焼酎の造り方を知っていますか? 焼酎の種類や原料によって製造方法が違います

焼酎の造り方を知っていますか? 焼酎の種類や原料によって製造方法が違います
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焼酎は、「もろみ」と呼ばれる発酵液を蒸溜して造られる蒸溜酒ですが、焼酎の種類や原料によって製造方法が異なります。工程ごとの違いを知っておくと、銘柄を選ぶ際に役立ちます。今回は、焼酎のおもな製造工程や原料による製法の違いを紹介していきます。

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焼酎とは?

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焼酎とは、アルコール含有物を蒸溜して造られる「蒸溜酒」のこと。その造り方を知るには、ほかのお酒との違いを理解するのが近道です。

そもそもお酒とは、糖分を含む液体に酵母を加え、発酵させて生み出されるアルコールのこと。その製造方法によって、お酒は3つに分類されます。
日本酒やワイン、ビールなど発酵させた液体を、ろ過などを経てそのまま飲むものは「醸造酒」と呼ばれます。この「醸造酒(発酵液)」を蒸溜したものが「蒸溜酒」です。焼酎のほか、ウイスキーやブランデー、ウォッカなどもこの「蒸溜酒」に分類されます。

ちなみに「醸造酒」や「蒸溜酒」にハーブや香辛料、果汁、香料などを加えると、「混成酒」というお酒になります。カルーアなどのリキュールや梅酒などがこれにあたります。

焼酎は平均アルコール度数が20〜25度と比較的高いお酒ですが、5~15度のビールや日本酒、ワインのように食中酒として味わえる世界でも珍しい蒸溜酒です。その味わい方もストレートやロックだけでなく、水割り、お湯割りとさまざま。水を加えることでアルコール度数が調整できるだけでなく、冷やしてキレ味、温めて香りと甘味を際立たせるなど、温度による風味の変化がたのしめるのも焼酎の魅力です。

焼酎の種類は、造り方によって大きく2つに分けられる

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焼酎は、製造方法によって「連続式蒸溜焼酎」と「単式蒸溜焼酎」に分類されます。酒税法上の定義の違いと大まかな特徴をみていきましょう。

「連続式蒸溜焼酎(甲類焼酎)」とは?

連続式蒸溜焼酎とは、連続式蒸溜機で蒸溜されるアルコール分36度未満の焼酎のこと。「甲類焼酎」という呼び名のほうがなじみ深いかもしれません。
19世紀生まれの連続式蒸溜機を用いた焼酎造りが日本でスタートしたのは、1900年ごろといわれています。昔ながらの単式蒸溜焼酎と比べて新しいことから、「新式焼酎」と呼ばれたこともありました。

連続式蒸溜に用いられる連続式蒸溜機とは、連続的に蒸溜を行える蒸溜機のこと。短期間で一気にアルコールを抽出可能で、大量生産できるのが特徴です。繰り返し蒸溜される過程で雑味などの成分がほとんど取り除かれるため、クセがなくスッキリとした味わいの焼酎に仕上がります。

「単式蒸溜焼酎(乙類焼酎)」とは?

単式蒸溜焼酎は、単式蒸溜機で蒸溜したアルコール分45度以下の焼酎です。こちらは「乙類焼酎」と呼ばれ、なかでも酒税法が定める条件を満たしたものは「本格焼酎」の名で親しまれています。

単式蒸溜は昔ながらの蒸溜技術で、その歴史は古代メソポタミア文明にまでさかのぼるといわれています。この技術を利用した酒造りが日本に伝来したのは15世紀なかごろとされていますが、連続式蒸溜の技術が伝わる以前は、焼酎はすべてこの方法で蒸溜されていました。

単式蒸溜に用いられる単式蒸溜機は、1回ずつ蒸溜を行うタイプの蒸溜機。連続式蒸溜機に比べて蒸溜に時間がかかるため、大量生産には向いていませんが、原料本来の風味や香りを活かした個性豊かな焼酎に仕上げることができます。

おもな製造工程

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焼酎の製造工程は、大きく「原料の処理」「製麹(せいきく)」「発酵」「蒸溜」「熟成(貯蔵・熟成)」の5工程に分けられます。それぞれの工程を詳しくみていきましょう。

