焼酎は「熟成」でおいしくなる! 焼酎熟成の仕組みを知ろう
「焼酎は熟成させるとおいしくなる」と聞いたことがあると思います。多くの焼酎は、蒸溜後に数カ月は貯蔵・熟成させてから出荷されますが、より長期間にわたって熟成されるものもあります。今回は、焼酎を熟成する目的や、熟成の期間・方法が左右する焼酎の味わいにフォーカスします。
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焼酎を「熟成」する目的
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焼酎の熟成には、大きく2つの目的が
焼酎は、基本的には蒸溜後に貯蔵・熟成の期間を経て、出荷されます。これは、蒸溜したての荒々しさ、刺激の強さを抑え、酒質を安定させるためです。具体的には、熟成させることで以下のような効果が期待されます。
【刺激臭のもととなるガスを飛ばす】
蒸溜直後の焼酎には、刺激臭のもととなるアルデヒドなどの揮発成分が残っています。一定期間、貯蔵・熟成させることで、これらの成分が揮発。できたての焼酎に特有のガス臭を飛ばすことができます。
【原料に含まれる油分を取り除く】
蒸溜直後の焼酎には、原料に含まれる油分が残っていて、これが空気に触れると、不快な油臭や劣化の原因になります。一定期間、焼酎を貯蔵すると、表面に油分が浮いてくるので、これを取り除いてから瓶詰めします。
熟成した焼酎の魅力
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「熟成」した焼酎がおいしい理由
焼酎の酒質を安定させるために必要な熟成期間は、一般的に1~3カ月程度。ウイスキーなど長期熟成が前提のお酒と比べると、短期間で熟成できますが、なかには何年もかけて熟成させる焼酎もあります。
熟成期間が長くなるほど、焼酎の香味が落ち着き、アルコールと水が親和して、よりまろやかに変化。コクや深みが増して、味わい深い焼酎に仕上がる傾向があります。
熟成期間による焼酎の分類
焼酎の熟成期間が3〜6カ月のものを「初期熟成」、半年から3年未満のものを「中期熟成」と分類することがあります。「長期熟成」とラベルなどに表示するためには、熟成期間が3年以上の焼酎がブレンド後の総量の50%を占める必要があります。
ウイスキーやブランデーと同じく、長いものは20年近く熟成させた焼酎もあり、年月を経て深まった味わいはもちろん、希少価値もあってマニアのあいだでは珍重されています。
熟成した焼酎の代表格、泡盛の「古酒(クース)」の魅力
沖縄名物の琉球泡盛もまた、「熟成」でおいしくなる焼酎の一種。なかでも、地元の人に古くから愛されてきたのが、泡盛の「古酒(クース)」です。
「長期熟成」の表示と同様、「古酒」の場合も、熟成期間が3年以上のものがブレンド後の総量の50%を占める必要があります。
焼酎の熟成方法によって味はどう変わる?
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熟成させる容器で異なる、焼酎の個性
焼酎は、熟成期間によって味わいが変化しますが、貯蔵に用いる容器によっても個性が左右されます。貯蔵・熟成に使われるおもな容器としては、「タンク」「甕(かめ)」「樽」の3種類が挙げられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
【タンク貯蔵】
現在、多くの焼酎蔵で採用されている貯蔵熟成方法が「タンク貯蔵」です。温度管理がしやすく、空気の出入りもなく、またタンクそのものから物質が流れ出ることもない「タンク貯蔵」は、安定した環境下で熟成が進むのが特徴。クリアな味わいに仕上がる傾向があります。
【甕(かめ)貯蔵】
素焼きの甕を用いる「甕貯蔵」は、伝統的な焼酎の熟成方法。甕の表面に空いた微小な気孔から空気が入り、液体から揮発したガスも自然に抜けていくことから、熟成を促進させます。
さらに、甕に含まれる成分が焼酎に溶け出すことで、まろやかな風味や飲み口をもたらすため、甕貯蔵にこだわる焼酎蔵もあります。
【樽貯蔵】
ウイスキーの熟成と同様、一度ウイスキーやシェリー酒などの熟成に用いられた樫樽を再利用して行われます。樽から溶け出す色素や香りが焼酎に移ることで、うっすらと琥珀色をした焼酎や、スモーキーな香りが立つ個性的な焼酎が生まれます。
焼酎の味わいは、原材料や麹の種類、蒸溜方法はもちろん、熟成期間や熟成方法、ブレンド具合によっても変わってきます。いろいろ飲み比べて、「熟成」の深い世界観を堪能してください。