製造元:玉乃光酒造株式会社
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ここまで紹介した銘柄以外にも、京都には松本酒造の「澤屋まつもと」や、「月桂冠」「松竹梅」「黄桜」「富翁」「月の桂」など、歴史と品質を兼ね備えた銘柄が数多くそろっています。
京都府の蔵元の多くは、古都ならではの長い歴史を紡いできた老舗蔵。京都の酒を飲む際は、その味わいとともに、酒に込められた悠久の歴史を感じてほしいものです。
京都府酒造組合連合会