原料の処理

単式蒸溜焼酎(乙類焼酎)の原料は主原料と麹(こうじ)の原料に分けられます。
主原料に用いられる物品は酒税法で細かく指定されていますが、本格焼酎の場合は、芋が主原料なら芋焼酎、麦が主原料なら麦焼酎といった具合に、主原料によって焼酎の種類が変わってきます。
麹の原料には米や麦などが使われます。

これらの原料はきれいに洗浄されたあと、必要に応じて水を吸わせる浸漬(しんせき)や水切り、皮むきなどの処理が施されます。

一方、連続式蒸溜焼酎(甲類焼酎)では、その特長であるクリアな味わいとリーズナブルな価格を実現するため、多くの場合は「糖蜜」などのデンプン質原料を使用します。「廃糖蜜」「モラセス」とも呼ばれる糖蜜は、サトウキビから砂糖を精製したあとに残る搾りかすのこと。もともと液体なので、芋類や穀類のような下処理を必要としません。

製麹(せいきく)

穀類や芋類を主原料とする単式蒸溜焼酎(乙類焼酎)は、主原料を発酵させて造られますが、この発酵を担うのが、もうひとつの原料である麹の存在です。麹にはデンプンを糖に変える性質があり、そのはたらきによってアルコール発酵が行われるのです。

麹を造る工程を「製麴」といいます。
ここでは、多くの乙類焼酎に使われる米麹を例にとって製麴工程をみていきます。

まずは米を洗って水に漬け、水分を吸収させます。どれだけ水に漬けるかは、その日の気温や湿度などによって変わります。
必要なだけ水を吸わせたら、米を蒸します。できた蒸し米を広げて35度くらいまで冷やし、白麹菌や黒麹菌、黄麹菌といった「麹菌」を振りかけて混ぜます。その後、「麹室(こうじむろ)」と呼ばれる高温多湿な環境で麹菌を繁殖させると、米麹が完成します。

ちなみに、糖蜜を原料とする連続式蒸溜焼酎(甲類焼酎)の場合、糖蜜はもともと糖分で、水と酵母を加えて効率的に発酵させることができるため、製麴の工程は省かれます。

発酵

麹ができたら、次は発酵です。単式蒸溜焼酎(乙類焼酎)では一般的に、「一次もろみ(酒母)」を造る一次仕込みと「二次もろみ」を造る二次仕込みに分けて発酵が行われます。

まずは麹に水と焼酎酵母を加えて混合し、約7日間かけて酵母を増殖させます。こうして造られた一次もろみに、米や芋などの原料と水を加えて混ぜ、約2週間かけて発酵させます。こうして、二度にわたる仕込みを経て、芳醇な二次もろみが生まれるのです。


ただし、単式蒸溜焼酎(乙類焼酎)のなかでも沖縄名産の泡盛は、原料の米と麹菌、酵母、水を一度に仕込む「全麹仕込み」という方法で発酵を進めます。
また、単式蒸溜焼酎の粕とり焼酎も、清酒を搾ったあとの酒粕を粉砕し、水に浸して一度に発酵させます。
糖蜜を原料とする連続式蒸溜焼酎も、原料を直接発酵させてもろみを造ります。

蒸溜

発酵を終えた「もろみ(発酵液)」を蒸溜することで、焼酎の原酒が得られます。芋焼酎や米焼酎、麦焼酎などの乙類焼酎には単式蒸溜機を、甲類焼酎には連続式蒸溜機を使用します。

蒸溜とは、液体を熱することで蒸気となった成分を、冷やして再び液体にすること。沸点の違いを利用して、水とアルコールとに分離するわけです。
このため、焼酎は蒸溜しない日本酒よりもアルコール度数が高くなります。これは、同じく蒸溜酒であるウイスキーなども同様です。

なお、単式蒸溜焼酎(乙類焼酎)の蒸溜方法には、通常の気圧下で行う「常圧蒸溜」と、蒸溜機内の気圧を下げて行う「減圧蒸溜」の2種類があります。
常圧蒸溜は雑味などの成分が残りやすい一方、原料由来の風味や香りが活きた個性豊かな酒質に仕上がる傾向があります。熟成による酒質の向上も大きく、味、香りともに濃厚で長期熟成酒を造るのに適しています。対する減圧蒸溜は揮発成分が少ないため酒質が軽く、クセのないすっきりとした味わいになります。

貯蔵・熟成

蒸溜されたばかりの原酒にはガス成分が含まれており、そのまま飲むと荒々しく感じるため、味や香りをたのしめるようになるには少し時間が必要です。
そのため、原酒はタンクなどの貯蔵容器に移され、少なくとも1〜3カ月は寝かされます。この工程を「貯蔵・熟成」あるいは単に「貯蔵」「熟成」といいます。

熟成させることで、ガス成分が揮散して荒さがとれるとともに水がアルコール成分を包み込み、酒質が安定してきます。この熟成期間があってこそ、原酒にまろやかさが加わり、原酒のなかに潜んでいる香りが花開くのです。

熟成された焼酎は、酒質を一定にするため、貯蔵容器ごとの原酒を混ぜ合わせます。その後、水を加えて商品ごとにめざすアルコール度数に調整します。
こうした「ブレンド(調合)」「割り水」などを経て仕上げられた焼酎が瓶詰めされ、ようやく焼酎ファンのもとに届けられるのです。

連続式蒸溜焼酎(甲類焼酎)では、割り水後に貯蔵を行ってアルコールと水をなじませたり、割り水後の連続式蒸溜焼酎にこだわりの熟成酒をブレンドしたりすることがあります。

原料による工程の違い

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本格焼酎は酒税法によって原料や製造方法が定められているため、焼酎の種類によってその造り方に大きな違いはありませんが、原料の種類によっては特別な作業が発生する場合があります。

とれたて&選別が命の芋焼酎

サツマイモを主原料とする芋焼酎は、原料の処理にひと手間もふた手間も掛かります。

サツマイモは、ジャガイモに比べると傷みが早い芋。そのため、芋焼酎に使用するものは前日または当日の朝に収穫して、泥つきのまま焼酎の製造所へ。到着後、速やかに泥や汚れを洗って、目視で選別しながら芋の両端を切り落とし、さらに傷んでいるものや変色、虫食い部分などを手作業で削り取ります。芋は傷ついた部分があると、そこから抗菌性のある物質が分泌され、焼酎の臭みの原因に。手が掛かるとはいえ、おいしい芋焼酎には欠かせない大事な作業なのです。

米の磨き方、品種が決め手の米焼酎

お米が主原料の米焼酎造りにおいても、原料の処理がものをいいます。

古くは煮た玄米に、日本酒造りに使う「黄麹」を加えて仕込んでいたそうですが、大正時代以降は日本酒造りと同じ精米したお米で仕込まれています。

日本酒の場合は、一般的な精米歩合は60~70%ほど。これは外側にある脂質やタンパク質を雑味の原因と捉えているためです。しかし、米焼酎にとって、脂質やタンパク質部分は「甘味と旨味のもと」になる大事な部分。精米歩合85~90%で、ちょうど家庭で使う炊飯用の米と同じくらいです。もっとも、日本酒の吟醸酒のような香りを引き出すために手間暇を惜しまず、精米歩合60%以下に磨き上げた米を麹の原料に使った「吟香鳥飼」のような銘柄もあります。

米焼酎を手掛ける蔵元は、日本酒蔵同様、米の品種にもこだわりがあり、多くの銘柄では九州を中心に西日本で広く栽培される「ヒノヒカリ」をはじめ、「コシヒカリ」や「あきたこまち」など、おいしいと評判の米が使われています。なかには「山田錦」や「五百万米」など、日本酒用の品種で仕込む蔵元もあるほど。

米焼酎の多くは日本特有のジャポニカ米を使用していますが、同じ米100%の焼酎でも沖縄名産の泡盛は、一般的にタイ米とも呼ばれる「インディカ米」を使用しています。泡盛ならではのバニラのような香りも、インディカ米によるもの。米の品種以外にも発酵に黒麹を使ったり、一度に発酵させる全麹仕込み方法を用いたりするなど、泡盛は九州以北の米焼酎とは異なる、独自の製法で造られています。

焼酎の造り方がわかってくると、ラベルを見ただけで味わいの傾向を予測できるようになり、たのしみの幅が広がります。いろいろ飲み比べながら、製造方法の違いがもたらす個性の違いを味わってみてください。

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